テキトー日記03年3月(1)
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3月1日(土)
レコーディング。今回はスタジオライブなので、「いっせいの、せー!」で録音している。
つまり、誰かがちょっとでも間違えれば全てやり直しなのだ。
普段は「仮歌」「仮ギター」などベーシックになるものをまず録音して、それに合わせてひとつずつ音を重ねていく、というのが最も多いやり方なのだが、それだと演奏は完璧に近い物になるが、時によってグルーブ感がいまひとつ損なわれてしまうこともある。
今回は「しょぼたま」なので、あえてしばらくしていなかったスタジオライブ方式を採用。
ま、とーぜん最後の最後で誰かが間違えて「ウギャーッ!」なんてこともあるが、何故かそのミスの回数は、3人ともほとんど同じくらい。これが誰かひとりが極端に多かったりすると、辛いんだろーなー。みーんなヘタで、良かった、良かった(笑)。
横断歩道を歩いていたら、隣に両手をあげてグリコのように渡っているオッサンを発見。
オッサン、片手でいいんだよ。
もしかして、子供の頃間違えて覚えちゃったままなのかな・・・?
中島らも「アマニタ・パンセリナ」読む。
3月2日(日)
横浜の方でマスタリングという、レコーディングの最終作業。もう何枚目のアルバムか覚えてないが、へいっ、いっちょあがりっ!! 今度も旨いよっ!!
レイモンド・カーヴァー 村上春樹訳「ぼくが電話をかけている場所」読む。
3月3日(月)
舞台慶子。この日のことはダンダンブエノのホームページの「稽古日誌」に書いてくれ、と頼まれて書いたので、それを転載しま~す。
『こんにちは。たまの石川で~す。
さて、先日までは某廃校になった小学校を借りて稽古してきたダンダンブエノですが、今日から(役者さん達は一昨日から)場所をホールに近い広さを持ったスタジオに移しての稽古です。
役者さん達は昼過ぎから振り付け等があるので稽古していますが、「たま」は夕方から来て下さい、ということで、6時頃トントントン、と階段を軽やかに降りて、そのスタジオのドアを開けました。
「おはよーござ・・・」
挨拶をしようとした、その時です。振付・演出の井手茂太の怒声が聞こえました。
「バッキャロー! こんな簡単なダンスも出来ねえのかっ!」
そして次に僕の目の前にうつった光景は、井手茂太が酒井敏也に往復ビンタをくらわし、額に思いっきりパンチを与えている姿でした。
酒井敏也は、3mもふっ飛んだでしょうか。額からは噴水のように血をピューピューと吹き上げながら、ぶっ倒れました。それを見た瞬間、山西惇と近藤芳正はあわてて井手茂太に駆け寄り、
「井手さん、井手さんだけに、イデーことはやめて下さい!」
「お願いします。近藤だけに、コンドーだけは勘弁してやって下さい!」
そう言ったふたりの方を井手茂太は静かに振り返ると、一瞬ニヤッと笑い、
「・・・俺はな、そういう駄洒落が一番キ・ラ・イなんだよっ!!」
そう言うや、ふたりの鼻の穴にそれぞれ右手と左手の人差し指と中指をボーリングの玉のように突っ込み、
「ムオォォォォォ!!」
と全身に力を入れるや、ふたりの体を持ち上げ、鼻を中心にグルグルと頭の上で回転させ始めました。
まるでそれは、江戸川乱歩の書く地獄遊園地の「人間風車」のようなありさまでした。
鼻血がまるで花火のようにスタジオを赤く染めていきます。
果たして、これは人間の仕業と言えるでしょうか。・・・否。井手茂太に鬼が乗り移ったとしか思えません。
さんざん回転させられたあげく、スタジオの隅まで遠心力で飛んでいって失神している山西惇と近藤芳正。
あまりの事に唖然として声もなかった女優陣も、ようやく事の重大さに気づき、
「井手先生、お願いします。どうかみんなを許してやって下さい!」
そういうや、井手茂太の前に土下座し、あやまり続けました。
「お願いです。どうか、どうか!」
そういって、床に頭をゴンゴンぶつけながら、土下座を続けます。
ゴン ゴン ゴン!
ゴン ゴン ゴン!
だだっ広いスタジオに、ただゴンゴンの音だけが響きます。
そして、井手茂太は静かにつぶやきました。
「やっぱり、ダンスにはゴンだな・・・」
あ~、もちろんウソうそ嘘ですがな~。本当は和気あいあいの現場ですがな~。なんてったって、俺達「たま」はみんな小心者。怖い人が仕切る現場だったら、とっくにスタコラサッサと逃げだしとります~。
但し、やっぱり場所がきちんとしたスタジオになったのと、本番が近くなってきた為、全員に若干の緊張感は高まってきております。
でも、そもそも「稽古場日誌」って、何書けばい~の?
だって、内容書いたらネタバレになっちゃうしねー。う~む。
でもとにかく、基本的には「たま」の演奏に合わせてダンスをするのだけど、まぁ、そのダンスというのが「これもダンスと言えばダンスか・・・」と言うほどのケッタイなものも多く、爆笑が絶えません。
ただ、僕らは見慣れたので変なダンスで笑ってしまうけれど、初めて観るお客さんなどは、
「う・う~む。あの奇妙な動き、おかしいけれど、わ、笑っちゃってもいいものなのだろーか・・・?」
と、とまどう人もいると思われますね。いいんです。笑っちゃって下さい。
あっ、そうだ! あれ書こう! 何故なら日本は資本主義国家だから!
実は今回の公演にあたって、たまの曲及びいろんな人のカバー曲をアレンジして演奏しているのだけれど、グータラな俺達にしては久しぶりに死に物狂いで練習した曲などもあり、
「なんかこれ、この公演だけで終わりにするのもったいないんじゃなーい?」
ということになり、急遽、この公演での演奏曲を全部収録したアルバムを作りました。
音の方はもう昨日最終作業まで終わって、あとはジャケットとプレスなのですが、ちょっと公演本番日には本体が間に合いそうもないので、公演の際に予約受付をしま~す。よろしゅう~。
タイトルは当初、この公演の曲を集めたものなので、公演タイトルでもある「いなくていい人」にしようと思ったのですが、なんという神のいたずらでしょう。既にたまには「いなくていい人」というCDがあるのです。で、今回も「いなくていい人」にしたら、何が何だかわからなくなって、気ぃ狂うて、ホールにワハハハハッと火を放つ人とか出ても困るので「しょぼたま2」というタイトルにしました。
ちなみに「しょぼたま2」ということは、頭の良い貴方の事、もうお分かりですよね。その前に「しょぼたま」というCDも出ているわけです。買って下さい。
とにかく、平均年齢が、どー控え目に見ても、人生を山に例えるならもう頂上でおみやげのペナントを買って、下山をはじめているオッサン・オバハン・・・いや、オネーサン達による、めずらし~舞台です。
めずらし~舞台好きな貴方、このコラボレーションは、ちょっと見物でっせ~。
あと、今日はお雛様。ミドリさんが持ってきてくれた柏餅、大変おいしゅうございました。』
清邦彦「女子中学生の小さな大発見」読む。
3月4日(火)
舞台恵子。Gさんが、
「知久君と酒井さんって、後ろから見るとどっちがどっちだかわからないよね・・・」
と発見する。確かに顔は全然違うのだが、後ろから見ると後頭部と背格好そっくり。
もっとも俺もかつて、
「石川さんと三上寛は、後姿は同じ人間」
と言われたこともあったしな。ある種のパターン的後姿なんだな。
と、ここでちょっと考えた。例えば猫とか、ましてや蟻なんて、どれが誰だか区別つかないよね。
で、もしたまたま宇宙人に酒井さんと三上寛さんが怨まれるようなことをしでかしたとしたら、俺と知久君、なあーんにも知らないのに間違ってその宇宙人に殺される可能性、もの凄い高いわけだよね。・・・むー、怖い。
江国香織「すいかの匂い」読む。
3月5日(水)
舞台佳子。
終了後、駅の近くの喫茶店でファンクラブ会報用の対談をメンバー3人だけで録音。
ちなみに全員ホットドックセット。飲み物は、Gさんコーヒー、知久君ミルク、俺オレンジジュース。
「それが、何?」
と言われれば返す言葉はオホーツク海に沈んでしまったので、俺は何も答えられないが・・・。
おーなり由子「きれいな色とことば」読む。
3月6日(木)
舞台敬子。
R君、誰もいない家で今日も「泥棒かと思うほどの明らかな歩く音」を二階や階段で聞く。
最近ちょっと多すぎるぞ。・・・まさかやっと自分が幽霊だということに気づいたのか?
すまん、爺さん。この家には仏壇はない。というか、仏壇置き場、妻の猿のぬいぐるみ人形ハウスになってる。そこでしばらく、遊んでてくれんかのう。猿と。
五木寛之「友よ」読む。
3月7日(金)
舞台啓子。
晩飯終わりに休憩時間があったので、ちょっとスタジオの隅にゴロッとしてたら、いつのまにか大いびきをグギーガギーとかいて寝てた。みんなの注目を一身に浴びながら・・・。ディナータイムの素敵なBGMさっ!
藤堂志津子「プライド」読む。
3月8日(土)
家の前の弁当屋がつぶれた。
1年もたなかったなー。そりゃそーだ。そこから見えるところにもうすでに他の弁当屋が二軒あって、そこで何か新しいメニューでも出すんならまーわからないでもないけど、レトルトのカレーご飯に載っけただけで350円取っちゃ、そら潰れるわ。
弁当屋の前は服屋だったが、それも1年くらい。その前なんだったかはもう思い出せない。
だいたい店を持つ、ってえことは不動産の借り賃に内装工事費なんか入れれば、どんなにちゃちな店だって100万以上は投資しなけりゃならない。
なのに、なんかアイデアとかなーんもなくて店始めちゃう人がいるのがむしろ不思議。
俺がこの後絶対いいと思うのは、「医薬品を売るコンビニエンスストア」
だって、病院に行くほどじゃないけど腹がちょっと痛いとか頭痛がちょっとするとか風邪をちょっとひきそうだ、っていう「ちょっと病気」になっても、買い置きがなければ薬って夜中に買えないでしょ。
売ってるのは「医薬部外品」という、まぁ生理用品とか、絆創膏とか、コンドームくらい。
で、もちろん複雑な薬はちゃんと薬剤師さんのいるところで処方してもらわなけりゃ駄目だと思うんだけど、「正露丸」とか「ルル」ぐらいの「大衆薬品」は、厚生省が基準を設けて、コンビニエンスストアでも売っていいことに法律を改正したらどーかなー。これだけ世の中にコンビニエンスストア氾濫しているんだから。
だって俺、デビューするまで夜中の「救急患者受付」の事務をしていたから、どんな薬が出るかだいたい知っているけど、入院になるような人以外は、応急処置としての「痛み止め」がほとんど。それがコンビニエンスストアで買えるようになれば、わざわざ車飛ばして病院まで来る必要もない。
「でも薬は、使用法を間違えると大変だから」
と言う人もいるだろーが、昼間開いている大手ドラッグストアのバイト店員が、薬学をみんな知ってるとは思えないし、「正露丸」買うのに、わざわざ説明を担当者にじっくり聞いている人も見たことないし。大衆薬の使用法間違えるよーな人は、昼間買ったって間違えるだろうし。
例えば、そのコンビニエンスチェーンの地域本部か何かに薬剤師とかの責任者をひとりでも置いて、事故のないようにすれば、問題ないんじゃないかなー。
スナック菓子のコーナーをちょっとだけ減らして薬を置く。それこそ「本当に夜中に必要な物」じゃないかなー。
どう? どっかのチェーン店さん、そろそろ他の店との差別化を図って、先陣を切ってくれんかのー。
土門拳「腕白小僧がいた」読む。
3月9日(日)
舞台圭子。
知久君が出番の為、30秒前に袖に隠れた。
さっ、今だ、出番だっ! ・・・出てこない。
なんと、その30秒の間にスヤスヤと天使のよーに眠っていましたとさ。ボクタチ赤ちゃんお眠りバンド。
岡村多桂夫「バルセロナ」読む。
3月10日(月)
今日はオフ。さ~遊ぶぞーい!
発熱39度。熱出し遊びはあんまり楽しくなひ・・・。うーんうーんとただただ唸るだけの遊び。
さくらももこ「さくらえび」読む。
3月11日(火)
新宿にて、ちびまる子ちゃんの本に収録する対談をたまでする。インタビュアーが旧知の飲み友達だったので、やりやすい。
後、今回の会場である全労災ホールに楽器のセッティング等の作業に行く。
皆川博子「骨笛」読む。
3月12日(水)
おとといからの熱がまだ下がらず、しかたなく医者に行く。
「風邪ですな。薬を飲んでとにかく安静にしていなさい」
と言われるが、もちろん明日から舞台の本番。安静にしてる余裕はないんですじゃ~、オロオロ。
「あのー、それで風邪薬なんですけど、子供の頃虚弱体質で薬をたくさん飲んだせいか、風邪薬飲んで効いた事が実はないんですが・・・」
と言うと、
「風邪薬、なんてものは世の中にありません。ただ症状をおさえる薬があるだけです」
そーいやころっと忘れていたけど「風邪薬を発見すればノーベル賞」だったっけ。
会場にて場当たり(照明や音響の調整、細かな立ち位置の確認等の作業)。
前川健一「アジアの路上で溜息ひとつ」読む。
3月13日(木)
朝、熱を計ると下がってる。良かった~。というか俺の平熱は36度5分だが、35度7分。ヲイヲイ、平熱より8分も低いよ。このままどんどん下がって、冷凍状態になったら、俺の体で誰か凍ったバナナのように釘を打つ実験をしてみてくれ。・・・あっ、嘘だからな。本当にやるなよ。
行きの電車は偶然R君と同じ電車。今回の公演のスポンサーから頂いた顔面クリームを使ってるという。
R君の顔を見てみる。ドレドレ、ツマワ、クリームニヨリ、ウツクシクナッタカナ?
「R君、クリーム以前に、口のまわりに付着している歯磨き粉落とした方がいいよ・・・」
「・・・じゃ、あたしは『口のまわり歯磨き粉店員』として、三年間、店に立ってたの?」
「その可能性はあるね・・・」
「イヤアァァァァ!!」
もしもニヒル牛でにこやかに歯磨き粉を口のまわりにつけている店員をみかけたら、
「さすがアートショップのオーナー。お化粧もアートだ!」
と感嘆してくれ・・・。
「劇団ダンダンブエノ公演『いなくていい人』」公演初日。
今回は公演時間が短い(約1時間半)ので、あっという間に終わった気がする。もっともダンス公演だから、普通のお芝居より遥かに体力を使うので、このくらいでちょうどいい長さなのだろう。
もしもこれが4時間、5時間となったら、みんなバッタバッタと倒れていくんだろうなー。
そーいうのも一度くらい観てみたいな。「デスマッチダンス公演・リアルギックリ腰の巻」
・・・いや、やっぱり観てるのも辛いから、いいや。
中島らも「舌先の格闘技」読む。
3月14日(金)
本番2日目。俺達に小さなミスが連発して「しょぼたま」が「しょぼい音のたま」ではなく「しょんぼたま」つまり「しょんぼりたま」になる。なんか、秋田あたりの訛りのようだな、「しょんぼたま」。
「しょんぼたまの演奏でも、見に行くべー」
演出家の井手さんが、
「石川さんのホームページ見ましたよー。おっもしろいですねー。日記に僕の事も書いて書いて!」
と言われたので、書きます。
えー井手さんは、自らが主宰する「イデビアン・クルー」というダンス集団の頭です。
ニューヨーク等、海外でも高い評価を得ていると聞きます。
振り付けは、ダンス界の事は知らないので比較は出来ないけど、かなりの異端児らしいです。
確かに今回の公演の振り付けでも、しっとりとした曲にあえて激しい動きの振り付けをつけたり、あと、日常の些細な人の動きをデフォルメしたような「これもダンス?」という前衛的な踊りが多い気がします。もっとも前衛的といっても決して難解なのではなく、今回がとくにそうなのかもしれないけれど、コミカルな動きが多いです。笑えます。
なので普通の「ダンス公演」を期待している人には、賛否両論もある気がします。
もちろん俺は完全に「賛」です。
お世辞じゃなくてダンスに限らず、音楽、演劇、美術なども「いかにも」といったパターン化されたものが、退屈で苦手だからです。ま、これは人それぞれの趣味でしょーが。
あと人としての特徴で言うと、まぁ体つきは俺の眼には中肉中背に見えるのだけれど、井手ちゃん(実は年下なので「ちゃん」づけのこと多し)は、自分が写った写真や鏡を見る度、
「この写真おかしいっ! この鏡おかしいっ!」
と決してそこに写った自分の姿を認めようとしません。たぶん、井手ちゃんのかかわった写真や鏡が、全部壊れているのでしょう。
但し、踊りはさすがで、振り付けの見本をする時の腰つきとかは、役者さんたちとは明らかに違うなめらか~な、まろやか~な、ふぁんたじぃ~なものです。
あと特徴をあげるとしたら・・・
お客さんの中には結構有名女優さんなども来てくれていたのですが、それよりプロレスの高田選手が来た事にえらく興奮し、
「なんで僕に教えてくれなかったの!! 高田選手に寄り添って一緒に写真を撮りたかったのにぃ!」
と言っていました。
とにかく井手さんは本当にナイスゲイ、いっ、いや、ナイスガイですっ!!
橋爪紳也「日本の遊園地」読む。
3月15日(土)
昼夜二回公演がんばっちゃうよーん。
一青窈さん、楽屋に挨拶に来てくれる。
源氏鶏太「艶めいた遺産」読む。
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