話題143 オススメの本(2)


最近、純文学がしんどくて読めません。図書館で町田康の「告白」を借りてきたのですが、あ…これテーマが重苦しそうだ…となって挫折しました。町田康のような「読ませる」作家でダメならもう何も読めやしないとしょげています。
随筆ならまだ何とか読めます。内田百がオススメです。大学時代、「阿房列車」シリーズに影響を受けて飛行機よりも高くつく寝台列車の旅をしたのは楽しい思い出です。 19/1/24(ANA)

俺も「阿房列車」シリーズ大好き。ほとんど何も起きないのに読めちゃうね。
小説よりも旅のエッセイが一番好き。 19/1/24(石川浩司)

ジェームス・クックの「太平洋探検」〔岩波文庫・上下巻〕。これは好きで繰り返し読んでます。いわゆる「キャプテン・クック」として高名な18世紀イギリス海軍の軍人であり探検家の太平洋航海日誌。でも彼は文筆家ではなく航海技術と測量術や海図作成に長けた軍人船長なので、記述はたんたんとしていてそこが逆にリアリティーの効果を生んでいます。オーストラリアが大陸であることを発見した第1回目の航海では、オーストラリアやニュージーランドの沿岸で現地民のアボリジニに遭遇した描写はとてもビビットだったり、船員が死ぬ場面では、○月○日、誰々死亡。・・・というたんたんとした記述が続きます。ちょっと記憶が薄れてますが当時は長距離航海によるビタミンC不足で壊血病になる船員が多くあり、航海の後半は死人が多く出ていたようですね。
また、わたしはハワイが好きなので、以前はハワイに行くとクック船長の足跡を辿る旅をしました。結局はハワイ島で原住民に殺されて生涯を閉じるわけですが、今も興味のつきない歴史上の人物であります。 19/1/31(波照間エロマンガ島)

足跡を巡りすぎて殺されませんように! 19/1/31(石川浩司)

木下直之『股間若衆』とその続編『せいきの大問題 新股間若衆』。ある日、著者は銅像を見たそうです。全裸の男2人が肩を寄せ合っている像ですが、ふと銅像の股間に目をやった著者は気づきましたーー「あれ?チンコが無い!」それを皮切りに全国の銅像の股間を調べていくと、「曖昧にもっこり」「木の葉で隠れる」「根元から切断」「股間が溶けている」など、様々なバリエーションがあると分かったのです。そこを起点に、「裸の銅像」にまつわる諸々が議論されていく、ふざけているようで実は真面目な本です。ちなみに、タイトルは『古今和歌集』『新古今和歌集』のパロディです。風流ですね。 19/3/12(←どこがだよ) 19/3/12(未成年)

面白そう! アートの考現学だね。 19/3/12(石川浩司)

石川さん、興味を持ってもらえてうれしいです。下記サイトに概略が出ています。(木下直之全集:http://www.a-quad.jp/kinozen/index.html)最近読んだ本では、反町茂雄『一古書肆の思い出』が良かった。国宝級の古典籍(江戸時代以前の貴重書)を幾度となく扱った、世界的な古本屋さんの自叙伝ですが、名品が次々と発掘されていくさまに大興奮しました。 19/4/2(未成年)

渋い未成年(笑)。 19/4/2(石川浩司)

19/4/2の石川さんへ)よく言われます。体は高校生、心は老人の未成年です。さて、最近読んだ中でピカイチなのが、栗原康『アナキズム』(岩波新書、2018)です。本書の主張のすべてに賛同できるかはともかく、「なにものにも、自分にすらも支配されずに生きていく」という思想は、とても大事ではないかと。あと、文体がいいです――「やめられない、とまらない。テメエのことはテメエでやれ。ついでにテメエをふっとばしてやれ。やるならいましかねえ、いつだっていましかねえ。いまのあとには、いましかねえ。そしてさらなるいましかねえ。いま、いま、いま。死んだつもりで生きてみやがれ。死んでからが勝負。やることなすこと根拠なし、はじまりのない生をいきていきたい。アナーキー!」――と。お堅い岩波新書の文章とは思えない、なんですか、この躍動的で暴走した文体。 19/5/12(未成年)

口語体の文章は俺も好き。東海林さだお、椎名誠なんかもそういう感じだよね〜。 19/5/12(石川浩司)

最近江戸時代の洒落本とかを読み始めました。式亭三馬という戯作者の作品にはまっています。『浮世床』という、髪結い床の話が有名ですが、ここではあえて『酩酊気質』を推します。「酔っ払い図鑑」みたいな本で、「酔っぱらって長い説教をし、周りを退屈させる『異見上戸』」「これといった訳もないのに、人の迷惑も気にせず、一人騒ぐ『さわき上戸』」等々。本文では、各々が宴席でした話が書いてあるのですが、酔っ払いの口調がそのまま再現されていて(ろれつが回らず、「ひゃひゃいけん(拝見)・・・」「ひゃばかいながら(憚りながら)」と言ってたり、「げっぷ」とかも書いてあります)、腹を抱えて笑ってしまいました。しかも、「ここは舌が回らない感じで読んでください」「尊大で気取ったように読んでください」などと、読み方も書いてあるという凝りよう。 19/5/22(未成年)

音楽でも例えばツイッターで「#楽譜に出てくる謎の指示選手権」で検索してみると、すごい指示がいっぱい出てくるよ。見てみて。 19/5/22(石川浩司)

中村真一郎『雲のゆき来』。中村真一郎は福永武彦とも親しかったそうですから、石川さんも読まれたことがあるかもしれません。この本の魅力は多々ありますが、最も素晴らしいのは、小説全体がきれいな円環構造になっているところです。前半3分の1くらいは、元政という江戸時代の僧侶・漢詩人・歌人の話が延々と続き、「影響の三段階説」だとか何だとかという批評が続き、読者は若干の困惑(自分は何を読んでいるのか?これって小説だったっけ?というような)を味わうのですが、それが伏線となり、きれいに後半の展開に回収されるという快感。ここまで構成が練られた小説、僕はまだ見たことがありません。文体もいいです。ふわふわとしつつも、落ち着いて、留まるところには留まっている感じ。

「詩的で知的な冒険」というキャッチコピーがよく似合う、最高の小説だと思います。 19/6/15(未成年)

読んだことないなあ。俺はその前半で挫折してしまいそうだが...。 19/6/15(石川浩司)

写真集なのですが、篠山紀信の「人間関係」という写真集、良かったです。 19/7/2(もんぢゃ)

俺は当時大ヒットしたタイトルはうろ覚えだが「123人の女友達」的な写真集はやっぱりすごく女性の魅力を引き出していたな〜。
ちなみに俺たちも一度だけ篠山紀信さんに撮ってもらったことある。「月刊カドカワ」という雑誌の表紙写真。
他のカメラマンと違って、すごいスピードで撮って「はい、おしまい」と拍子抜けするほど早かったな。やっぱり天才なんだろうな。 19/7/2(石川浩司)

19/6/15の石川さんへ)たしかに、同級生には勧められない本です。でも、僕はこの本から、文学作品・芸術作品としての小説の読み方(鑑賞法)を教わりました。ただストーリを追うのではなく、文体を味わい、精緻な描写に唸り・・・と。読むのは大変ですが、一回読むと一生楽しめる作品だと思います。古本屋で発見したら、ぜひ買ってみてください。 19/7/19(未成年)

世界中に何億という書物があるのだろう。自分が深く入り込める書物と出会えたことは幸せだね! 19/7/19(石川浩司)

筒井康隆『文学部唯野教授』。ん〜と、そうですね、文学部に行きたい!と思ってる僕が読むべき本じゃなかったです。おもしろかったんですが。あと、この本が某国立大学文学部教授の本棚にありましたが・・・ 19/8/16(未成年)

高校生の時に読んだなあ。筒井康隆はほとんど読んだ。 19/8/16(石川浩司)

そうですか。石川さんも読まれたのですね。ただ、『文学部唯野教授』はあくまでフィクションですから。僕の知り合いの大学教授は、みんな人格・学識ともに優れた素晴らしい方々です。 19/9/1(未成年)

うーん、大学教授もいろんな人がいるからねえ。特別人格が優れてる人が多いとは思わないな。 19/9/1(石川浩司)

「いつか春の日のどっかの町へ」という、大槻ケンヂさんの文庫本が久しぶりに良かった本です。
年齢的に周囲の人が亡くなっていくという話と、大槻さんが40歳を過ぎて初めてちゃんとギターを練習して、恥をかいたり失敗したりという話との対比が印象的で、でも生きている限り新しい事に楽しんで取り組んでいく事の素晴らしさが胸を打ちました。 19/9/12(KPC)

あれ、その本って俺が文中に登場してる作品かな?
大槻くんのライブのゲストに俺がパーカッション転がして行った時の話。 19/9/12(石川浩司)

篠田節子『斎藤家の核弾頭』〔1997年〕

毎年2月タイ・チェンマイに来る友人から新潮文庫版を数年前にいただいて読みました。著者の篠田節子さんは直木賞作家で名前は知っていましたが、それまで読んだことのなかった作家です。1960〜70年代に多く書かれた筒井康隆のスラップスティックSF小説にタッチが似ていて、ぐいぐい引き込まれあっという間に読了。読後、この面白さは何なんだろうと半日くらい余韻に浸って過ごしました。
2075年が舞台なのですが、その頃日本は「国家主義カースト制」によって超管理社会となっていて、国民が身分制度のようにクラス分けされています。その中で国家の陰謀によってどん底にたたきつけられる斎藤家が国家に反逆するという物語です。現在とリアルで陸続きな地平があるように思える薄気味悪さを感じ続けました。読んでいるあいだ、ハリウッドの近未来SF映画を脳内で想像しながら読書したオススメの作品です。他の作品もバンコクの古書店で何冊か買い求めて現在「つん読」状態にあります。 19/9/17(波照間エロマンガ島)

おっ、この作家、名前しか知らなかったけど筒井康隆好きの俺としては興味わいた。ブックオフでも漁ってみっか〜。 19/9/17(石川浩司)

北杜夫『楡〔にれ〕家の人びと』〔1964年〕

わたくし波照間エロマンガ島が1972年、小学4年生のときに視聴していたNHK銀河テレビ小説の同名のテレビドラマがあまりに面白いので、そこから興味が広がり手に取った長編小説。自分の読書体験の原点がここにあるといっても過言ではない。実在した北杜夫の実家の精神病院の経営者一族の何代にもわたる群像を描いた作品。第一部の主人公の病院創始者の楡基一郎は北の祖父がモデルで、この銀河テレビ小説版では宇野重吉が演じていたが、それより7年前の1965年にTBS水曜劇場枠で製作されたドラマでは東野英治郎が基一郎を演じ、そちらのほうが変人きわまりない人物で抱腹絶倒だった、とドラマ好きの父が盛んに述懐していたことを覚えている。しかし宇野重吉も奇天烈なキャラクターを存分に演じきっていた。
新潮文庫版は前後編2冊となっていて、小中高大そして社会人になってからも定期的に読み返すほど大好きな作品だった。北杜夫は「どくとるマンボウ」シリーズや「ぼくのおじさん」、「怪盗ジバコ」などユーモア小説やエッセイにも優れた作品が多く、この「楡家の人びと」も含めて北杜夫〔本名・斎藤宗吉〕まわりの斎藤家の人々はずっと身近な存在として近しく感じていた。

この基一郎の婿養子である徹吉という人物が出てくるのだが、この人物はもちろん大正昭和の大歌人の斉藤茂吉がモデルである。だが、そちらの文学者の一面はまったく描かれずに、基一郎亡き後に病院経営に汲々としている小人物としてのみ描かれているのがとても面白かった。週一回、信濃町の慶應大学病院の図書館に調べ物に通うのだが必ずといっていいほどそこで居眠りをしてしまう描写など覚えている。その他出てくる登場人物が出る人出る人、こんな面白い人間どこにいるのかというくらい魅力的に描かれていて、彼らが起こす珍騒動の無類の可笑しさを含め、すっかり小説内世界に耽溺してしまうほどだった。そしてそれらの登場人物が大正から昭和へと激動の時代の変化に否応なしに巻き込まれついには戦災に遭い、焼け野原になった東京に立ち尽くすところまで淡々と描かれていく。三島由紀夫が「日本の近代文学史上もっとも重要な市民小説である」と評価した作品でもあった。 19/9/26(波照間エロマンガ島)

北杜夫のユーモア小説はほぼ読破してるけど、この「楡家の人々」は大作だったのでついつい大変そうで手に取らずじまいだったんだよね。読んでみようかな。 19/9/26(石川浩司)

『骨山バイク店』Dennis Ivanov 著、2019年刊


2019年10月、ニヒル牛で行なわれた「Dennis Ivanov マイペンライグラフィックス展」に出品されたデニスさんの新刊。これは石川浩司ファンは必読の一冊です!! 事実を基にした文章と写真とで構成されたフィクションというのでしょうか。「日本人が海外で遭遇した、些細なトラブルについての記録」というリードの文言から始まる3人の日本人の物語。

最初に「骨の章」。われらが石川浩司さんが2012年2月タイのチェンマイにて左足首を骨折したときのてん末が、あますことなく詳細に書かれています。実はわたくし波照間エロマンガ島もその現場に遭遇していたので、この2012年2月チェンマイの空気が書物となって作品に結実したのは本当に喜ばしいと思いました。当時の石川さんの日常は「おれの日常クイズ」のこちらのページで見ることができます。 http://ukyup.sr44.info/q12.html

次に「バイクの章」。これまたある年、チェンマイにやってきたうら若き三線弾きの中川樹海〔きみ〕さんを主人公にしたレンタルバイクをめぐるトラブル話。これはタイ在住11年のわたしとしては小ずるく外国人観光客からカモる悪いタイ人がいることは先刻承知なので、とても心が痛みましたね。

そして最終章は「山の章」、2010年代毎年のようにスコットランドのエジンバラで開催される演劇フェスティバルに参加していた日本スタンダップコメディアンの第一人者、清水宏さんのある年のエジンバラでの戦いの記録。これが感動的です。最後のくだりはデニスさんの術中にはまり読みながら泣いてしまいました。清水宏とデニス・イワノフの真剣勝負が垣間見られるのです。プロフェッショナルとはこういうものなのかもしれないな、と感心しました。

デニスさんはブログの文章を読んでも本当に文才豊かで感心するんですよね。大好きなアーチストであります。http://dennis-ivanov.jugem.jp/  19/11/24(波照間エロマンガ島)

俺も自分が散々な描かれ方してるのに、電車内で吹き出すほど笑ってしまった。
ちなみにニヒル牛で買えます。それ以外で売ってるところはたぶん今のところないかもしれないす。 19/11/24(石川浩司)

〔2010年6月25日~2017年9月3日のTweetより〕
椎名麟三「寒暖計」読了。タイトルは感心しなかったが読むとすぐに文学的感興に引き込まれていった。1959年作だがテーマは全く古びてない。あと「小松商店員」とか「土屋大学生」など、昨今の芸能人容疑者の通称〔例「島田司会者」「稲垣メンバー」等〕と同じ人称の使い方をしているのに驚いた。

椎名麟三「寒暖計」について筒井康隆は「下層階級の卑小な現実と原水爆のような社会問題を重ね合わせ」たと紹介し、つづけて「・・・それに、ロリコンと原水爆という組み合わせもいい。椎名麟三の小説には、こういう美しい女の子がよく登場します」と評価しています。

アルフレッド・ヒッチコックは「舞台恐怖症」で嘘のフラッシュバックを使い観客を欺いたことを失敗だと「映画術」の中で反省している。最近椎名麟三の「寒暖計」を読んだとき、何故かこのことを想起してしまった。椎名は読者を欺くまでは行ってないが、あるトリックによるどんでん返しをプロットに使っていたのだ

最近よくRTされる椎名麟三の「寒暖計」についての呟き。よく出来た短編小説だ。そして主人公が変態にして犯罪者。救いの無さが心惹かれてならないんだ。〔引用、ここまで〕

10年ほど前に読んだ椎名麟三の『寒暖計』。10年経った今でも記憶の中にどす黒い想い出として深く残っています。上記にあるように「ロリコンと原水爆」という組み合わせ、主人公が変態にして犯罪者。救いの無さ……、ぜひ一読をお勧めいたします。 20/1/21(波照間エロマンガ島)

おお、興味わくね。どんなことでも何かを与える書物は素晴らしい。
本当に生理的に駄目なら読者は読書を止めることもできるのだから。 20/1/21(石川浩司)


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