1月31日、午後9時20分。本編が終わり、拍手の中、アンコールに出る。俺も実は指令を出しときながら、一番ビビってた。アンコールで俺達が出た時、一瞬何の声も客席からあがらなかったからだ。わずか0.5秒くらいの間に、いろんなことが頭を駆けめぐった。
「うわっ、何の声もなしっ! ヤバッ、ヤバすぎる! このまま知久君がカウントを始めたら、アンコール曲に決めた「学習」が普通に始まっちまう! どーすりゃいいんだぁぁぁ。うわぁぁぁ。・・・ははは、考えてみりゃ、馬鹿なことしちまったぜ。たまのお客さんといえば、「不動明王」として有名。メンバーがドジッた時に口元だけクスリとするぐらいで、ほとんどは微動だにせずに聞き続ける。まるで「不動明王」のように! その様子は、ライブを後ろから録画したビデオを見ると、すぐわかる。みんな、まるで立て看板のように、頭が動かないんのだ。時々、知り合いがライブを見にくると「なんでたまのお客さんは、誰も動かないの?」って驚かれることもあるもんなー。あぁ、たまファンの性格を見抜けなかった俺の敗因か! しかもどうやらこのページを見ている人はいるらしく、あちらこちらに独特のピーンと張った緊張の糸が見える! むぐっ、むぐおうっ。しかも俺が100円ショップで買ったニセモノぶどうとニセモクつるで作った「東京フルーツ首飾り」はどうなるんだ! 不器用な手できのうの夜作って、今日メンバーにみつからないように、こっそりGさんのアンプの裏に隠したこの「東京フルーツ首飾り」はぁぁぁぁ!」
と、その時だ。
「東京フルーツ!」少し震えた男の人の大きな声が聞こえた。
と、あちこちからそれに応えるかのように「と、東京フルーツ」「東京フルーツお願いしますぁす!」の声が。「えっ!?」という顔のメンバー。そして知久君はしばらくキョロキョロしてから俺の方を見て「なんだろう?」ってな顔をする。もちろん、なぁぁぁぁんも知らないはずの俺は、知久君と同じように不思議そうな顔をしながら、首を横に振る。でも何故かその時、俺の手には「東京フルーツ首飾り」が・・・。そして最初はつぶやきから、少しずつ歩き出しながら声を出していく。「東京フルーツ、東京フルーツ・・・」そしてセンターのマイクまで歩いていく俺。知久君はとっさに俺がなにか即興を始めたのをみて、なんだかわからないまま、ギターをつけていく。Gさんの顔を見ると、少々俺を訝しげに見てる。そして俺は本格的(?)に歌い出した。
「(東京フルーツ東京フルーツ)俺の頭はメロンでできてる(東京フルーツ東京フルーツ)俺の目玉はぶどうでできてる(東京フルーツ東京フルーツ)俺の鼻は栗でできてる(クリックリッ クリックリッ)俺のほっぺはりんごのほっぺ(アップルーアップルー)俺の乳首はチェリーでできてる(チェリーボーンプ!)俺の腹はスイカでできてる(東京フルーツ東京フルーツ)俺の尻はピーチでできてる(ピチッピチ! ピチッピチ!)俺のホニャララバナナでできてる(東京フルーツ東京フルーツ)くだらないもの、略してクダモノ! 」
まぁこんな感じのくうだらない歌だ。最後に、目の前にいた素敵なレディに首輪をプレゼント。ふぅぅぅぅ。なんとか成功したぜー。その後本来のアンコール曲「学習」をやって楽屋に引っ込む。
「あれっ、なんだったんだろうね。」知久君が言う。「この間、「東京パピー」を「東京フルーツ」っていい替えて歌ったじゃない、あれのことかな?」Gさんも続く。「石川さんなんか知ってる?」「・・・いいやっ」「でもよく即興で出来たねー」俺がなんで「東京フルーツ首飾り」をしていたかは、誰もなんとも思わなかったようだ。
結局、もう1曲アンコールをやり、再び楽屋に戻った時、すべてを話した。「なんだー」「どーりでなんかおかしいと思ったよ」そりゃ、おかしいだろう、どう考えたって。しかもひとりの人だけじゃなく、ほうぼうから、ないはずの曲のアンコールがあるなんて。純真な宝石のような心を持ったメンバーに告ぐ。
「まず、俺をもっと疑え!」
作戦、成功っ!
しかし一番わけわからなかったのは、ただ見に来ていたお客さんだろーなー。「今日は危ない客が多いなー」と思っただろーか。しかしアンケートでは、どうやら作戦に気づいていないお客さんが「今日のあの「東京フルーツ」っていうの、なんかすっごくおかしかったです!」と何人か書いてくれたかったから、ま、めでたし、めでたしだ。ちなみに、その後伝言板やメールで「次の福岡でもなにか指令を!」とか「ジァンジァンも何かしてください」ってな意見も多かったが、あんまり毎回やってると「今日も石川さん、なんか仕込んでるのか」とメンバーにあきれられても困るので、メンバーや、ライブに関しての「悪の指令」はまたほとぼりがさめた頃にやることにする。それより、もう次の悪の指令が出ておるようだぞ!
******実行犯達からのメッセージ******
こんばんわ、新宿地下四階です。
指令を見事やりました。しかも、第一声かも・・・。
アンコールでたまがでてきてもだれも言おうとしない。
いや いいたいんだが、しゃいなのでみんな誰かが言うのをまっている。
シーンと緊張鳥が会場中に、ばっさばっさと飛び交っている。
たまらづ、僕が「東京フルーツやらないんですか。」とかなんとか、
ばーんっと緊張鳥を一匹撃ち殺すと、みんなバンバンと撃ち始めた。
あんなに悪の結社に入っている人がいるとは・・・。
指令を遂行したので、司令官殿 わたくしに何か結社員の一員とて、
コードネームを授けてください。
では、ばいばいです。
石川さん!無事遂行しましたよ。でも第一声じゃあなかったので、ごめんなさい。
男の方が言ってくれましたね。それに続いて声をだしました。
それでも元来小心者なのですごく勇気がいりました。生まれてはじめてステージに
向かって叫んだのだ。!!私はたまファン歴10年、今日はGさんの目の前、最前列に
友達と座っていたのに、なんとその席からは石川さんの姿がシャチョーにすっぽりと
隠れてしまってまったくみえない。なので石川さんの反応がよくわからなくてがっか
り。
まったくおとんまな私でした。石川さんの素敵な「東京フルーツ」はしっかりと堪能
しました
けど。石川さん 今後も司令をだして私を勇気ある積極的なファンに変えてね。お願
いよん!
チャゴより
私も悪の一味として参加したので、報告します。
アンコールにたまが登場してきて最初のうちは静まりかえっていたので、作
戦失敗か!と思いきや、誰かが「東京フルーツ」といったのをきっかけに会場
は次々とアンコールの嵐(というほど凄くはありませんでしたが)。善良な
(?)メンバーは口々に「東京フルーツなんて曲ないよ」と言い、特に知久さ
んはかなり動揺している様子。そこへくだものを身にまとった石川さんが出て
きて東京フルーツを熱唱、会場は大ウケ。その後石川さんは、「東京フルーツ
はアルバムのタイトルで曲名じゃないよ。だまされちゃいけねえぜ!」と、う
まいことごまかしていました。
ちなみに私自身はどうだったかというと、たまたま周りの人達が非悪人だら
けの中2回ほど叫びました。普段は小心者なので、こういうときぐらいです。
成功の喜びで帰り道はずっとにやにやしていました。 (南口オリオン)