ママとパパには内緒だよ8


第8回 うんちくん



今回は千葉県の柏にお邪魔しま〜す。駅までお母さんに車で迎えに来ていただきご自宅に到着。と、クリスマスも近いので玄関には面白いリースが。
「これはどうしたんですか?」
「捨てるはずのゴミだけで作ったんですよ」
素晴らしい ! 既成の物ではなくてしかも要らない物だけで作ったのにそれが綺麗なリースになって飾られてるという発想が僕は好きだな〜。

僕も今太鼓とかを叩くのを本業にしてるけど、それは元々燃えないゴミの日に太鼓がゴミとして捨てられていて、それをこっそり持ち帰ったことから人生が大きく変わったのだ。
僕の東京パピーという歌には「♪ゴミなら捨てない リボンをつけましょ」という歌詞もある。ゴミだってちょっと見方を変えれば素敵なリースになったりそれが一生の職業になったりする。
本来価値が無いと思われてる物の中に価値を見出せるかどうかは大きい。例えば僕が子供の頃に遊んでいたどこにでもあったビニール製のオモチャが今マニアの間でとんでもない金額で取り引きされてるように。
またもちろんお金にならなかったとしても宝物なんて人によって違って当然だと思う。この連載の第3回に出て来たつむぎちゃん梅干しの種のように「これが大事ですよ」の価値の押し売りからは僕はできるだけ逃げたいと思ってる。

そんなお宅の本日の主役はかおるくんという小学一年生の男の子。
何でも僕の太鼓を叩くパフォーマンスを見て影響されて夏場は常に僕のステージ衣装と同じランニングシャツ一丁だという。嬉しいな。しかし下はそのままフルチンのこともあるそうな。
ただ覚えておいてくれ、一応僕は下は半ズボンをはいてるからな。今はまだ大丈夫だがもう少し大きくなってもその格好で外を歩いているとおまわりさんに「ここに入りなさい」と牢屋に連れて行かれるからな。注意してくれよ。 

「ねえねえ、お母さんも二階に行っちゃったからお姉ちゃんとおじさんに何か秘密の話してくれない?」
「ん・・・秘密別にない」
「あ、そう・・・普段は何して遊んでるの?」
「ん・・・泥団子とか」
「へー、泥団子かぁ。どうやって遊ぶの?投げたりするの?」
「ん・・・ただ作るだけー」
「あ、そう・・・お兄ちゃんとはケンカとかしないの?」
「ん・・・するよ」
「どんな時に?」
「ん・・・ご飯食べてる時に横で歯磨きとかすると」
「あぁ食べてる時に歯磨きされるのはなんか嫌なのかもね」
「ん・・・」

と、正直話がすぐ詰まってうまく広がっていかない。まぁ小学校低学年男子にはありがちだし、いきなりあまり知らないお姉ちゃんとおじさんに挟まれてそうそう秘密は語れないよなあ。僕だって喋れないもの。よっぽど親しくならなきゃ本当の秘密なんて洩らせないもんねえ。

と、その時ふと目に止まったのが粘土で作った変な怪獣。
「あれ、これかおるくんが作ったの?」
「うん、そう。ジャバ・ザ・ハット(スター・ウォーズに出て来るキャラクター)。」
でも、怖い両生類のようなその生物の口からは花がいくつも出ている。小学一年生が作ったとは思えないなかなかの出来栄えだ。
「これ、この花が出てるのがとってもいいね!」
「そう?」
すると急にかおるくんの目が輝きはじめた。
「他にも作ったものいろいろあるよ」
そしてやはり粘土で作ったキリンやかおるくん自身の人形や木を自分で切って作った箱などを見せてくれた。どれも不器用な僕だったら中学生でも作れなかったであろう代物。
「すごい、すごい!」
すると近くでこっそり様子を伺ってた妹のはるみちゃんが「もっと面白いものあるじゃない」と。
「あ・・・ぼく、絵本も作った」
「絵本? 見せて見せて!」
と、持って来てくれたその手描き絵本の表紙には「うんちくん」。

登場人物を紹介しよう。
べちゃべちゃうんちくんはお兄さん。
ほそながうんちくんは弟。
ころころうんちちゃんは妹。
本を広げると便器の中でいろんなうんちが遊んでるが最後には、
「そしてみんな ながされてしまいました めでたし めでたし」と。
いや、流されてたらめでたしじゃないだろーと笑ってツッコムと、
「これ」
なんと第二話が! タイトル「うんちのおんがえし」
「かおるくん(自分ね)がすででうんちくんをたすけてあげました
おかえしに うんちカレーを作ってくれました めでたし めでたし」
めでたし・・・かもしれないけど、カレーの横に「くさいー」と書いてあるんですけど・・・
すると「まだあるよ」と。なんと第三話が! タイトル「うんちくんのあたらしいきょうだい」
カレーを食べた(もちろんカレーはうんちです)かおるくんはおなかがいたくなってトイレに行ったら、
「べちゃべちゃうんちくんのきょうだいが おしりからとびだしてきました よろこびのダンスをしました」
(そっ、それは下痢というんじゃー 変な物食べたから)
お・し・ま・い
この「おしまい」の文字もうんちの絵の絵文字。
いやー凝ってる。まぁこの年頃はうんちとか題材にしやすいのは分かるんだけどそれで3冊も絵本作るってスゴい。ちゃんとオリジナリティもあるし。
しかも発行年月日も書いてあってこの取材をした年の8月29,30,31の三日間で一冊ずつ仕上げていったのも分かった。
たいていの子どもは描いたとしても一冊で飽きてしまうもの。そして内容も続き物なんかにはまずならない。今はうんちでもそれが別のものに変わっていけば将来ちゃんとした作品も作れそう(まぁ、大人になってもずうっとうんち一本やりだったらそれはそれでスゴいんだけどね)。
将来の夢を聞いたら建築士か大工さんになりたいと言っていたがこの集中力。三つ子の魂百までで素晴らしい創作意欲溢れる独創的な家を建てられるかもしれないねっ!

僕も食べ過ぎたり飲み過ぎたりしてべちゃべちゃうんち君の兄弟がお尻から飛び出してこないようにしなくちゃね。本当にべちゃべちゃうんち君がトイレでダンスを始めたら外の人になんて言っていいか分からずにトイレから出るに出られなくなるからね。

かおるくん、忠告どうもありがとう!


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