テキトー日記02年7月

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7月1日(月)

 武蔵関、そしてさらに上石神井とカメラ散歩。「祥の湯」という銭湯に入湯。この頃毎日さんざっぱら歩いているせいか、体重計に乗ると最盛期より5kg減。ムフフフ。でも誰も「やせたね~」とは言ってくれないなー。くっすん大黒。

 それから西荻のニヒル牛へ。後、R君と一緒に「登亭」で串カツ定食を食ってから、クラシカルな喫茶店「DANTE」で珈琲飲む。
 常連らしいお客が、マスターに
「珈琲汁って、もうないんだっけ?」
「いやあ、あれは昔のメニューでして」
 と言っているのが気になった。
 珈琲汁・・・飲んでみたいような、飲みたくないような・・・。気になる・・・。

 谷井真理子「モクレン」読む。

7月2日(火)

 赤坂をカメラ散歩。う~む、おしゃれな町は基本的に興味がないので、難しいなー。ということで、アート風写真で誤魔化す。アートっていっても、ただシャッター押す時、ぶるんぶるんカメラを振り回すだけだけどな。

 室井滋「東京バカッ花」読む。

7月3日(水)

 上井草にカメラ散歩。やたら「アニメタウン」という旗がなびいてるんだけど、どこがアニメタウンだったのかはわからずじまい。しょーがないので、町にある「アニメ調」のものを片っ端から撮したらこんなことに。
 時間が早かったので、井荻もカメラ散歩。公園が多くて、子供が夢中ではしゃいでたのをついついボーッと見てしまう。俺にもあんな頃があったなー。

 と、実は今日で41才になってしまったのだ。バカボンのパパと同い年なのだ。だから、馬鹿をやってもいいのだ。楽しいのだ。これでいいのだ。

 ということで、最近同年代の人達で急死する人も出てきたので、意外に用意周到な俺は、ホームページ上に、遺言を書いてみた。これからも毎年、誕生日に更新しよっと。なんせ、毎年気持ちなんて変わるだろーからな。
 ちなみに、今、特に病気があるというわけではない。まぁ、ウォーター・インセクトと、ナチュラル・ペニススキンと、たまーにカットアヌス・ブロードと、そんな程度だ。
 一時期ライブ張り切り過ぎて心臓に負荷がかかった事もあったが、それもその後の検査では異常なし。ま、肥満は成人病の元凶とされているが、実は長生きするのは、統計的には、痩せている人よりも、ちょっと太り気味の人だというしな。但し「ちょっと」だが・・・。

 池波正太郎「むかしの味」読む。

7月4日(木)

 事務所へ。俺の角刈り頭を見て、みんな、
「なんじゃ、そりゃー」
 と言って、1時間位してから、Gさんがまじまじと俺の顔を見るや、プッと吹き出して、
「見慣れねぇー」
 と笑われた。ちなみに、知久君も遂に異様に飛び出ていた一本の前歯を歯医者で抜いてきたので、ぽっかり穴が開いてるので、
「歯、入れるの?」
 と聞くと、
「入れない。この方が口琴吹きやすい」
 とか。みんな頑固やなー。

 来月の打ち合わせ等するが、来月は北海道でロックフェスティバルに出て、福岡ではチンドンフェスティバルにも出る。この両方に出るバンドも珍しーのでは。
 そーいえば過去にはジャズフェスティバルにも出たことあるし、沖縄音楽のフェスティバルにも出たことある。かと思えば去年は「おかあさんといっしょ」で童謡調の歌うたったり、「ちびまる子ちゃん」ではアニメソングもやってる。本当に自分達でもわけわからんなー。
 しかも例えばそれが「今年は沖縄音楽でいこう」とかのプロジェクトならまだわかるが、そんな頭もなくて、ぼーっと好きな音楽だけしてたら、結果的にいろんなジャンルの人達に呼ばれてしまった感じだもんなー。
 あとやってないのは、クラシックぐらいだけか・・・それも俺と知久君参加の「パスカルズ」では、バッハの曲に無理矢理歌詞つけて歌ったりしてるしな。ま、面白い音楽はどのジャンルにもある、ってことよっ!

 東直子「春原さんのリコーダー」読む。好きだった句。

『そうですかきれいでしたかわたくしは小鳥を売ってくらしています』

7月5日(金)

 下井草鷺ノ宮カメラ散歩。このあたりになると、駅間距離が短く、南北にしか動けない。実際、南下して、同じ道を帰るんじゃ面白くないからと、一歩横の道を戻ったら、道が多少前の道と平行じゃなかったみたいで、ふたつ先の駅の地名が出てきてしまったので、「オヨヨヨ」と、あわてて方向転換したりする。団地が多い。給水塔カックイイ。

 島村洋子「ポルノグラフィカ」読む。

7月6日(土)

 都立家政カメラ散歩。これといった撮るものがなかったので、
「困った時の老人頼み」
 という言葉があるとおり、町のロージン達を撮らせてもらう。町の風景を撮っているかのようにみせながら、さっと横を向いて老人を撮る。気の弱い俺にはビクビクものだが、
「ここが、男の気概の見せどころじゃい!」
 と、ボク、ガンバッタヨ。

 野方は、20代に高円寺に住んでいた俺は、西武線に住んでいたR君を、よく歩いて送りに来た駅。
 友人のカブラギは現在もこのあたりに住んでいるので、奴の汚いアパートを撮影して「野方の実態」ということにしよーとしたが、電話をしてもいやがらねぇ。また、「タンタン」でギョーザにビールでもやってる頃か。ちっ、役に立たない男だぜ。
 でも「ヤッホー通り」を含めて、当時とあまり変わってない印象で、ちょいと懐かしい。

 夜、台湾で買った、巨大化け物プリンを食べる。と、
「・・・ウンゲロ~!! なんじゃこりゃ!!」
 と思わず、松田優作。
 まずくて、R君ともども、一口しか食べられない。
 昭和初期に生まれていたら「懐かしい味」だったのかもしれないが、戦争を知らない子供たちの俺達にはちょっとキッツイ。
 流しに「もったいないおばけが出るよ~」と言いつつ流したら、ゲル状なのに、巨大過ぎて流れていかないで、何かプルプルとした生物のようで、流しの中でアハハハ笑っていて、ちょっと怖かった。

 俵万智「三十一文字のパレット」読む。短歌にちょっと興味わく。

7月7日(日)

 七夕。沼袋にカメラ散歩。「一ノ湯」という銭湯に入湯。岩風呂もあって、ハー気持ちよし。
 後、「猫丸」という、いい感じのジャズ喫茶でコーヒー。ジャズ喫茶なのに、壁にアイドルのレコードのコピーがコラージュしてあるのが、意味不明。

 桐野夏生「ファイアボール・ブルース」読む。
 そーいえば、昔、桐野夏生さんと麻雀やって、国士無双を振り込んだ事がある・・・くやしかった。

7月8日(月)

 新井薬師前をカメラ散歩。線路脇の小学校の壁絵が、ちょっとアウトサイダー風で気に入った。新井薬師にも行くが、露天が出ていて、祭りをやっていてタイムリー。でも、子供の時のよーなワクワク感がもう全然なくなっちゃった自分に気づいて、ちょっと淋しい。

 中井をカメラ散歩。なんか「西武線風下町」の風情。暑いけど、風があって気持ちいい。公園で休んでいると、手の上を蟻が通りすぎて行く。どこに行くの? どこにも行かないの?

 夜は、「BUBKA」原稿書き。

 群ようこ「街角小走り日記」読む。

7月9日(火)

 下落合をカメラ散歩。ここは、西武新宿線28駅でおそらく唯一、商店街のない駅。
 駅前に古い旅館の廃墟があるという噂を聞いて楽しみにしていたのだが、時すでに遅し。それらしき場所はでっかい駐車場になっていた。やっぱり廃墟物件は、時間が命だねぇ~。
 台風が近いので、公園のブランコが誰も乗っていないのに、ずっと揺れてる。
 まるで、生まれなかった子供達が楽しそうに漕いでるかのように。

「世界湯」という銭湯へ。脱衣所のクーラーの前で、パンツ一丁で、1時間くらい本などペラペラしながらフニャ~とくつろぐ。この散歩で、最近すっかり銭湯にはまってしまった。やっぱり広い浴場はいいっすな~。

 夜は「北海道新聞」の原稿書き。

 福田利子「吉原はこんな所でございました」読む。
 昔の吉原が、いかに粋な遊び場所か、そして今はそういう大人の粋な遊び場所がいかにないか、目から鱗だった。

7月10日(水)

 台風なので、何もせん。

 藤臣柊子「女どうし」読む。

7月11日(木)

 事務所へ。「歌の大辞テン」のコメント録り。後、「たま通信」の為、ビルの屋上で風に吹かれて、ビール座談会。へろへろへろ~、これが仕事とは、こりゃまった、愉快だね。

 アシュラ・K・ル・グウィン「帰ってきた空飛び猫」読む。

7月12日(金)

 高田馬場カメラ散歩。いつのまにか各国料理のレストランが多い、国際的な感じの町になっていた。
 ここの古書店街には、昔よく通ったもんだ。神保町の古本屋に比べて、古書が少なく、読みやすい本が多かったからなー。今だに店頭に「20円均一」とかあって、「おおっ、安い!」と思う。
 でも良く来ていた安い名画座は、二軒ともなくなっていて、ちょっと淋しい。

 夜は紀伊國屋ホールにて、ナイロン100゜Cの芝居「フローズン・ビーチ」を見る。ケラさんの、岸田戯曲賞受賞作品の再演だ。初日の乾杯にも出席。峯村さんとふたりで、
「あたしたち、痩せたのに、誰にも気づかれない・・・」
 と嘆き合う。
 ふたりとも、もともとの容積が大きいので、キロ数にしたらそこそこ減っていても、全体重のパーセンテージからしたらたいしたことないので、気づかれないんだな~と、ガックシ。やっぱり元がデカイと駄目なのね~ん。

 林望「くりやのくりごと」読む。

7月13日(土)

 西武新宿カメラ散歩。遂に1ヶ月以上に及ぶ「西武新宿線カメラ散歩の旅」もゴール! 28駅全駅4時間ずつぐらい歩いて写真を撮ったプチ快挙だが、誰も祝ってくれる人もなし(笑)。大久保寄りの出口に出ると、これがもう、
「ここは本当に日本かっ!?」
 というほどの、ハングルの嵐。日本語より、圧倒的にハングルの方が多いのだ。
 と、その時、完走した安心感からか、はたまた町中に溢れるキムチの匂いにやられたか、ふっ、と俺は気が遠くなっていくのを感じた。

 三浦哲郎「木馬の騎手」読む。

7月14日(日)

 気がつくと、夜だった。時計を見ると12時近い。
「まずい、西武線の最終に乗り遅れる」
 そう思いながら、夜道を歩くが、いつまで経っても駅に着かない。
 時折あらわれる看板には、相変わらずハングルの文字が多いので、新宿であることは間違いないと思うのだが・・・
「それにしても風景がなんかおかしいぞ」
 そう思って、もう一度ゆっくりと四方を見渡した。
 そして、俺は叫んだ。
「ここは、ここは新宿なんかじゃない! ・・・本物の韓国だっ!!」

 ・・・てなことで、本当はヒコーキに乗ってひとりでソウルにやってきたのでした~。
 そして今向かっているのは、義姉に教えてもらったサウナ。ま、健康ランドみたいなものだ。
 なんせ、ついこの間も台湾に行ってきたばかりなので、妻に、
「成田までの交通費まで全部入れて5日間、6万円で行ってくるから!」
 と言って、拝み倒して出てきてしまったのだ。

 とはいうものの、まず交通費がなんだかんだで35000円。残り25000円だが、ホテルは日本並に高く、安ホテルでも5~7000円はする。ちなみに6000円だとして、4泊すると、すでにそれで24000円。残り1000円で5日間では、さすがに飯も食えなくて、路上で金ダライを前に、おこもりさんしぇねばなりましぇ~ん。
 ということで、安くあげる為には、やはり宿泊費、ということでサウナの仮眠所に泊まることにしたのだ。
 ま、本当のことを言えば、
「しょうがないわね~ 8万ぐらい出してあげるから、ちゃんとホテルに泊まりなさい。もう、若者じゃないんだから」
 と妻は言ってくれたのだが、
「いやっ、なんとしてでも6万で収める!」
 と男の意地を見せた。というか、ま、一種の「倹約でどこまで楽しめるか旅行」をしてみたい、が本音なんだけどね。

 ということで、サウナに着いた。
 しかし空港からバスに乗って、ソウルの町について数十分後には、大勢の韓国人のチンチンの真っ只中にいる俺って・・・。
 しかも腹も減っていたのだが、結構広いところだと聞いていたので、食堂くらいあるだろ~と高をくくってたら、夜中でもう閉店していて、売店だけ開いてて、ようよう手に入れたのが、「かっぱエビセン」の晩飯・・・ちょっぴり、淋しかった。

 江國香織「つめたいよるに」読む。

7月15日(月)

 都会のソウルはトーキョーとあんまり変わり映えがせず、つまらないので、バスに乗ってプヨという田舎町へ。途中、サービスエリアでは、羊羹があったので、思わずむしゃぶりついてしまいましたー。
 ってことで、プヨの町は適度に田舎、だけど市場や街もちょっとあって、いい感じ。ホテルも田舎に来るとグッと安くなるので2500円でなかなか快適な宿を取る。
 昼飯はプルコギ(焼き肉定食)900円を食べたけど、これが、
「わしゃあ、相撲取りではないでごんす。ごっつあんです。あ、ごっつあんと言っても、後藤真希のことじゃないでごんす!」
 というぐらいの凄い量。なんせ直径30cmはある鍋に肉や野菜がてんこ盛りで、さらに、キムチやらサラダやらスープやら、小鉢が6種ぐらいつく。日本の感覚なら、3人前はゆうにある。
 しかし、
「イルボン(日本人)は食が細いね。だから、ワールドカップも、あそこまでしかいけないんだよ。カカカカカッ!」
 と思われては国辱だ。グモモーグモモーと眉毛を吊り上げ、たいらげる。
・・・あぁ、せっかく最近減ってきた体重が、元にもどってゆく~ゆく~ゆく~~~

 カメラ散歩をしながら町を行くと、市場の檻にでかい犬が。不穏な気がして、その横を見ると、
「イヤーーーー!! 犬の生首が引きちぎられて売られてるぅぅぅぅぅ!!」
 しかもすっぱり包丁で切った感じではなく、まさに「引きちぎられた」という感じで、犬も相当苦しんだのか、白目を向いて、歯を剥き出しにしているぅぅぅぅ!! 怖いぃぃぃぃぃぃぃ!!

 ま、しかしこれも文化の違い。どこかでも一度書いたが、韓国人にとっては、逆に日本人が馬を食うなんて信じられないそうで、「なんて残酷なっ!」ということらしいからなー。ま、習慣の違いだから良い悪いではないけど、やっぱりショッキングだったなぁー。

 夕方は池や川に行って、子供たちが夢中で遊んでるのを見ながら、ボーッと田舎の心地よい風に吹かれる。

 阿佐田哲也「黄金の腕」読む。

7月16日(火)

 プヨから朝バスでソウルへ。すぐにそのまま地下鉄から郊外列車に乗り入れてるインチョンという町へ。ここはソウルが東京なら、横浜にあたる港町。鉄の錨や網などを売っている、煉瓦作りの無骨な港湾道路を歩く。デパートの地下でピピンバ食べて、ソウルに戻る。

 「ソウルの芸術家達の集まる町」という町あたりをうろつくが、う~ん、という感じ。オリジナリティはあまり感じられない。できそこないのキースヘリングとか、そんな感じだった。
 ガイドブックによると、包丁を叩いて、それをリズムにしながらコメディ芝居をする話題の「MANTA」が400円から見られるという。専門の劇場も作り、ロングランしているようだ。こりゃ安いと劇場に行くと
「4000円の席と3000円の席と、どちらにしますか」
 と言われてギャフン。
「節約旅行なんだから、予定が狂うでガンス~」
 と思いながらも、一応大人の顔の俺は引き下がるわけにもいかず、顔を引きつらせながら3000円の席で見るが、席は別に悪くなかった。
 ステージはそれなりに面白かったが、やはりニューヨークのオフブロードウェイで見た「ブルーマン」と比較すると、「リズムを重視した、客いじりありのコメディ・ショー」としては、どうしても若干の見劣りがしてしまうかも。

 夜は東大門のデパートのフード・センターで「ミックス・トッポギ」400円を食う。トッポギとは、マカロニ状の餅に、コチジャンなどで甘辛く味を整えたもの。で「ミックス」とは何がミックスされているのかと思ったら、汁なしインスタントラーメンだった・・・。

 そして今日の宿泊もサウナ。で、ここはお薦めなので、韓国にひとりで貧乏旅行したい人には絶対いいぞ! 700円で、サウナ2種、風呂3種、プールもあって、仮眠所二段ベッドで結構ちゃんとしていて、ゆっくり眠れる。但し、サウナなので、いったん入ると出入りは出来ないのと、食事を取るところはないので、それらを済ませてからゆっくり泊まろー。場所は東大門の「フレアタワー」というビルの12階だ。もちろん女性用もあるぞ。24時間営業なので、朝もいつまで寝ててもいいし、昼間はアスレチック・センターも無料で使えるぞ。

 わかぎえふ「ばかのたば」読む。

7月17日(水)

 フレアタワー横のコインロッカー(12時間50円)に大きな荷物を入れて、チュンチョンという山間の町へ列車で行く。駅の構内に変な木彫りの人形がたくさん飾られていて、面白い。
 ガイドブックによると、駅前から細かい路地が続いている風に書いてあったのだが・・・おいっ!「自由旅行」! ちょっとはちゃんと調べんかーい。きのうの「MANTA」の料金といい・・・。駅前には、巨大な軍事基地がズデーンとあり、カメラなんかかかえている日本人は不審者として怪しまれちまうじゃねーか。町はそのぐるりと回った向こう側で、何もない壁伝いに30分も歩かねば行けないじゃねーか! ということで、炎天下の中、ひーこらいいながら町へ。

 先月、台湾で角刈りにされてしまったので、ここでも床屋に飛び込み、今度はパスポートを見せて丸刈りにしてもらう。普段床屋に行かず、家でバリカンで妻に刈ってもらっているので、人にひげ剃りされたのなんて10年ぶりくらい。気持ちいい。ドリンク(栄養剤)のサービスもあり、900円。

 駅前でうどんを食うと、串刺しになったおでんのような物が載っていて、おかしい。列車でソウルに戻り、根本敬の本にあった売春街をこわごわうろつく。まだ夕方だったので、おねーさん達が鏡の前で身繕い。と、呼び込みのおばちゃんがしつこく声をかけてくるので、俺は拳銃よろしく、カメラをサッと取り出してそのおばちゃん達の方に向けると「ノーーー!!」とおばちゃん小便ジョジョーとびびらせる。

 それからよーく計算して、微々たる残り金でデパートで胡麻油、コチジャン、韓国海苔などのおみやげを買ったら、バッグのチャック壊れて、不器用なので直すのに30分くらいかかって、また昨日の東大門へ。
 今日は祝日だったらしく、いくつものデパートの前で、ロックコンサートや、ブレイクダンスのショーなどやってる。昨日のフード・センターに行って、今日はサムゲタン(一匹の鳥の中にいろんな具をつめた物)や、デザートに派手なシャーベットなども食う。合わせて950円。読み終わった文庫本をジュースの自販機の取り出し口の中に寄贈し、荷物をコインロッカーから出して、今宵も昨日のサウナへ。

 ねじめ正一「どれみても純情」読む。

7月18日(木)

 朝の便でソウルから成田へ。バスから見たインチョンの空港近くの荒涼とした風景がとても良かった。日暮里で電車を見送って、駅の立ち食い天玉ソバ食う。う~む、これぞ俺にとって日本の味也。うまか、うまか。

 泉麻人「コラム百貨店」読む。

7月19日(金)

 整体行って、漫画喫茶で雑誌読む。たまったメールに返事書いたりする。

 重松清「見張り塔からずっと」読む。

7月20日(土)

 「BUBKA」の取材で北千住へ。詳しくは本誌で書くが、町の占いというのを初めて受けた。と、
「あんたは、本来、女じゃな!」
 と言われる。う~む、それで噂話好きな、おばさん体質だったんだな~、と納得。

 宮内勝典「南風」読む。

7月21日(日)

 テラスで煙草をふかしながら何か物を取ろうとしたら、はずみで煙草が手に「ジュッ」と押しつけられ、この年になって「はじめてのおつかい」ならぬ「はじめての根性焼き」をしてしまう。
 まだまだ世の中には、未経験の事が多いの~。

 しりあがり寿「しりあがり寿の多重人格アワー」読む。

7月22日(月)

 しょぼたまリハーサル。打ち合わせ等。

 瀬戸内寂聴「無常を生きる」読む。

7月23日(火)

 暑くて外に出る気にならず。ビデオでフェセル兄弟の映画「ミラクル・ペティント」だけ見て、あとは飯と昼寝だけの1日。
 朝、卵2個かけご飯。
 昼、インスタントラーメン。
 夜になって、R君帰ってきて、やっと具だくさんのナポリタンにありつける。
 ううむ、「正体はおばさん」と占われた俺だが、どーも飯だけは作れないんだよね~。
 独り暮らしの時も「モヤシ炒めライス」とラーメンばっかりだったからなー。

 「伊東静雄詩集」読む。

『この蒼空のための日は
 静かな平野へ私を迎える
 おだやかな日は
 またと来ないだろう
 そして蒼空は
 明日も明けるだろう』

7月24日(水)

 「スイッチ」というゲームの原稿書き。

 ゴールズワージー「林檎の木」読む。

7月25日(木)

 「あぁ、今日は岡山か~」と朝、時計を見るとガビーン! 寝坊しとるぅぅぅぅ!!! 俺に取って初めての飛行機乗り遅れだ。マネージャーに急遽連絡、新幹線で追いかけるが、財布の中は新幹線代ギリギリだわ、乗り換えの駅で切符は落として、ゴキブリのように這いずりまわってやっと見つけるわ、新しく買った靴は靴擦れが激しく、血がダラダラ止まらないわ、買ったサンドイッチはまずいわ、読んでる詩集はつまらないわ、隣の席のおっさんは酔っぱらってるわ、岡山駅からのバスは乗ったものの、似たような名前の停留所がいくつもあって混乱するわで、散々。でもなんとかリハーサルには間に合い、ホッ。なじみとなった「ペパーランド」でしょぼたまライブ。
 知久君が途中のMCで俺に、
「明日行く、犬島の隣の島はなんでしょう」
 とクイズを出すも、もちろんいくらなんでもそんな知識はなく、
「?」
 と言っている間に次の曲を始めてしまい、その後アンケートで、
「あの答えは何だったのですか?」
 という質問がたくさんあり。知久君は、
「えー、地元の島だから、客はみんな知ってると思った」
 と言っていたが、それじゃ知久君は東京に住んでいるが、小笠原諸島の島を全部言えるんかいっ!!
 で、答えは結局「犬の島」。
「猫島」とかならともかく、「犬島」の隣が「犬の島」なんて、かえってわからんわいーっ!

 ウイリアム・ブレイク「ブレイク詩集」読む。

7月26日(金)

 岡山からバスと船を乗り継ぎ、瀬戸内海の犬島へ。元は銅の精錬所があったとかで、煉瓦作りの廃煙突がニョキリニョキリと建っている。いつもはおそらく寂れた感じが強いのだろうが、今回は維新派という劇団の公演がある為、島内人口も多い。会場の前には、手作りの商店街や、俺達が演奏するステージも用意されており、とりあえず休む。なにせ暑い。37度はあるものと思われる。人間の体は90%が水分だということだから、汗が出過ぎて、溶けてなくなっちまうよ~という感じ。本当にみんなドロドロと溶けていったら怖いだろーなー。

 みんなはリハーサルまでしばらくウダウダしている、というので俺だけカメラ散歩に出かける。ちょうど大きさは江ノ島程度で、散歩にはもってこいの広さだ。昔は何十倍も人口があったとかで、廃屋が多い。こっそり不法侵入したりしてみて、楽しいな~。空も海も蒼い。

 夕方からしょぼたまライブ。風が強いので楽器のオモチャやらなんやら細かい物がどんどん飛んでいく~。俺のパーカッションセットも、キャスターを外しても総重量が軽いので倒れてしまい、でかい煉瓦を重石にして演奏。曲の途中で客席に降り、客と手をつないで踊ったりする・・・男と。小川先生も偶然見に来てくれていた。

 夜は維新派の公演「カンカラ」を観賞。あいかわらず野外にでかいセットを組み、総勢40名以上が出演。芝居というよりは、バリ島の「ケチャ」を現代版日本版に置き換えた舞踏という感じのステージで、なかなかのパフォーマンスだった。

 終演後、またステージに戻り最終の船まで数曲演奏し、対岸の本土の民宿へ。久しぶりに大部屋でみんなで寝る。もちろんビールをさんざあおってからだが、差し入れの焼きとうもろこしを見て、
「俺、とうもろこしを焼いて食べるの生まれて初めてなんだよね~」
 と知久君が衝撃(?)の告白。37年間、たまたま巡り合わせがなかったんだな。
 民宿の風呂場の入り口に「下痢の方、入浴お断り!」の貼り紙。よっぽどひどい目にあったことがあると思われる。どんな状態だったか、想像してごらん。(イヤーーーー!!)

 町田康「壊色」読む。

7月27日(土)

 朝、みんなといったん分かれてひとりで3時間に1本のバスで西大寺という町に行ってみる。門前町はたいがいレトロな部分が残っていて間違いがない。ここもいい感じ。「ウバ車専門店」などもあり、ウバ車だけで商売成り立ってた時代もあったんだな~と思う。あとここは「はだか祭り」というのが有名らしく、あちこちにポスターやシャッター絵などがあった。
 ところで各地に「はだか祭り」やそれに類似した祭りはあると思うのだけれど、もっとも(男にとって)理想な祭りは、どこでやってるのだろう。「女はだか祭り」はさすがにないだろーし、やっぱり浅草の「サンバ・カーニバル」くらいか?
  「うちの村には、こんなすげえ祭りがある!」という人、是非教えてくれいっ!!

 それから列車にひと駅だけ乗り、大多羅という無人駅へ。ここには地図で工場や小学校の跡地がある、と見たのでそれでも見物すべーと思ったが、どうやら撤去されてしまったあとらしく、見つからず。
 仕方ないので、駅裏の山寺に石段何百段かヒーコラいって登る。汗ビッショリで、寺には誰もいなかったので、「ウォォォォ!!」と濡れたTシャツを鉄柵に干して乾かしながら、上半身裸のまま、木陰で読書。
 ちょうど帰る時、登ってくる人とすれ違ったが、会わなくて良かった。さすがに太った坊主頭の半裸な男が静かな寺でうつむいて本読んでたら、怖いだろーからな。

 岡山駅でみんなと合流、飛行機で帰宅。

 今江祥智「優しさごっこ」読む。

 今江さん本人にもお会いした事もあるが、この本は「冬子へ」という書き出しで始まって、その冬子ちゃんをモデルにしたと思われる女の子の話だ。客観的に読めばほのぼのとして「冬子ちゃんて、かわいいんだろうな」と思ってしまうだろうが、実は冬子ちゃんはその後女優になり、数年前には、俺もある芝居で共演しているのだ。・・・物語の中の「冬子ちゃんファン」には申し訳ないが、冬子ちゃんの30年後は、「酒癖の悪い大姉御」じゃ~い。あ、もちろん性格はさっぱりとした、いい女だけどね。これが現実ってもんよ!

7月28日(日)

「矢川澄子さんを送る会」早稲田のホールで行われる。矢川さんは、翻訳童話界の中ではさすがに第一人者だけあって、会場には入りきれないほどの追悼者がつめかける。「送る会」では唐十郎さんが歌ったりして、最後はしょぼたまが惜別の歌を送った。演奏中、俺が遺影を回り込むように動いて演奏したら、クマさん(篠原勝之)が「あぁいうの、グッとくるんだよな」と言ってくれて嬉しかった。

 帰り、山下さんと「飯でも食っていこう」と普通に道を歩いていたら、何の障害物もないのに、足下からガタガタと崩れ落ち、道に大の字になってしまった。どうやら、履いていた新しい靴が合わなかったらしく、靴の中で足がすべって捻挫してしまったようだ。痛いことよりも、人通りの多いところですっころがってしまった事が恥ずかしく、よたよたと立ち上がったら、そこにちょうど外国人の宗教関係者らしき団体が通りかかり、何事か俺に手を合わせて拝んでくれている。「あっ、いや、それほどのことでは・・・」と思ったが、せっかく拝んでもらっているのに途中で止めるわけにもいかず、神妙にお払いを受けた。その間、もちろんずっと通行人に見られていて、ちょっぴり恥ずかしかった・・・。

 米谷ふみ子「過越しの祭」読む。

7月29日(月)

 一応、整形外科でレントゲンを撮るが、骨には異常なし。やはり捻挫。去年、映画撮影の時にやった場所と同じで、半年ほど前にもちょっと捻っており、どうやら癖になってしまったようで、ちょっぴり心配。全治3週間の診断。ヨチヨチと赤ん坊並の猛スピードで家に戻る。

 さくらももこ×モーニング娘。「ハコイリ娘」読む。

 さくらさんが贈ってくれた本だが、おかげで新メンの顔もやっとわかるようになった。ラッキー!

7月30日(火)

 たまリハーサル。後、ネパールからやってきたアヤコさんとみんなで中華行く。さ来年、またネパールで公演が出来るかも知れないという話が出て、みなニッコニコ。

 山本容子「女」読む。

7月31日(水)

 初台の「Doors」でしょぼたまライブ。捻挫していることがばれないように動く。怪我しているのとかがわかると、変にお客さんに同情されて、ライブがやりづらいからなー。共演、倍音`Sで、セッションもやる。坂本ちゃん、ケイコ先生も来てくれる。ふたりでやって来て、本当に仲良しなんだなー、と思う。でも坂本ちゃんがあーいう感じなので、もちろん恋愛対象じゃないだろうけど。俺の好きな旅行漫画を描いている堀田あきおさんの奥さんが来ていて、「何故!?」と思ったら、知久君が昔住んでいたマンションの、ご近所さんだという。世の中狭いね。

 ところで、この「Doors」には、「出演者規約」があって最初に読むんだけど、「ダイブ等の危険行為禁止」「楽屋での喫煙禁止」とかはわかるんだけど「ステージドリンクはペットボトルの事」がいまいち意味がわからない。しかも、「違反した場合、罰金10万円以上」。もし、ろくにこの規約を読んでいなくて、ステージで缶ジュースでも飲んでしまったあかつきには「ウギャ~、ギャラが全部飛んでしまいます~」

 チョン・ウンスク「ドキドキ半島コリア探検」読む。


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