京成線すごろく旅行(フロムA)



 さて、今回から京成線の旅。何度か「スカイライナー」で成田まで行ったことはあるけど、鈍行列車に乗るのは初めてだ。上野からサイコロ。3、で町屋。チンチン電車の駅もある、下町風情満点の町だ。クジ。

「30分間で、それぞれ変装してくる。変装名人は誰だ!」

 で早速、バラバラに分かれ、各自工夫を凝らす。30分後、集合。
 まず、松本さんはサングラスにうさぎの耳当てをつけてかわいらしくヘンシ~ン。女の子らしくて良いぞ良いぞ、ムフフフフ。
 次に大山君。髪止めをし、化粧道具でアイラインを入れ、ちょっと女装。しかし、もともと色白なので、ほとんどわっから~ん。もっと派手派手な化粧で、まわりの人をギョッとさせて欲しかったな。
 志村さんは、お下げの付け毛。まぁ変装といえば変装だが、よくみないとわからないのがちと残念。
 と、そこに、もはやすごろく旅行のプロともいえる、イラスト担当、アンズさんがやってきた。が、一瞬、本当にわからなかった。完璧なる変装。何故なら鎖の付いた老眼鏡に、エプロン、頭には白い帽子まで被っている。
「えー、こんなに買ったの? お金かかったんじゃないっ?」
 と言うと、お金は老眼鏡、鎖、エプロンをそれぞれ100円ショップで買ったので、300円しかかかっていないという。
「じゃ、その帽子は?」
「あっ、これ、そこでティッシュ配っているお姉さんに借りてきた」
 という。うむむ、天晴れ!
 さらに聞いてみると、最初は清掃員の格好をしたくて、公園の清掃員のおっさんに
「すみませーん、作業着とズボンと、帽子全部貸してくださ~い」
 と言って断られたそうだ。そりゃ、断るわな。なんせ、清掃員のおっさんはそこで真っ裸にされちまうんだからな。公園で真っ裸でブルブル震えているおっさん。警官がやってきて
「何、しとる!」
「いや、なんか女の子が服貸してくれって・・・」
「とにかく署まで来なさ~い!!」
 ということにも、なりかねないからな。ともかく見事に変装。君が優勝だ。えっ、俺はどうしたかって?
 ・・・俺は洗濯バサミを買って、頭から服から全身にくっつけ「洗濯バサミマン」として現れた。パチンコ屋のトイレで装着して、店員にウギョギョーッと見られながら・・・。
 インパクトはあるはずだが、皆に「それは変装というより、変身では・・・」と言われてしまった。確かに、これで変装しても、目立ちすぎて、決して探偵にはなれないわな。テヘッ、反省、反省!

(総括) 変身の 第一歩は気持ちから 入って他人になりましょう

 だんだん暑くなってきましたな~。でも、まだまだすごろく列車は走ってまっせー。さて、前回の町屋から1が出て、お隣の千住大橋駅へ全員で移動。クジ。

「『たまのランニングの人って、本当は女なんだって』『男性ホルモン打って、一所懸命男になろうとしているんだって』というニセの噂を、何組かに分かれて、この町で広める。目指すは、女性週刊誌のスクープ!」

 つまり、噂広げの実験のクジなのだ。早速、読者4人は2人ずつ分かれて町にくり出し、信号待ちの間や、コンビニエンス、弁当屋などの前で、さり気なくも大勢の人に聞こえるように、この噂をベラベラ喋った。近くにいた人達の、耳がダンボになっていたのがわかったという。そして結果は・・・う~む、これを書いている現時点では、そういう取材のオファーは残念ながら、ないなー。もし本当にあったら、大笑いなのになー。さすがにちょっと無理があったか?

 ともかく、週刊誌というのは、おっとろしいからなー。かつて「たま」も、結構週刊誌の取材が多い時期があったが、一番驚いたのは、とある週刊誌で
「『本当に嬉しかった。みなさんのおかげです』とたまのメンバーはニコヤカに語っていた」
 などと書かれていたのだが、その週刊誌は、実は一切、取材などしてないのだ。全く取材にも来ていないのに、会話文までデッチアゲるとは。何が「語っていた」じゃー! こちとらあんたに何も語っとらんわいーっ!! と思ったこともあったし、また、ちゃんと取材していても、
「僕は、そう思いました」
 と言ったのが
「わしゃ、そう言ったんじゃ!!」
 とかになっていて、ぜーんぜん人格が変わっとるわいっ!!ってなこともあったし、ほんまに怖いでっせ~。
 まぁ、全部が全部そういうところばかりではないけどなー。しかし、ほんに言葉というのは難しい。例えば同じ事を喋っていても
「ゴキブリ食べるの好きなんですって?(笑)」
「ええ、好きです。なんてね!(笑)」
 なら冗談だということがすぐわかるが、悪意があれば、
「ゴキブリ食べるの好きなんですって」
「・・・ええ、大好きです。いけませんか!?」
 という風に書き換えてウゲゲェッと思わせることなんて朝飯前だからなー。ともかく、もしもこの噂をどこかで聞いたら、それはこの千住大橋で、たった4人の口から発せられた物だと思ってニヤリとしてくれ。くれぐれも言っておくけどアタシ・・・いや俺は、チンチンついてるからな!

(総括) ランニング もしもアタシが女なら 乳首スケスケ 超セクシー

 前回の千住大橋より3が出て、お花茶屋。なんとなく風情がありそうな駅名だ。クジを引く。

「一切の声を発してはいけない。すべてジェスチャーで表現。この町の名所を観光する」

 まずは、駅前にある案内板に行って、みんな無言でそれを見る。と、誰かが「郷土と天文の博物館」というのを見つけ、手を大きくそこに振って押し当てる。みんな無言でOKマークを指で作る。ぼちぼち腹も減ってきたので、みんな無言でお腹をグーグー抑えながら、そちらに向かう。と、たどり着いたがなんと本日は定休日。みんな、「オーマイガッ!」と心の中で叫びながら、無言で両拳を振り下ろす。
 さて、それじゃどうしようか、と思ったが、なんせ「相談」というものが出来ない。だが、その道は通りがそのまま「曳舟川親水公園」というのになっており、とりあえずみんな無言で、身ぶり手ぶりうんこぶりぶり・・・のはずはないが、とにかくジェスチャーで、そこを観光しながら歩く。

 途中、今回参加した読者が、みんなバンドをやっている、という話がジェスチャーでわかった。担当楽器はなんだ、という話題で、ドラムは叩くマネですぐわかったが、ギターとベースの違いが難しい。「低音」というのをジェスチャーで表すのは難しく、弦が4弦か6弦か、と手で表して、やっとギターであることを把握したりする。耳の不自由な人の大変さがわかりかけた時、誰かが「釣り堀」の看板を見つけたので、それだーと、急行する。無言でおっさんに釣り竿を借り、無言で釣り糸を垂らし、無言でバシャバシャ魚を掬いあげている。このままじゃ余りに愛想のない連中になってしまうので、せめて釣り上げた者に俺が拍手すると、みんなも徐々に拍手の音を釣り堀の中に立てていく。
「なんじゃ、この集団は!?」
 隣に座っていたおっさんが、同じく無言でこちらを見る。無言対無言の対決。さて、釣果の方はだいたいみんな1~3匹程度釣り上げたが、松本さんだけは、一匹もあがらず。そんな松本さんには、この5月に発売になった石川浩司+突然段ボールのニューアルバム「管轄外」から、俺が作詞したこの曲をささげよう。曲は「泣きっ面に蜂」です。ではどーぞー!
♪釣りに行ったけど/なんにも釣れない/しょぼんとしながら/家路に向かうと/お家は/怪獣退治に通った/ウルトラマンの足の小指によって/潰されてた/泣きっ面に蜂~
 ・・・ということでCD買ってね! じゃ、また次週!

(総括) 無言にて 春の公園歩きつつ 突然ジェスチャー暗黒舞踏か

 前回のお花茶屋から4が出て江戸川駅。クジ。

「図書館に行き、最もHな本を、それぞれ探す。誰が一番スゴイのを探してこれるか?」

 図書館にはもちろんフツーのエロ本は置いてないだろうが「医学書」「芸術書」あたりで、実はとんでもないエロテックな画像が使われたりしている可能性がある。それをまじめに探して、みんなでウヒョヒョヒョ言おう、というものだ。性に目覚め始めたドキドキ中学生のようにな。と思って交番で図書館の場所を聞いて行ってみたが、残念無念定休日。クジを引き直す。

「30分間で、なるべくデカイ物を拾ってくる。最も小さな物しか拾えなかった人が、そのデカイ物を次の駅まで運ぶ」

 早速、散り散りになり、デカイ物探しに繰り出す。俺は最初何もみつからないとヤバイと思い、保険で不動産屋かなんかの小汚い看板を拾い、それをズルズルひきずりながら、さらにゴミ収集所などを丹念にみてまわった。しかしどうやらゴミの回収の後らしく、ほとんどのゴミ収集所はきれいに片付けられていて「チッ! なんでぇ!」と舌打ち。と、団地の横の公園の隅にガスレンジ(二個口)が捨てられている。「おっ、こりゃいいぞ」と思った瞬間、その横にもっと良い物を発見。物干竿とカーテンレールが紐で縛ってやはり捨てられている。俺は紐を外すと、そろりそろりと物干竿を引き抜き、それをエッチラオッチラかついで待ち合わせの駅に向かった。さて、他の人はどんな物をみつけてきたか?

 まずは大山君は(株)ホエールの立て看板。マニは長い枯れ木。アンズさんは有田三宝抽、志村さんはスナック菓子のそれぞれ段ボール箱、そして松本さんは重そうなアナログのレコードプレイヤー。さて、優勝は誰か? ここで意見がふたつに別れた。長さなら俺だが、かさばり具合なら松本さんだ。そこで、編集の入舩君に判定をしてもらうことに。と、優勝は俺の物干竿に決まったが、「最下位は誰?」の質問に、第ニ候補と思われていた松本さんが指名された。理由は「重いけど、大きくはない」とのことで、せっかく頑張って持ってきたのに、カワイソー。しかしルールはルール。次の駅まで、物干竿エッチラかついで電車に乗ってもらいまひょっ。
 もちろん駅員や近所の女子高生の「なに、アレ!?」の熱い視線をタップリと浴びながら・・・。

(総括) 気をつけろ 物干かついで電車乗り 遊びじゃなければヤバイ奴

 前回の江戸川の「大きな物拾い物競争」で敗者になり、電車の中で物干竿をエッチラかついだ松本さんを先頭に、次は6で、中山。クジを引く。

「細道に入り、何組かに分かれて、向こうから来る人すべてに大きな声で『こんにちわー!!』と明るく挨拶をする。その反応をみて、報告会をする」

 駅前は、ちょうど手頃な「中山法華経寺」というお寺の参道になっており、だんご屋なども軒を連ねてあり、いい雰囲気。早速、ふたりづつ、3組に分かれて、50mくらいづつ離れて歩き、
「こんにちわー!!」
 を連発する。どうやら、まず第一陣が
「こんにちわー!!」
 を言うと、通り過ぎる人は(あらっ? 知り合いだったかしら)という顔になり、次に第ニ陣が
「こんにちわー!!」
 を言うと、(えっ? 明らかに知らない人だわ。なに、なにっ!?)とちょっと混乱しはじめ、そしてとどめに第三陣が
「こんにちわー!!」
 とお辞儀する頃には、完全に錯乱して(なにっ、なにっ、なんなの!?)という顔になるパターンが多く、笑った。まぁ、カメラのない、ミニ・ドッキリだわな。俺は三組目だったのだが、自転車に乗った坊主頭の子供が第一陣、第ニ陣の「挨拶攻撃」を受けて後ろをキョロキョロ振り返りながら首を捻っているところに、
「こんにちわー!!」
 というと、
「うわぁ!」
 と自転車で転びそうになったり、おっさんがひとりで変な顔してやってきたので、ふたりでわざとそのおっさんの両側に分かれて挟み撃ちにし、左右から
「こんにちわー!!」
「こんにちわー!!」
 というと、
「あ・あ・こっこっこんこんこんこん・・・」
 と「あんたはキツネかいっ!」と突っ込みを入れたくなったり、上品そうなおばさんに
「こんにちわー!!」
 と言うと
「あら、さっきも挨拶されたわ。今どきの若い人達も、意外に礼儀正しいのね」
 と感心されたりした。でも、一番多かったのは、やはり不審気に見る人。新手の新興宗教かなにかと間違われたのかもしれない。でも何も壺を買って下さい、とか、セミナーに行きませんか、と言っているわけではなく、ただの挨拶だからね。そういえば、昔は「オアシス運動」(おはよう・ありがとう・しつれいしました・すみません、をことあるごとに言う運動)とかいうのがあったのだが、いつのまにかなくなったなー。まぁ今回のクジはその「日本の正しい礼儀作法の復刻運動」ということで。いいことをしたあとは、気持ちがいいなーっ!?

(総括) こんにちわ 知らない人にもこんにちわ 世界人類皆兄弟

 前回の中山から2が出て、西船駅。この近くにはJRの西船橋駅があり、まるで略語のような駅名だ。「京成西船橋」とかにすればいいのに「西船」だ。俺は実は略語が昔から苦手で、いまだに「コンビニ」(あぁ、書くだけでも恥ずかしい)と言えずに、「コンビニエンスストアー」と言わなければ気がすまないタチだ。なのでちょっと恥ずかしいけど正式駅名だからしょうがない西船駅に降り立つ。クジ。

「大きな木のある所に行き、みんなで木登りをする。無邪気に遊ぶ」

 いい年の大人が、はたしてどこまで無邪気に遊べるか? 近所の勝間田公園というところへ。大きな木があるが、なかなか登るのが難しい。
 そんな中、山育ちで、実家がハイキングコースの途中にあり「こんなところにも人が住んでるぜっ」とハイカー達に侮辱され続けたマニは、さすがにひとり「おめーの手には、吸盤がついているのかっ!」と突っ込みを入れたくなるほどするすると登っていく。と、上の方まで行った所で、マニの携帯電話が鳴る。実はマニは我がたま企画室のたったひとりの事務員なので、外に出ている時は、仕事の電話が転送でかかってくるのだ。マニは片手で木に捕まりながら、猿さながらに、しかしあくまで電話は事務口調で、
「はい、たま企画室です。あっ、その件はこちらから資料をお送りしますので、ご検討のほど、よろしくお願い致します」
 などと言っていて、アホみたいだった。

 さて、よく公園を見ると、公園の真ん中にある木の方が登りやすそうだ。しかしその木の下には高校生らしいカップルが、中睦まじく座っている。しかしどうしてもその木に登りたい。ということで、
「すみません、木に登るので、そこどいてもらえませんか」
 と優しく声をかけると、カップルは無気味な物でも見るようにすーっと行ってしまった。そこで大山君とかが、がんばって登ったが、なかなか全員いっぺんに登れるほどの大きさはなく、木登りは残念ながら断念。しかしせめて「無邪気に遊ぶ」というのだけはやろうと、アスレチック型のすべり台にみんなで
「ワーッ」
 と行き、
「意外と面白いじゃんっ」
 とかいいながらゴロゴロゴローッと滑って遊んだ。いい大人がキャーッキャーッ言って飛び跳ねながら、ふと周りを見回すと、先程までたくさんいたはずの親子連れとかが、誰もいなくなっていた。大人が無邪気に遊んだら、いかんのかいっ! ・・・いかんか。

(総括) 童心に 帰って木登りしてみれば あの日の匂い戻ってきたよ
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