京葉線すごろく旅行(フロムA)



 さて、今回の旅は京葉線。まずは1。八丁堀だ。クジ
「その町の名物を100円ずつ出してひとつ買い、町のどこかに隠しに行き、見つけた者がそれをゲット」
 下町っぽい所だが、まだ朝が早くあまり店が開いていない。でもとにかくこの町の名物を見つけなければならないので、聞き込み調査。クリーニング屋のおばさんに
「八丁堀の名物を探しているんですけど」
 と聞くと
「名物ねぇ・・・。うーん、そこの酒屋さんが詳しいわよ」
 というので、その酒屋に行って聞いてみる。
「あの~八丁堀の名物、ここで聞け、と言われたんですけど」
 すると、
「あぁ、それならじいちゃんだ。じいちゃ~ん! 何かこの人達が八丁堀の事について聞きたいんだって」
 と、奥からおじーさんが出て来た。
「八丁堀の事!? じゃあ、そこの横のエレベーターで5階にあがりなさい」
「んっ?」
 なーんか変な展開になってきたぞ。俺達は名物の饅頭とか、煎餅とかを教えてもらえればそれでいいのだが・・・と思いつつも、言われたとおり、エレベーターに乗って5階に着くと、そこはそのおじいちゃんの、個人的な「八丁堀資料館」だった! そしておじーさんは話し始めた。八丁堀の歴史を。
「伊能忠敬が亡くなった場所がここでな」
 古地図とか、いろんな資料を取り出してきて広げ始める。小声で尋ねる。
「で、あのー、名物は・・・」
「それはともかくだな!」
 と話しは全く違う方に流れていき、橋の名前の由来とか、ついには何故かケンブリッジ大学の学術資料まで持ち出してきた。おじーさんは根っからの郷土研究家だったのだ。俺達は全員、心の中で「違う~!」と呻きながらも、熱弁の腰を折るタイミングがつかめず、その講議は一時間にも及び、マニは大口開けて欠伸をハジメ、アンズさんはお腹をハッキリ、グーと鳴らしていた。そして結論は「この町には特に名物はない」ということだった・・・。
「あっ、僕達そろそろ行かなくちゃならないんで。どうも、ありがとうございました!」
 そう言って逃げるようにお暇しようとすると、おじーさんはニヤニヤしながら、
「こんな物もあるぞ」
 と江戸庶民文科のエロ紙切りをニヤニヤ笑いながらパクパク動かしてくれた。
 肝心のクジの方は、八丁堀の歴史講議にあまりに時間を取られた為、てきとーに「汁粉の素」かなんかを甘味屋で買って、カレー屋の横の植木鉢の下に隠して見つけてキャッしたが、ともかく、クジよりおじーさんの一本勝ち! 

(総括) 気をつけよ 熱弁ふるって 時間なし あんたの勝ちだ おじいさん

 前号でよーやく八丁堀のじーさんの魔の手から解放され、出目は3。少し急がなくては。舞浜だ。そう、舞浜と言えば、天下のディズニーランド最寄り駅。というか、ほとんどディズニーランドの真只中の駅。駅前からすでに、その俺にはちょいと縁が薄くなったファンタジーの世界が広がりつつある。さて、クジは。
「町の人にバレないように、『すごろく旅行参上』というシールを3箇所づつ町にこっそり貼る」
 あっ・・・あきまへんっ! ただの町ならなんとかなるが、よりによってここは落書き等があっても、即刻消される管理のきびし~い、ディズニーランドなんですから。貼っているのを見られただけでもへたすりゃあ、さり気なく目を光らせている警備員さん達に、
「チミチミ~」
 と肩をポンポンと叩かれること請け合い。万一こっそり貼れたとしても、見つかった途端に即座に剥がされる事は目に見えている。しかし、すごろく隊はそんなことにはくじけないぞ。
「メルヘンに負けてたまるかー!」
 とわけのわからない事を言って、せこいシールに俺が手書きした「すごろく旅行参上」のシールを貼付けてきた。ちなみに、この旅行は年末進行の関係上、12月の始め頃に行われている。果たして2ヶ月たった今、何枚が残っているか!? 
 以下、隊員達が貼った場所。舞浜に行く人は、是非宝探し気分で発見してくれっ!!(このエッセイを警備員に読まれる前に。早く、早く!!)まず駅の中。
「切符の1番自動販売機の下の方」
「1200番のコインロッカーの表の下」
「駅の男子トイレの一番奥の個室の水押しボタン」
「女子トイレの外の人の顔の形の所」
そして駅を出て左側「イクスピアリ」の中では、
「入ってすぐの石の花壇の中」
「入り口の左手真ん中の電話の受話器」
「イクスピアリ案内板の裏」
「ふたつめのテーブルの裏」
「139番コインロッカーの中」
「本屋の前のベンチの手すりの裏」
「ゴミ箱の裏」
「ALESSIとba droquerieの間の柵の表」
「Gracious squarellの看板の近くの階段の手すり」
「アネックスパーキングのスポットライトの表」
「でかい植木鉢の右側のへこんだ部分」
 駅を出て右側では、
「ディズニーランドの一番正面真横のベンチの裏」
「ディズニーランドに行く階段の手すりの裏」
 さあ、果たしていくつ見つけられるか!? 5枚以上見つけた人、編集部に写真を撮って送っておくれ。たまの最新アルバム「しょぼたま」を先着3名様にプレゼントするぞっ!!

(総括) ディズニーの 夢の世界の その裏に すごろく隊の 参上証拠

 舞浜から、1が出て新浦安。さて、ここでのクジは。
「宇宙人語しか喋ってはいけない」
 つまり、意味のある言葉は、日本語であろうが英語であろうが、一切喋ってはいけないのだ。かと言って、無口になれ、と言っているのではない。あくまでも意味不明の宇宙語で喋り続けなければならないのだ。と、ちょうどお腹も減ってきたので、何か食べることに。
「パイオーツ!!」(レッツゴー!!)
 と駅前の何件か食い物屋が並んでいる方向に歩き出す。
「プガジャガ・ノイ!?」(ここでいいかい!?)
 一件のレストランを指差す。と、編集の入舩君は即座に
「ゴエゲロ、ゴエゲロ!!」(駄目だ、駄目だ!!)
 と拒否反応。さらに手足をバタつかせ、
「マダムキラキラ、ゲロリンチョッ!」と叫ぶ。どうやら、(高くてフロムエーの経費じゃ落ちない。俺の立場もわかってくれいっ!!)と言っているようだ。
 しょうがないので、手頃な値段の店を見つけ入る。さて、ここからが問題だ。ここまでは、所詮身内のお遊びですんだが、何も知らぬウエイターにも、宇宙人語を使わねばならない。丁度良いことに、メニューブックには写真入りでメニューが載っていた。なので
「アギガー」(これ)
 とか小声で言いながら俺はハンバーグを指差し、それはすんなり通った。しかし問題はライスだ。大・中・小とあるのだが、その文字は小さく、俺の指はその文字よりも太いので、「中」を差したつもりだったのだが「大ですか?」と聞かれ、
「ビロンチョ、ベロンチョ!」(違う、中です!)
 と叫ぶ。すると今度は「小ですか?」俺はフツーでいいのだ。中でいいんじゃーっ!!と叫びたいが、それは御法度。
「ホニョラリ~」(違うってば~)
 さらに泣きべその顔を作って否定する俺に、ようやくウエイターも消去法で「中」だと分ったらしいが、何か異星人を見るような不思議な目で俺達をこわごわ見上げていた。もっとも「宇宙語」だからな。すっかり分かられて
「ポロニャーヘニョー!」
 とか宇宙語で真面目に返答されてもこちらもビックラこくけど。と、川端さんの携帯電話が鳴る。
「ポロンチョ!」
 見事に宇宙語で出る。偉い! どうやら、彼氏からの電話のようだ。となんと、途中で俺に代わってくれと言う。仕方なく電話を受け取ると俺は言った。
「ハイホー! ヒンガッ、ヒンガッ!!」(どーも、石川です!)
・・・婚約が決まっているという川端さん。相手が君の異常性にビビッて破局になっても、プロチョビレ!(俺は知らん!)

(総括) パコパコピー フンジャラモンジャ ケロリンパ ヌチョットペロリ ウギギギギ 

 新浦安から2が出て、二俣新町。駅前付近には、雑貨屋の一件すらないちょいと寂しい工場地帯だ。クジ。
「銭湯に行き、ひとり一曲ずつ湯舟で唄を浪々と歌う」
 しかし、一般の人家さえ見当たらないこの周辺。一応駅員に聞いてみるが、やはり銭湯はない、との事。あたりまえじゃな。クジを引き直す。
「大声・叫び声で会話する」
 途端に、皆、日頃の鬱憤を晴らすかのように、大声をあげた。
「じゃあー、どぉーこぉーにぃぃっ、行こぅくわぁ!!」
「このすわーきーにー、公園があるかるわぁ、そこに行くくわぁぁぁ!!」
 がむしゃらに、大声で怒鳴りあう面々。
「うおぅっ!! こんなところに地下道ぐわぁぁぁぁっ!! ここうおっ、通って公園に行くのだぬあぁぁぁ!!」
 ちょうど結構長い地下道が、公園の方まで続いていたのだ。
「じゃあっ、せっかくだかるわぁっ、グリコ・チョコレート・パイナップルでもやりぬぁがら、行くくわぁーっ!!」
「すわんせえいーっ!!」
 そして思いっきりの声を振り絞ってジャンケンをし、童心に戻って、
「グ・リ・コォォォォ!!」
 とか言いながら皆で飛び跳ねて行くいい年の大人達。遅れたのは、案の定おとんまマニで、ひとりだけ全然進めずに、もうグー・チョキ・パーの何を出しているのかも遥か彼方で見えなくなってしまった。
「うおおーい、何を出しているんどわぁぁぁ!!」
「パーを出しているんどわぁぁ!!」
 って、オメーの遠くなっていく姿の方がよほどパーだけどな。とにかく公園に着くと、ちょうどサッカーボールが転がっていたので、皆でドッジボールをする事に。
「いくぞぉぉぉいっ!!」
「ほおりゃあぁぁぁぁ!!」
 異常に威勢だけはいいドッジボール大会。そのでかい声は、まるで青春のようだった。みんなも、青春を感じたかったら、でかい声を出すといいぞっ! 昔、俺が高円寺に住んでいた時、歌の練習で大声を出したいのだが、アパートでは出せないので、近くの環七の歩道橋の上に真夜中行って、思いっきりひとりで叫び歌っていたものだ。通り過ぎる人が、「ぎぇぇぇっ!!」と大声を張りあげている俺を見て、ギョッとしつつも横をすり抜けていったものだ。その成果で、今は立派な(?)ミュージシャンさっ! とにかく大声を出すのは健康にもいいぞっ。みんな突然意味もなく、町中で大声を張り上げて、青春しようぜっ!! まっ、危ない奴と思われて、おまわりさんに「ちょっと署まで」されても、俺は一切関知せんけどな!

(総括) でかい声 あげてストレス解消も はたから見たら ただの馬鹿也

前回の「意味なし叫び声の町」二俣新町からのサイコロは2。今回の旅行は前回の中央線とは反対に、やたら小さな目ばかり出たが、冬の一日は暮れるのも早く、もうここが今回のゴール、新習志野だ。クジを引く。
「男はみんなオカマに、女はみんなオナベになって町を観光」
 早速、俺は身をくねらす。
「寒いわね。どこ行きましょうか?」
 実際には、あまり身をクネクネくねらしている女の人はいないけど、ついつい演技過剰になってしまうわっ。
「あらっ! あそこにアタシの大好きな100円ショップがあるわ。あそこに行ってくれなきゃ、嫌よっ、嫌よっ!」
 とアタシの駄々で100円ショップに向かう一行。と、途中ですれ違った若者が、
「おっ!!」
 という顔をして俺、いやアタシの顔を見る。(ふふふ、でも違うのよ。今のワタシは、『たまのランニング』じゃなくって、ラン子(ランニング子)ちゃんよっ!)とひとり意味なくほくそ笑む。
 早速ラン子が向かったのは、化粧品コーナー。どんな口紅がアタシを素敵に演出してくれるのかしら・・・。100円ショップといっても、最近は色や種類も豊富で、ラン子迷っちゃう~。編集の入舩君、いや入舩ちゃんも「広沢虎造」のCDなど買っているわ。男の渋~い声に、その女体を痺れさせる、ということね。なかなかオカマも堂に入ってきたわね。す・て・き?
 ところでオカマは、ワタシも「たま」のライブで時々おふざけで「イパネマの娘」というひとりの少女になって、カツラ被ってファンのイベントとかに出ることがあるからそんなにムズカシクないけれど、オナベさんの方は結構みんな苦労しているみたいね。
「あれ何かしら・・・な、何じゃろうっ!!」
 って、それはオナベというよりも、昔の武士でしょう!!
「これっ、安いわね・・・や、安いジャン!!」
 って、それはオナベじゃなくて浜っ子でしょう!! ほらほらもっと肩をいからせて! って、よく考えてみたら、最近の軟弱な男は肩なんていからせてないのよねー。うーむ。なかなか「オナベ道」というのも難しいわねーっ。そもそも男が結構女化しているからしょーがないのよねー。
 ところでせっかく千葉まで来たので、アタシは「マックスコーヒー」を買って帰るわ。実はアタシ、缶ジュースのコレクターなの。で、この「マックスコーヒー」は千葉県にしか売っていない、幻のコーヒーなのよ。そんなショッピングもしつつ、今回の旅行はお・わ・り・よ?

(総括) 心まで オカマになった はずなのに つい手に取るのは 100円パンツ
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