テキトー日記02年8月(2)

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8月26日(月)

 事務所で打ち合わせ。帰り、仕事の関係で女性マネージャーとふたりきりになる。
 そして、彼女は言った。
「ご飯でも一緒に食べない・・・?」
 みなと一緒ならともかく、仕事が終わって、上司とOLがふたりきりで食事・・・。
 ここで貴方の頭の中には、次のような言葉が走馬灯のように走るであろう。

 食事・・・バー・・・カクテル・・・
「あたしちょっと酔っちゃったみたい」
「少し休んでいこうか」
「でも・・・」
「いや、優しくするから、大丈夫だよ」
「でも奥さんが」
「いいから」
「じゃ、先にシャワー浴びて・・・いい?」

 こらこら、なんちゅう想像するんだね、君という人は!! はしたないぞっ!
 なーんて本当は、俺はそこで仮面ライダーのように「変身」したのだ。
「へーんしーん、トォーッ!!」
 そう、変身したものとは・・・一介のおばさん。以前の日記にも書いたが、本来俺は女で「おばさん」なのだ。占い師にもきっぱり言われたのだから、間違いがない。なので、マネージャーとふたりきりになる時は、すぐにおばさんに変身するのだ。
「じゃあ、駅ビルの食堂街行ってみましょうか」
「ああら、なにここ。高いわね。オムライスに1400円も払えるものですかっ!」
「あら、ここに『とろろ定食』が500円で食べられる店があるわ」
「しかも『ヘルシー豆腐パフェ』も350円だわ。デザートを取っても、3桁ですむわ!」
「ここにしましょ、ここに!」
 そうしてあたし達はお店に入り、愚にもつかない愚痴やら、「あの人もいい人なんだけどねぇ、ちょっとあそこがねぇ・・・」とかの噂話をする。・・・むちゃ、楽しい。
 しっかし人間、あれでおますな。「自分のことは棚にあげて」人のあれこれをちょっとの悪意で話すことほど、楽しいことはありまへんな。だいたいにおいて、「悪い」ことや「毒」なことは、噂話し程度の軽いものであれば、ストレス解消にはもってこいだし、娯楽としても、かなりなもののひとつやないやろか。金もかからんし。
 だから女性週刊誌もあれだけ売れるわけやし、なんせこの世の中から、そういうものが禁止されてしまったら、これほど潤いのないこともおまへん。やっぱ、他人の噂話しは、中年女性、いや、全女性の最高の共通の娯楽やあらしまへんやろか。
 って、なんかいつのまにか京女になってしもたけど、ほんに愉快な時間どした。今後も折りをみて、「おばさんの会」を設ける約束もしましたんや。
・・・ほな、さいなら。

 東海林さだお「ショージ君の青春記」読む。

8月27日(火)

 ニヒル牛の俺が出している手書きノートの大量注文があったので、新宿まで仕入れに行く。
 夜は「BUBKA」原稿書き。

 伊集院静「乳房」読む。

8月28日(水)

「BUBKA」取材で群馬の前橋へ。前橋は俺が小二から高三まで住んでいた、いわば故郷なので、いろいろ懐かしいこともあったが、30年ぶりにわかった衝撃の事実も発覚。詳しくは本誌で! (まるでBUBKAの宣伝だな、こりゃ)

 阿刀田高「雨降りお月さん」読む。

8月29日(木)

 お昼過ぎ、飛行機で福岡に向かう。今回は、「全日本チンドン博覧会」ゲスト2days、インストアライブ、「たまの温故知新ライブ」2days、及びそのリハーサルで、10日以上の滞在になるので、荷物も多い。なにせ、着替え等の他に、俺はマッサージ機や、ホームページの原稿を書く為、iBookも持っていくからなー。
 さて、全員飛行機のチケットは前もって渡されていて、この日は俺とGさんだけが一緒の飛行機だったのだが、各自、勝手に自動チェック・インして、向こうで落ち合おうと言ったのに、俺の真後ろがGさんの席だった。やっぱり、俺達は離れられない運命にあるのだなー。兄弟、飛行機が落ちて、死ぬ時は一緒だぜ。

 ところで飛行機に搭乗すると必ず流れる「緊急避難の方法」のビデオ。あれ、必要か? 緊急避難して助かった光景なんて見たことないぞ。空気のすべり台でスーッと乗客が降りて行く姿なんて、一度もテレビで見たことないけど、それで助かった実例はあるのか? まぁ、念仏のかわりのような、気休めグッズか。

 福岡到着後、今回のチンドン博覧会の実行委員長であり、「たまの温故知新」ライブでは、サポートキーボードも務めてくれるアダチさんと落ち合い、まずはやはりチンドン博覧会のゲストである大工さん(大工哲弘さん)が、沖縄料理屋でミニライブをやっている、というので覗きに行ったが、いつのまにか俺は「生活の柄」と「安里屋ユンタ」のコーラスをしていた。ギャラはソーキそば。

 それから明日のチンドン会場の太宰府へ。天満宮の隣の「文書館」という古い建物を宿泊施設として使わせてもらう為、そこに向かう。なんでも、相撲の九州場所の時は、どこかの部屋が、やはり宿泊場所として使っているとのこと。なんだか自分も相撲取りになって、巡業に来ている気分でごわす。チャンコが食いたいでごわす。ごっつあんでごわす。

 俺とGさんはゲストということで、みなは大部屋なのに、特別6畳の部屋をあてがわれて、寝る前になんとなくだべっていたら、突如、明日の出演者かスタッフかわからないが、酔っぱらいの兄ちゃんがガラッとドアを開け、しばらくGさんの顔を見て、
「どうも」
 と言ったので、俺達も、
「ど、どうも」
 と言ってドアをいったん閉めたと思ったら、すぐにまたドアが開き、
「『千と千尋』見ました?」
 と聞くので、Gさんも俺も、
「見ました」
 と言うと、
「そうですか・・・」
 と、またドアを閉める。と、3秒後、こらえきれなかったようにまたドアが開き、Gさんの方をまっすぐ見つめて、
「『顔なし』に似てますね!」
 と言って去って行った・・・。よっぽど言いたかったのだろうか。しかし「顔なし」に似ている、というのは喜んでいいのか、悲しんでいいのか、わからない。多分、どっちでもないな・・・。

 ところで、このチンドン博覧会は略して、みんな「チンパク」と呼んでいる。
 で、その「チンパク」だが、意外に若手のチンドン屋さんが多く、なかなかの美女も多い。
 その美女たちが、あっちで、
「チンパク」
 こっちで、
「チンパク」
 と言っているのは、何度聞いても聞き慣れず、ドキッとする。
 なかには、
「チン・・・パクッ!」
 と叫んでいる人もいて、一体どんな風俗街に迷いこんでしまったんじゃあぁぁぁぁー! と思うほどだ。略称とは、むずかしいもんだのー。

 伊集院静「機関車先生」読む。

8月30日(金)

 チンパクの俺達の出演は午後なので、昼過ぎまで俺はひとりでゴーゴーいびきをかいて眠っていた。
 ところが、あとで人に聞いたところ、チンパク自体は朝からやっていて、トイレが俺の寝ている奥の方にあり、さらに襖が少し開いていたらしく、スタッフや出演者が通るたび、
「まだ、たまのランニングの人は寝とる・・・」
「まだ、たまのランニングの人は寝とる・・・」
「まだ、たまのランニングの人は寝とる・・・」
 と、噂になっていたそうだ。

 さてようやくムクリと起き上がり、まずはテレビのインタビュー。偶然にも、司会は坂本ちゃんで、
「あら、あんたたち、なんでこんなところにいるのよー」
 と言われる。

 それから本番、チンドン屋さんとのセッションなどを無事済ませ、打ち上げ。
 旧知の梅津さんや関島さんらと飲んでいると、Gさんが、
「いい場所があるぞ」
 というので外に出てみると、天満宮の庭の蓮の池のところに、でべそのように庇のない、舞台のような休憩所があり、そこに寝転がって、空を見ながら酒を飲む。最高也。
 そのうち、知久君とGさんがなんとなく寝転びながら口琴をビヨンビヨン例のごとくやり始めたので、俺も腹を出して、腹太鼓で3人でセッションが始まった。静かな夜中の池の真ん中で、寝転びながらの演奏はとても楽しくて、
「この姿で、この演奏で、もう一度紅白に出たら画期的だなー」
 とか言ってゲラゲラ笑った。

 と、そんな馬鹿な事を言っている俺達のもとに、突如天空から、ラドンが舞い降りて、俺達をつかまえそうになった。いや、ラドンは大袈裟かもしれないが、とにかくどでかい鳥が、突然低空飛行で真上を通ったので、
「ウワッ!」
 とみんなビビッた。
 未来は誰しも予想がつかないものだが、まさかチンドン博覧会に出演に行って、巨大鳥に連れ去られて、空のいずこかに消えるとは、よもや思いもしないだろうからな。
 が、異様な様子の俺達を見て、ラドンもどこかに行ってしまった。
 ・・・助かった。

 椎名誠「白い手」読む。

8月31日(土)

 起きると、本日も、もう誰もいない。みんな昼間っから近くの温泉に行ってしまったようだ。仕方ないので俺は宿泊所のシャワーを浴びるが、機械音痴の性、もちろんお湯を出すことは出来ず、水シャワーを浴びる。おぉ、寒い、寒い。

 午後の本番、セッション等を終え、福岡に戻る。アダチ宣伝社の人で、離れの部屋が空いている、という家に一週間ほどごやっかいになることに。ありがてーことでござんす。
 飼い猫の「カステラ」がゴロニャンと人なつっこくまとわりついてきて、かわいい。町でおっちゃんが700円で売ってたそうな。
 ひさしぶりにアパート時代に戻った気分で、寝る。

 下川裕治「アジア赤貧旅行」読む。


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