この駅では次の列車まで3時間ある。とにかくクジをひこう。
「男尻女腹。男は尻、女は腹を町のどこかで晒し、その証拠写真を撮ってくる。あとで、みなの勇姿を称え合う。」
「えーっ!! やだやだやだっ!」
「げえーっ!!」
さぁ、またやばいクジがでましたよー。 これは前回のすごろく旅行の時、岐阜の山奥で出た「男のヌードビデオ大撮影会」の亜流クジだな。
あの時は全裸で森で踊って足をすべらせ膝を血だらけにする者、淫微な裏ビデオの世界を構築する者、ひまわり畑でメルヘンヌードする者、そして人の家の庭先に出ていた子供用プールに飛び込む者、と大変だったからな。 でもねー、どんなにきびしくともクジですからねーっ。汚いケツをさらしましょうねー。真実の腹を見せ合いましょうねー。
幸いなことにこの田舎町だったら、人目につかないところも、なんとか見つけられるだろうから。 とにかく、時間はたっぷりあるし、どこかでお茶でも飲みながら荷物番をする人、撮影に行く人と別れようと思ったが、案の定そんな喫茶店などがあるような町ではない。一応雑貨屋とかが何件か並んでいる通りはあるのだけど、食堂すらない。しかもその何件かの店も「午休」なんて札を出して店員があっちでもこっちでも眠りこけている。たまに何か威勢のいい声が聞こえると思ったら、おっさん達が集まって、カードかなんか賭け事をやっている。ニワトリがやたら道を自由に濶歩する、のんびりした南風の町だ。
と、ふと目についたのが美容室。ここで女性陣の誰かが提案した。
「せっかく台湾にきたんだから、ちょっと台湾風の髪型、っていうのも悪くないんじゃなーい?」
そうと決まったら、小さな美容室に7人でどやどやと入っていく。 滅多に外国人など降り立たないと思われるこの町で、いきなり大勢の日本人男女がどでかい荷物付でなだれ込んできたんだから、一瞬、美容室のお姉さん達もビクッと体を強ばらせた。 それでもこの町では最もファッショナブルな職業だ。
「あらあら、いらっしゃい。」
ってなクールさを一所懸命装っていた。
「じゃあ、俺達行ってくるから。」
とりあえず女性陣達がみんな美容室の椅子に座ってしまったので、俺はカブラギと、尻の写真を撮りに出かけることにした。さすがに集落の中心はちとやばい。台湾の猥褻物陳列罪がどの程度の罪なのか知らないので、新聞に「日本人男性、台湾でおどけて尻出し死刑執行」はあまりに悲しい人生の結末だからなー。
ところが、町を外れ郊外の農道みたいなところを彷徨っていると後ろに人の気配がする。すわっ、公安か!! そういえば、以前中国に行った時、一緒に行っていたとうじ魔とうじ夫婦が町を歩いていると男の人が近づいてきて、
「すいません。私、これから貴方達を尾行します。」
というような事を言われて、本当に無言でついて来られたらしいもんな ぁ。 なんだか怪しいからなぁ、あの夫婦。
・・・でも尻を出そうとしてうろつき回る中年男性ふたりは、もっと怪しいか。
でも待てよ。そうはいってもまだ現実に尻は出ていない。だからいきなりの連行はないはずだ。せいぜい職務質問止りだろう。 ・・・しかしなんて説明すりゃいいんだ?
「このクジがぁー、このクジが俺達をそうさせたんですぅ」
と、涙ながらに言うのか? しかし、そのクジは、俺の筆跡だ。
とにかく、おそるおそる振り返ってみると、なんとそれは数人の少女であった。きっとこの町に外国人が来た事自体が珍しいのだろう。一定の距離を保ちながら、さり気なくついてきている。 ほっとしたものの、これでは写真はとれない。
「ねえねえ、お母さん。今日ニホン人がいたんだけどさー、ニホン人って、お尻出して歩くんだねーっ」
は、間違った日本人観を植え付けかねない。いや、間違った日本人観は別にどうでも良いのだが、そこで、
「ニイハオー! 今度は本物の公安だよー。はい、逮捕。」
は嫌だからな。 そこで、何とかまくことにした。尻を出す、という大いなる野望の為にはしょうがない。 走れっ! カブラギ!
ようよう子供達から逃げて、おっ、ちょうど人がいないぞ、で道の真ん中でパッとズボンを降ろす。カブラギ、早く撮ってくれ。
「ちょっと待ってぇ。ピントが・・・」
そういえばカブラギは写真にはちとうるさい鉄道写真マニアだった。おいおい、でも今はそんなにじっくり撮っている暇はない! 早く! 人が来る前に!
「でも、露出が・・・」
露出はすでにしている! 早く撮ってくれ! ニワトリが見ているじゃないか! とりあえず、俺は晒した。そしてさらに歩いていると地元の人達が熱心にお参りをしているお寺もあった。よし、仏様の前じゃ、自分のすべてをさらけ出したほうが良かろうと、ここでまたっペロッとだしておかわり。 さあ、カブラギよ、おまえは一体どこで晒すんだ?
「やっぱり俺、線路がいいなー」
ケツ出し写真でもそこにこだわるかー。本当に鉄道マニアは線路が好きだなー。線路と、まぐわったれ! 線路は盛り土の高台にあったので、草とかをつかみながらごそごそはいずり登る。長く伸びる線路には、誰もいない。
「はいー、もっと憂いを帯びてーっ。はいーっ、もっとお尻をツンと突き出してー。あぁっ、いいねー! 今の君、最高だよ!」
しばし、気分はホモカメラマン。
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ま、こんな下品なクジばかりではないが・・・とにかく読んでね!!