今月の健さんの笑顔--00年2月号

さあ、今月の健さんの笑顔もようやく撮れたぞ。まず一枚は群馬にある「高山ふれあい温泉」に入浴直後の健さんだ。「健さん、とびっきりの笑顔をお願いしま~す!」と言って撮ったのだが、なにか弱々しい。温泉に入ったあとなのでぽや~としているのはわかるが、そればかりではない弱々しさだ。「もっと破顔一笑という顔はないのかい!?」と聞くと、
「イヤ~実は最近血圧が高くてさ~140あるんだよー」との声。
「140? たいした事ないんじゃない? だいたい平均が下が80で上が120ぐらいでしょ。そのくらいならちょっと高い程度だから心配しなくていいんじゃない?」と聞くと、健さんはこの弱々しい笑顔を見せながら、
「それが上ならね・・・」の声。
 つまり下が140で、上は200を軽々とクリアしているらしいのだ。
「そ、そうか。じゃあ温泉でさらに血圧が上がったところで、顔面大笑いなんかしたら・・・」
「顔中の血管という血管から血がピューッと吹き出て、『生前最期の健さんの笑顔』になるだろうね・・・」
「わ、わかった。もう、それ以上今は笑わなくていい。まだ今回でこのコーナー3回目なんだから、終わるにはちと早いからな!」
ということで、健さんのこれはその時のギリギリ笑顔。

 しかし、やはりこの笑顔では「日本一の笑顔を見せます」と豪語したこのコーナーの名折れだ。健さんの温泉からの血圧回復をじっと待つ俺だった。さて、それから数時間後、俺達は別の温泉地に何故か来ていた。(2/12の日記参照) 本当は温泉のはしごをしたかったのだが、残念ながら時間が遅くてもうどこもやっていなかった。温泉はやっていなかったが、射的場はやっていた。300円でみんな挑戦するという。
 と、俺は思った。「今なら、血圧も下がった健さんの真の笑顔が見られるかもしれない」と。そして、みんながドヤドヤと射的場に入っていく中、俺だけは雪の残る寒い外から、窓ガラス越しにビデオカメラをまわし続けた。いつ、笑顔が出るか知れないので、ブルブル外で震えながらじっと健さんにだけ焦点を合わせていた。その間約10分。俺のビデオを持つ手がそろそろ凍り始めてきた頃、やっと射的が終わってみんな出てきた。健さんだけを狙いたかったが、途中、他の人の射的の鉄砲の筒が邪魔をしたり、ずっと健さんが柱の影に隠れてしまってよく見えなかったりと、「フォーカス」や「フライデー」の隠し撮りのカメラマンの気持ちが本当によくわかった。その後、家に帰りまたその時間分だけビデオを見続けていい笑顔を探し続け、ベストな笑顔が、射的が的に当たった瞬間のこの笑顔であった。

 撮っている時といい、それを再見して編集している時といい、俺が健さんの顔をこんなにもロングロングタイムじっとひとりで見続ける人生になるとは、思いもよらなかった。まぁ、俺が自ら作ったコーナーだが・・・。ところで射的だが、健さんは10発中、なんと7発も命中したという。他の人はみな、2,3発だというのに。ところが射的屋のおばばは「1発でも10発でも当たりは当たり。このクジを引きなされ」と言って全員、同じクジを引かされたそうだ。そして・・・全員本当にもらってもなーんもしょーもない、「鈴」をひとつずつ平等にもらって帰りましたとさ。
 射的をたくさん当てたのに、なんにもならなかった健さんはその後、駐車場に向かう途中、凍った路面に見事に足を取られ、漫画のように派手にすってんころりんと転がり、尾てい骨をしたたかに打っていた。鈴をチリンと鳴らしながら・・・
 健さんよ、また来月も笑顔をたのむぞ・・・


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