第十六話 僕の村




僕の村は巨大な平屋の長屋ひとつで出来ている。
といっても、外から見たみかけ上はそれぞれもちろん独立した一軒一軒の家なのだが、実は天井裏がすべて繋がっているのだ。だから雨に濡れることも無く村のすべての人の家に天井裏なら自由に行き来することが可能なのだ。
そもそも遠い昔から親類縁者関係だけでこの村があったことにも起因するのだろう。
しかし最近はよそ者が面白半分に闖入することもありもちろん不法侵入にあたるのでそんな人に見張っていると注意する為にも、また暗闇の中でごつんこすることがないようにも、その天井裏の要所要所には簡易な信号機まで取り付けられているのだ。
もちろん天井裏だから、這いつくばらなければ前には進めない感じなのだが、それでもいきなりの暗闇の中でのゴツンコは、体験したものにしかわからない痛みだ。

まぁそんなことは兎も角、そんな僕の村で起こったひとつの事件をお聞かせしよう。

その日も僕は、暗い天井裏をでろでろ這いつくばって進んでいた。
  なぜでろでろなのかというと、僕は小さい頃からとっても怖がりで、ひとりで天井裏を通るときは怖くて怖くて鼻水や涙やよだれや汗や叫びを身体中から一斉にでーろでろと垂れ流してしまうからだ。
  天井裏から出てきたときには大抵僕の体はふたまわりほど小さくなっている。水分が抜けてしまったのだ。
  おまけに僕は片付けも苦手なので、つい垂れ流した体液類を通ってきた道にそのままにしてきてしまう。
だから昔の僕のあだ名は「なめくじ」だったが、成長して世紀のシャイボーイと成り果てた僕をそんなふうに呼ぶやつはすでにいない。
物静かになって悲鳴を上げなくなった今は、「真顔なめくじ」と呼ばれている。
  さて、話はそれたが入り組んだ天井裏、でろでろ進む僕のはるか前方から「キャーーーー!!!!」という金切り声が飛んできたのである。(すこんぶ)


とりあえず落ち着け落ち着けと自分の鼻をちょっとツネって「どっ、どうしました?」と声をかけた。
すると「あっ、あっ、あっ、もしかして・・・真顔なめくじ?」と返事が返って来た。
薄暗い中、目をこらしてみると高校の時同級生だったバルタン星人だった。
バルタン星人はもちろんあだ名で笑い声が「フォッフォッフォッフォッフォッ」と聞こえるので付いた名前だ。
バルタン星人は「い、今あたしの横を村長が通った・・・」と震える声で言った。
「えっ?」
僕は一瞬村長の顔を思い浮かべた。代々地主の太った赤ら顔の根っから助平な嫌〜な奴だった。
でもそれより何よりその村長はつい先日心筋梗塞で亡くなったのだ。
僕も面倒くさかったが村に住む体面上、葬式にも形だけ出席した。
その死んだはずの村長が横を高速で追い抜いて行った、というのだ。
「ええっ、村長の兄弟とか従兄弟とかの似た顔の親戚の見間違いじゃないの?」
しかしバルタン星人は激しく首を横に振った。

「死んだ村長よ。元気そうだった」
「幽霊に元気もなにも」
「幽霊じゃなくて生きてるの」
「生ける屍ってやつか」
「そうじゃなくてーー、移送幾何学で説明できる話」
「はぁ」
文系の僕にはよくわからない話だ。
「これが多元効果を表した数式。話を分かりやすくするために簡略化したやつね」
「むむ、それでもよくわからないけど、aが最後にはaとa′になってる」
「そのaが村長ね。ちなみにその村長は同時に同じ世界に存在することはまず、ない。でも、時間が違うところには村長が無数に存在するのは分かるでしょ。その一つがa′」
少し前の村長とその少し前の村長とその少し前の村長とーーというようなことだろう。
「この屋根裏のあるルートは数式を図にしたときとそっくりな形なの。一定の時間内に一定の速度ーーかなりの高速だけどーーでこの屋根裏をあるルートで通るとある種の時間旅行のような現象になるはず」
「つまり、君が見たのは、違う時間の死ぬ前の村長。多元効果の式でいうところのa′ということなんだな」
「そのはず。高速移動もしていたし、仮説と合致する」
「すごい!」
「気持ち悪い現象に理由をつけたかったの。時間移動あるいは、同じ人間を二人同じ時間に存在させること。それがこの謎の屋根裏の本来の用途のひとつかもしれない。でも、あんな村長を増やすくらいしかできないのでは、なんの役に立つのか」
僕は考える。
確かにそんなことができても、村長だらけになるくらいで何も良いことはない。村長でなくとも同じ人が増えてもあまりいいことはないだろう。
いや、そういえば!
「昔、ポケモンを増やす裏技があってね。その時ポケモンにレアアイテムのマスターボールを持たせるのがはやったんだ。ポケモンを増やすと同時にアイテムのマスターボールも増える。村長に何か持たせればーー」
「悪夢のような発想ね。あのいやらしい村長だらけになったら地獄絵図だわ。でも、葬列のルートを屋根裏でうまくやれば死んだ村長を増やせるかも」
「葬式はすんだだろ」
「まだ生きてるのに、もうすぐ死ぬ村長は少なくとも一人、高速で駆け抜けていったわ」
「捕まえるか」
こんな風にして村長捕獲計画ははじまったのだ。 (多摩川)


「確か村長の好物は豆菓子だったな。それをここにバラまいてそこに竹の駕篭を上から被せて・・・」
「お伽噺の鳥!? そんなので捕まえられるわけないでしょ!!!」
「えっ、あっ、ははは、冗談だよ、冗談。・・・えーとどうすれば・・・」
「確か村長って愛人いたわよね」
「あー居た居た。スナック『あらえっさっさ』のチーママの、えーと、とっつあんこと敏江さん」
「そうそう、とっつあんね。あの人を使うっていうのはどう?」
「確かに奥さんを使うよりはだいぶいいね」
「なのでまずとっつあんを呼び出して・・・真相を話して協力してもらうか、それとも詳しいことは教えずに騙して連れて来るかどっちかね」
どういう方法がいいか二人で考えあぐねてた時だった。後ろからポン、と肩を叩かれた。
「あれあれ、こんなとこで逢い引きでゲスかぁー。こりゃマズいとこ見ちゃったでゲスかねぇ。ゲヘヘヘヘッ」
うわっ、これまた幼馴染みの大タニシだった。
「違う違う、これこれこういうわけで・・・」
と、バルタン星人と真顔なめくじ(僕)は大タニシに事のいきさつを話した。すると、
「とっつあんなら俺結構あらえっさっさによく行くから知ってるでゲス。あの性格から言うとちゃんと説明して協力してもらった方がいいかもでヤスね。とっつあんだって村長には会いたいでしょうから・・・」
「そうかもしれないわね。それじゃ大タニシ、とっつあんを呼んで来てもらえる?」
「あいあいさー!って、この狭い天井裏じゃ何でゲスね。喫茶「タンスの裏」でゆっくり相談にしやしょう。とっつあんと連絡取れたらケータイかけるでヤンス。・・・なんか、面白くなってきたでヤンスね!」
大タニシもこういうことは嫌いじゃないようで、僕たちもなんだかワクワクして来た。

舞台は変わって喫茶「タンスの裏」。
あのあと大タニシと別れてからほどなくして連絡が入り、30分後にこの「タンスの裏」で4人で集合することにしたのだ。 しかしせっかく狭い天井裏を出たというのにこの店、タテ方向は十分だが座席がタンスに囲まれており、いやに圧迫感がある。天井裏とはタテヨコ逆の狭さ、と言おうか。
それでもまぁ這いつくばって話し合うよりは余程やりやすいだろう。
「それにしても、にわかには信じがたい理屈ね、バルタンちゃん。あの人が生きてるなんて」
「しかも事によると、もう何人かに増えてるかもしれないのよ。あんな奴・・・ ん゛っん、あんな闇の中で誰かが増え続けるなんて気味悪いったらないわ」
「あんな奴、で結構よ、バルタンちゃん。あたしは惚れてたけど、周りの評判は重々知ってたから」
「とっつぁん、僕はひょっとすると村長は何か高価なもの・大事なものを無限増殖させようと企んでるんじゃないかと踏んでるんだ」
「なにか村長がここしばらくで手に入れたモノに心当たりはないでヤスか?」
「手に入れたモノ、ねぇ・・・ あっ!!」
とっつぁんはにわかに大声を上げた。
「そういえば亡くなる少し前から、いつもケーキが入るくらいの箱を提げて店に来てたわ。何それ? って聞いたら普段見せない顔で、『お前には関係ないっ!!』ってすごい剣幕で箱を隠すのよ」
妙に薄気味悪くで、僕の身体がまたぞろでろでろしはじめた。(オポムチャン)


「それは何か今回のことに繋がりそうだね」僕がつぶやくと、バルタン星人が妙な顔をしてた。
「どうしたの?」と聞くと、
「ケーキが入るくらいの箱・・・骨壺も同じくらいだわよね」
「骨壺・・・まぁサイズ的には同じようなものか」
「・・・実はね、最近ずんだらべった寺のお墓が荒らされたのって知ってる?」
「ずんだらべった寺の?いや、知らない」
「ああ、あんまり表沙汰になってないのかな。私ずんだらべった寺の若住職と従兄弟なのよ。それで聞いて」
「へえ〜、それは初耳だ」
「でね、その荒らされたお墓っていうのが人間のお墓じゃないの。だからあんまり問題にならなかったのかな」
「どういうこと?」
「ずんだらべった寺ってペット霊園も併設してるの知ってる?」
「ああ、そんなこと聞いたような気が」
「そこでね、もう何代も昔のことなんで誰が預けたのが分からないんだけど、爬虫類好きの人がペットの蛇が亡くなった時にそのペット霊園に収めたのよ」
「へえ〜、蛇なんか入れる人もいるんだ」
「それがね、どうも普通の蛇じゃなかったらしいのよ。長さはそんなに無いけど胴体がぷっくらと膨れていて」
「えっ、それって・・・ツチノコじゃないよね!?」
「それがその可能性があるのよ。焼いたんだけど骨格が明らかにそうなのよ」
「それって大発見じゃない!なんで今まで知られてなかったの?」
「それがまだツチノコが人の噂になるもっと前のことだったらしいのよ。当時は『水筒蛇』って呼ばれてたらしいわ、戦前のことよ」
「それにしたってツチノコ騒動が全国であった時、なんで噂にならなかったの?」
「それはね、住職始め皆が事実を隠してたからよ」
「なんで隠す必要があるの?」
「それは言い伝えで水筒蛇には不老不死の効能があると言われてたからよ」
うーん、僕は唸った。
「もしそれが全部本当だとして、村長がそれを盗んだとしても・・・村長死んじゃったじゃん!」
「そうなのよねぇ・・・」
と、その時とっつあんが久しぶりに声を出した。
「そういえばそのケーキが入るくらいの箱、ちょっと変だったのよね」
「変?それはどういうこと?」
全員の視線がとっっあんに集まった。

「基本的には真っ白のなんの変哲もない箱なんだけど、時々、かたかた、って音がして、中で何かが動いてるような・・・」

・・・・・・・・・
「なぁ、バルタン星人」
「なあに、真顔なめくじ」
「君の言うイソーギガカガクのタケンゴーカによると」
「移送幾何学の多元効果ね」
「ごめん、それによると屋根裏のあるルートを高速で移動したら」
「確か、時間旅行みたいな現象がおこるか同じ時間に同じ者・物を存在させることができる、って話でゲスね」
「そうよ。大タニシ、よく理解できてたわね」
「馬鹿にしねえでくだせぇ、げっへっへ・・・」
気味悪い奴だが続けよう。
「村長が持ってた箱の中身がもし盗まれたずんだらべった寺の水筒蛇、つまりツチノコの骨壺だったとしたら、時間旅行効果でツチノコの骨を生きたツチノコに戻した、ってことじゃないか」
「考えにくいわね。何代も前の時代の骨なら、恐らく相当な回数の“あるルートの高速移動”が必要になるはずよ」
「それにでヤスよ、仮に生きたツチノコの肉に不老不死効果があって、村長の目的がその不老不死だとしても、この多元効果を使えれば何べんでも生き返られる。この仕組みを完全にマスターすれば、不老不死も同然じゃないでヤンスか。なにもツチノコ効果に頼らなくても」
「そこなんだよ、大タニシ」
「どこでゲス」
「一体どうやって村長が“高速移動”してるのかはわからないけど、それだけのスピードで動いてるんだから、失敗のリスクも当然あると思うんだ。僕があれだけ何度もごつんこした狭い、暗い天井裏での高速移動だぞ」
「確かに」
「そんなリスクのある方法で自分の再生なんて、僕なら避けたい。それによく考えると、本人が死んじゃったら誰が自分を“あるルートの高速移動”で生き返らせるのさ?」
「これは迂闊でゲした」
「僕が思うに、村長は大量生産した生きたツチノコを闇のルートに売りさばいて巨額の富を築こうとしたんじゃないかな」
「あの村長がそこまで多元効果について知り尽くしているかしら・・・でも可能性はゼロではないわね」
とっつぁんがまた言う。
「でもさ、じゃあツチノコを骨から生身にするまでに繰り返した“あるルートの高速移動”で、あの人はすでに大量増殖しちゃってる、ってことにならない!?」
「・・・ほんとだ」
真顔なめくじの名に恥じない、大量のねばっこい汗が僕を覆う。
「気味悪い想像ばかり浮かぶけど、この際1匹・・・ いや1人でも村長をとっ捕まえて、真相を吐かせた方が早いかもな」
「急いで捕獲作戦を練るでヤス! ここはとっつぁんの腕にかかってるでゲスよ!」 (オポムチャン)


皆がとっつあんの方を見たその時だった。
とっつあんの顔色がどうも悪い。青白くなっている。
「えっ、どうしたの? 何か僕たちまずいこと言ったかな?」
するととっつあんは首をゆっくりと横に振って言った。
「違うの・・・こんな話してる時になんだけど、もしかしたら・・・あの、出来たかもしれないの」
「出来た?出来たってあの・・・」
「うん、村長の・・・」
「えーーーーーっ!!」
思わず全員の口がああんぐりと開いた。

そしてそのまま閉じることができなくなった。
顎が外れたのである。

「うああ…あごうぁ、はうえはぁ…!」
「があ…いはひぃはあ…ヴふぁあ」

「ちょ、ちょっと!みんな!ええ〜!?ナニ〜!?」

うろたえるとっつぁんに、僕ら三人はナミダ・ハナミズ・ヨダレだらだらの大口ナメクジになって、顎が外れては説明も出来ず、ただただ痛みに呻くばかりだった。

そうして、とにかく何だかすごく大変だということで救急隊が要請された。
ちなみにこの村の救急隊員は患者を搬送するとき、屋根裏を這いつくばって搬送するから大変だ。
汁グチャグチャで搬送されながらも、僕の心は静かに脱帽していたのだった。

さて、ところ変わって整形外科の休憩所。

顎をはめてもらったバルタン星人が、まだ残る痛みに顔をしかめながら呟いた。

「私、保険証忘れたわ…」 (イーダ検事)


「そんなことより!」僕は言った。
これは絶対おかしい。今まで誰も顎が外れた経験など無いのにいきなり3人に同時に起こるなんて。
何らかの力が働いてるのは確かなようだ。
やはり村長に関係するのだろうか。
とっつあんが妊娠を報告した途端、というタイミングもおかしい。
どこかで聞かれていて、そして何らかの力によって僕らの顎をパカンと外した。
パカンパカンパカンと外れてナミダ・ハナミズ・ヨダレだらだらになった。
なんだかとってもブザマな気分だった。
これは何かの警告では無いだろうか。
いや、明らかに警告だろう。これ以上を首を突っ込むなという。
でも一体誰がどうやって?
物理の成績の悪い子供だった僕にはまるで見当もつかなかった。
「バルタン星人、何かヒントのようなことって思いつかない?」
するとバルタン星人は「そうねぇ・・・」とまだちょっと痛む顎をさすりさすりこう言った。

「─あたし、顎が外れる瞬間見たのよ」
  「見た?何を」
「横から何か小さい─金色の玉が飛んで来るのを。あたし達全員の顎を外すように、正確にね」バルタン星人はあだ名は甲殻類のくせに鳥並みの動体視力なのだ。
「つまり、やっぱり誰かが狙ってあっしらの顎を外したってことでヤンスか!」
  「ええ、きっと村長の差し金よ。その証拠に、とっつぁんは顎を外されていない」
「村長…まだあたしのこと、気にかけてくれてるのかしら」暗くてよく見えなかったが、とっつぁんは少し涙声になっていた。
「…とすると、顎を外したきゃつは暗闇の中でも十分行動できて、更にどこに金た…金色の玉を撃ち込めば顎が外れるかを熟知している人物、ということでヤンスね」うなずく大タニシ。
  大タニシはこう見えてなかなか頭の切れるやつだと僕は思う。これでこんな気味の悪い話し方じゃなければ、彼女の一人や二人出来ていただろうに…。
それに比べて、僕はこの場にいる誰よりもどんくさい自信がある。これじゃあほんとにナメクジだよなぁ…。
  大タニシのようにはなりたくないけど、さっきの救急隊員には憧れるなぁ。素早さと知識を兼ね備えて…

─ん?
その時、僕の頭の中で何かが引っ掛かった。
  何だろう…今の言葉、ついさっきも聞いたような…

  「あっ!!!(ガツッ)う"、いてて…」
突然立ち上がったため、僕は天井にしたたかに頭をぶつけてしまった。
  「キャッ、急に大きい声出さないでよ」
「どうかしたの」
「─救急隊員だ」
「救急隊員?」
「顎外しの犯人だよ。暗闇で十分行動できて、人間の骨格に詳しい…救急隊は村長と結託していたんだ」(すこんぶ)


「そういえば・・・」とっつあんが言った。
「ん?」
「村長は診療所も経営してたけどそこに緊急でもないのによく救急隊員が出入りしてたわ。うちの店『あらえっさっさ』にも何人か連れて来たことある。その時は若い人とも交流あるのね、ぐらいにしか思わなかったけど…。」
それはおかしい。村長は若い男のことはたいてい嫌ってた。ある意味嫉妬のようなものだろうけどつるんでいるのはたいてい同年輩のおっさん達だった。もちろん女性は若い子も大好きなスケベ親父だったが。
「そういえばその時ひとり救急隊員では多分なさそうな『ゾウ博士』と呼ばれてる人が同席してたこともあったわ」
「ゾウ博士?動物学者かなんか?」
「違うと思う。専門は何か分からなかったけどそんな感じの話はしてなかったから」
「じゃあなんでゾウ博士?」
「すごく鼻が長いの。ピノキオみたいに。」
「・・・・・・なるほど。」
「で、そのゾウ博士のお父さんは元この村の大地主だったのよ。そのせいで繋がってるのかと思ったけどどうやら違うみたいなの」
「なんでわかったの?」 「それは・・・」
とっつあんがポッと顔を赤らめ下を向いた。
「なんだい、言ってくれないと分からないよ」
しばらく黙っていたが、意を決してとっつあんが顔をあげた。
「お布団の中で・・・」
「お布団!?」
「お布団の中に一緒に居た時『わしのムスコもゾウ博士。パオ〜ンパオ〜ン』って村長が」
「・・・くっ、くだらない」
みんなヘナヘナになった。
「まっ、それはいいとして・・・それがなんで親の繋がりとは関係無いって分かったの?」
「『あのゾウ博士って奴も馬鹿だよなあ、親父の土地を継げば左うちわなのに親と縁を切って何だか荒唐無稽な研究に没頭しおって』って会話があったの」
「なるほど・・・とにかくそのゾウ博士が鍵だな。どこに居るか分かるかい?」
「・・・うん。彼は普段は引き蘢りのようにしていてちょうど大タニシの家の向かいに住んでるわ」
すると大タニシは言った。
「えっ、俺の家の向かいというと『ぬんべんばら房』でゲスかっ!?」
「ぬんべんばら房ってなんじゃい」
「いや、その意味は全然分からないんでゲスがね、一見ゴミ屋敷みたいな感じなんでゲスが何やら夜毎キーキーと錆びたロボットでも動かしてる様な音が聞こえて。でも中から人が出て来るのをほとんど誰も見たことが無いので気味悪がって誰も近づかないんでゲス。探検に行った子供が消えたなんて嘘とも本当ともつかない噂もあるでゲス。あのぬんべんばら房がゾウ博士の家ってことでゲスか?」
「とにかくそこに行ってみよう」
僕らは口元にまだ残るヨダレを拭きながら立ち上がった。

枝葉の伸びきった植木とセイタカアワダチソウが茂る庭に、錆びた自転車、三輪車、打ち捨てられたボロ布と、おびただしい数のキューピー人形、冷蔵庫、ぶら下がり健康機、エアーバイク、割れたプランター、その他多くの粗大ゴミに埋もれるようにして「ぬんべんばら房」は建っていた。 

蝶番の外れた鉄門からは、踏み入るのをためらわせるような負の気配が漂っている。 

しかし僕らは行くのだ。
  行かねばならぬ。

村長の企みを暴き、そこに悪行あらば是を制する為に。 

…という名目で、僕は好奇心にケツを叩かれてズンズンここまで来てしまったのだが、これ入って大丈夫なんだろうか。 

怖いよ。
怖い怖い。
特にキューピーが怖い。 

僕はお馴染みのナメクジモードになって、うわずりながら皆に言った。 

「ねえ…これアブナイよお…止めとこうよお」 

すると、大タニシが激昂した。 

「何言ってるんゲスか!!村長のインモウが、いやさ陰謀が村を脅かしかねない事態なんでゲスよ!!そうやって脅しにクチを閉ざすところから民主主義の瓦解が始まるんでゲス。それに…無惨にゲスアゴを外されたままゲス大人しくゲス黙っては居れないでゲスっ!!」 

何という勇ましい男だろう。これで下ネタ発言や不可解な「ゲス」のリフレインがなければ、とっくに革命の指導者になっていてもおかしくなかっただろうに。 

しかしながら僕は思うのだ。大きな力や体制から共同体の真の平和を勝ち取るのも、ひとつの救いの求め方ではあるだろう。しかし不器用で卑怯な毎日の中、個人のささやかな幸せを守ることだって、それと同じくらい大切なことなんじゃないだろうかと。 

僕はきっと、弱い人間なのだろう。
  そう思うと悲しくて一層涙と鼻水が溢れ出た。 

ふいに僕の肩を誰かがポンと叩いた。 

バルタン星人だった。
  彼女は穏やかにフォッフォッフォッと笑い、こう言った。 

「ナメクジくん…無理するこたぁないよ。実際、私たちはアブナイ橋を渡ってる。これ以上進めば、今度はアゴでは済まないかもしれない。最悪、次は肩や股関節を外されるかもしれない。…ここで退いたって、それは誰かに責められるようなことじゃないさ。」 

大タニシが言った。 

「…すまんゲス。ちょっと興奮してしまったでゲス。どうしても嫌なら無理強いはしないでゲス。行けるゲスが、行ければいいんでゲスから。」 

とっつぁんが言った。 

「あたしはね…あのひとのことを知りたいし、やっぱりあのひとが大切だから、行くんだけどね。何でもいい、進む理由、退く理由、それを分かっていて道を歩くんならきっと大丈夫。後悔しても、納得できるはずよ。」 

僕はうなだれた。
  そして、小さな声で「ごめん」と言った。 

僕が退く理由は、キューピー。
  それはだって…怖いから。 

申し訳なさと情けなさで胃がキリキリと痛むので、僕はそそくさと屋根裏に戻ろうとした。 

するとそのとき。
  ぬんべんばら房の窓から絹を裂くような叫び声が上がった。 (イーダ検事)


「な、何っ!」バルタン星人が思わず声をあげた。
その瞬間だ。
「誰かいるのか!」
ちょっとドスの効いた声がぬんべんばら房の中から声が聞こえた。
「ヤベッ!」
思わずみんな走り出した。
ところが大タニシがゲスッという音とともに派手に転んだ。
打ち所が悪かったのかすぐには立てないでいるようだ。
と、その時、ぬんべんばら房の扉がガタピシ音をたてて開いた。
僕らは覚悟した。最悪の結末もあることに。
ところが出て来たのは薄汚れたボロ布の様な人形を手に持ったちっちゃな女の子だった。
その子がゾウ博士の娘だということはすぐ分かった。鼻がダラリと長く垂れ下がっていたからだ。
なんとなくゾウ博士は独身で研究に没頭していると思っていたので娘がいることにも驚いたが、僕らは固唾をのんでその女の子を凝視した。
「おにいちゃんたち、うちに何か用?」女の子が話しかけてきた。
「あ、いや、ちょっと・・・」
みんなが口ごもった時、ひとりあまり空気の読めない大タニシが、
「いやあ、お父さんにちょっと会ってみたくて来たでゲス!ゲスゲスゲスッ!」と言った。
(ば、馬鹿!)と思ったが女の子はいたって冷静に「お父さん、いるよ。呼んでくるね」と言うや家に踵を返した。
しばらくして、頭をボサボサにしてしかし鼻が異様に長い如何にもゾウ博士と言う人物が出て来た。
そしてしばらくの沈黙の後「・・・あんたらが何でここに来たのかは、だいたい察しがついておる」と静かに言った。
そして「・・・入りなさい」と意外にも優しい声で僕らを迎え入れてくれた。
僕はつい先程来の疑問を口にしてしまった。
「あの・・・さっき人の悲鳴みたいな声が聞こえたんですけど・・・」

「・・・案ずることはない、これさ」
ゾウ博士は半歩身体を横にずらし、ぬんべんばら房の扉の奥を僕たちに見せた。
“キャァァァァァァァ”
“キャァァァァァァァ”
そこにあったのは大ぶりな機械。
ぬんべんばら房のあまりの不気味さに、僕らはその甲高い機械音を人の悲鳴と思い込んでしまったのだ。
「いきなり押しかけてきて不躾な質問ですが・・・ 一体この機械は・・・?」
「いろんな連中があちこちに伏線を張りまくるから、それを回収する画期的な機械じゃよ」
「へ・・・ 何でゲス、伏線、って」
「失礼、こちらの話だ。もとい、これは骨格・皮膚組織矯正装置さ。機械の端を見てみなされ、人が入っておる」
ほんとだ、大きな機械の端っこから裸足が2本伸びている。その刹那、プシュゥゥゥゥという音とともに機械が開いた。
中から出てきたのは、果たしてダンボのように耳の大きい青年だった。
「ひ・・・っ!!」 一同思わず息を呑む。
しかし青年は存外明るい声で、「博士、ありがとうございました!」と告げ、謝礼でも入っているように見える封筒を手渡すと、僕らの横を快活に駆け抜けていった。
「君らにはすまん事をした。私の作った装置のせいで、厄介事に巻き込んでしまったようだ」
いったい全体何のことだか博士の言うことが未だ掴めない。
「君らの顎を外した、【遠隔顎シューター1号】さ。骨格矯正の研究の成果を、村長の奴めに悪用されてしもうた」 ・・・・・・!
「そっ、それより今のゾウ耳の若者はなんなの!? この大きな装置は耳まで大きくできるってこと!?」
「然様。彼はダンボの大ファンで、小さい頃から翼のような大きな耳に憧れておった。私の研究をどこかから聴きつけて、夢を叶えに来たというわけよ。むろん、やっぱり戻りたい、という要望にも応えられる」
でかいだけあって本当に凄い装置らしい。博士と娘さんの鼻も、どうやらこの装置で伸ばしたのではないだろうか。
「このような怪しい鼻をしておれば気味悪がって誰も近寄らんから、存分に研究に没頭できたわい。もっともお陰で妻には逃げられ、いつもご覧のとおり貧乏をしとるがの。今日は久々の収入じゃ」
大タニシが子供が消えた噂を聞いたというのも、装置でまるで別人になって出てきたからなのかもしれない。
「あの・・・ 【遠隔顎シューター1号】の話は・・・」
「そうじゃ忘れておった、あれは村長が存命中に、私を酔っぱらわせた勢いで作らせた顎外しメカ・・・ 奴が政敵を秘密裏に排除するために使おうとしておったが、さすがに骨格に精通した者でないと使いこなせんでな。奴の診療所に出入りしておる救急隊員が使い方を練習しておったが、まさか村長の死後に隊員連中が悪用しようとはな」
「何故・・・ 隊員たちは僕らを!?」
「気付いたんじゃろ? 天井裏の秘密に。間違いなく、村長の差し金じゃろうな」
「ゲス・・・・・・!!」 
「シューターは私のスイッチで遠隔で破壊ができるようになっておるが、破壊指示の電波を遮断する白い箱を何者かに作らせおって手が出せん。まずはあの厄介なシューターを捜して破壊した方がよさそうじゃな」 
「それって・・・ とっつあんの言ってた“ケーキが入るくらいの箱”のことじゃないかしら・・・?」
  箱の中身はずんだらべった寺から盗まれたというツチノコではなかった。
ならば、村長の目的は・・・? 不老不死じゃない、巨額の富でもない、何かなのか・・・?
  とっつあんの妊娠と、深い関係があるようだが・・・。(オポムチャン)


と、そんな風に考えていた矢先だ。突如そのとっつあんが低い声で唸りはじめた。
「ううっ・・・うううーーっ・・・」
「ど、どうした?何か変な物でも食ったか?虫とかは物によってはよく焼いた方がいいぞ」
そう言った途端、とっつあんから信じられないような声が返って来た。
「う、生まれそう・・・」
えっ、みんな目を丸くしてとっつあんを見た。
だって妊娠が発覚したのがつい先日。
人間の子なら十月十日だが早産だとしてもいくらなんでも早過ぎる。
とっつあんが身悶えしながら言った。
「ああっ、もう産まれるーーーっ!」
バルタン星人が叫んだ。
「ちょっと男たちはあっち行ってて・・・早く!」
そうしてそこいら辺にあった衝立て状の物の向こう側にとっつあんを引きずって行った。
そして何が起こったか分からずあたふたしている俺たちの耳元に一瞬の静寂の後に悲鳴が聞こえた。

バルタン星人の絹を引き裂くような「ギャーーーッ!」というもの凄い声が。

慌てて僕らはとっつあんのもとへ走った。するとそこには、仰向けで息を切らすとっつあんと、腰を抜かしたバルタン星人がいた。そして二人の間には、なんということだ、おっさんの顔をした赤ん坊が立っているではないか。しかもそいつの顔は、死んだ村長のヤラシイ赤ら顔そのものだった。そいつはニヤニヤしながらこう言った。
「…ムスコを出し入れしてた場所から、ムスコとして出てくることになるとはのう。いっひっひ、感慨深のう」
さらに続けて言う。
「とっつあん、急に死んだりしてすまんかったのう。実はワシ、暗殺されちまってのう。まさか裏切られるとはなぁ…。いやまあ、話せば長くなる。とりあえず産湯を浴びさせとくれや。それから、おっぱい飲ましとくれ。いっひっひ、ええのう。乳児は白昼堂々と乳が吸えるのう」
はてさて、何がどうなっているのか。いったい彼は何者なのか。僕らは目を白黒させた。(イーダ健二)


と、外がなんだかザワザワと騒がしくなって来た。
さきほどの悲鳴に反応してまわりの住民が集まって来たのだろうか。
しかしそれにしては言葉が全く聞こえず・・・というか時折ケモノのような鳴き声が聞こえる。
ふとドアの隙間から見た瞬間その光景に俺もバルタン星人の様に腰を抜かしそうになった。
集まっていたのは犬、猫、豚、山羊、馬などペットや家畜と言われる動物だった。
そしてそれら動物達は一様に人面だった。
そう。全部が、村長と同じ顔の。

「(これは現実じゃない。この違和感は、きっと夢に違いない)」
そう、僕は気付いてしまったのだった。そして目を瞑り、その場で体を横にしてみた。
するとどうだろう、村長面した動物たちをはじめ周囲の全てが静かになったではないか。
次にすることはもちろん、現実に戻るべく目を覚ますだけ。
体を起こし、そっと目を開けてみた。
「……何やってるでゲスか?」
「まさか、まさかとは思うけど、夢オチにしようとしたわけ?」
「え……?」
僕は急に恥ずかしくなって、思わず動物たちに助けを求めてしまった。
「な、なあ……」
「……」
「(む、無視かよコイツら! さっきまであんなに鳴いてたくせに!)」
「そんな事より、この動物たちって何なのよ!?」
バルタン星人に「そんな事」呼ばわりされたのは心外だったが、むしろ問題なのはそっちの方であった。
すると赤ん坊の村長が、体は小さいくせにやたらとデカイ態度でこう言ってきた。
「ワシがゾウ博士に造らせた『キメラ』(異なる動物の融合体)とでも言うとこうかのう。ワシの命令だけに従うように、頭部を全てワシにしたんや」
なんという恐ろしい計画なんだと僕は思った。そして、またまた僕は気付いてしまったのだった。
「(村長、小っさ!)」
次の瞬間、僕は軽々と村長を持ち上げると要求を突きつけた。
「今すぐ全ての計画を吐くんだ! さもないと、さもないと……親戚が集まる度に『村長がまだこんなに小さかった頃、おじさんがお風呂に入れてあげたんだよー』って言ってやるぞ!」
「へ? それだけでゲスか?」
「わ、分かった。話すから、それだけはやめてくれ。実は、長屋の外には巨人がおってのう、壁外調査のために……」
「フォッフォッフォッフォッフォッ、それって丸っきりのパクリじゃないのよ。真顔なめくじは騙せても、あたしは騙されないわよ」
「嘘なんでゲスか? びっくりしたでゲス」
「くそーっ! こうなったら、動物たち……ヤッチマイナー!」
一瞬の隙を突いて、赤ん坊の村長は甲高い声で最終命令を下したのだった。
「何っ!? しまった!」
焦る僕らの目の前で、動物たちが一斉に……一斉に?
「交尾を始めたで……ゲスね」
一番驚いていたのは、言うまでもなく村長だった。(デクノボー)


僕らは村長を取り囲んだ。
「もうお前の味方は誰もいないぞ」
村長顔の動物たちは一心不乱に交尾に勤しんでおりこちらの方を見向きもしていなかった。
「さあ、この混乱をどうしてくれる!」
みんなで言い寄った。
「ええと・・・『喫茶タンスの裏』でみんなにスペシャルパフェ奢るのじゃ・・・駄目だろうのう。」
「駄目に決まってるだろう!」
「『あらえっさっさ』で飲み放題っちゅうのも・・・」
「馬鹿かっ!」
「んじゃ『ぬんべんばら房』の遠隔顎シューター1号でそれぞれのおチンチンとオッパイを大きくするというのは・・・ハハハ、駄目だな。」
「・・・いやっ、それならいいでゲスよっ!」
大タニシがサワヤカに言った。
「な、何をOKしてるんだ!」
僕は思わず声を荒げた。
「だって真顔なめくじよ、他に村長に何が出来るでやすか? 自分のコピー作られたって交尾してるだけだし。それなら俺はおチンチン大きくしてもらいたいでゲス。それが一番嬉しいでゲス」
「何言ってんだ!そんなこと思うのお前だけだぞ、なぁバルタン星人。」
するとバルタン星人はしばらく腕組みして考えていたが慎重に口を開いた。
「うん、そうね、大タニシ。それ、ありかもね。」
「ええっ!?バルタン星人まで何言ってるんだ!」
「いや、あたしだってまぁもうちょっと胸を大きくしたいっていうのもあるけどさぁ。おチンチンとオッパイだけじゃなくて他の部分も希望があれば大きくすることは可能なのよね? 村長。」
「そっ、それはもちろん。ゾウ博士の様に鼻でもその他の部分でもたいていは大丈夫な装置だ。」
するとバルタン星人は真面目な顔をして言った。
「あたし、この村は変わらなくちゃいけないと思ってるの」
「・・・変わる?」
「私たちの村って巨大な長屋みたいなもんでしょ? それが集落すべて家族みたいでとってもいいところもあったと思うの」
「うん。」
「反面、閉鎖的になって今回の村長のようなある種の独裁政権の温床にもなっていたと思うの。」
「・・・確かに。」
「なのでここをもっと外部に開放して観光の村として世界に打って出てもいいと思うの」
「観光の村?」
「そう。もし体の一部が異常に大きな人たちばかりが集まっている村があったら見てみたくない?」
「そ、それは興味本位では・・・」
「そして世界には体のどこかを巨大にさせたい人、伸ばしたいと思っている人が山ほどいるとは思わない?」
「あ、ああ。山ほどかどうかはともかく、確実にニーズはあるだろうね。美容整形はもちろんのこと、目立ちたがりのアーティストたちが他の人には無い肉体を持ちたいという願望はあるだろうからね。耳を長くして信号待ちしてみたり。」
「そこよっ!それを売りにしてこの村を世界から観光客の訪れる村にするのよ!」
「そんなことは可能なのかな・・・」
僕は考え込んでしまった。
「それは、やってみなければ分からない。でも村も人も変わることは必然だと思うの。子供が50歳になっても子供だったらおかしいように。」
「うん・・・」
と、ウイーンという巨大な音がした。
「な、何だ!? 遠隔顎シューターの方からか?」
皆で遠隔顎シューターの方にバラバラと集まった。
と、中からヨッコラサッと大タニシが出て来た。
「お先でーす。どうでゲスか?」

そこには、大タニシの5メートルはありそうなチンチンが、威風堂々と聳え立っていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーー了ーーーーーーーーーーーーーーーー


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