山手線すごろく旅行(フロムA)



 さぁ、今週から始まったハプニング満載のすごろく旅行。最初は手軽に山手線一周から始めることに。東京駅での最初のサイコロは6。なんとなく縁起が良いぞ。内回りに乗って日暮里。「日暮れの里」とは、なんとも風情のある名前だなー。その名のとおり、情緒のある下町。
 早速クジを引いてみる。
「スーパーのビニール袋を目だけ開けて覆面のように被って、町を散策」
 あらかじめ俺が用意しておいたスーパーの袋を全員でモシャモシャと音を立てて被り、いきなり危ない &キッツイ集団になる。
 日暮里と言えば駅前に広がるのは谷中墓地。
 とりあえず、有名人の墓でも探そうかと、その格好のままでフラフラ墓地に。まだ陽が高かったから良いが、暗くなってからそんな一団にもしも俺が出くわしたら、そのままブクブク蟹のように泡を吹いて、静かにジョオと小便を洩らすだろうね。
 そんな恐ろしい光景だが、墓参りをしているような老人たちは、もうその長い人生において様々な経験を積んできたのか、そんな事くらいでは誰も動じない。ばあさんにごく普通に
「あらあらそんな物被ると、暑いわよ」
 と言われ、ツヤ子さんが律儀に
「クジなんです」
 と答えて
「あらそう」
とか言っていたけど、意味わかっとるんかい!!
 おじいさんに「有名人の墓を探しているんですけど」と聞くと、
「あぁそこに、朝倉文夫さんの墓があるよ」
「あっ、どうもありがとうございました!」
 と言ったものの、
「ところで、朝倉文夫って誰?」
 と、みんな頭にクエスチョンの無学集団。いい年をして、お馬鹿の上に顔にはビニール袋。親が見たら、泣くぞ。さて墓場を出たところでやっとビニールを脱ぐと、先程墓参りをした朝倉文夫さんの朝倉彫塑館というのが目の前にあった。
 ははあん、有名な彫刻家だったのか、と始めてみんな知り、中へ。彫刻も良かったが、その作家の和風の家をそのまま展示館にしていたのが、なかなかいい風情。
 その後、駄菓子の問屋街へも足を伸ばす。あんずさんはベビーカステラをまとめ買いして口元砂糖だらけにし、入舩君は「俺、コマ好きなんっすよ」とか言いながら「UFOスピン」をニッコニッコ買っていた。お前らは、小学生か!

(総括) スーパーの ビニール被りし 墓参り 間違われるなや 珍し新興宗教団 (字あまり)

 日暮里でビニール袋仮面になった俺たちは、次のサイコロを振る。4で巣鴨。巣鴨と言えば「おばあちゃんの原宿」として有名な町だ。そんなほのぼのとしたクジは出るか!?
 クジ。
「ナワトビを使って、全員で次の駅まで跳びはねて移動」
 って、おいおい、逆におマヌケ &きっついクジじゃないか! もしもおばあちゃんが縄にひっからまっちまったらどーするんだ。もしくは意外におばあちゃん達は元気者で、
「楽しそうなので、ご一緒させてもらうよ」
 と町中のおばあちゃん達が一斉に「私も私も」と俺達の縄の中に入って来てぴょーんと跳び始めてしまったら・・・。
 それじゃ、俺が「たま」でやっている「ラッタッタ」という曲の『老婆が100人バク転ラッタッタ! なぜなら寝たきり退屈だから』という歌の一節のようじゃないか。
 とにかくすごろく旅行は「どこに行っても、必ずそこを観光する」という規則もあるので、まずは巣鴨名物、ぬれせんべいの店で一服。ペナペナでなかなかおいしい。そうだよな。歯のないおばあちゃん達も、これなら安心、つうわけだ。お茶も出してもらってズズズッと飲み干してからさて、覚悟を決める。
 一体、隣の大塚駅までどのぐらい距離があるかはしれないが、出発だ。
 100円ショップでそれぞれナワトビを購入、ブルンブルン振り回し始める。最初は二重跳びとか披露してはしゃいでいたメンバーも、徐々に汗ばんでくる。とにかくピョンピョン跳びながら、大塚に向かう。
 跳ねたまま、入舩君が人に聞く。
「駅はこっちですか?」
 ピョーン。
「そこを左に曲がりなさい」
 ピョーン。
「はいっ!」
 ピョーン。
 長い傘を持ちながら「跳びづらいよー」と跳んでるマニは特に異様だ。そんな人間、いそうでいんわい! まるで中川いさみの4コママンガのようだ。
 とにかく突如出現した、いい大人達の「ナワトビピョンピョン団」に、町行く人たちも、とまどいながらも見て見ぬふり。もしくは、一種のレトロブームの復活だと思ったかもしれないな。でも馬鹿馬鹿しくも、段々楽しい気分になってくるから不思議だ。
 若者よ、やってみたまへ。スケボーより、愉快だぞ! なんせ、半分は空中散歩だからな。良い言い方をすれば。そう言うと、なんとなく、スペイシーな感じもしてくるだろう!?
 2~30分後、へばりが頂点に達しそうになった時、ようやく駅が見え始めた。
「翼よ、あれがパリの灯だ!」・・・じゃない。
「縄よ、あれが大塚の灯だ!」

(総括) ぴょんぴょんと 跳ねて楽しや ナワトビの 雑踏なれば ちょいと迷惑

 さて、ナワトビで巣鴨―大塚間をひと駅ピョンピョン飛び跳ねたので、息もぜいぜいになって、再び山手線に乗り込みサイコロを振る。3が出て、高田馬場。
 高田馬場といえば、山手線唯一の学生街。古本屋や、安い雀荘が多いので、俺にも相当馴染みの深い場所だ。さて、クジは
「500円以内でお馬鹿な物を買い物をして、お互いプレゼント交換をする」。
 ビニール袋仮面、縄跳びマラソンときっついクジが続いていたので、みな少しホッとする。30分後に再集合をかけて、みなバラバラに町にと繰り出す。さて、500円で一体何が買えるのか?
 まず俺が考えたのは、古本屋の店頭でよく「50円均一」とかで出ている文庫本とかを10册、目をつぶってメチャ買いする、というものだった。
 が、そこに向かう途中100円ショップが目に入り、中に入って物色してみる。割り箸が100膳で100円だったので、「割り箸500膳」というのはなーんかわけもなく豪勢だな、と思った。500回も箸を洗う心配なく、飯がガッツガッツ食えるしな。
 なおかつそこは元々八百屋だったらしく、野菜もみな100円だった。そこで大根、キャベツ、ニンジン、ごぼう、玉葱でしめて500円というのもあるな、とも思った。しかし、相当な重さとかさばりになるので、まだまだ続いていく今日の旅行中、ずっとそんなヒョットコな物を持って旅行せねばならず、逆に恨まれる事はほぼ請け合いだ。うーむ。
 ということで悩んでいたら急に気分が変わり、アジアの雑貨屋へ。結局、ガネーシャ(象の鼻を持つ神様)のポスター、奇妙なデザインのボールペン、インドあたりのスーパーのビニール袋セット(カラフルでなかなかカワイイ!)でほぼ500円。待ち合わせ場所へ。
 皆で、プレゼント品をグルグル回して、交換会。ちなみに他の人は、
「よく伸びる手袋」(真夏だっ、ちゅうねん)
「眼によく効くドリンク」
「郷ひろみやジュリーのバッタもんメドレーのレコード」などのお馬鹿グッズ。
 入舩君は加川良の古いレコード・韓国の新聞・リサイクルショップで見つけてきたような、一足50円の靴下・50円のお茶受け皿と、なかなかバラエティに富んだ内容。
 「短い時間で、よくいろんな物見つけたね」と俺が誉めようと思ったその瞬間、それが当ったツヤ子さんが、笑顔で彼に鉄髄をくらわしていた。
「いっらねー! きったねー!」
・・・ツヤ子さん。正直な人だな。君っていう人は。

(総括) 五百円 給料日ならば 「たかが」だが 給料日前なら キラリ輝く

 さて今回は2が出て、新宿だ。
 まずは全員でレトロな安レストラン「アカシヤ」でロールキャベツの昼食。後、クジを引く。
「ペアを決め、ラブホテルの前で『入ろうとするが、躊躇しているカップル』を演じ、他の者はそれを電柱の陰からニヤニヤしながら覗く」
 というなかなかアダルトなクジだ。早速ジャンケンでペアを決める。
 と、俺はマニと組むことになった。マニといえば、有限会社たま企画室の事務員。そして俺はその会社の取締役(まぁ、メンバー全員取締役の会社だが)。「上司と部下」であることには間違いない。不倫の典型的なパターン、というわけだ。
 ということで歌舞伎町を抜けていく。と、あるある、ラブホテル街が。
 俺とマニは手をつなぎ、「ホテル小町」の前に立つ。と、普通ならスケベ顔した俺が、
「グエヘヘヘ、まぁわしにまかせなさい。悪いようにはせんから」
 ってなこと言って、中に引きずり込もうとするが、それに対して若いマニが、
「そんな課長さん! 私、困ります!」
 ってなシナリオだと思ったが、なんとマニの方が積極的に中にぐいぐい入っていこうとする。これじゃ「躊躇するカップル」でもなんでもない。というか、「やるわよっ!」っと若い娘にズルズル引きずられていくビビリ上司だ。しかしこれが現代の都市性事情というものか。
 今回は人数の関係で、入舩君は役得で、アンズさん・ツヤ子さんと、ふたりの女性と次々にラブホテルに消えていく。
 といっても、実際は入り口から入って受付を素通りして、出口から出てくるだけだが。夏の日の、かすかなアヴァンチュール気分に浸ったに違い無い。
「でも、結局俺は見なれたおトンマなマニと一回だけか・・・」
 と嘆いていたら、入舩君が
「じゃっ、僕と入りましょう。ホモカップルなら、逆にドキドキするのでは」
 ということで、何故か入舩君とラブホテルに入るはめに。うーむしかし、ドキドキというよりアホアホだな。
 しかしさすが新宿、受付の前で男2人パネルで部屋を選んでいても、ちっとも受付のおねーさんは驚かない。そーか、ホモカップルなんて、この街ではフツーの事か。
 ってなことでクジは無事済ませたが、ひとつ疑問。
 とあるホテルの「当店の設備」の所に「ビデオ・カラオケ・ゲーム・電子レンジ」と書いてあったが、一体電子レンジは何に使うんだ? 一体何を温めてチンするというのだ?
 うーむ、まだまだ魔都・新宿には俺たちには計り知れない謎が多いな・・・

(総括) 愛宿や 平日昼間 満室だ 中のカップル 仕事はいいのか! 答え給へ! (悔しさの為、字あまり)

 新宿から2が出て、次は原宿。う~む、どうも原宿はキャピキャピのイメージがあって、俺には少々とっつきづらい町だ。しか~し、そんなことを言ってもいられない。クジだクジでいっ!!
「アカペラ童謡グループ(踊り付き)を結成し、ストリートライブをやる。お金が一円でももらえるまでやる」
 むむむ、これぞ元祖ホコ天を産んだ原宿にドンピシャのクジではないか! しかし俺もフリーのストリートはここ10年ぐらいやっていないし、もちろん他のメンバーにはそんな経験も全くないと思う。果たして、そんなシロートの即興歌唱でお金が手に入るのか!?
 俺達は歩道橋を渡り、最も人通りの多いメインストリートに横一列にズラッと阿呆づらして並ぶ。ガングロやゴングロの女の子たちが前を元気に闊歩している。
「えー、じゃ、じゃあ、まずは『象さん』でも行くかぁ! できればみんな手で鼻を作って、振り付けもするよーに!」
 さすがに、ライブは俺が本業だからリーダーにならなくては。皆で声を張り上げる。
「ゾーさんゾーさんお鼻が長いのね~」
 ・・・シーン。むむむっ!?
「続けて、『お馬の親子』でーす。お馬の親子は・・・ポックリポックリあ~る~く~」
 しかし、皆、一瞥くれるだけでほぼ無視。もしかして新手の新興宗教と間違えられてるのかっ!?
 そういえばかつて象の帽子被って踊っていた団体もいたっけ。違うっ!! あれとは違うんですー。
 しかしそーだよなー、今時、ストリートたって、結構マイクとか用意したり、せめてフォークギターの一本も持ってメッセージってるよなー。楽器なし、しかも童謡、なおかつヘタクソ、って。
 3拍子揃って「びっくり町内学芸会」かっ!
 でもクジだからしょーがない。金が1円でももらえるまでは続けるんじゃーっ!
 帽子を自分達の前におき、準備だけは万端。
「よしっ、次は『カエルの唄』の輪唱じゃいっ!」
 入舩君から入り、俺がその後に続く。もう恥も何もかなぐり捨てて大声で歌う。
 と、ゲゲッ、音程が外れてる。やっ、やばい。一応俺プロなのに。と、その時である。
「ボスッ」
 百円玉が一枚、帽子の中に投げ込まれた。
「・・・やったー!!」
 ただ、ちょっと気になるのは、それを入れてくれたおばさんが、歌を聞いてくれていた様子は全くなく、ただ通りすがりにポイとお金を投げ入れてくれたことだ。
 まさか、俺達、こ○きに間違えられたんじゃ!? うーむ喜んでいいのだろーか!?
 ま、まあいいか。次いこ、次!!

(総括) ストリート 歌って見れば 懐かしき 冷たい視線と 小銭の喜び

 原宿でひょんな事から100円稼いだ俺達は、3回連続の2を出し、意気揚々と恵比寿へ。ちょうど駅前はお祭りかなんかやってていい雰囲気だ。クジを見てみる。
「この町の地名の入った甘味を買って食べる」
 おぉ、こりゃ楽勝じゃーい、と誰もが思った。ところが・・・まずは、駅近くのお菓子屋やパン屋を当ってみる。ところが「恵比寿」などという名前の入ったお菓子や甘いパンなど、どこにもない。
「恵比寿饅頭」でも「エビスパフェ」でも何でもいいのだが、ない。交番にも聞く。が、
「知らないねー。なんでそんな物探してるの?」
「いっ、いや、別に・・・」
 変に怪しまれて別件逮捕されてもかなわない。商店街をあらかた回るが、それらしき物はない。もちろん地名の由来にもなったエビスビールや恵比寿ラーメン、なんてぇのはあるが「甘味」というのが案外難しい。
「いっそ、ビールやラーメンに砂糖ぶちまけて甘味にしちまおうか!」
 なんて凶暴な意見も出たが、さすがにそれは却下。もうかれこれ30分近くも歩きまわり、ぼちぼちみんなの顔にもあせりの色が。
「よく考えたら『恵比寿』なんてお菓子ないんじゃ!?」
 だんだんみんなの顔が諦めに歪んできた頃である。ふと見るとここには駅ビルがあるではないか! 駅ビルといえば、地元の名産品が必ずやあるところ。俺達は最後の望みをかけて、足早にそこに向かった。そして早速その名も「えびすさん」というセンベイ屋を見つけ、汗だくになりながら聞いた。
「すいませんっ、名前に『えびす』の入った物、ありますか!?」
「うーん、うちにはないねぇ。あっ、そこの『アンテノール』さんには何かあったような・・・」
「それだっ!」
 そして数件隣の洋菓子屋『アンテノール』に。
「あった! 『エビスロール』だっ! しかし・・・店は、休みだあぁぁ!」
 みんな膝からガクガクッと崩れ落ちていった。「もう駄目か!」そう誰もが思った瞬間、入舩君が叫んだ。「あっ、あれは!?」
 そう、そこには「えびす焼」が。菊廻屋という店だ。
「うっわー!!」
 みんな「えびす焼」を囲んで鷲掴みにする。なんで突然地味な「えびす焼」に人気殺到なのかさっぱりわけがわからない店の親父はとまどっていたが、みんなの「ありがとうございますっ!!」に
「えへっ、いやぁ?」
 と「えびす焼」を包んでくれた。
 座る所もなかったので、みんなで駅ビルの階段の所に座って賞味。
 ちなみに「えびす焼」とは・・・単なるドラ焼だっつーの!!

(総括) えびす焼 食せばただの ドラ焼きも 苦労の末は うまさ倍増

 さぁ、時間的に見て、今回の旅行最後のサイコロ。目は5、田町だ。ビジネス街という印象のこの町では、果たしてどんなクジが。
「神社に行き、自分がフラレタ時の話しをする」
 ちなみに聞いてみる。
「みんな、フラレタ事ある?」
 全員が銅像のように顔の表情を一切変えずに、コクンとうなずく。
 そうだよな、人間、20年以上やってりゃあ、フラレタ事の一度や二度や三度や四度やあるよな・・・って、誰かひとりぐらい、
「あたし、フッたことしかないの、ごめんね!」
 ってな輩はおらんのかー! 気づかなかったけど、もしや「モテナイ軍団」で俺たちラッパ吹いて大行進してたんじゃあ・・・。
 ともかく駅前で地図を見るとどうやら近くに神社が見当たらないので、急遽てきとーな公園でその「フラレ話大会」を開くことになった。
 まずはAさん(とりあえず、これだけは仮名。俺って優しい!)から。
「それは私が高三の頃。相手は大学生。一目惚れして、いきなり『デートしませんか?』って聞いたらOKで。すっごい知ったかぶりでギャルソンの服で本人は決めたつもりだったんだけど、なんかあちこちほころびが出てて、「でもまっ、いいやっ!」っていって渋谷のモスバーガーに入ったのね。デートなんて始めてだから、すっごく緊張してて、で、緊張しすぎちゃったのよ」
「しすぎた?」
「眠くなっちゃったの。で、なんか話してたはずなんだけど、いつのまにか記憶がなくなってて」
「えっ!?」
「はっ、って気づいたら、目の前で彼が気まずそーな顔していて。『あっ、ゴメン。あたし、眠ってた!?』って聞いたら、『うん』って・・・。『イビキかいてた・・・寝言も言ってた・・・』
 って。どーも、ヨダレ垂らして、本格的に熟睡してたみたい。モスバーガーの中で、ガーガーイビキかいて。で、その日は別れたんだけど、その後、彼の家に何度電話してもいつも居ないの。というか、妹さんが出ると、いつも後ろの方でなんかくぐもった男の人の声がしたと思ったら『あっ! ・・・えーとお兄ちゃん、今、いません!』って」
 そ、そーか。ご愁傷様。じゃ、Bさんは? 
「あたしは付き合ってるのかどーか微妙な彼氏がいたのよね。そいで、ある日『どーなんすか?』って聞いてみたら、彼はあっさりと、『あぁ、俺はお前の事ぜんっぜん好きじゃないけど、好きならそばにいればいいじゃん!』って」
・・・なんかみんなボロボロだな。この項、ページが足りん。次号に続くぞ!

(総括) 初デート いびき寝言に よだれつき それも貴方が 好きだから

 前回に引き続き、田町での「フラレタ話大会」の続きをいくぞ。Cさんは、彼女持ちの彼氏だが、強引にアタックだ。たまたまふたりになった時、告白。
「あのさー、好きなんだけどさー どうかなー」
「えっ、俺に彼女いるの知ってるんだろ」
「うん。でも言わないとスッキリしないから」
「あっ、それなら言った方がいいな。スッキリするからな。スッキリした!?」
「うん・・・スッキリした」
 って、スッキリするはずないじゃろー! ヘイヤッ! っと一発キン○マでも蹴り上げて、本当にスッキリしちまえ。
 そしてD君(って、俺以外に男はひとりしかいないな。すまん、丸わかりだ。入○君)
「20才位の時、同棲してたんすよ。でもなんか、考えすぎちゃうというか、ちょっと妄想的なところがある子で、何かで『あたし、がんばるわっ!!』って元気に言ったその拳が降りないうちから『あたし、もうダメ・・・』ってな子で。感情の起伏が激しくて。ものまねのテレビ番組とかが異常な程嫌いな子で、たまたまテレビつけたらちょうどそういう番組やってて。そしたらそれ見た途端、近くにあった缶をバッシャーンとブラウン管にぶつけて『あたしこういう事する人、嫌いだって、言ったでしょ!!』ってワンワン泣き出して。なんかわっけわかんないままフラレテました」
 そりゃ、わっけわかんないわな。そういえば、D君はどことなく、「サザエさん」に出てくるカツオに似ている。何もしていないのに、カツオの物真似しているのと勘違いされたのかもな。でも、そんなに物真似が嫌いな人がこの世にいるだなんて、コロッケとかは命、危ないな。
・・・で、俺か。俺も高校時代、クラスに好きな子がいて、上履き入れの中にラブレター入れた。すげえその頃は青春の炎で火傷しそうにまっ赤っ赤な俺だったから、カーッと血迷って『お前は俺の女房になる女だ! 俺の子供を産む女だっ!』って書いて。そしてその返事は、2日後に彼女の上履き入れに取り付けられた頑丈な南京錠さっ! もう、二度と俺の情熱が入れられないようにな! クククッ(泣)。
 ってなことで、みんなの気持ちを代弁するかのように小雨も降って来て、あたりも暗くなってきた。仕舞いは少し寂しかったけど、ビニール袋仮面になり、縄跳びでひと駅移動し、一足50円の靴下を買い、ラブホテルでドキドキし、ストリートシンガーになり、「えびす焼」を探して走りまわった、第一回すごろく旅行は、これにてお開き!

(総括) サイコロの 賽は振っても フラレルナ 明日はきっと 6が出る也
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