テキトー日記03年5月(2)

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5月16日(金)

 稽古。
 台本完成。初日の一週間前かー。
「一週間前まで台本完成しなかったんですか? 大変ですねー」
 という人もいるだろーが、俺が最初にかかわった劇団が名古屋の「少年王者館」だったので、何とも思わない。
 なんせ「少年王者館」は初日の舞台の幕があがってもう芝居始まってるのに、袖で作家の天野さんがまだエンディングを書いてたことあったもんねー。出演者が、最後がどうなるか誰もわからない芝居、ちゅうのも冷静に考えると凄いけど、最初の芝居体験がこれだったので、
「こんなものかー」
 と思ってたが、違うん・・・すかっ?
 ま、芝居も「ライブ」だからね。
 世の中、何が起こっても人が死なない程度なら、だいじょうぶさーっ。

 宮前栄他「下町酒場巡礼もう一杯」読む。

5月17日(土)

 稽古。
 終わりがちょっと押したので終電ギリギリ。走って駅へ。
 ところで西武鉄道のツ・ツ・ミ・さーん。
 土日の終電を平日より30分以上も早くするのはやめて下さーい。途中の電車がなくてもいいから、せめて最終だけは同じ時間に出して下さいー。他の私鉄はそんな事ないみたいじゃないっすか。負けてるっすよ。いいんすかっ? 西武ライオンズのみんなも嘆いていましたよ。
「うちの親会社、悪くないんだけど土日の終電だけがね・・・」
「もう、そのことは言うなよ、秋山。」
 って、もう秋山は西武じゃなかったんでしたっけ? じゃ、工藤?
 でへへ~、実は野球音痴なんでがすー。
 ま、それはともかく、土日の方が都心に出てくる確率の高い俺達には、まーじ、困るんすよね。
 まーじ、お願いしますわーっ。

 高田文夫「寄せ鍋人物図鑑」読む。

5月18日(日)

 初日も迫って来たので朝から夜まで稽古。
 と、稽古場へのエレベーターでちょっと顔が青ざめた演出・台本のケラさんと一緒になったら、
「プロデューサーから1時間切って下さいと言われた・・・」
 との事。
 確かにきのう通し稽古をやってみたら、休憩15分入れて4時間20分。
 役者もお客さんも内容が良くても、さすがに時間的に長過ぎて疲れたりだれるかもしれない。
 それにマチネ・ソワレ公演の日は、ほとんど合間なしっ!
 だからまーしょうがないが、1時間と言えば休憩を除けば約4分の1削らなければならない。
 これは結構大変だ。
 話しの流れも変わるし、途中の部分がなくなれば、当然その前後のセリフも辻褄を合わせるように変えなければならぬ。役者の着替えも多いので、それが間に合うかどうかも考えねばならない。
 しかも今回はミュージカルなので、すでに同時発売するCDの録音も済ませてある。
 ということは「CDには入っているが、芝居中では歌われない幻の歌」も出てくるということだ。
 とにかく大幅に台本が変更になることは確かで、でももうあと5日間ぐらいで幕は開く。
 だっ、大丈夫かっ!?

 乃南アサ「トゥインクル・ボーイ」読む。

5月19日(月)

 今日から2日間だけ、新宿で稽古。
 台本どんどんバッサリ切っていく。「あぁー、そのシーン好きだったのにー」とか「そこ、何日もかけてじっくり稽古したところなのにー」とか「ウギャーッ」とかあるが、とにかくそんな事言っている暇はない。急げや急げホイサッサー。

 宮部みゆき「返事はいらない」読む。

5月20日(火)

 稽古。
 新宿の西の百人町というところに稽古場があるのだが、このあたりいったい、すぐ横の高層ビル街を尻目に、「昭和」が色濃く残っていていい感じ。
 凄い雷雨。
 帰り、たまメンバーだけで昔よく通っていた西新宿の中華「白龍」に行って角煮でビール。旨し。

 大野隆司「ウルちゃん」読む。

5月21日(水)

 青山劇場入りして稽古。

 夜はひとりで田口トモロヲ監督の来年公開の映画「アイデン&ティティ」(みうらじゅん原作)のにちょっとだけ出演の為、撮影。
 といってもインタビューシーンだけで、まぁ映画では映るか映らないか程度の瞬間映像になると思われるので「出演」というほどタイソーな物じゃないけんども。
 それより、トモロヲさんとはほとんど初対面なのだけど、昔「ばちかぶり」というバンドでステージの上でゲロ吐いて、それをライブハウスに怒られたので、
「もうゲロは吐きません」
 と言った次のライブで、ステージでゲロは吐かずに、その代わりケツ出してウンコブリブリしたというのパフォーマンスをしたとは思えない、真面目で大人な人だった方が驚き。遠藤みちろうさんとかもいて、挨拶。

 原田宗典「ゆめうつつ草紙」読む。

5月22日(木)

 稽古。
 俺の役は、出演順に「でかいコケシを持った頭が少し弱いおっさん」「たま」「プロダクションの社員」「たま」「昔風の親父」「ヒッピー」「たま」「GSバンド『狂人の館』」「戦う人々」「たま」ということで「たま」としての演奏を合間合間に挟みながら10回ぐらいも着替えをしなければならない。
 また、演奏だけのシーン、歌だけのシーン、演技だけのシーン、踊りだけのシーン、それがごちゃまぜになったシーンなど役割もいろいろで頭こんがらこんがりべらまっちょっすー。

 赤瀬川原平「じろじろ日記」読む。

5月23日(金)

 稽古。
 今回は劇場が広いのでみんな胸のあたりに無線のピンマイクを付けているのだが、もちろん舞台に上がっている人のものしかスイッチはオンになってない。そーじゃなけりゃ、幕間に小便しても会場中にチャックをジーッと降ろす音の後、ジョージョーの大音響が響き渡るからな。というか、小ならまだいい。大だったら・・・大だったら・・・大だったら・・・いや、やめておこう
 ところがゲネプロ(本番と同じ風に衣装をつけ、照明・音響などもやる)の時、俺の目の前で喜劇・・・いや、悲劇は起こった。
 それは「花咲く乙女」という曲で、舞台に出ている人以外の役者が、劇場の入り口から現れ、客席で踊りながら歌う、というシーンの前で、出番を待って劇場の入り口あたりで何人かでたむろしている時だった。
 俺の目の前でふたりの男女の役者がくだらない話しをしていた。
 男「なんだよ、そこまで胸の開いたドレスなんだから、もちっとサービスして乳の谷間見せろよ」
 女「谷間ったって、ちょっとは恥ずかしいんだよ、馬鹿ヤロー。おめーはアソコを見せられるのかよっ!!」
 とその時、偶然音響のボタンの上に何か物が落ち、その女優の方のマイクだけスイッチがいきなり入ってしまったのだ。
「おめーはアソコを見せられるのかよっ!!」(かよっ!! かよっ!! かよっ!! かよっ!! ←エコー)
 でかい声が会場中に鳴り響いた・・・。

 田中伸彦「ぼくの上海行商紀行」読む。

5月24日(土)

 本番初日いきなり二回公演。
 と、とある役者が昨日のゲネプロの踊りの時、足を傷めていたことが発覚。
 なんとか演技は出来るが踊りは無理。
 ということで急遽、いろんなシーンが変えられることになった。
 踊りは人々がシンメトリーになってるところもあるので人数を変えたり、全体の構成やダンスそのものも変えざるを得ないところがあったり、また演技でも走り去るシーンなども無理なので変更。で、ひとりの動きが変わると当然まわりの人達の動きやセリフなども微妙に変わる。しかしもう稽古をしている時間もないので、マチネはぶっつけ本番。シェーッ!!
 ということで、裏ではてんてこ舞いでとにかく舞台が開いた。

 ちなみに直前にいろんなシーンがカットになったりしたので、出番の段取りがまだみんな把握出来ておらず、ソワレの二部の頭はたまのメンバーが暗転で蝉の音だけが効果音で流れる中、こっそりヒッピーの格好で板つき(明りがついた時、すでに舞台上にいる)になるシーン。
 いきなり鈴木博文さんらバンドのメンバーが陰で演奏を始め、それに合わせて一番知久君、二番俺、三番Gさんが歌うシーンなのだが、なんと蝉の鳴き声の中、段々照明が舞台に当たっていくその瞬間、横のビーチチェアーにだらりと寝そべっているはずの知久君がいない!
 と、物凄いケモノの様な早さで知久君がチェアに飛び込んで来て、なんとか歌には間に合った。
 後で聞いたところ、知久君は蝉の音をボーッと楽屋に降りる階段の途中で聞いていて、
「えーと、蝉の音か。夏の情緒だなーっ・・・って、俺、舞台に居なけりゃ駄目じゃん!!!!」
 ということで、100mを3秒フラットで階段を駆け昇っていくと、ヒッピーの格好なのでカツラだけは被らなければならないので、袖でカツラ係の人が冷や汗たらたらで待っていて、知久君の姿を見つけるや、カツラをポーンと頭の上に載せてもらって、舞台へとジャンプするかのように飛び込み、ギリギリセーフだったという。
 人ごとだと、面白いな。ふふふ。

 川崎徹「空飛ぶホソカワさん」読む。

5月25日(日)

 本番。楽屋に篠原ともえさん来てくれる。もうハチャメチャな格好じゃなかったな~。って、こういう子ほど真面目で実はおとなしいんだよね。前述の田口トモロヲさんもそうだけど。表現で無茶苦茶やる人ってのは、まっとう過ぎる自分への内なるアンチテーゼだったりするからね。

 佐野洋子「あれも嫌い これも好き」読む。

5月26日(木)

 東北地方で震度6の地震。関東もかなり揺れたようだがぜーんぜん気づかず。
「鈍感にもほどがあるっ!」
 と言われそうだが、実はその時整体に行っていて、低周波電気マッサージを受けている途中だったのだ。
 自分が揺れていると、地震はわかりづらいぜ~。
 たぶんHなことしてるピストンピストンな人や、ドリルで穴掘っているおー素敵な肉体モリモリねーの人や、シャブ中で体がブルブル震えている人も気づくの遅いと思うなー。

 江國香織「つめたいよるに」読む。

5月27日(金)

 本番。
「ダンダンブエノ」のメンバー観に来てくれたので、飲む。
 金沢碧さんに、
「石川君って、役者ね」
 と言われて嬉しひなー。ふふふ、俺は俳優さん。

 ねじめ正一「二十三年介護」読む。

5月28日(土)

 本番。
 手品のシーンで箱を「エイヤッ!」と新谷さんが開けると、中から予想とは別の人が出て来てしまって、
「誰だ、お前は!?」
 というシーンがあるのだが、箱が開かず。
「なっ、中から押して下さーい」
 というマヌケなことになったらしいが、俺はステージ上にいたにもかかわらず、それが見られなかった。
 何故なら、その後すぐに俺と知久君が「昔の親父」役になって、何故かタイムスリップして結婚式場のドレスを着た女性のスカートの中から、
「どこだ、ここはっ!?」
 と言って出てくる段取りなので、女優さんのスカートの中でまんじりともせずに待機していたからだ。
   えっ? スカートの中に入れて羨ましい・・・?
 とんでもない。外が見えないから必死になって床のバビリを見ながら膝歩行で移動して、大きな体をコビトのように小さく小さくカタツムリのようにしてなければならないんだから。
 暗いしな。スカートの中って。
 何にも見えないし、あまり住み心地のいい場所じゃないぞ、案外とな。

 板倉勝宣「山と雪の日記」読む。

5月29日(日)

 本番。奥菜さんの結婚報道がスポーツ新聞に載っていたので、ミーハー精神で、
「どうなのよ、本当のところはっ?」
 と聞いたが、
「もうー、嘘よー!」
 との事。
 まー嘘かまことかは、そのうちはっきりするじゃろて。ふぉっふぉっふぉっ。

 「西村戒尼吾句集」読む。

5月30日(月)

 本番。
 駄目出しの時、とある踊りのシーンでケラさんが、
「松永の笑顔が一番いい。演技か本当の笑顔かは知らないけど」
 と言ったら、他の人が、
「演技よ。だって、客席に背を向けた途端表情なくなってるの、隣で見てるから知ってるもん」
 ううむ、これぞプロ。職人芸。一瞬にしてどういう表情にでもなれるんだもんな~。
 俺なんて、笑顔作ったら、楽屋に戻る廊下まで顔が戻らずにヘラヘラしてて割と無気味だぜ・・・。

 姫野カオルコ「ほんとに『いい』と思ってる?」読む。

5月31日(火)

 影バンドのメンバーがひとり、怪我等はないが来る途中車で事故を起こし、1時間くらい遅刻。
 しかし、その間客席からは演奏シーンは見えないが、とにかく生で演奏だけはしなくてはならない。
 どーなることかと思ったが、なんとほぼちゃんと演奏が行われている!
 どうやら残ったメンバーでパートを咄嗟に研究して、パッと聞きにはひとつの楽器が抜けているなんてわからないように演奏していたらしい。
 ううむ、これぞプロ。職人芸。一瞬にしてどういう音でも奏でられるんだもんな~。
 俺なんて、知久君いなかったら、衝立てを立ててそこから頭の先だけちょこっと出して、一瞬、最近は坊主頭の知久君とまぎらわすぐらいしか出来ないぜ・・・。

 江國香織「ぼくの小鳥ちゃん」読む。


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