ザ・レポート(11)
つげ義春リアリズム・ツアー
青林堂から出ていた異能の漫画雑誌「ガロ」の1991年7月号に、石川さんの「つげ義春実在地名考」という短文が載っている。同号は「つげ義春特集号」である。
石川さんの短文は、千葉の太海あたりに遊びに行ったらつげ義春の『ねじ式』に出てくる“もとの村”へ入り込んでいた、という鮮烈な体験談から始まる。そのときの石川さんの驚きと感銘は、『ねじ式』の世界に幻惑され魅惑された者なら即座に理解できるだろう。もし私が“もとの村”へ入り込んだとしたら、やはり狭い路地の奥から蒸気機関車が走ってくる光景を幻視し、「アッ!ここはもとの村ではないか」と叫びたくなるはずだ。
「つげ義春実在地名考」の枠内には、石川さんの筆による「つげ義春作品実在マップ」という図も掲載されている。つげ義春の漫画には実在の地名や実在の土地をモデルにした風景がよく出てくる。石川さんは、そんなつげ作品の舞台となった土地を推理することに“インビな楽しみ”を覚え、その推理の成果を地図のかたちで簡素に示したのだ。このマップは、いつかつげ作品の舞台を巡る旅に出ようと思ったとき参考になりそうである。
石川さんによると、このマップには一ヵ所間違いがあって、その後訂正する機会もなかったため気にかけておられるようだ。
「ガロ」1991年7月号が出たのと同じ年の12月に、青林堂から『「無能の人」のススメ』という本が発行された。つげ義春の『無能の人』を映画化した竹中直人が責任編集をつとめ、各界の人物総勢24人が自分の中の『無能の人』を思い思いに書いている。“心のチクチク痛い人々”に捧げられた本である。
この本で石川さんが「“つげ義春リアリズム・ツアー”への誘い」という文章を執筆している。「ガロ」に載った「つげ義春実在地名考」と内容的にリンクする文章で、私は強く興味を惹かれた。
「“つげ義春リアリズム・ツアー”への誘い」は、つげ作品で描かれた実在の土地を5泊6日で巡るツアーをガイドしたものである。実際に石川さんがそういうツアーを開催したわけではない。架空のツアーをリアルっぽく描いているのだ。「本日は、お日柄も鬱々と曇天に恵まれまして絶好の無能日和」という挨拶が冒頭に置かれ、「お日柄もよろしく晴天に…」という紋切り型の挨拶にひねりを加えたところが、つげワールドへの入口らしくて心誘われる。そのうえ、ツアーのバスガイドがキクチサヨコとくれば、つげ義春ファンはいてもたってもいられなくなるだろう。
このツアーは、“つげ義春の漫画で描かれた実在の土地を巡りながら、つげ義春の漫画で描かれた出来事(フィクション)を体験する”という構造になっていて、虚構と現実が入れ子細工のように交錯している。漫画という虚構の中で描かれた実在の土地… その実在の土地を旅しながら虚構の出来事を体験する… そんな奇妙な世界にのめりこんでいくと、虚構と現実の境界線が曖昧になり、いま自分が立っている地面が揺らぎだし、どこか平衡感覚がおかしくなって、一種の酩酊感にとらわれていく。不思議で心地よくて風情のある酔いである。
ラストで予告される「つげ義春必殺するめ固めツアー」は、「つげ義春リアリズム・ツアー」をさらにディープにした企画だ。巡る場所は、目医者ばかりの村、山椒魚が胎児をつつく排水口、チヨジ頑張るもっきり屋、ふくらんだ夜の地下室などなど、これでもかというほど濃密である。
マニア気質の私は、ヨダレだけでなく体の色んなところから汁が出てしまうほど興奮する。もっきり屋へ行って「頑張れチヨジ」と叫びたい。(仮面次郎)
(本人より)本当につげ義春の旅は懐かしい風景ではあるが、ある種「暴力的な」懐かしさをともなっているよね。
レトロブームで「三丁目の夕日」なども最近はもてはやされているが(ちなみに西岸良平も好きだが)、またそれとは一線を画した現実感や痛みをともなった描写に、深く惹かれてしまう自分がいるのだ。
つげ義春の舞台になった土地にいっても、意外と期待はずれのことも実際は多いだろうが、初めて彼の漫画を知ってから、俺はひとりでずっと頭の中で妄想旅行に出ている気がする。
高田渡生誕会59in武蔵野公会堂
高田渡が好きでパスカルズが好きな私が行かないわけにはいかないライブだった。(余談だが、この日、職場では欠席の許されない定期の会議があったのだが、それどころではないので、言い訳として「法事」と言った。確かに法事のようなものだ。)
4時間近い長いライブで、この日の出演者は総勢50名近かった。
嬉々としてパスカルズの登場を待ちわびた。
なんとほとんどトリ状態でパスカルズが登場。
それまでは高田渡とほぼ同世代のミュージシャンが比較的地味に登場していたのとは打って変わり、パスカルズの派手なこと!年齢的にはそんなに他のミュージシャンと変わらないだろうが、とにかくメンバー全員、服の統一性が皆無であり、みんな派手。彼らの風貌を観ているだけでも楽しい。
司会の中川五郎がはけると、石川浩司がおもむろに「ハッピーバースデー!!」と叫び、クラッカーを鳴らした。
正直、スベっていた。
それもそのはず。観客の多くは高田渡のファンであり、周辺のフォークミュージシャンのファンであるため、パスカルズおよび石川浩司に免疫のある客が少なかったからである。
しかし、間髪入れずにロケット・マツ氏が「イエ~~~イ!!」と叫んだため、その場は救われた(?)。
演奏が始まった。
「ものもらい」ではなんと知久寿焼と石川浩司のほぼツインボーカル状態。実質半たまである。CDでは繰り返し聞いていたが、実際に生で見るのは初めてだったので、あー・・はるばる来た甲斐があった・・・としみじみ思った。
「Taking Dog Fields」のあふれんばかりのパワーで会場中の「免疫のない人達」が圧倒されている空気を肌で感じた。言葉で表すのはとても難しいが、いつしか私の目からは涙があふれていた。
後半は友部正人+パスカルズの「六月の雨の夜、チルチルミチルは」
音楽で涙が出るなんてことはそう滅多にない。しかし、この日、この時、私は心底彼らの演奏とパフォーマンスに夢中になり、泣いた。
演奏中、石川浩司がゲラゲラと笑い出した。頭の悪い子どもが楽しくて楽しくて笑い出したような、純粋無垢なゲラゲラ笑いに、最初は「??」という反応の会場がいつしか、そのゲラゲラ笑いにつられて笑い出した。
みんな、童心に戻ったような、頭で考えるのを忘れ、「楽しい!!」という感覚だけになった人達。40代から50代の人が埋め尽くす会場で、みんなの顔からは笑顔がこぼれていた。パスカルズを観る喜びに、さらに「パスカルズをみんなが聴いた!」という喜び。
私はそんな会場の反応を見ながら、ステージを見ながら、
拡声器で「皆さん、これがパスカルズですよーーー!!」と泣きながら叫びたい、そんな衝動に駆られた。
楽しかった。本当に楽しかった。会場中を練り歩く行進の予定もあったとのことだったが、時間がなくカットされてしまったようだったが、私の心は十二分に満たされた。素晴らしいステージをありがとう、パスカルズ!!!
(さっちゃん)
(本人より)わぁ、嬉しいなぁ。お客さんが他の人達に「皆さん、これがパスカルズですよーーー!!」と泣きながら叫びたい、なんて本当ミュージシャン冥利に尽きるなー。
現在、さっちゃんや桃玉を中心に毎年夏に北海道で行われるライジングサン・ロックフェスティバルにパスカルズを呼ぼう、という運動が起きているようだ。
人数が多く経費の関係などからなかなか地方に行けないバンドなので、是非興味のある方はそのフェスティバルでバンドリクエストなども行っているようなので(http://rsr.wess.co.jp/2008/community/artistrequest/request.html )、また例え北海道に行けない人でも、地方の様々なフェスティバルに出演する足がかりになるかもしれないので、是非パスカルズに一票投じてくれれば嬉しいな。よろしく!
こまっちゃクレズマ+石川浩司inアトリエ空間アミーゴ
梅津和時率いるこまっちゃクレズマに石川浩司がゲスト。
ジャズはあまりくわしくないのですが、予想ができなさそうな感じもあり、今回の東京旅行は全て石川浩司に捧げた旅でしたので、行ってきました。
ステージが始まって、どこからともなく演奏の音が近づいてきて・・・こまっちゃクレズマのメンバーと石川さんが行進してきました。
しかし、石川さんが手にしていた楽器は鍋でした。
「・・・な、鍋!」
客の多くは、地元「入間ジャズクラブの会員さん」のような厳格な雰囲気のジャズファンです。そんな中に鍋が。
そしてあらかじめ演奏する曲目がチラシに記されていたのですが、「まじかよ!こ、この雰囲気でこれを!?」
曲目には「オンリー・ユー」と「ひとり闇鍋」が。
なんというかこんなことを言うと失礼かもしれませんが、言います。
「梅津さんの懐ってなんてでかいんだ・・・。」
確かに梅津さん自身も異端児な感じではありますが、私としてはこうしてたまや元メンバーとセッションをする梅津さんってぇのは本当にすごい人物だなーと思うのであります。
ちなみに石川さんのパフォーマンスに一番爆笑していたのは同じパスカルズのメンバーでもある、バイオリニスト・松井亜由美さんだった。 観客よりも爆笑していました。
でも、これは他のどの人よりあなたが一番見慣れてるのでは・・・。
梅津さんと石川さん、いったいどっちが操ってるのか操られているのか。
そんなステージでした。
そして、石川さんが何かするたびに、石川さんを知らないであろうご年配のお客さんが「あらあら・・」みたいな(笑)
いたずらする子供を見るようなまなざしで石川さんを観ている人多数。
とにかく普段は厳格であろうジャズ好きの人たちの嬉しそうな、楽しそうな、「次は何が出てくるんだ!?」という期待の表情ったらなかったです。途中の休憩で、真面目そうなサラリーマンが石川さんのおもちゃ(楽器)を真剣なまなざしで手にとっていました。
そして二時間近くのステージのことですが、セッションした曲は、石川さんが、本番前のわずか数時間のリハーサルでCDを聴いたり、軽く練習をして本番に臨んだということが発覚。
あれ、ほとんど即興って・・・・まじかよ・・・
素人考えですが、何週間、とか月単位で練習をしてセッションしているようなある種の完璧さを感じずにはいられないステージだったのです。
クソ寒い会場でTシャツ一枚でヘラヘラ笑っていた石川さんを
「こ、この人、実はなんでもできる、もんのすごい超人なのでは・・・」
と改めて石川浩司という人物について考え直すきっかけになったライブでした。 (さっちゃん)
(本人より)はーい、超人でーす!
嘘でーす。
何も考えてないなまけもの、プラスでもステージにいるから何かやんなくちゃいけない小心者効果で、なんとかやってるのです(笑)。
ちなみに曲目は全部梅津さんが指定してきました。
そして後日梅津さんから「最高の驚愕ステージでした!」のお褒めの言葉をいただいて嬉しかったな~。
LIVE! no media 2006 草原編
DVDが発売されたのでさっそく購入しました。
ちょうど2年ほど前に行われたんですね。
石川さんが朗読する様子を早く観たくてうずうずしていたので、最初から通して観るまえにメニューで石川さんの番を選んで再生しました。
かわいらしい石川さんが画面に映る。
あまりライブに行く機会がないので、動いて喋っている石川さんを見ると映像でも感動してしまいます。
詩を読むまえの挨拶もおもしろかったのですが、客席からも笑いが起こっていたのが嬉しかったです。自分が取った笑いではないのに快感でした。
朗読で聴く「お肌ツルツル老人」は歌として聴くのとはまた別物のような感覚で、初めて聴いた詩のように新鮮でした。
内容がわかっているのに笑ってしまうのです。
田口犬男さんの澄んだ声で静かに朗読する様子は、いつか映画で観た神父さんが聖書を読む姿と重なりました。
知久さんは短い詩だったけど、独特な世界が一番強く感じられました。
宮沢章夫さんはスポーツドリンクの話がすごくおかしかったです。
谷川俊太郎さんは、さすが偉大な詩人だけあって貫禄がありました。
友部さんの「no media」シリーズに出会ってから詩に興味を持つようになったので、いつかLIVE! no mediaを観に行きたいと思っています。 (若様)
(本人より)今年も先月やってきたよ~。また何か作品になるかもしれない。ポエトリーリーディングは地味ながらも各地で行われているとは思うけど、こういう形でDVDやCDになることはあまりないもんね。参加させてくれてる友部さんに感謝!
たま写真集「きゃべつ」
中学生の時から「たま」ファンだった夫が「たまの写真集が実家にある」というので正月に実家に行ったとき、持って帰ってきてもらいました!
どきどきしながらページをめくると、鳥取砂丘でそり滑りで遊ぶメンバーの方々の写真が。何か、心なしか写真の構図がお色気…。(またの間のアップとか)もしやファンサービス!?アイドルぶりがうかがえます。
そして、メンバーそれぞれが好きな相手と対談。Gさん→妻、柳ちゃん→おまちゃん、は普通なのですが、知久さん→ツノゼミ博士、から怪しく(?)なって石川さん、西瓜と対談だなんて!(笑)文字の色も緑色なのが可笑しかったです。内容は、石川さんの歌の語りの長いバージョンみたいで、ひきこまれました。だんだん西瓜にも意思があるように思えてくるのが不思議です。
そして、見所はメンバーそれぞれの部屋!
石川さんの部屋は和室の普通の部屋に、駄菓子屋さんが入り込んだ感じで、生理整頓されていて、そこに猫をたくさん抱いた石川さんがにっこりしているという、あったかい感じの写真でした。
その横には、今ではおなじみになっている「空き缶コレクション」を並べて、三時間かけて公園に巨大な自画像を作った!という写真が…。すごい、その情熱今と変わらないのでは…。
その横には色々なおもちゃの写真と「妹が塗ったトイレの赤い壁??」に「麺日記」(17冊目!)毎日食べた麺の、ラベルをノートにはりつけているというものが…!今も続けておられるのでしょうか?
石川さんは、この時から石川さんなのだなあ、と妙に納得した一冊でした。(ぴよまる)
(本人より)はい、進歩のまるでない石川です(笑)。
たいていのくだらないことは継続させてまーす。
ちなみに写真に写っているのは現在住んでいる家のひとつ前に住んでいたところ。猫はやっぱりまた飼いたいんだけど、夫婦ともに家を開けている時間が長いので躊躇しているんだよねー。
ノラ猫が時々遊びに来るぐらいがちょうどいいかもな~。
完全フルスコア 「さんだる」と「ひるね」
中学生の時から「たま」ファンだった夫の、実家にあったものパート2。
家で「たま」の曲を二人で何となく歌っている時に、夫は歌詞カードにも出ていない石川さんの語りの部分を、やけにはっきり歌えるなあ…。と思っていて、「何で」と聞いたら「当時は何回も聞いて、紙に書き起こして暗記した」というのですごいなあと思っていたのですが、実はこのスコアを見て覚えていたことが発覚。
メンバーは楽譜を持たない(!)ので、他の人が楽譜におこしてみた、という公式スコアでした。表紙もアルバムと同じ絵柄で可愛かったです。
これのおかげで今まで聞き取りにくくてよくわからなかった歌詞の部分の謎が全部解けました!石川さんのストーリーの全貌がやっとわかりました(笑)コーラス部分も、あらためて楽譜で見ると「ああ、こうなっているんだなあ」と面白かったです。ところどころに「桶」とか「民謡練習用和太鼓」とかが入っているのが、「たま」だなあという感じです。
譜面を見ていると、(といってもあんまり読めないんですが)何かメンバーそれぞれの特徴が出ているようで興味深かったです。柳ちゃんは和音が多くて黒っぽく、何かかっちりした感じ。知久さんは楽譜嫌いの私が読むのを放棄したくなるような、あっちこっちに飛んでいる楽譜。Gさんは全体的にふわふわした感じ。そして石川さんは楽譜をおこす人の自信がないという、音符の部分が「?」での表現が多発!楽譜では表現しきないのですね!
「さんだる」の方にはメンバーそれぞれのコメントが載っていて嬉しかったです。コメントを読んでも「たま」の音楽が楽譜に縛られず、演奏を重ねる内にできあがっていったものだということがわかります。それにしても、Gさんが当時楽譜が読めなかったとは驚きでした。
そして、スコアを見て演奏する人へ、という石川さんのアドバイスが暖かかったです。やっぱり石川さんだ!(ぴよまる)
(本人より)これは本業の人がCDを聞いて譜面に起こしたのを、僕らが見て間違いなどを訂正した、という感じで作ったもの。
だけど俺たちもみんなコードとかは分かっても五線譜に書かれると、自分達の曲でも「ふ~む、こんな音符になるのか」と感心したものだったなぁ(笑)。
ちなみに「きゃべつ」まではスコアが出ていて、「犬の約束」はコード譜だけの簡単な物が発売された記憶がある。
オンリ・ユーを通して見る石川浩司氏
(※氏とか偉そうな文体の方が書きやすかったので、ご容赦くださいませ!)
一番、「下半身不随になっても生きていておくれ」いうフレーズは直接的かつ衝撃的な表現である。飼い主を待ち続ける犬のような、なんて純粋で真っ直ぐな愛情であろう。同時に愛するものを失ってしまうことへの凄まじい恐怖心も痛いほど感じる。
永遠の愛を誓った恋人を棄て、金のために別の人と婚約してしまう人、病気の伴侶を思いやることすらない人も、世の中にはいるというのに。もちろんそうでない人いるけれど。氏はそうでない人だということが、わかりやすすぎるほどわかる。
二番、「それのままでいいんだよ」というフレーズはよく唄われる言葉ではあるが、氏の人としての立ち方を知るにつれ、なお真実味を帯びて私の胸に迫る。
氏はいつも、他人の深いところを静かな目で見ている。
本人が気づこうとしても気づけないような事すら、氏にはお見通し、ということも少なくなかろう。それでも、氏が「あなたは、もっとここをこうしたら良いんじゃないか」と意見している所を私は見たことがない。それが自分にとっても相手にとっても一番いい事であると知っているのであろう。しかし持ちかけられた相談には、いつも思いもよらない視点から真摯な答えを返してくれる。「そのままでいい」けれど、もし助けを求められたら精一杯に応えよう、という姿勢である。
氏は人のエゴ・嘘・社交辞令などもきっとわかってしまうに違いない。それでも、人を極端に嫌ったり憎んだり批判したりと言う事を殆どしない。その姿勢も、「そのままでいいんだよ」という言葉に通じる気がする。
「君の中に僕がいて 僕の中に君がいて」という感覚は、私にも覚えがある。年齢も趣味も性別も越えて親しく出来る友人が増えてから顕著だ。逆に、相容れることが一切無いような相手と過ごす時間の苦痛も知っている。だからなお、そのように想える相手が言いようのないくらい愛しい。
三番、「変わるのはしょうがない」というフレーズ。「しょうがない」と言いつつも、変わってしまう事への淋しさを感じずにいられない唄い方である。
しかしふと気づく。私たちを取り巻く事象というものは全て、永遠に続くものと日々思い込んでいる節があるが、些細な事を機に永遠に失ってしまうという事も少なくない。相手への心が変わってしまうという事は勿論、死別は避けることができない。何十年も一緒にいる家族ですら、「変わらない」という可能性はゼロ、なのだ。今この瞬間、オンリ・ミーになってしまうかもしれないのだ。
この歌は、言いようもなく淋しい歌である。と同時に、「無償の愛」を信じたくなるほど深い愛を唄った歌だ。私が知る限り、最高のラブソングである。
こんなに深い愛を送られた石川婦人を羨ましいと思った事もあった。私は誰かにこんな愛を持ち得ないであろうし、だれかからこのように想われることも無い、と思い淋しかった。
しかし、今ふと思うのである。氏は、婦人のためだけにこの歌を唄っているのではないんじゃないか、と。全ての人に向けて、この曲は唄われているのではないか、と。大切な友人に対してかもしれないし、あなたに対してかもしれないし、私に対してかもしれないし、この世に生まれてもいない人に対してかもしれない。
こんな事を書いたら、「大げさ大げさ、それはないよ」と言われてしまうかもしれないが、私にはそう思えるのであるから、仕方がない。(桃玉)
(本人より)こんばんは、氏です(笑)。
歌はいろんな風にその人その人が感じとって聞いてくれたら嬉しいな~。なのであえて「こういう聞き方が正しいんだよ」は書きません。
もっとも、自分ですら時が経つと同じ歌をうたっていても、解釈が自然に変わって歌っていることもあるくらいだからね。まさに万物は流転す、だよね。
DVD「たまの最期!!」
2003年10月31日、1984年11月に結成されてから18年11ヶ月、約19年の歳月を経て、社会現象を巻き起こし一大ブームまで作り上げた時代の寵児「たま」の歴史は幕を閉じた。
このDVDに収められているのは、10月28・30・31日の3日間にわたって行われた解散ライブの模様を3日間の演奏のなかから選りすぐりを編集したものである。通常のセットアップ17曲に加えアンコール3日分10曲合わせて27曲におまけのフォトスライドまでついており約3時間の内容になっていてライブに行けなかった人でも3日分の「たま」を存分に楽しめる1枚となっている。
序盤は4たま時代のおなじみの曲からはじまり、「学校にまにあわない」での石川さんの語りや、「らんちう」で最後のセリフをまかされた滝本さんの慌てぶりが面白い。中盤以降は「いなくていい人」「東京フルーツ」の収録曲を中心に演奏。
滝本さんの「聴かせる系」、知久さんの「ほのぼの系」、石川さんの「ハイテンション系」の各曲が波打つように聴き応えのある音楽を奏で、時折メンバーそれぞれのお別れの挨拶や面白MCなどで笑わせてくれたりしながら、セットアップは「いわしのこもりうた」で終了。
演奏中に知久さんがおまたをかいているところがしっかり映っていたり、「南風」の途中で石川さんがメンバーの頭におもちゃをのせて回るのだが、滝本さんや斉藤さんは落とさないように落とさないようにバランスを取りながら演奏しているのに対し知久さんはすぐに落ちていて、またその姿が何事もなかったかのようにと言おうか知らんぷりと言おうか、そんな感じのニュアンスで演奏を続けているところや、途中の面白トークが流れを狂わせてしまい「ハッピーマン」が一発で始まらず「一度止まった流れは戻らない~覆水盆に返らずとも言う~」と石川さんが抑揚をつけて突っ込んでみたり、随所に笑えるところが散りばめられているが、そこが「たま」らしいとも思えてしまうのである。
セットアップで聴かせたあとは、バラエティーに富んだアンコール曲3日分10曲が見る者に忘れられない強烈なインパクトを残してくれる。中でもアンコール終盤は「海にうつる月」で石川さんの手が起こしたハプニング、飛び込み出演したベイビーさんがいきなり演奏を始めてメンバーがしどろもどろしていた「さよなら人類」、石川さんとベイビーさんがどつきあってマイクを取り合い演奏していた「おやすみいのしし」、そしてモジャラーズの「ヒゲのある暮らし」と、笑いの止まらない内容のまま終わり、まさに知久さんの「最後がこんなんかよ~と思いながら帰ってくれよな~」の言葉通り、解散でしめっぽくなるどころか、ハラ抱えたまま笑い転げて終わってしまった解散ライブDVDなのであった。
ステージからはける時に石川さんが「暑いね」と言いながらマイクにランニングをかけたその姿にほんのちょっぴり寂寥感はあったものの、立派に「成長」した石川さんのお身体を見て、また見る者の心を和ませ、最後の「こんな感じが”たま”でした」の一言でばしっと締めて、「ああ、まさにこんな感じが”たま”だったんだなぁ」と思わせずにはいられない作品となったのである。(梅桃ひよ子)
(本人より)そう、本当に「こんな感じが”たま”でした!」なんだよね。最後のライブも自然体で演奏者側も愉快にやれたのはとても良かった。
喧嘩別れで解散だったらこうはいかなかったろうからね。
「あぁ、たまで思う存分遊~んだっ!」という19年間だったのだ。
「石川浩司のひとりでアッハッハー」
通常アーティストのHPというのは情報発信や通信販売が主であるのに対して、石川さんのこのHPはファンとの双方向交流を主として成り立っており、そのHP全体をアーティスト本人である石川さんご自身が全て管理されている。
それが、このHPの最大の特徴であり、同じような趣旨や構成や運営で存在しているHPはほとんどない。
このHPの内容は、多岐にわたるジャンルのコンテンツから構成されていて、そのコンテンツに対してファンから投稿された内容に応じてポイントがつき、ポイントが貯まれば各種プレゼントと交換できるというシステムである。
・・・という説明書きはしてあるのだが、実際は投稿してそれが掲載された時点で、ほとんどのコンテンツにおいて石川さん自身の評やコメントがつくので、ポイント以前にそのコメントを見るのが楽しみでもあったりする。また、そのネタを石川さんご本人ばかりではなく、このHPを訪れた多くのファンが見ることになるので、ファン同士の横の交流のきっかけになることもある。
そしてそのファン同士の交流に一番寄与しているのはチャットバー「ウキュピ」。
一応24時間営業がウリのチャットバーであるが、大体昼間や夕方に訪れても閑古鳥が鳴いていることが多く、最も盛り上がるのは俗に言う「草木も眠る丑三つ時」から朝方にかけてであることがほとんどなので、曲がりなりにも社会人である私が盛り上がる時間に居合わせることができるのも週に1度くらいしかないし、その中でも石川さんご本人と直接お話ができるのは月に1度くらいしかないが、普段こまめに顔を出していると誰もいなさそうな時間帯でも誰かいたりして、意外な時間に楽しく盛り上がることもできる。誰もいなくても日記のようにくっだらない独り言を残しておくのも個人的に楽しい。
ここに顔をよく出すファンの方はとても面白く気さくな、ファン愛に溢れた方ばかりなので、すぐに友達になれるし、ファン友達同士の交流が楽しくて仕方がなくなること間違いなし!
投稿をある程度続けていくと、自分の得意不得意ジャンルが見えてくるので、得意なジャンルで一気にポイントゲッターと化すのもよし、不得意ジャンルをこけつまろびつ石川さんの評を糧に伸ばしていくのもよし、楽しみ方も様々で飽きないし癖になるともう病み付きになり、常にネタを探していないと落ち着かない刺激的な毎日になりつまんないことで悩む暇などたちどころになくなって充実すること請け合いである。
私が感服しているのは、やはり趣味で運営しているとは言っても、大量の投稿を管理しひとつひとつを読んで評をつけ、それに応じたポイントを加算しそれをまた管理していき、その投稿を掲載して更新するという膨大かつ地味な作業を全ておひとりで、それもほとんど毎日されているということ。一度自分でもHPを立ち上げて更新が面倒だという理由で閉鎖した経緯があるためなおのこと感服せずにはいられない。
昨年「たま」に再燃してこのHPと出会った頃、色々悩んで鬱屈していた毎日を送っていた。「たま」が好き、石川さんとお話してみたいという気持ちだけで始めた投稿だったが、気がつけば石川さんとの交流ももちろんだがファン友達同士の交流がそれ以上に楽しいし、ネタを探して披露するのもまた楽しいし、悩みは石川さんが聞いてくれるし(笑)「たま」の音楽にも癒されて、今では精神不安定に陥ることもほとんどなく、毎日を楽しく過ごせるようになった。
もし私がこのHPと出会えていなかったら、今もまだ鬱屈した気持ちのまま過ごしていたであろうことを思うと、このHPを考案して実際にカタチにしたした石川さんは私にとっての救世主であり天使であると思わずにはいられないのだ。
改めて、石川さんとこのHPを作り上げているファンの方達に「ありがとう」とお礼を言いたい。(梅桃ひよ子)
(本人より)楽しいんだよね。結局、パーソン・トゥ・パーソンのコミュニケーションが。で、出不精(断じてデブ症じゃないやいっ!)なので、部屋にいながら馬鹿話をしたり出来るしね。こんな風に海外(タイ)にいても可能だしね。
今まではどうしてもそちらはこっちを知ってても、こちら側からは「ファン」というくくりでしか見えなかった人達が、投稿やチャットでそれぞれのその人となりが見えて来るからね。そうするとこちらも親近感がわくしね。
これからも暇だったら俺の遊びに付き合ってちょんまげっ!
週刊アスキー2/19号R40!「大人の遊び心」
R40!は週刊アスキーの大槻ケンジさんの対談形式の連載で、2回にわたって石川さんとの対談が行われている。
その2回目の対談が、「大人の遊び心」をテーマにした対談である。
ご存知の通り石川さんは「大人の遊び心」を多方面で生かして活動を続けておられるが、その中でもこの対談では「すごろく旅行」と「ニヒル牛」にスポットを当てている。
「すごろく旅行」とはその名の通りサイコロを振りその目の数だけ電車に乗って駅を移動し、止まった駅でくじを引いてそこに書かれたことを実行するというもの。これを今度プライベートで行かれるタイで実践する予定だと話す石川さんに大槻さんが「石川さんは、今の大人にはバカが足りないとおっしゃるけれども、それは相当バカが足りていますね(笑)」と突っ込んでおられた。
くじの中には「万引きにならない程度の”盗み”をする」というのもあるという話をされていたが、「万引きにならない”盗み”なんてあるのか?それは本当に大丈夫なのか??」と即危惧してしまう私にはまだまだバカが足りなさそうだ(笑)。
また、ニヒル牛の話でも「お金を払って頭を突っ込むと頭にラメがつくおしゃれBOX」「野菜が腐る様子を観察することができるBOX」なんていうのもあるそうで、どうかすると営業妨害で訴える訴えないという風に大人が考えかねないレベルのものまでも芸術・アートとして認めることができる石川さんの「深さ」にもはやグウの音も出ない。
この対談を読んでいると、ああ自分にはもっとバカが足りないな、そしてもっともっとバカでもいいのかと思えて、肩の力が抜けてくるし、何だかほのぼのとした気持ちにさえなれる。
世界的に見ても「こうあらねばならない」という気持ちが頑なでありすぎる日本の大人たち、こうした心をもっと取り入れることができたならば、日本の未来もちょっとはいい方向に変わるのではないだろうかと思う私なのであった。(梅桃ひよ子)
(本人より)ちなみにすごろく旅行もニヒル牛も大槻君から振ってくれた話なんだよね。
どちらも意図していたわけではないのに「お馬鹿な遊び心」を趣味からいつのまにか仕事にしてしまったなぁ。
確かにほとんど根拠のない「こうあらねばならない」はちょいと振り返って考えて、自分に不要だと思ったらポーンと勢い良くどこかに蹴っ飛ばしてしまうと、楽になることもこの世は多いかもね。
明星1990年6月号「宇宙人たちの優雅な生態」
当時中学2年生だった私が一目見て衝撃を受け、その後の人生をすさまじく変えることとなった運命のページ、明星1990年6月号に縁あって今年を迎えると同時にとある古本屋で入手することができました。
さすが、音楽を聴く前からそのコスチュームと独特の雰囲気で多くの人たちにインパクトを与え魅了してきた方々、ページを開けた瞬間そのまばゆいくらいの存在がぐっと目に入ってきて、その視線を離そうとしない勢いです。石川さんのランニング、知久さんのどてら姿はおなじみの格好ですが、ここで最も目を引いたのがGさんの真っ赤なジャケットを着てど派手に飾ったフリルのような襟元、よく見たら頭にも赤いフリルのような飾りをつけておられ、その赤い姿に対比するかのような公衆電話の緑が映える映える!そしてコメントが「今度、全国の滑り台の研究したいなぁ・・・」。インパクトとしてこれ以上強烈なものはないと思いました。Gさんのインパクト賞です。
また、石川さんのランニングと片手にやかん、そしてもう片方で豪快にリンゴをつかんでガブリとかじりつく姿もステキでした。
いやいやさすがは18年近く前の写真だけあってみなさん、お肌ツルツルで、お若いです。
そしてトドメは「明日は火星に行こーかァ」のキャッチフレーズ。デビューシングル「さよなら人類」の「木星」を意識して生まれたんだろうとは思いますが、これだけ見事にインパクトを与えられたら、世間をロクに知らない小娘のチキンハートなど、一発でわしづかみにされてしまいます。
さらにこのページには川鉄のCM撮影写真も載せられていますが、柳原さんがギターで、知久さんが鍵盤なのはどうしてなのでしょうか。(梅桃ひよ子)
(本人より)うーむ、今、現物がないのでちょっと分からないがそうだね「明星」なんかでも何度か取材したんだっけ。
もろ、アイドルじゃん(笑)。
今になったら本当、笑い話だよね。ケラケラケラ。
ひまのつぶしかた
この本を開くと、まず「使い方」が書かれています。
・どこから開いてもかまいません。
・気に入ったら、すぐやってみましょう。
・ひまをつぶすぞと気合を入れてはいけません。
・使用上の注意はありません。
・ご機嫌になりましょう。
まず、この1ページ5行の「たまらしい」文章に笑わされ、見事にノックアウトされてしまいました。
この本には、4人4様で絞り出された「ひまのつぶし方」と、ところどころにメンバーのみなさんが描かれたイラストが載せられています。私はこのイラストがまず見てみたくて、それこそ「使い方」も読まないうちから好きなところを好きなように開いて見ていました。でも結果的に「使い方」に沿った使い方をしていたので良かったと言えるわけですが(笑)
石川さんの「遺書」や、のちに収録されることとなる「あっかんべー太郎」の歌、知久さんのアイドル風・野球選手風・演歌歌手風・大作家風・お相撲さん風の各種サイン、柳原さんの昔住んでいた家周辺の地図、Gさんのすっごく意外なエロエロイラスト、メンバーそれぞれの「人生ベスト盤」の曲目や「1日計画表」など、もうひまをつぶす前から楽しめて楽しめてしょうがないのです。
しょーもないモノ、笑えるモノ、実用的なモノや、さりげなく途中に書かれた「ひまつぶしの方法を100考える」まで、たくさんの多彩な「ひまつぶし」が書かれています。
その中で私はもうひとつの「ひまつぶし」を見つけました。
知久さんのイラストや字は特徴がはっきりしているのでわかるのですが、あとのお三方のイラストを「これは誰が描いたか?」と予想して楽しむ方法です。巻末にメンバーがどのイラストを描いたのか記載してあるので、答え合わせをしつつ、この方はこういうタッチでイラストを描くのだなとしみじみ眺めていたら、またこれでひまをつぶすことができました。(梅桃ひよ子)
(本人より)あの123のひまのつぶしかた、実は半分以上は俺が考えてるんだよね。くだらないこと考えるのだけは得意なので(笑)。なのでその分、他の人の方がイラストが多少多くなっているんだよね。
あと、俺の「あとがき」に込められた暗号はちゃんと解いてくれたかな!?
LIVE IN NEW YORK
たまの最初で最後のライブ盤となったこの1枚ですが、さすがは即興に絶大な威力を発揮するたま、もう私の心をわしづかみにして離しません。さんだる・ひるね・そのろくを中心にしたお気に入りばかりのセットアップや、面白おかしいメンバーのMC、「英検3級」の柳原さんが一生懸命英語を駆使してしゃべるも半分日本語になっていて「We areたまです」って紹介するのもすごーく可愛くってすっかりお気に入りのフレーズになってしまいました。曲目を英語で紹介していて、「ああ、英訳するとこんな風になるのか」とか英語講座のようでもあり音楽と相乗効果でとても楽しめる1枚だと思います。
石川さんが事前に考えてきたっぽいMCに「考えてきてるよ」と柳原さんが突っ込んだり(ブックレットでは他のお二方も突っ込んでいる)、ニューヨーク美術館のことを「MOMA」と言っていたら近代美術館のことだったとブックレットで補足がしてあったり、知久さんが「残念無念ハト胸ん」とダジャレを言ってみたり、自己紹介で石川さんがまたまた相撲取りにされていたり、
笑えるところが盛りだくさん。
演奏はさすが「たま」のライブ、曲を聴いてみると柳原さんの歌詞が色んなトコ違ってる!(笑)
かなしいずぼんの石川さんの語りも、ニューヨークを題材にしていて相変わらずシュールで面白かった。
これが柳原さん参加の最後のアルバムなので、知久さんとのダブルボーカル「れいこおばさんの空中遊泳」これがもう聴けないと思うと、寂しいなぁ~と曲を聴きながらしみじみと感じました。
また、発売されているCDではこのアルバムにしか収録されてない「お昼の2時に」、最初知久さんとのハモりで「オ●ニー!」と聞こえたので「まさかぁ~毎日下ネタばっかり言ってるから耳がすっかりシモに慣れたんかな~」と思っていたら何と!!本当にオ●ニーだったのにビックリしました(笑)
そしてニューヨークライブのハプニングと言えば石川さん看板激突事件ですが、よーく聴いてみるとお客さんの「キャー」という声や知久さんが笑ってる声がかすかに聞こえてきます。でも柳原さんの「石川浩司ー!!」に較べてみたらちょっと編集されてるのかな、という印象は受けました。
収録曲15曲、ライブとしてもアルバムとしても充実した満足度の高い1枚になったと思います。
ブックレットでの補足でわかりましたが最初の「ロシアのパン」の前には1発目の曲として「牛小屋」があったらしく、突然演奏を始めたので録音が間に合わずアルバムに入れることができなかったのだとか。それと多分アンコールだったのだろうと思われますが「おやすみいのしし」も唄われていたことをあとから知りました。
願わくば、もう1枚くらい良い出来のライブ盤をアルバムに収めて発表して欲しかったなあと思います。
何と言っても、即興が最大限に生きるライブこそが「たま」の本領発揮の場なのですから。(梅桃ひよ子)
(本人より)本当に柳ちゃんの脱退する一ヶ月前のライブだからね。そして初めての海外ライブということで俺達も印象に残ってるね~。
最初は日本から来たファンの人達が多かったのが、だんだん中盤以降、外に漏れ聞こえる音(ライブハウスの外はバーになって、ちょっと音だけ聞こえるようになっている) を聞いて、大勢の現地の人達で立ち見満員になったのも嬉しかったなぁ。
さんだる
メジャーの1発目なので「はじめましてたまです」な印象で、なじみやすい曲が多く並んでいます。
「たま」を代表する曲が多く、最大のヒット曲である「さよなら人類」、イカ天で世間をわかせた「らんちう」「ロシヤのパン」「オゾンのダンス」も収録されています。
買った時期が古いので当然と言えば当然なんですが一番繰り返し聴いたアルバムでもあります。
「方向音痴」のポップ感から「おるがん」の叙情的な曲に行き、「オゾンのダンス」で再びポップに、そして「日本でよかった」で落ち着くかと思いきや「学校にまにあわない」でまたガガガガッと進んでいくという流れで、良い意味で息をつかせぬ構成になってるんじゃないかなあと感じられます。実際初めてこのアルバムを聴いたとき、「学校にまにあわない」のインパクトが他のどの曲よりも強烈だったことを憶えています。
「日本でよかった」「ワルツおぼえて」は中学生だった私にはとても難解でなかなかなじみにくかった思い出もあります。
また「オゾンのダンス」は最も明るい曲で某バラエティー番組のEDでもあったことから当時よく唄っていましたが、最近その歌詞の真意を知りちょっと赤面・・・だったりもしていました。
一番最後の「れいこおばさんの空中遊泳」明るく楽しく面白くしかも柳原さんと知久さんのダブルボーカルでとてもいい余韻を残してくれるので「ああ・・・終わっちゃいやぁ~ん」と思ってまた「方向音痴」をかけてしまいます(笑)
「さんだる」は内容も充実していますがパッケージも豪華で、知久さんの絵と字が描かれた鮮やかな黄色の箱の中に、表はメンバーの写真や楽器の写真が、裏には歌詞が書かれたカードが11枚も入っていてボリュームも満点!願わくば1枚1枚飾りたいのだけれどそんなことしたら劣化してしまうので泣く泣く箱にしまって保存しちゃっている現状であります(笑)
2枚目「ひるね」との対比やテレビでも多く露出されていたことからA面的だと言われることが多いようです。
全体的にポップな構成なので、初めて「たま」を聴く人にはオススメの1枚だと思います。(梅桃ひよ子)
(本人より)そうだね。既に「さんだる」「ひるね」に収められている曲はアマチュア時代に完成していた曲。
その中でライブでもやる頻度のより多い曲を一枚目に入れた感じかな。
ちなみに「リヤカーマン」も候補だったのだが、ここのレコード会社ではNGだったんだよね、歌詞が。後に別のレコード会社ではOKだったので、その辺も放送禁止用語が各メディアの独自の判断で自主規制されてるのが分かったね。
ちなみに一瞬リヤカーマンが音だけ通り過ぎるところがあるのは、分かったかな!?
ひるね
まだ全作を聴いたわけではないですが、今のところ個人的にこれが一番思い入れの深い1枚です。
「海にうつる月」「金魚鉢」「オリオンビールの唄」「鐘の歌」など、現在でも人気の高い曲が並びます。
柳原さんが脱退したので唄われなかった「オリオンビールの唄」以外の3曲は、解散ライブでも歌われました。
柳原さんの「牛小屋」「お経」「マリンバ」や石川さんの「ウララ」など、アップテンポな曲が収録されてる一方で、知久さん・滝本さんの作品は「聴かせる」系の歌が収録されています。
前作のように動→静の繰り返しを取っていないため、全体的には「さんだる」と比較すると、落ち着いた印象を受けますが、たまワールドはより全開となっています。
特に3曲目「海にうつる月」から7曲目「オリオンビールの唄」への流れが良く、私自身はこの部分を繰り返して聴くことが多いです。
「海にうつる月」は滝本さんの代表曲で、しみじみ聴いて涙することも多いですが、解散ライブでは石川さんのハプニングで笑える歌に変わったというエピソードもある曲です(笑)
唄う時期唄う場所により印象がガラガラ変わって飽きさせないのが「たま」の最大の特徴であり美点であり、同じ曲がかぶってもCDを買おうという購買意欲が湧くように仕向けられる商売上手さん達でもあります。
「鐘の歌」、数ある「たま」というか知久さんの持ち歌の中でも、最もキーの高い曲で、私が高音を歌えるようになったのも、子ども時代に散々この曲を歌い続けたおかげであるこの曲、解散ライブでも高音で唄えていたことにいたく感動しました。年を重ねても歌うことを大事にする知久さんの姿勢が垣間見えた気がします。
このアルバムはカセット版で購入しましたが、現在は聴けないため中古店で偶然「きゃべつ」と一緒に売られていたのを即購入。
中学の頃は色々あって精神的に参っていたのをこの1枚でかなり救われた「人生の恩人」でもあります。
子どもの頃から思っていたけど、ここに「まちあわせ」が入っていたら完璧だったんだよなぁ・・・と勝手なことを考えたりしていて、やっぱり今も「まちあわせ」が入っていたらこれは「たま」の中でも最強のアルバムになってたんじゃないかとひとりブツブツ思っていたりしています。(梅桃ひよ子)
(本人より)「まちあわせ」もそうだけど、どうしても俺の曲はビジュアル系(笑)なので、音だけ聞いてもイマイチ面白さが伝わらないんじゃないか、と思って躊躇したことは多かったな。
俺が唯一ジャケットを描いたアルバムだね。
きゃべつ
まさに「きゃべつ」そのものをイメージした緑一色のジャケットは「さんだる」の黄色と同じく鮮やかに見る者の目を惹きつける。
そしてそのアルバムに収録された11曲もまたそれぞれのカラーが鮮やかに表現されていて聴き手の心を惹きつけるのである。
一発目に流れてくるのが、「たま」では初めてのラブソングだと言われている知久さんの「きみしかいない」で「キスをして~」の歌詞にいきなりずきゅーん!!と聴く者のハートを射抜かれてしまう。そして柳原さんの「ぼくはヘリコプター」石川さんの「魚」とノリの良い2曲が続くが4曲目「丘の上」から7曲目「星を食べる」まで、しみじみと聴かせる曲となっている。そのあと「おなかパンパン」「おやすみいのしし」「とこやはどこや」とコミカルな曲が続くのだがこのアルバムは全体的に「聴かせる」イメージが強い。
このアルバムでは「丘の上」「星を食べる」「こわれた」の3曲が収録されている滝本さんの存在感が光っており、柳原さんの代表曲のひとつである「満月小唄」や聴けば泣いてしまいそうになる知久さんの「植木鉢」など、聴かせる曲を多く収録しているので、「さんだる」「ひるね」に比較するとインパクトは強くないかもしれないが「たま」の世界はより深くなっていて、ディープなファン向けの1枚であると言ってよいだろう。また、動と静の差がそんなに激しくないため受験生が勉強をするときに集中するためのBGMとしてもオススメの1枚である。実際私も受験勉強のBGMとして使用したがよく集中できた。
また、知久さん、柳原さん、滝本さんのお三方が「聴かせる」曲を多く収録したため、石川さんのポップさとシュールさが際立っているのもこのアルバムの特徴のひとつと言える。仮想のサラリーマンの1日を独特の世界でシュールに描く「魚」、ウヒョヒョヒョヒョと面白不気味に囁き唄う「おなかパンパン」、しみじみと聴く中に笑いのエッセンスが込められていて、とっておきの1枚に仕上がっているのである。(梅桃ひよ子)
(本人より)これは全編イギリス録音だね。なんかやっとプロのレコーディングというものにも慣れてきて、楽しく録音出来た一枚だね。
「デカピンでポン!! 」第7章石川浩司さんの巻・第17章第6期雀皇様戦の巻
この本は漫画家の西原理恵子さんがさまざまな著名人の方々とデカピン(1000点1000円レート、自分の持ち点がなくなっちゃうと数万単位で負けちゃうレート)で麻雀勝負していく様子を漫画や闘牌の様子・牌譜などで解説していくという、要は「高レートでいろんな人と麻雀していこうぜ!っていう本。石川さんはこの本の7章の本戦と17章の第6期雀皇様戦の巻にゲスト出演されています。
まず、サイバラ先生の石川さんの絵がかなり強烈です。
「ついでにとんちんかん」の抜作先生みたい(笑)漫画での石川さんはデカピンに気合いが入りすぎてすごい表情になっています。「ボク達の麻雀は勝ったらその日銭湯にいけるくらいのレートで・・・」と漫画の石川さんは仰っています(笑)
本題である麻雀は、解説の山崎一夫さんいわく「温和な外見とは裏腹に、切れ味の鋭い麻雀を打つ」との事。初対面の場合は様子見になることが多いそうですが、積極的に攻める麻雀をされていたそうです。リーチと食い仕掛けでどんどん勝負していくも、空振りが多くてジワジワと点棒を減らす石川さんは、前半戦が終了した時点でなんとビリに。
ところがこのあとグイグイ点棒を増やして3位に浮上し、1回戦のラストで跳満を上がってなんとトップで終了!
そして2回戦、石川さん2連勝か?というくらい好調でもう確定だ、というところまで来たのですが、2回戦最後の勝負で西原さんに振ってしまったため2位に転落しそこで終了。石川さんの不調は止まらず3回戦では振ったり上がれなかったりでついに点数はマイナスに・・・。
結局石川さんは3位で3回戦を終了したのでした。
石川さんはそれから草野球ならぬ草麻雀の祭典「第6期雀皇様戦」にも参戦。参戦者31名の中には西原さんはもちろん、俳優の萩原聖人さんもおりました。なんと石川さんは予選31名中4位の好成績で準決勝進出。
準決勝でも好成績だったようで、最後の勝負の時点で石川さんは2位で親。ここを無難にやり過ごせば決勝進出!・・・と思いきや、ここで最下位のコラムニスト神足裕司さんに跳満をツモ上がりされてしまい決勝進出を逃してしまいました。
何だかこの本だけだと、石川さんは土壇場ですべってしまう印象を受けてしまいますね(笑)
ちなみに決勝を制したのは、奇しくもその土壇場で石川さんの決勝を阻止した神足さんだったのでした。(梅桃ひよ子)
(本人より)デカピンはショージキびびったね~。点棒=現金だからね。
ちょっと負けたけど、こういう大会には「対局料」が出るので赤字にはならなかった。
ちなみに本戦が終わった後、このままのメンツでプライベートで数時間打ったが、今度は俺の圧勝。人生でこんなに儲かったことない、というほどのものを皆様からありがたく頂戴したのでした(笑)。
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