ママとパパには内緒だよ7


第7回 占いと爪楊枝



本日の待ち合わせは下落合。僕は西武線の急行を使って東京に出ることが多いのだけど各駅停車しか止まらない駅なのでいつも景色だけが通り過ぎて行ってしまう町だ。
その駅前の公園にやってきたのは7才、小学二年生のにやちゃんとふたつ違いの弟のしょうくん。
今日の主人公はにやちゃんだ。なんか名前がずっと笑ってるようでいいね!
青いワンピースに麦わら帽子、ピンクの靴下に茶色のブーツとオシャレ。
「この公園、生まれて初めて歩いたところ。」
なんと最初の記憶の土地が今日の取材場所だったのだ。不思議な縁!
夏も終わりに近づいたある日、僕らはその公園のベンチに腰掛けた。
「へえ、ここが最初に歩いた記憶の場所なんだねー。他に覚えてることある?」
「うーんとね。保育園でママが帰っちゃって泣いちゃったこと」
ああ、そういう感情が動いた時って記憶に残るんだよね。
「もし今、町でママとはぐれちゃったら泣く?」
「いや、ショッピングセンターとかだったらアナウンスしてもらう。外だったら交番を探す」
おおっ、それは正解だ。しっかりしてるねぇ。オジサンはきっと恥ずかしくてアナウンス頼めない…。

実はにやちゃんとしょうくんは杏さんと僕が毎年夏にやっているライブペインティングのイベントにいつも来てくれている。
そして今年は杏さんが大きな絵を描いてる間に僕は太鼓の演奏。
ポケットを叩くとビスケットが増える歌「不思議なポケット」もやったのだが、歌が終わった時に僕が「みんな〜間違ってポケットに犬のウンチ入れるなよー。ウンチがどんどん増えちゃうぞ〜」とくだらないことを言ったらそれがツボに入ったらしくそれ以降「ウンチ入れないようにしなくちゃ!」みたいなことを家で言ってるらしいのだ。
「じゃあ本当に何かがどんどん増えるとしたらポケットに何を入れる?」と聞いたら、
「ママを入れる」と。
えっ、ママどんどん増えちゃうよ、と言うと「たくさんのママと一緒に写真を撮りたい」と。なんてかわいいんデショ!

突然公園の木のテーブルの上にお菓子の小箱を置き始めるにやちゃん。そして、
「好きなの取って開けてみて」
ん?と思いながら僕と杏さんはその小箱をそれぞれ取り中を開けてみる。
と、中に紙切れが。開いてみるとなんとそれは占いだった。
杏さんのには『絵が上手くなるかも』そして僕のには『人気者になれるよ』。
スゴい!当たってるよ!
杏さんは絵が上手くなって画家になったし僕もほんのちょびっとだけどファンがいるよ。
出来ればそうなる前の若い頃に引いて喜びたかったけど、その頃はまだにやちゃんは生まれてなかったもんね。

そして「あたし集めてるものあるんだ」とバックの中をゴソゴソ。
にやちゃんの年だとなんだろう。そうだな、キレイな石とかもしかして海で採ってきた貝殻かな。
「これー」
透明な袋に入った・・・こっ、これは、爪楊枝!
「自分で使ったあとのを洗って集めてる」
なんという斬新な発想。
子どもが爪楊枝を使う時点で変わっているがそれを延々集めてるだなんて。

でも実は僕も人のことは言えない。
なぜなら僕も自分の飲んだ缶ジュースの空き缶や自分の食べたインスタントラーメンのパッケージをずっとコレクションしてるからだ。
にやちゃんとは・・・ゴミコレクション仲間だっ!
しかも缶ジュースは30年間で2万本を超えてもしかしたら世界一かもしれない。
インスタントラーメンのパッケージコレクションは本になり出版された。
そしてどっちもそのコレクションでテレビや雑誌に時々出させてもらうこともある。
にやちゃん、確かに今はそれはゴミかもしれないけど「継続は力なり」って言葉知ってる?
誰もやってないことをやめずに続けているとそれがそのうち仕事になったり人から褒められたりすることもあるぞー。 これからどんな活躍をするのか。
占い師になって一世を風靡するのか、僕の後を継いでゴミコレクション界(?)で有名になるのか。とにかく目が離せない。

オジサンはとっても応援してるぞ。フレーフレーにやちゃん!


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