石ヤンのテキトー日記00年2月(3)

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2月29日

 さぁ、明日からしばらくネパールだ。お得意の100円ショップに行ってウェットティッシュや旅行用歯磨きセットなど買う。あとサック付き耳かきも意外に必需品だしな。それから古本屋に行って南伸坊の「モンガイカンの美術館」というぶ厚い文庫本も買う。今回の旅では少なくとも途中までは知久君と相部屋なので、本でも持っていっておかないと。ずっと知久君と顔つつき合わせてなくちゃなんないんで、少し書物の中に逃避しないとな。知久君がどんどん俺の体の中にしみ込んできちまうからな。って、別に変なことはしないがな。お互いの暗黙の了解、っていうやつだ。
 さて、実はちょっと前に俺がちょっと躊躇しながら文章を打ち込んだのをお気づきの人はいるだろうか。そう。「南伸坊」のところだ。ここは「南伸坊」でいいのか、それとも「南伸坊さん」と言ったらいいのか、迷うところなのだ。なぜかというと、南伸坊さんとは2度ほど面識があるからだ。一回は「月刊カドカワ」の取材で「会ってみたい人との対談」というのがあり、かってから大好きだった南伸坊さんと対談していただいた時。そしてもう一度は、知り合いの結婚式の会場でもお会いしたことがある。でも2度だけと言えば2度だけなのだ。もっとよく知っていればもちろん「南伸坊さん」なのだが、かえってそれじゃとっても親しいみたいで生意気のような気もするし。逆にそれまでどおり、知り合いとしてではなく、尊敬する作家として「南伸坊」と呼び捨てにした方が第三者的でよいのではないか・・・と迷ったのだ。
 これはミュージシャンにも当てはまる。例えば「梅津さん」はもう「梅津和時」じゃなくて「梅津さん」なのだが、「キヨシローさん」(忌野清志郎)はむずかしいところだ。確かこちらもお会いしたのは、2,3度なのだ。で、普段はなんと言っているかというと、例えばたまのメンバーと話しをする時は「キヨシローさん」だし、家でRCのCDをかける時、妻には「キヨシローってさー」なのだ。つまり「さん」は知り合い、ということ。普通、一般的には知り合いになったら馴れ馴れしく「さん」づけが呼び捨てやニックネームになったりするものだが、このギョーカイは逆なのだ。知り合いになると「さん」がつくのだ。
 で、困るのが結局その境目。もうすっかり顔なじみになれば当然「さん」で良いのだが、何回目から「さん」づけにしたらいいのか、むずかしいのだ。いっそ「さん」だから3回目から、とか決めてくれれば助かるんだが。って、誰が決めるんだ。でもその場合でもキヨシローさんは2回だったか3回だったか忘れているのでどーしたらいいんだ。・・・むむむっ。世の中って本当に難しいなー。

 あっ、てなことで、もう成田へ一緒に行くオマちゃんがそろそろ家のドアをノックしそうなので、この辺で。18日まで俺自身の更新はないけど、メールたくさん送ってね。帰国した時の最大の楽しみだから。「今月の物々交換」「へなちょこリレー物語」「アルバムレビュー」と色々あるからね。もちろん「悪の総司令塔」もちゃんと実践してくれよ。そんじゃ、行ってきま~す!

2月28日

 事務所に雑用をしに出社。前回来た時に、しょぼたまのセットを運ばねばならなくて、Gさんの車で駅まで送ってもらったので、自転車が事務所に置きっぱなしになっている。ということで、最寄り駅から25分かけて歩いていく。まさに「とおいスタジオ」(事務所の一階のたまのスタジオの名前)だ。退屈なのでガムでもクチャクチャ噛みながらヤンキーに歩くかな、と思ってコンビニエンスに入ると、「iMac」をもじった「iGum」というしょうもないガムが売っていたので、馬鹿好きな俺は迷わず5色全部購入。
 いつも自転車や車で通り過ぎるのと歩くのとでは、同じ道を通っていても、見えるものが違う。大通りからちょっと入った目立たない所に、赤くて丸い昔タイプの郵便ポストがあった。しかもちゃんと現役で使われているものだ。しかしこのタイプ、最近めっきり少なくなった気がする。このタイプで現役はもしかして全国でいくつも残っていないんじゃないだろーか? だいたい四角いタイプになっているからな。こういう物は見慣れている日常風景なので気づきづらいが、いつのまにか総入れ替えになっていて、「そういえば、昔はこんなだったなー」に誰も気づかぬうちになっていたりするからなー。

 そうそう。俺のキャラクター、はっきり言えば「たまのランニング君」がPHS(DDIポケット)の画面の中でちょこまかと動き回る、というものが3月から「Pメールサービスコンテンツ・キャラネット」というところでダウンロードできるらしい。加藤茶や、所ジョージとともに、キャラクターの仲間入りをしたということだ。うーむ。俺は案外地味に、ごくごく平凡な一市民として国民健康保険に入って暮らしているというのに、キャラクターだけが俺の知らないところで活躍するとは・・・俺はPHSはおろか携帯電話も持っていない、というかPHSと携帯電話の違いすら知らないので、どんな物かよーわからんが。誰か見たらどんな物だったか教えてくれい。ま、俺であって俺じゃないんだが・・・。

2月27日

 マンダラ2にてたまの月例会。例年、この1・2月はもっとも客が少ないのだが、今日はなぜか超満員で嬉しひなー。ライブハウスでは人の物理的な熱気がダイレクトに伝わるので、暑い暑い。きのうは小雪ちらつく極寒ライブだったが、今日はステージの上は真夏。アローハーッ、ってなもんだ。  もっともこれから行くネパールは一日のうちの寒暖の差が20度もあるというので、いい訓練になったかもしれないが。久しぶりに「夕暮れ時のさびしさに」などもアンコールでやった。

2月26日

「今日は、この冬一番の冷え込みです」とテレビの天気予報が繰り返す中、亀戸のショッピングセンターの中央広場のようなところで、野外ライブ&サイン会。しかし俺の制服はもちろんランニングだ。雪もちらつく中、ランニングの上にコートを羽織ってセッティングし、ライブ開始とともに、プロレスラーになった気分でそのコートを舞台の端にエイヤッと投げ捨て、拍手をもらう。しかしよりによって一曲目は「安心」。他の曲はだいたいダンシングしながら叩けるのだが、この曲だけはサンダルについた鈴を踏みならさねばならない為、椅子にじっと座っていなければならない。むむう、むむう。と顔を蒼くしながら寒さに耐えたが、ついつい曲が終わったら、でかい声で会場に「激サムッ!!」と若者らしい言葉を使って叫んでしまった。今考えると「超サムッ!!」の方が良かったか? 若者よ、すっごく寒い時は一体なんて言うんだい。おじさんに教えてごらん。今度、使うから。
 Gさんも「ぎが」という曲のなんてことないところでピアニカを間違えたので「アレッ!?」と思ったら、次の同じところでも間違えている。あとで聞くとやっぱりそれは間違えたのではなく、指がかじかみすぎて素早い運指ができなかったらしい。そりゃそーだよなー。
 ちなみに知久君はこの日、ハーモニカとか入っている鞄をまたまた網棚に置き忘れ、開演直前にスタッフに買いに走ってもらっていた。しかもその鞄は何度も中央線で網棚ひとり旅をそれまででもしている由緒正しき鞄なので、高尾駅あたりの遺失物係りでも、「また知久さんの鞄が遊びに来たよ」と苦笑いしているかもしれない。
 体も冷え切ったし、腹もへったので何かホットな物を食おう、ということでメンバーとスタッフでインド料理屋に入る。数日後にはネパールに行くので毎日インド料理みたいなものだが、馬鹿なのでそこらへんの頭はまわらない。でもランチタイムは終わっていて、ディナーのセットだとちょいと値がはる。「お子さまランチ」が安かったのでマネージャーが「僕たち、お子さまランチじゃ駄目ですか!?」というと、「お子様・・・それはちょいと・・・」と言われたが、さっきまでそこの広場で演奏していた人だと気づいてくれ、なおかつ来週ネパールに行く話をしたら、特別にお子さまランチOKになり、俺とGさんとマネージャーはそれを頼む。と、「・・・甘っ!!」カレーもお子さま向けなので甘く、ナンにも甘いチャツネがベットリ。さらに隅には、もう日本ではほとんど絶滅したといわれる昔のデパートの大食堂の激甘バニラアイスクリームに、たっぷりとジャムがかかっていた。インド料理で、寒さを吹き飛ばす為、ホットな辛さを求めていたのに、逆に、インドとかは甘いもんはとことん、甘いからな。正反対の激甘地獄に陥ってしまった、これまた馬鹿な俺たちだが、昔から「馬鹿な子ほどかわいい」というしな。って、馬鹿なおっさんはダメか。

2月25日

 大阪に日帰りでプロモーション。キッツ~。
 だいたい家から東京駅までも1時間半くらいかかるので、新幹線が3時間、大阪でも地下鉄で30分くらい移動があったので、片道5時間。往復で10時間も乗り物に乗っていなければならなくて、プロモーションより移動自体の方がよっぽどきっつい。しかも今回は「しょぼたま」の演奏がある。普段なら楽器は先に宅急便で送るか、もしくは車移動ならポーンと荷台に放り込んでおけばいいのだが、今回は事情によりすべて手持ちなので、重い荷物が肩にギリリギリリと食い込みやがるぜ。なんせ「しょぼ」といっても太鼓とかも入ってるからな。あと犬の鎖とか。さらに嵩張っている為、新幹線で網棚に載せようとしても載らず、コインロッカーに入れようとしても入らない。込み合う通勤電車じゃ「ちっ」と舌打ちされる。ま、自分で作ったセットなので誰にも文句は言えないのが、これまたくやしい。・・・キィィィィィッ!!

 ヒーコラ言って大阪につき、まずは某ラジオでトーク&スタジオ演奏。収録は昼過ぎだが、今日の夜中の3時の生放送だ。(「おやっ!? 文章表現が間違っている」と思っても、大人なら黙って読みすごしてくれい。それが、業界というもんじゃいっ!!) それからパーフェクトTVやディレクTVで流れている「モンドチャンネル」というテレビの収録。そして心斎橋のタワーレコードでインストアライブ&サイン会

 帰りのタクシーのおっちゃんはとても話好きで、「東京のタクシーの運ちゃんとか、どないですねん」というので、「あぁ、あんまり喋らない人が多いですねー」と言ったら、「そら、あかん! タクシーでは喋らなあかん。お客さんとコミュニケーションをとってこそ、ストレスも発散される、ちゅうもんや! そやろっ!」と言ってまたベラベラ喋り出す。「そやろっ!」と言われた時つい「そうですよねぇ」なんてお愛想言ってしまった手前、その後も延々と話に相づちを打ち続けさせられるはめに。運ちゃんのストレスは発散されていたようだが、疲れてプロモーションを終えて、一息つきたかった俺たちのストレスはズンドコたまっていった。えぇえぇ、それもこれもついつい何も考えずに相づちを打ってしまう気弱なわたしらが悪うございますよ。さすがに疲労困憊で夜中1時過ぎ、家路につく。本当は今日は「たけしの誰でもピカソ」の収録の依頼も直前にあったのだが、大阪日帰りではさすがに時間調節つかず。好きな番組なので、ちょっと残念。

2月24日

 風呂場で頭をいつものようにR君(妻)にバリカンで刈ってもらう。本当はだいたい2週間で刈らなければならないのだが、ライブ等がないとついつい「中途半端に伸びた坊主刈り」になってしまう。俺の好みの範囲は、ずばり「頭がちょっと弱そうな、なんにもない時でもやけにニコニコしていて、理由もなく微笑ましくなってしまうようなおっさんの、えー感じの丸刈り」。それが「五分刈り」等「理髪専門用語」でいうところの何分刈りかは「分」の単位がイマイチわかってないのでハッキリ言えないが、うちのバリカンの目盛りで「2」のところがちょうど良いのだ。
 ツルツルの丸坊主は「意志」がハッキリしてて、メッセージがあるので俺には向いていない。(他の人がやってるのはかまわない。梅津さん、好きだよ~ん)、で目盛りで「1」も好きじゃない。「1」だと、ちょっと怖くなってしまうのだ。というか、完全に犯罪者になってしまって、町をうろついているだけで警官から職務質問を受けることは必至だ。さらに俺は自分が普通にしてると思っててもどーやらずいぶんと手足が勝手に不器用に泳いでしまう癖があり、挙動不審に見られるので、なんらかの理由でその場で別件逮捕されるのもいやだ。手錠は、金属でできているから、今の季節、冷たさがより一層きびしい気もするしな。

 ということで、目盛り「2」が俺のベストな髪の長さなのだ。まぁ、本当は「3」や「4」もそんなに嫌いじゃないんだが、中途半端に長いと寝癖や帽子癖がついてカッコ悪いからな。ファッショナブルじゃ、なくなるからな。あと、バリカンは案外寿命が短い。なので数年に一度は新しい物を買いにいくのだが、そもそもが子供用の物が基本なので、R君が「バリカンありますか?」というと、必ず「お子さまには、この小さなタイプがよろしいと思いますけど」「いいえ、主人の頭を刈るんです」「・・・・そ、そうですか」といつも若干躊躇されると言う。でも今やダウンタウンのマッちゃんも坊主だし(きっと俺がうらやましかったに違いない)、大人の坊主頭の人権もそろそろ確率されてもいい頃だと思うが・・・。


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