石ヤンのテキトー日記01年3月(1)

文章中の文字の色の違うところをクリックすると写真や詳細が見られるぞ。



3月22日(木)

 映画の撮影初日。都内近郊のとある土手にてロケ。スタッフは2~30人。近所のおっさんやおばはんも見学しているので、結構な数の人が見ている中、男の子と女の子のふたりっきりのシーンなど撮っている。そーだよなー、映画もテレビも、どんなに孤独そうなシーンでも、現実にはスタッフやらがたくさんまわりをぐるりと見守っている中で演じなければならないんだよなー。当たり前だけど、変な感じ。
 ヒロインの宮崎あおいちゃんが、
「幸子役の宮崎あおいと言います。よろしくお願い致します。」
 と丁寧に挨拶に来たので、あわてて、
「キュ、キュウゾウ役の石川です。よろしく!」
 とお辞儀した。本当はいくら年が上だと言っても(ちなみにマネージャーさんに聞いたところ、あおいちゃんのお母さんは俺より5つも年下らしい・・・)俺の方が映画については新人なので、こちらから先に挨拶にいかなければいけなかったかなー、とちょっと反省。まだまだ映画界のシキタリとか何にも知らないからなー。
 あおいちゃんは撮影の時以外はスタッフの人とふざけていたりして、なかなか明るそうな性格の子だった。
 俺は浮浪者の役なので、メイクさんに中途半端に伸びた髪の毛をディップで固めてよりそれらしくしてもらったり、スタイリストさんに服をわざとだらしなく直してもらったりする。浮浪者なのにメイクさんやスタイリストさんがついてるのが、我ながらおかしい。
 さて、撮影だが、話しの筋の順番に撮るわけではなく、いきなり途中のシーンから撮ったりするので、前後関係がよく脚本を読んでないとつかめない。
 ちなみにこの日撮ったシーンは、小さな生き物を使ったシーンだったので、その生き物の「動き待ち」とかしてて、面白かった。
「もっと、左方向に歩かせて!」
 とか言っても、なかなか人間以外は、言葉をろくすっぽ聞いちゃいないからな。
 でもとにかく、芝居にはそこそこ出たことがあるが、映画はアップになったり引いたりのカメラワークで見せる部分も大きいので、本当に役者は素材のひとつでしかない、と思う。あらゆる表現活動の中で、もっとも大勢の人によってひとつの作品が完成されるものだということを実感した。

 帰り、新宿でマネージャーと小便横町でとりあえず初日お疲れ様の乾杯。小便横町(正式名称は『思い出横町』)には髭ぼうぼうの俺はすっかりお似合い。TPOばっちりというわけか。ちなみにこの日、マネージャーはお金の持ち合わせがあまりなく、俺に金を借りる。焼き鳥屋の親父から見たら、浮浪者から金を借りているように見えたかもな。ふふふ。

 それからひとりでマクドナルドでコーヒーを飲みながら少し読書をしてから、ゴールデン街の「ガルガンチュア」にもう一杯ひっかけにいく。
 ここのママさんはタンコさん(石橋幸さん)といって、ロシアの民衆歌を歌う歌手であり、女優でもある。かつて俺もCDやコンサートに参加させてもらったことがある。
 なんでも慢性的に喉にポリープが出来てしまう体質らしいので、いつか歌えなくなる日がきたら、誰もロシアの民衆歌(囚人歌なども含む)を伝承していかなくなってしまう、という危機感にせまられ、先日スタジオに飛び込み、1日で2~30曲もアカペラで録音してきた、と言っていた。
 時々ロシアに行って歌ってくるそうだが、日本人がロシア人でもなかなか知らないような民衆歌を次々歌うので、どこでもビックリ仰天されるそうだ。そりゃそうだろーな。

 江戸川乱歩「影男」読む。

3月21日(水)

 事務所に打ち合わせに行く。パソコンが壊れ、インターネットが出来ないとマニがこぼす。最も、事務所のパソコンが古すぎて限界なのかもしれない。なんせ、インターネットをするのに、いちいちセレクタを変えて再起動せねばならなく、なおかつそのブラウザーソフトを開くところまでだと、なんと毎回10分近くもかかるのだ。フリーズも多いし。なのでもうどちらにしろ買い替えなければ限界なのだ。だが、パソコンというのはやっかいで、本体を替えると、周辺機器のMO、外付けハードディスク、プリンタ、スキャナなども全部買い替えなくてはならない。何故なら接続規格がすでに全部変わってしまっているからだ。ちなみにライオンメリィさんは
「よくみんな、おとなしくメーカーの意向に従っているよねー。こんなひどい仕打ちをされてるのに。暴動とか起こす奴、なんでいないんだろう?」
 と言っていたが、俺もちょっとそう思う。2,3年で今まで使っていた物と互換性がないなんて、この業界、いくら過渡期とはいえ、ちょっとひどすぎるよなー。でもとにかく、それを全部買い替えるとなると、相当な出費で、経理的にちょい厳しい。でもこのままじゃメールも見られないしなー、と頭を抱えている。

 北山昌夫「西双版納」読む。中国のミャンマー国境付近にロングステイする為の手引書、というちょっと珍しい本。きっと発行部数が少ないので、定価は3000円もする本だが、古本屋で100円で手に入れた。著者はこの世の楽園だというが、楽園と地獄は紙一重かも。でも好きな人にはたまらないところなんだろーな。

3月20日(火)

 5月にNHKホールでやる「あかあさんといっしょファミリーコンサート」の中で使う曲のアレンジおよび、そのレコーディング。スタジオにて。

 井伏鱒二「晩春の旅/山の宿」読む。とある旅館についたら、主人がいきなり部屋にやってきて、お茶も出さずに、自作の百二十余行の「当旅館案内歌」を吟じるくだりが面白かった。風光明美はともかく、郵便局が近くにあって、電信・電話も便利だとかの、かなりどーでもいいことまで盛りこんであり、最後は
「女中番頭にこにこと
 客間も清きその宿に
 出迎い受けて玄関に
 着ける心地ぞ楽しけれ」
 と朗々と歌われ、「番頭がにこにこする前に、まず膝をくずさせてくれー!」ってな、鱒二が辟易している様子が面白かった。

3月19日(月)

 ニヒル牛に置く「あっかんべー太郎ノート」「たまのランニングノート」作る。一種のキャラクターグッズだな。といっても、無印のノートにただひとつひとつ絵をマジックで描いただけだけど。安易すぎ、とR君からは批難ゴーゴー。まぁまぁ、安易も時にはいいでしょー。

 赤瀬川原平選「全日本貧乏物語」読む。赤瀬川原平の鼻糞や爪を食料(嗜好品?)にする話も面白かったが、高木護の、山の中で野宿していたら、なにか大きなケモノが近づいて来たのでブルブル震えていたら、ケモノがそっと体に葉っぱをかけて暖めてくれた、という話も凄い。ケモノにまで情けをかけられる貧乏。さすがに俺もそこまではいけないだろーなー。

3月18日(日)

 すごろく旅行原稿書き。napsterでR君がカラオケの勉強をしたいというので、モーニング娘とかテキトーに落としてあげたら、アイドル伝統の「ちょっぴりセンチメンタルな、ひとりごとお喋り」とか入っていて懐かしくなる。昔はこういうの聞いて、本当に胸がトキメイタりしていたものだからな。モモエちゃんとかジュンコちゃんとかな。今じゃ聞いてるこちらの方が恥ずかしいが、青春のトキメキには必須アイテムのひとつかもな。

 江戸川乱歩「人でなしの恋」読む。大正から昭和初期の、もちろんまだ俺も生まれていない背景が、でもなんだかとてつもなく懐かしい。この懐かしさはなんだろうか。ただ古いから懐かしいというなら、江戸時代とかはもっと懐かしくてもいいはずだけど、それはそんなことないものな。自分の体の中の何%かの原風景のかけらが垣間見られるからだろーか。
 今、10代ぐらいの人の「体験していないけど懐かしい物」というのは、一体いつくらいの時期なのだろうか? ちょっと気になるなー。

3月17日(土)

 深谷の蔦木家にて、「石川浩司+突然段ボール」のセカンドアルバムのレコーディング。「ワンテイク目がベストテイク」を信条に、なんと3時間でボーカル6曲と、ピアノ1曲を入れてしまった。ふつー、たまの場合とかだと、1日1曲ぐらいなので、すごく早いペース。もっとも、アレンジや打ち込み・ギターなどのオケはすでに出来上がっていたので、俺はボーカルだけのほほんと入れにきたのだが。
 ちなみに作詞・作曲もだいたい半分ずつ受け持っているので、作詞7曲、作曲5曲した。この日記を読んでいる人は、「こいつ、いつ音楽製作やってるんだ!?」と思っている人もいるかもしれないが、一応やることはやってるでしょ!? まだタイトルとかは決まってないが(仮タイトルは『まだワカラナイ』)、「いぬん堂」というレーベルから5/25発売予定なのでよろしゅーっ。そしてそれに伴い、売り切れの為、廃盤になっていた一作目の「ワカラナイ」もボーナストラックを入れて再発するので、こいつもよろしくっ!

 病気だった突然段ボール・兄もだいぶ回復してきて、一時は下半身完全麻痺、という声も聞こえてきてたけど、なんとか数分間なら、どこにもつかまらなくても自力で歩けるようになっていて、良かった、良かった。なんでも、背中に何らかの原因でウイルスが入りこんでしまったとかで、やはり病気は怖い、と実感。最初は末期癌と間違えられたらしく、
「それだったら、もうとっくにここにはいねえな」
 と笑ってた。
 しかしリハビリ中にも、そのリハビリセンターでもライブを行ってしまうぐらいだから、まだまだパワーは衰えていないな。

 奥さんの手作りの料理に舌鼓をうって夜10時過ぎにお暇したら、なんと乗り換えの川越で終電が終わっていた。休日で、なおかつ上り電車だったので、終電が早かったのだ。
 あぁ、漫画喫茶か健康ランドで朝までか・・・トホホホ、とあきらめかけたが、島田のアニキに電話したら、車で迎えにきてくれた。さすが優しいぜ、アニキは!!

 五木寛之「奇妙な恋の物語」読む。

3月16日(金)

 昼から中華料理屋でビールでーす。浮浪者だから。ウィーップ。エヘラエヘラ。でもこのままだと、だんだん本物になってきそうなので、ちょっとだけ「やべっ!」と思いたち、R君がニヒル牛でいないので、今日は主婦になることにする。洗い物も洗濯も大変だわ。エッサ、エッサのキュッキュッキュッー。あらあら、いいお天気なので洗濯物が良くパサリンパサリン乾いて嬉しいわぁーっ。おーほっほっほっ。

 阿佐田哲也「外伝・麻雀放浪記」読む。麻雀は最近はもっぱら全自動卓なのでこの本に出てくるようなイカサマは難しいが、やっぱりテレビゲームじゃなくて、人とやるのが楽しいよなー。捨て牌を見てちょっとドキリとした目の動きとか、悩んだ末に出てきた牌の意味をナニヤッテンダローナーと考えたり、微妙な心理戦が面白いからな。なおかつ、囲碁や将棋と違って、運の要素も強いので、弱いから必ず負けるとは限らないところも、スリリングでいいよなー。4人という人数もいい。誰かひとりのことを熱心にマークしてても、他の2人にかっさらわれるかもしれないので、気が抜けないからな。
 かつて中国に行った時、地元の若者と話していて、
「麻雀とかって、やっぱりやるの?」
 と聞いたら、
「あれは面白すぎて国を滅ぼすので、やりません」
 と真顔で答えていたからなー。

3月15日(木)

 カーテン開けて昼寝してたら、すんげえ暑くなって、一瞬、暖房が部屋にガンガンに効いている気になって、「うへぇ」と寝ぼけまなこで止めようとしたら、ただの直射日光だった。直射日光はスイッチでは、さすがに止められないからな。止められたら怖いし。しかし、数日前、雪が降っていたというのに、三寒四温とはいえ、えらい変わりようだなー。それとも世紀末、いや世紀始めの異常気象? まぁどっちでもいいや。まだ眠いんじゃあー。ふわあ。

 今日から映画の為、ヒゲを伸ばしておくようにとのお達し。髪も坊主のまま伸ばしているので中途半端な感じで、寝癖、帽子癖がペナンペナンとついているし、まるっきり浮浪者だなー。もっともそのものずばり、浮浪者の役だから何も問題ナッシングなんだけど。

 ただ、映画はいいんだけど、日常生活では電車に乗ったりすると、さり気なく隣にいた人に席を立ったりされて涙チョチョ切れたりもしているので、いきつけの整体とかには一応事情を話して「映画の為にこうしてるんですよー」と弁解しておく。そうじゃないと(ついに本物になっちまったか・・・かわいそうに・・・)と思われるからな。ちゃんと風呂にも入ってるし、歯も磨いているぞーいっ!! 足はちょっと臭いけど・・・。

 三代目魚武濱田成夫「世界が終わっても気にすんな俺の店はあいている」読む。濱田さんとは、二度ほどイベントで共演したことがある。「上京」という詩は、泣きそうになった。

3月14日(水)

 フロムエーの取材で「すごろく旅行」を京浜急行線で行う。読者の人たちと横須賀のドブ板通りとかを、例のごとく馬鹿なことしながらうろうろしたりして、面白かった。
 帰り、ニヒル牛に寄って新しい作品の様子などフムフム見てから、上石神井「岩虎」で一杯ひっかけて帰る。ピータンが旨いよー。

 泉麻人選「おすもうさんのおしり」読む。相撲というものは、スポーツと儀式の中間みたいな変な存在なので、人によってまるで見ている視点が違っていて、面白かった。

3月13日(火)

 NHKにて、5月に行われる「おかあさんといっしょファミリーコンサート」の打ち合わせ。同番組で先日「ハオハオ」という曲をやった関係で、ゴールデンウイークにNHKホールで3日間、6公演をやるのだ。ちなみに、このイベントはインフォメーション出来なかった。というのも、もう観覧者募集(有料)は終わっているとのことを、この日始めて知ったので。しかも郵便による抽選で、かなりの高倍率だったので、なかなか簡単にはチケットは手に入らないそうだ。もっとも俺たち(しょぼたま)はゲストなので、ちょこっと出るだけなんだが。

 それにしても、コンサートの進行表などを見ると不思議な気持ちになってしまう。俺たちはいわゆる「森の音楽隊」みたいなもので、ヌイグルミを着た動物や、「おかあさんといっしょ」のおにいさん、おねえさんなどを従えて、一緒に行進したりするのだが・・・ようするに、「超ほのぼの系」のお仕事。
 でも一方では自分のソロなど、かなりアングラな感じで「チンポー!!」と絶叫したり、全裸になって激しく踊ったりしている。ある意味「最も危ない奴ら」(某パンクバンド・談)一体、この仕事の振幅の大きさはなんだ!? 自分でも笑ってしまうな。ま、どれも俺なんだけどねー。過激な人が眠っている時も過激なわけじゃないし、ほのぼのとした人が、誰かとけんかになった時もほのぼのしているわけじゃないからな。でも、ここまで表現活動の範囲が何でもあり、というのはちょいと珍しいかもなー。我ながら。

 後、お気に入りの名曲喫茶「ライオン」にひとりで行って、がたがたする古いテーブルの前で、明日のすごろく旅行のクジを、あーでもないこーでもないと、シュミレーションして考える。

 阿刀田高「やさしい関係」読む。少しだけ優しい、善人ばかり出て来る小説で、刺激はないが、一服の清涼剤になる。

3月12日(月)

 朝、満員電車に久々に揺られてミニ旅行に出る。えっ、どこに行ったかって? ヒントは満員電車。満員電車といえば、何を思い出しますか? ・・・ピンポーン、正解です。ということでおなじみ「奇妙な地名探検隊」は今回は「痴漢の町」にその足を伸ばしてみることにしました。いや~、昔から気になっていたんだよなー。どう考えてもその名前は痴漢の町だって。先月のホモの町よりも分かりやすいかも。ということで、その名も「尻手」・・・尻に手! これが痴漢の町じゃなくて一体どこに痴漢の町があるっていうんだいっ。ええっ!? ということで、何回か電車を乗り換え、川崎のひとつ隣にある南武線に、朝早く到着。早速一体どんな痴漢行為が白昼堂々と行われているのか、調査してみることにした。ドキドキ。
 ところが、おかしい。確かに朝まだ早かったということもあるが、誰も痴漢なんかしていないのだ。誰も尻に手を持っていってないのだ。さすっていないのだ。自分の尻をボリボリ掻いているオヤジはいるけれど・・・。こっ、これはどういうことだ!? 話が違うじゃないか!! しかもだいたいにおいて、なーんかどっちかというと労務者風の人が多く、若い女の人が全然歩いていない。何故だっ!? 何故なんだっ!!
 しかしよく見てみると、ちょっとおかしな看板がある。
「カギをしたその手その目でもう一度」
 このカギとは、おそらく手錠の事だろう。つまり、痴漢行為をして逮捕されても、またその手で、その目でもう一度痴漢行為に及びましょう、という痴漢推奨の看板ではないか!?
 そして「尻手浴場」というのを見つけるが、これはもちろん「尻手欲情」の意であろう。
 その近くには、めちゃくちゃに破壊された車などが放置されてあるのも気になる。これは痴漢行為がうまくいかなかった人が腹いせにボコボコに殴ったのではないか!?
 そして、俺は確証を得た。それはここの「尻手」の前につく、地名である。
「川崎市幸区」
 そう。ここはやはり、幸せな区であったのだ。そりゃあ、痴漢が公認となれば、幸せにもなるってもんだ。うんうん。やっぱりここは痴漢の町だ。ちょっと朝に来てしまったので失敗したが、夜は大変な痴漢好き達が集う、素敵な町になるんであろう。こんなパラダイスみたいな町が現実にあるなんて。俺もちょっとだけ幸せな気分になって、家路に着いた。
(も、もちろん前にも言ったが、冗談だからねー。尻手に住んでいる人、おっ、怒らんでくでー)

 町田忍さんから送ってもらった「痛快『捨てない!』技術」を読む。これは先ほど話題になった「『捨てる!』技術」の逆をいった本だが、パロディ本というわけではなく、本来「捨てる」物、という常識の物を捨てないことで、様々なコレクションするという技術の本だ。「捨てられる」物こそ、逆に日常生活に密着した、庶民文化を伝えるものである、ということを町田さんは言っている。俺のコレクションもまさにその通りだ。俺の初期の歌「東京パピー」で、
「ゴミなら捨てない リボンをつけましょ」
 と歌っているのは、実はそういう意味なんだよねー。価値観の転換で、ゴミが宝になり、宝はゴミになる。よーは、考えようひとつで世界なんてコロッとひっくり返っちゃうんだから。せーぜー楽しまなくちゃ。どーせ死んじまうまでのわずかな間なんだから、人生なんてものは。なっ、兄弟!

3月11日(日)

 お昼に、何故やらとーっても、牛の肉に食らいつきたくなり、牛丼屋にズザーッと自転車走らせて行って、牛丼に生卵かけてザブザブ食う。サラダもつけたぞ。と、夜、R君が帰ってきて、開口一番、
「今日、晩ご飯、すき焼きだからね~。おいしいよ~!!」
「えっ!? 昼に牛丼食いました」
「バッ、バカ~!!」
 どうやら生活が同じなので、同じ頃に同じ物が食べたくなるようだ。
「今度から、一番食べたい物は同じなんだから、二番目に食べたい物を食べるんだよっ!!」
「・・・はい。」
 従順な夫であった。

 すごろく旅行原稿書き。原稿はパソコンがあって本当に助かったもののひとつ。ワープロ機能もそうだけど、わからない言葉も辞書ページで一発検索だし、路線や駅名もすぐ調べることが出来る。記憶があいまいな物でもキーワード検索で、たいていのことはすぐに調べられる。例えば、東京タワーの蝋人形館の中にあった、「ジャーマンロックの殿堂」の中のさらにミュージシャンの名前なんて、インターネットがなければ、おそらく図書館に行っても調べられないものだもんなー。直接も一度行く以外は。いやー、便利、便利。

 大山真人「ちんどん菊乃家の人々」読む。福岡でアダチ宣伝社と知り合いになったおかげで、チンドン屋のことに興味を持ってしまったのだ。チンドン屋の芸というのは、歌舞伎とか能などと違って伝統芸能ではない「商業的即興芸」なので、ほとんどまともに資料という物が残ってないらしい。俺には「客を喜ばせる為なら、一応音楽を基本におきながらも、決まり事なし」というチンドン屋ははかなり近いものがあるからなー。
『(お客さんの前では)自分を神様だと思いなさい。自分は神であり、目の前にいる人たちは求めている人たちなんだと思いなさい。その人たちに求めるものを与える役だというぐらいに自分を高いところに置きなさい。目の前にいるのが審査員で、自分のことを上から見る人だと思うから上がっちゃう。逆なのよ。自分は神なり、仏なり・・・』

3月10日(土)

 何故か夜中の2時に起きてしまう。そして変な時間に起きてしまったもんで、なんとなく人恋しい気分になるが、妻のR君も眠ってしまった。もちろんこの時間に会える友達も電話できる奴もさすがにいない。しかし、人とコミュニケーションを取れる場所があった! そう、少し前に自分のホームページで開設したチャットだ。行ってみると、さすが土曜の夜、何人かの人が入ってるので乱入。くだらないお喋りとかをしていると、ついつい時間の経つのも忘れてしまい、結局3時から7時頃までやってしまった。実際に人と飲んだりしていると、帰るタイミングを計るのが苦手なセーカクなので、ついつい最後まで帰れずに疲れ果ててしまうことも多いが、ここでは飽きたらテキトーに理由つけて「サラバ!」と言えば抜けられるので、精神的にも楽。駄目なんだよね。実際の飲み会とかも別に嫌いじゃないんだけど、2時間ぐらいで最近は「もういいや」ってな感じになるんだけど、いろんなシガラミとか、弱気とかでなかなか抜けられなくってなー。

 景山民夫「どんな人生にも雨の日はある」読む。

3月9日(金)

 映画の衣装合わせ、TBSの会議室で行う。20人ぐらいのスタッフの前に立たされ、緊張はしないが、ちょっと照れくさい。昔ならもっと緊張したのだろうが、あまり緊張しなくなった理由は、ずばり、「スタッフがほとんど自分より年下」ということだろうか。昔は、みーんな上だったのに、今はみーんな下。あの頃、上だった人はどこにいってしまったのだろうか。死んじゃったのかな? ってそれほどでもないか。たぶん、管理職になっちゃって現場とかにはあまり出てこなくなってるんだろーなー。
 ともかく、何種類か服があり、その場で着替えようとすると、
「あっ! 着替え場ありますから! そのカーテンの裏で・・・」
 と言われる。当たり前か。
 どうしても、狭いライブハウスの楽屋とかで着替える癖がついているので、そんな時、女性のスタッフがいよーがいまいが、おかまいなしでパンツいっちょ、時にヨコチン有りで着替えているので、ついついその場で普通に着替えようとしてしまった。失敗、失敗。てへっ。
 ところで事前に体のサイズを計って資料を送っていたのだが、俺の場合、バストよりウエストよりヒップより、トップ・ストマックが一番でかいので、それも真面目に申告した。チューネンになれば、それが日本男子の勲章、ニッポン古来の体型じゃいっ!

 終わってマネージャーと外に出たところ、いきなりテレビかなにかのアンケートに答えてくれ、という若者が寄ってきた。こんな時、ちょいと困る。その若者はもちろん俺のことなど全然知らないようだったが、微妙に面が割れている中途半端な存在なので、見る人が見れば「たまのランニングじゃん!」ということになり、かといって「ちょびっとだけタレントみたいな・・・なんというか・・・そういう人間なので、出られないんです」ともおこがましくて言えないので、
「えー・・・あぁーーー ううーーーー」
 と何となく言って逃げてきた。きっと、馬鹿だと思われたな。くそお。

 それから新宿に行き、ちょいとアヤシゲなビルでやっている、友人の広瀬勉の写真展に行く。写真にレトロ調の文字を切り張りして焼き上げていて、なかなか面白かった。ちなみに、広瀬勉は「穴あきブロックの写真蒐集家」としては世界一の存在だ。もっとも、二番目はどこにもいないかもしれないが・・・。

 深田祐介「バンコク喪服支店」読む。

3月8日(木)

 打ち合わせで八王子の事務所へ。札幌で来月やる会場が急遽変更になる。なんでも、ライブハウスが突然閉店になってしまったということだ。あわててインフォメーション等入れ替える。どこもライブハウスは経営が大変らしい。10年持てば立派なもんだもんな。バンドを17年もやってると、というかソロも含めると20年もライブハウスに出ていると、随分多くの店を見送ったもんなー。

 ミヒャエル・エンデ×ヨーゼフ・ボイス「芸術と政治をめぐる対話」読む。読んだ、と言っても実は・・・目は文字を追っているけど、形而上的な、観念的な会話が多く、ほとんど理解できませんでしたー。あははー。頭悪いでぇーす。というか、具体物を出して喋ってくれっ! イメージがわかないんじゃー。芸術家なら、常にイメージは喚起させてくれっ! と逆ギレ。
 『だが、芸術にとっては、理解できないほうが、ずっといい。人びとのなかに力を、想像とか直感に対する力を呼びさまし、さらにそれ以上のことをするわけだから』(ボイス)
 『芸術の価値というのは、なにか他のものに役にたつからすばらしい、というんじゃなくて、ここにあるから、この世にあるから、手もとにあるから、すばらしいのです。なぜかっていうと、それが存在するだけで、すでに世界は変わっているからです』(エンデ)

3月7日(水)

 西荻窪の「音や金時」という店で、パスカルズのライブに出演。パスカルズの海外盤をプロデュースしてくれたジェラールさんが緊急来日したので、急遽決めたライブだったが、会場はギュウギュウ。ヨーロッパでも是非ライブを、と言われる。実現できると面白いな。
 リハーサルの合間にニヒル牛に行き、ゲップ作業(2/20日記参照)やる。

 群ようこ「都立桃耳高校」読む。

3月6日(火)

 昼間っから、ひとり中華料理屋で本読みながら、ニラレバ炒めにビール。へらへらへ~。し・あ・わ・せ。

 池田あきこ「モロッコへ行こう」読む。あぁ俺もイスラムの迷宮都市に迷いこみたい。旅の醍醐味は、「迷子」だからな。「子」じゃ全然ないけど・・・。

3月5日(月)

 ホームページの写真バグ修復作業、地味にこつこつやる。木彫り職人のようにこつこつと。

 村松友・・・(あぁ、示す偏に見る、という字が出ないよー)の「市場の朝ごはん」読んだら、ナマものが食べたくなり、寿司を取る。「D寿司」の特製太巻きは、ンマイッ!

3月4日(日)

 渋谷にて、しょぼたまのインストアライブと握手会。もちろんこの日、俺がランニングをまっ逆さまに着ていたのは、渋カジだぜっ!! ・・・って、おいおい、誰か気づいて注意してくれいーっ。

 その後ひとりで「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を見に行く。前評判が良かったので、久しぶりに映画館へ。でも主人公セルマの「命を賭してまで」という気持ちが理解できず、若干感情移入が薄かったので、下馬評のようにボロボロ泣く、ってなことはなかったなー。

 阿刀田高「ことばの博物館」読む。
 夏目漱石の「漱石」が「負け惜しみが強く、屁理屈をこねる」という故事だとは、始めて知った。

3月3日(土)  妻の実家でひな祭り会。はまぐり鍋を食べる。ひな祭りにはまぐり鍋、なんてこと知らなかったなー。男兄弟だったからなー。

 ついに自転車がオシャカになったので、西友で安いの買う。つぶすまで乗ったのは、もしかして始めてじゃなかろーか。だいたいその前に盗まれたりしてなくしてたからなー。あと、駅に置いておいたら、何故かハンドルだけ切断されていたことがあった。犯人も大胆だなー。っていうか、まわりにいた人、誰かノコギリかなんかでギコギコしているの見たら、止めなかったんかいっ!! 明らかに悪いことしてるだろうっ!!
 夜は、すごろく旅行原稿書き。

 大槻ケンヂ「のほほん雑記帳」読む。大槻君は、エッセイうまいな~。同じ事務所にいた頃の話なので、知り合いのスタッフの名前とか出てきて、ニヤリとする。

3月2日(金)

 終日だらだら。整体や漫画喫茶など、うろうろ。いやー実は、そもそも3月は「映画の為スケジュールを空けておいて」と言われていたのが、クランク・インが少し伸びたので、暇になったのだ。ってなことで、だらだら~、ふにゃふにゃ~、ほやほや~と、する。いやー、やっぱり俺の体にあってるな、だらだらは。でも12時間以上寝ると、逆に頭が痛くなってくるのはホワイ?

 橋本治「シンデレラボーイ シンデレラガール」読む。最初、高校生あたりを対象にしているのか、文体がちょっときつかった(「きみは~」とかの、上から口調が駄目なんだよねー)が、なんとか読んだ。
 『親は、子供が自分に似ていることを喜んだり喜ばなかったりするけど、子供が自分に似ているんじゃない。親の方で、抵抗力のない子供を勝手に自分に似せて、それで勝手に、喜んだり喜ばなかったりしているだけなんだ。だって、子供というのは、生まれた時にはもう、親の思想でいく重にも包まれてるわけだからね』

3月1日(木)

 雨が降っているので、R君の元まで、傘を持って行って、一緒にスーパーで買い物。今日は何が半額セールかな。セール品以外は、俺にはないものも同然で目に入らないのは、若い時からの貧乏生活の賜物か。

 夜中から朝まではずっとチャットやる。チャットは会話の記録が一切残らないので、伝言板とはまた違う「その時だけの」一期一会の楽しみがある。でも困るのは、みんなは俺のことを知っているだろうが、こっちは誰のこともほとんどわからない、ということだ。ライブのMCと違って、基本的に個人対個人の会話だからな。本当は顔見知りの人でも、ハンドルネームで来られたら、ますますわかんない。なので、なるたけ話しはそっちからふっておくれー。もしくは、せめて今どこから(都道府県)書きこんでいるか教えてくれたりすると、少しはこっちも話の糸口があるんだけどねー。ということで、メモを片手に取りながら書き込んでいる。メモには「○○さん―愛知県―子供ひとり」などと書いておく。だってそうでもしないと、何度見覚えのある名前でも「この人、どんな人だったっけかなー」と思いだせないからだ。
 あと、短い文章しか打ち込めないので、答えが長くなりそうな話題とか、よくあるんじゃないかと思われる質問は、伝言板の方にお願いしやーす。

 泉麻人「お子様業界物語」読む。子供をターゲットにした業界のルポ。


2月(2)の日記を見る
振り返り人生(もっと過去の日記を見る)
トップに戻る