テキトー日記02年11月(1)
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11月1日(金)
メリィズ、渋谷エッグサイトでライブ。結構ひと昔前の、ブルース・ロック調の曲が多いのだけど、ってえことはそこそこヘヴィでテンポも早いので、体力がいる。平均年令が40をはるかに越えている俺たちは、無理をして心臓麻痺を起こし、1曲演るごとにポックリポックリと音たててメンバーが倒れて死んでいき、「最終的に誰が残ったでショー」は、歴史に残るライブになるであろうが、それをやる気はなかったので、1曲やるごとにMCをはさんでいく。といっても、それほどトークに長けた者もいないので、
「えーと、次の話題は・・・」
と話題もつきた頃、全員共通の知り合いはいないか、と考えてみると、・・・いた。
坂本弘道である。
俺は「パスカルズ」で、メリィさんは「エコーユナイト」で、佐藤君は「COTUCOTU」で、それぞれ同じバンドメンバー。川口君や横川さんもいろんなセッションで何かとやっており、「共演者数世界一でギネスブック入り」を密かに企んでいると噂される、彼との思い出話をそれぞれした。
・・・今、これを見ている貴方も、一生に一回は、坂本弘道と何故か共演する機会は、必ずや必ずや訪れるであろう。その時は、俺のダチだぁ。よろしくたのむぜっ!
さくらももこ・さくらめろん「おばけの手」を読む。
11月2日(土)
うちのベランダにある桜草がずっと咲いている。春頃も咲いていたし、夏も咲いていたし、秋だって咲いていたし、「平年より早い12月の気候」とテレビの天気予報が告げる、この冬もまだ元気いっぱいに咲いている。
植物には詳しくないが、さすがに不審に思い、調べてみると、
「咲き時は4月頃」
とだけ書かれている。
・・・もしや、頭のとおっても悪い桜草で、季節が変わったのに気がつかずに、
「あははっ、花咲いてるのって楽しいやあっ。あはははっ!」
と咲き続けているのだろうか。
もしくは、チャレンジ精神旺盛なやつで、
「くっ、くそおっ、暑かろうが、寒かろうが、俺は咲き続けてやる。むむむっ、やるともさっ!」
という意味不明なド根性桜草なのだろうか。うーむ、謎だ。
宮本輝「異国の窓から」を読む。
11月3日(日)
「しょぼたま」用のパーカッション台の紙パイプを「無印良品」で買う。しめて600円也。
海外に持って行く時は、いつもライブが終わると置いてきてしまう。今回はファンクラブツアーだったので、ファンの人に無理矢理、
「記念のおみやげになるよー」
とおしつけてしまったが。
何故なら、結構かさばるし、数があるとそれなりに重いので、そのせいでコインロッカーに入れるとか、宅急便で送るとかよりも、新しく買った方が安くつくからだ。それに、新品のパイプは、紙のいーい匂いがたまらんしなっ!
・・・って、そんなわけわからん匂いフェチじゃないわい!
吉行淳之介「詩とダダと私」を読む。
11月4日(月)
高円寺のスタジオで、マツさんにたのまれ、大工哲弘さんのCDのレコーディング。
俺はコーラスとパーカッションとオモチャ笛で2曲参加。
大工さんと言えば八重山民謡界の大御所で、「無形文化財」にも指定されている。
でも「無形文化財」ってなんかいいなー。俺も欲しいなー。名刺をさっと出すと、
「無形文化財 石川浩司」
って、ちょっとかっこいいな。
もっとも「無形」っていうのが言葉のあやなんだろうけど、不思議な語感は否めない。
「無形、って、あんたそこにいるでねえの。それともあんた、幽霊か?」
と秋田あたりの居酒屋のおっさんに言われたら、返す言葉がないな。
どちらにしろ、まだ無形文化財ではないし、秋田の居酒屋に行く予定も今のところないが・・・。
島尾敏雄「硝子障子のシルエット」を読む。
11月5日(火)
「BUBKA」原稿書き。いつも締め切りの日が来ないと、書き出せないのよねー。
だって、突如大地震がおきて、日本沈没したら、書いただけ、損だもん。
水上勉「老いてこそ電脳暮し」を読む。
11月6日(水)
事務所にて打ち合わせ。俺はちょっと遅刻して行ったのだが、どうやら何かを買い物に行くGさんと知久君と、駅のエスカレーターですれ違ったらしいのだ。しかも、俺の目の前で、彼らは手まで振ったらしいのだが、全く気がつかず。
「人の顔を覚えるのが世界一苦手」な俺でも、さすがにメンバーの顔は、おぼろけながら、うすぼんやりながら、わかる。しかし、何故ふたりに俺は気がつかなかったのか?
それは俺が「町では、人と絶対に目を合わさない」からだ。
さすがに最近は少なくなったが、以前は人と目が会う度に、
「あっ!」
という宇宙人か雪男かエリマキトカゲかタスマニアデビルかピンクの空飛ぶ象でも見つけたような顔をされることが多かったので、その癖で、「とにかく人と目を合わさない」が習慣となってしまったのだ。
なので、俺の知り合いの人よ。どうか声をかけてくれ。別に俺は無視はしないから。というより、知り合いを無視するような度胸は、かけらほども持ち合わせてないから。もちろんジジイなので耳も昔より遠くなっているが、なんとかいけると思うので。よろしくおねがいしますだー。
清水義範「酒とバラの日々」読む。
11月7日(木)
朝4時頃寝て、途中なんどか目が覚めたが、さしたる用事もないし、とにかくお布団の中はあったかくて、幸せの青い鳥がパタパタと俺のまわりを、
「石川君、石川君、あったかいねー。気持ちいいねー」
と飛んでいるので、そのまま幸福の中にいて、ハッと時計を見ると、夜の6時。14時間も寝てしもうたわいー。ま、でも、その間はずっとシアワセだったわけだから、いいっかー。でも、ううっ、寝過ぎで頭が・・・痛い。
源氏鶏太「火の誘惑」読む。
11月8日(金)
しょぼたまのリハーサルと打ち合わせ。いつもはだいたい終電までやるのだが、少し早く終わったので、駅前の「シャノアール」でコーヒーとツナサンド。ここのツナサンドは旨くて、180円と破格なので、お気に入り。
最近は寒いので、喫茶店についふらふらと入ってしまう。
トイレがウオッシュレットのところも多いので、お尻への暖かいお湯の噴射も、癖になるわね。オホホホホ。
干刈あがた「十一歳の自転車」読む。
11月9日(土)
高円寺「SHOW BOAT」でしょぼたまライブ。共演、というかメインは、ネパールのバンド「ナマステバンド」。リーダーは、おととしネパールでたまがミュージック・フェスティバルに出させてもらった時の主催者でもある。ちなみに同バンドでコーラスを担当する彼の奥さんのアヤコさんは日本人なので、なにからなにまでお世話になった。
ライブは長時間に及び、本当はセッションとかで最後に一緒にやりたかったのだが、終電の時間切れで外へ。その頃には、お客さんもほぼネパール人だけになって踊り狂っていて、一瞬、ネパールにいる錯角に陥る。
駅に向かって歩いていると、バリツアーにも来てくれたファンの女の子が。
「あっ、ライブ来てくれたんだぁ!」
と言うと、
「いえ・・・今、奥田民夫を見に行ってきた帰りです」
と言われてギャフン。
と、ちょっとその彼女と立ち話をしていると、全く関係ない方向から自転車がスイーッと近づいてくる。と、やっぱりバリツアーに来てくれた男の子で、普通に、
「あっ、石川さん。バリで撮ったこの写真、スタッフの方に渡しておいてもらえますか」
と写真を渡される。
やっぱり高円寺は、いまだに、たま色の濃い町なんだなー、と妙に納得してしまった。
村松友視「夜のグラフィティ」読む。
11月10日(日)
3日前に引き続き、この日は18時間も寝てしまう。1日のうち、起きているのはたった6時間ということか。本格的に冬眠体制だな。
夜、理由は忘れたが、なんだかイライラすることがあって、
「あぁ、どこかに怒りをぶつけたいよー欲」がうずまいていた。これは年に何回かあるもので、まぁ、人間やってりゃしょーがないものと思ってる。
と、そこにもうひとつ怒りが加わってしまったのだ。
なんと、ヨーグルトを食べようとしたら、小さなスプーンがないではないか!
ヨーグルトと言えば、小さなスプーン。
これは桃太郎が鬼退治に行った時代からのひとつの常識だ。
それがくつがえされたのだ。
妻は、カレーを食うような大きなスプーンを、
「これで食べな」
と持ってきたのだ。
いつもの俺なら、
「なんだ、小さいスプーンないのか~」
と言って、大きなスプーンで無理矢理食べるところだが、この日の俺はカリカリして、その怒りの鉾先を探し求めて旅をしている旅人のようなものだったので、
「でかいスプーンで、ヨーグルトが食えるかぁぁぁぁぁ!!」
とキレテ、テーブルの上に、ヨーグルトを叩きつけた。
まさに、鬼。鬼。鬼。
しかし、一言いうなら、それを叩きつける前に、
「これは3個100円の安いヨーグルトだ。つまり、1個33円。33円で、怒りの欲求が解消されるなら良いだろう」
という計算を一瞬にしてしている自分がいたのも、確かだ。
おそらく、ひとつ150円のヨーグルトだとしたら、ヨーグルトには手をつけず、スプーンだけを壁にでも叩きつけていただろう。
・・・それが、俺という人間の限界だ。
ちなみに怒りがおさまったあとは、無言になって、何も言わずに寝にいってしまった妻に、どうやって謝ろうかオロオロと小1時間悩み、とりあえず、テーブルをていねいにていねいに拭いた事は、言うまでもない。
椎名誠「モンパの木の下で」読む。
11月11日(月)
まず、本日、最初にすることは確実なまでに決まっている。
小さなスプーンを買うことだ。
普通のに加えて、懐かしい「アイスクリーム用」の、先が四角く、少し反っているやつも購入。これでアイスクリームも雰囲気いっぱいにむさぼり食えるわぁー。乙女心を持つあたしには、うってつけね。
ニヒル牛へ。「今月のピックアップ」の写真を撮りに行く。
しかし「今月の」と銘打っているわりには、前回から3ヶ月も経ってしまった。
「今月の健さんの笑顔」も、全然毎月じゃないしな。まー、細かいことを気にしない、おおらかな人間になろうや。アッハッハー。
そういえば、今日は「たま」の誕生日。って、この日は全然気づかなくて、今、日にちを見て気づいたのだけど。18才。子供と大人の境界線。
あれ? 18才って、何が出来るんだっけ。酒と煙草は20才からだよねー。選挙権もないし。・・・あぁ、「大人の映画」が見られるのか。結婚も出来るしな。よしっ。これからの「たま」はアダルト路線でちょっとセクスィーにいってみるか。
俺はすでに舞台衣装が悩殺下着だからいいとして、Gさんにはピチピチのズボンをはいてもらって、モッコリを強調するか。ズボンの脇から、時々黒ビキニブリーフを覗かせるのもいいかもな。
そして知久君は、えーと、えーと、知久君は、あぁ見えて結構がっしりとした筋骨隆々タイプだからな・・・そうだっ、知久君は、男のその筋の人にセクスィーさをアピールする為、逆に男らしさを強調するか。
時々、
「あぁ、今日はなにか暑いなぁ」
とか言わせて上半身裸になり、胸毛をチラリ。胸の筋肉をピクピク。肩には何故か鷹がとまっている。男どもが「ウォー!!」とざわめく。
さらに、
「まだ暑いやぁ」
と言ってズボンも脱ぐと、そこには越中褌がさり気なく。男どもは辛抱たまらなくなり、ステージに駆けのぼり、「ワッショイ、ワッショイ」と知久君を胴上げする。
よし。こいつで男も女も、俺達のセクスィーさに酔いしれるはずだな。
これで、来年度も「たま」はバッチリだ! ホッホッホッ。
田辺聖子「日毎の美女」読む。
11月12日(火)
事務所にて、「たま通信」会報作りなど。
明日はパスカルズのライブなので、パーカッションセットをガラガラとキャリーでひきずって電車に。
でも俺は天賦の不器用の才能があるので、普通にキャリーを引いているつもりなのに、何故か道の途中でグルングルン回転してしまうのだ。
自動販売機の前で、ちょっとした段差に足を取られてグルングルン。
交番の前で溝にひっかかって、グルングルン。
駅のホームの何もないところでグルングルン。
電車の中で人と体がちょっと触れてグルングルン。
わしゃあ、ステージ以外では、踊り子になんかなりたくないのに、グルングルン。
グルングルン。
グルングルン。
グルングルン。
♪まわるまわるよ、回転木馬ー。
・・・って、木馬じゃなくて、ぶ格好なパーカッションのつまったバッグなんじゃいっ!!
はぁぁーーー、どうしてこうなるの?
室井滋「むかつくぜ!」読む。
11月13日(水)
パスカルズ、横浜「サムズ・アップ」でライブ。
俺は、昼過ぎに起きようと思ったら、お化けに体がふんわりと包まれていて、遅刻。
着いたらもう開場していて、お客さんがいる中、黙々とパーカッションを組み立てた。
今日は、ヴァイオリンのクリスチーヌがお休みで、変わりにMr.ムトーという謎の少年が参加。
ますますわけわかんなくなるパスカルズだが、この日は2ndアルバム「パスカルズが行く」の先行発売でもあった。1枚目のアルバムも良い作品なのだが、まったく宣伝せず、さらには流通にも流さなかったので、実質的にデビュー版みたいなもんだ。ちなみにパスカルズはこれ以外にヨーロッパだけで発売された「ふらんす・で・でおーる」というアルバムもあり、これはフランスのインディーズ・チャートで週間1位を記録したこともある。
(チャラッチャチャーン、CMコーナーでーす。 その流通に乗っていないパスカルズの1枚目と、ヨーロッパ版は「ニヒル牛」では、取り扱っています! 御買い物は、西荻のチャーミング・ショップ、「ニヒル牛」で!)
尚、全く知らない人の為に余計なお世話で書いておくと、パスカルズはロケット・マツを中心に15人編成(現時点で)のインストゥルメンタル中心のバンド。曲目はバンド名の由来にもなったパスカル・コムラードのカバーから始めて、現在は、イーノ、ヘンリー・マッシーニから、はてやバッハ、友部正人、そしてメンバーのオリジナル曲も半数を占めるようになった。
メンバーは基本的に、プロ、セミプロの音楽家で、いろんな他のバンドでも活躍中だが、本業を他に持っている人も多く、「TVチャンピオン家具職人選手権」で3位に入った家具職人、漫画家、植木職人、画家、某テレビ局の編成部長などなど。もちろん「たま」からも俺と知久君、サポートの斉藤君も参加してるぞ。
ちゅうことで、最近ようやく少し注目され始めた「パスカルズ」よろしくー。
グレイグ・マクラクラン「ニッポン縦断歩き旅」読む。
11月14日(木)
新宿にて、来年の音楽ダンス演劇ごちゃまぜ公演「ダンダンブエノ・いなくていいひと」の打ち合わせ。
俺達はしょぼたまで参加するのだが、フツーに考えたら、しょぼたまでは絶対に演奏しないような曲も依頼され、大変だが楽しみ。
帰りにひとりで歌舞伎町「天下一品」でラーメン。ここのラーメンを初めて食った時は衝撃的だったなー。
「スープに箸が立つ!」
今ではチェーン店も増えたが、やっぱりこの濃厚スープは好きで、たまにムショーに食いたくなるもののひとつなのだ。ムショー! ムショー!
永倉万治「荒木のおばさん」読む。
11月15日(金)
俺の音楽の師匠、突然段ボールがテレビに出る、というので見る。
ほとんど演奏時間がなくて残念だったが、驚いたのは、この日、共演で出ていたニューロティカ。たまと同じくらいのキャリアを持つバンドとして活動しているが、テレビによると、ある日、ボーカルを残してメンバー全員が脱退、しかしその後、新しいメンバーを集めて、またニューロティカとしてやっているという。
でも、メンバー総入れ替えで、同じバンド名というのは、い、いいのか?
例えばGさんが突如社長命令で、
「石川、知久はたまをクビ! 新しいメンバーを入れる!」
と言って、かわいいキャピキャピの女の子達をバックコーラスに迎えて、
「こんばんわ。『たま』です」
と言ったら、さすがに客の頭に、全員クエスチョン・マークが浮かぶであろう。
そう考えると、「バンド」というものは定義が難しい。
またありえないが、柳ちゃんが7年前(もう7年かっ!)にたまを抜けた時、脱退ではなく、
「今後は俺と石川で組んで『たま』をやる!」
と宣言し、それに対抗して知久君とGさんも、
「俺達もふたりで『たま』を続ける!」
と言った場合、どうなるのだろう。
やっぱり「本家・たま」と「元祖・たま」で争うのだろーか。
考えてみりゃ、不思議だよなー。
あ、でも、バンドじゃないけど「モーニング娘」とかも、メンバーがどんどん代わって、そのうちオリジナルメンバーは誰もいない、という事は充分に考えられる、というかすでにその方向に向かっているもんなー。
ま、バンドも生き物、ちゅうことですか。ウネウネウネ。動くよー。
清水志穂「君を待つあいだに」読む。
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