第十五話 不思議なあいうえお




あっしのことお気づきでやすか?
あんたが物心ついた時からずっと側にいまっせ
足の先から頭の天辺まで
ありとあらゆるあんたのこと知ってやす
怪しい者じゃござんせん、というかむしろ
愛してると言っても過言じゃござんせん
雨降るこんな夜はあっしと
あいうえお話でも作って遊びましょう
あ、次は「い」でやんすからね
あっと驚く展開、お待ちしておりやす

いかんせん存在の薄いあっしですから
色事なんざ語れる筋合いじゃござんせん
いやいや、それじゃ話にならない事は百も承知
イカレタ物語でもお聞かせしやしょう
以前あっしは海外で暮らしておりやした
イスタンブールで飛んでいたとだけしか言えやせんがね
いずれはあっしも本物の鳥になれるだろうと両腕を広げていたら
いきなりの砂嵐に巻き込まれてしまったのでやんす
息も絶え絶えどうにか地上に降りることが出来たと思ったら
いつの間にかとんでもねえ事態になっていたのでやんす (デクノボー)


ううっと痛みに耐え抜いて
うろうろあたりを見渡してみたら
ウジャウジャ出て来たのはどいつもこいつも坊主頭の大人たち
ウオッと声あげさっと避けたが
うすら馬鹿たちヨダレを垂らして
ウンタマギルーと近寄って
「ウイースッ!」といかりやあいさつかけられて
嘘でもこちらもニッコリ笑い
   ウヒヒヒヒヒヒと返しやす

得体の知れない連中に囲まれ
笑顔でかわそうと努めるも
えんえん奴らはヨダレとウィーッス
ええ加減あっしもキレやした
得物をそこらで拾い上げるや否や
円月殺法繰り出して
エクセレントにその場を脱出
(ええ、もちろん峰打ちでござんすよ)
ええと、それにしても此処はどこでやしょう?
えらく遠くまで飛ばされたようでやすがひとまず
駅でも探して歩くことにいたしやしょうかね (オポムチャン)


音痴の森をくぐり抜け
オランウータンの山を通り過ぎ
お椀の舟で川を渡り
おっこらしょとやっと着いた町には
おびただしい数の坊主頭の大人たちが先回り
「おおっと、どこに行くのかにゃんころりん」
おろおろしたけど脱兎の如く彼らの脇を走り抜け
大きな駅にたどり着いた
「大人一枚!」と切符を買おうとしたら
「オホホホホ、一体どこまで行くんだい?」と顔を見たらなんとそこには
オジー・オズボーン。

「カナダまで一枚!」とあっしは言う
カリスマ的ミュージシャンが何故駅員?と首を傾げながら……
「カナダへは飛行機じゃないと」とオズボーンは言う
神頼みするようにあっしは請う
「かっ、金は払うから頼む!カナダまで行ってくれ!」
「考えてみりゃあんた飛べるんだから飛んでったらどうだい?」とオズボーン
彼は何故あっしがイスタンブールで飛んでたのを知ってるのか?
「かねてより私は駅員に転職する前のミュージシャンだった頃からあんたを知ってんだよ」とオズボーン(まつはし)


気が動転したがきびだんごを食べて気を落ち着かせる。そして、
気合いを入れて「何故あっしのことを知ってるんですか!?」と聞いてみた。すると彼はやおら
金玉をズボンから出して笑っておった。オズボーン故にズボーンから金玉を?
(キチガイか・・・?)
気になるセリフを喉に押し込め
「切符は手に入らないんですか?」と
詰問してみた。しかしオズボーンは
「君が子供の頃から知ってんだよ」とうそぶく。
気味が悪くなったがしょうがない、彼の話を
聞いてみることにした

くるりと金玉を裏返し
クールにこんな話を始めやした
「クルミが硬い殻を割って芽を出すように
黒ずんだアボカドにもその力はある
腐らせちまわなけりゃいずれ
クソ面白ぇ瞬間がやって来る」
首を突っ込んでいる暇は無かったのでやすが
屈託のないオズボーンの笑顔に
くさびを打たれたかのように動けなくなったのでやした
「クレイジーな坊主頭の大人たちからよく逃げられたもんだ
空前絶後とは正にこのことだな。褒めてやるよ」
口を開けずにはいられなかったでやんす
苦難を乗り越えて来たことまで知っていようとは・・・
「クリスマスプレゼントの第一希望に
『くっついたらはなれないともだちがほしい』と
クーピーペンシルで書いたのを覚えているかい?」
暗い性格で友達が出来なかったことまで何故?
繰り返されるオズボーンの「知ってんだよ」にイラついたあっしは
食いちぎるようにこう答えてやりやした (デクノボー)


「ケロヨンに聞いたんだろ? 奴は何でも知ってるからな」
けんか腰についなってしまったでやす
「ケッ、そうじゃねえよ」
けんもほろろにあしらわれた
「今朝あんたの夢を見たのさ」
ケツをボリボリ掻きながらオズボーンは言った
「ケチくさい野郎が出て来たと思ったらそれがあんたで正夢だったってわけさ」
毛虫が窓の向こうを這っている
ケミカルな臭いがオズボーンからする。俺は思わず
ケンミンの焼きビーフン程度の
怪我をしない軽い蹴りを入れた。しかしオズボーンは激怒して
「消しゴムの様にしてやろうか!」と俺を脅した

来いでやんす。
睾丸を蹴りあげる。
股間を抑えるオズボーン。
「コンドームをしてたのに」と断末魔。
厚顔無知とはこのことか。
コンドームくらいなら、蹴りのダメージ防げない。
高級で薄いやつだろうからなおさらだ。
睾丸に蹴りがヒットした時点で竿を守っても仕方ないでヤンスが。
こうしてはいられない。 
この世の果てにいかなけりゃ、「うんのつき」がきてしまう。
古代中国の思想には「あうん」というものがあるらしいでやんす。
黄河のほとりで「あ」がうまれ。
この世の果てには「うん」がある。
細かいことはよくわからない。
こいつは人にきいた話だから。
高次元の世界。
ここはそうよばれているでやんす。
これまでなのか、これからなのか、時間の流れもこれまでの世界とは違うでやんす。
荒唐無稽なようでやんすが実はそうとも言えないでやんす。
これまで住んでいた世界に甚大な影響を与えている異世界でやんす。
これまでの世界。
故郷(こきょう)には両親。
コウジも世界のどこかにいるはず。
コウジというのは――。
高校を出たら、イシカラコウジの芸名で少しテレビに出たが、その後海外へ行った噂を最後に行方知れずの弟でやんす。
高次元の世界が膨らみ、「うんのつき」が近づく。
これまでに、ノストラダムスやマヤの予言などいろいろあった終末思想でやんすが。
今度の「うんのつき」だけはどうやら情報も少ないだけに本当らしいでヤンス。
これに気付いているのはあっしだけ。
こりゃ一大事、「うんのつき」までに何とかせねばというわけでヤンス!(多摩川)


「寒いなあ・・・」
錆た鉄のにおいがしたのでハッと気づいたでやす。
サナトリウム・・・そう、あっしはサナトリウムに入ってずっと夢を見ていたんでやんした。
三才の時に入ってから一度も外の世界を見たことが無い。
叫んでも泣いても誰もここから出してくれなかったでやす。
最低の人生。いつの間にか
皿があたりに散乱してる。一体あっしは何をしたんでしょうか。
錯乱してたんでやしょうか。
「♪猿にはなりたくない 猿にはなりたくない」
散策してるらしい患者さんが窓の外で懐かしい歌をうたってるでやす。
さて、あっしの人生はこのまま何も生むこともなく繋がることもなく終わるのでやしょうか。と突然、
「逆さま!  ……ソウジャナイヨコッチニキテ!」
誘う様な声が突然自分の頭の中から大きく聞こえてきたでやす。
(逆さま!?)
流石のあっしも意味が分からなかったでやすが
「先に行ってるよ」
さようならの様なその哀しき悲鳴と言葉だけは変に
冴えた頭の中に響き渡ったでやす
さしもの血の繋がった生物が必死に訴えかけてるような。一体なんでがしょう?

・・・しばし沈思黙考したけれども
しずかな暮らしをここで続けていたって
仕方のないことでやす。
「真実を・・・ 真実を知らなくては・・・」
思考の奥底にかすかに残る「うんのつき」が誘うのか?
知りたいこともなんにも解らないまま
死んでいくのはまっぴらでやんす!
しかしどうやってこのサナトリウムを出るか?
試行錯誤の挙句、いいアイデアを実行しやした
シーツを替えに来た看護師のおばちゃんに
「しっこ! しっこ!」と絶叫し
尿瓶を用意させた隙に背後から
失神するまでスリーパーホールドをかまし
室外への扉はいま開いた
シンとした廊下をあっしは
忍び足で通り抜け、
深夜のとばりの中あてもなく走り出したのでやす。 (オポムチャン)


すると背後から追手が来る様子
スイカ畑があったのでスイカを引っこ抜き
素早くそれを投げたでやんす
スッテンと追手はそのスイカに足をとられ
寸でのところで撒いたでやす
少しフーッと気を鎮めて当たりを見渡すと
砂嵐の中、なんと巨漢の
相撲取りが今度はドドドドドッとさらに駆けて来た!
すわ、敵だと思って身構えたら
「すまんす、驚かして。こんなところで何してるでがすか?」と聞いてくる様子が
すっとぼけていて何か好感が持てたので
素性を明かして一切合切を話してみたところ
「好き・・・好きかもしれんす。わしもそういうの。一緒に連れてってもらえないでごわすか?」と
素直に頼んで来た。どうやら彼も何か問題を抱えている感じだったが敢えて今は聞かず
スネに傷を持つ身、相棒がいる方が心強い気がして
「捨てることになるかもよ、人生を」と言うと
「すばらしい明日があるかもしれないし、未来なんて分からない方が面白いでがす」と
スーハー息をしながら言うので
「するってえとお前さんの名前は?」と聞くと
「スルメ山、と言います。よろしくお願い致します」と
すっとこどっこいな名を名乗って来た

せんずりをふたりでした。(飛び魚)

そこでさっぱりとして
そっと町を出た
素知らぬ仲だがだんだん楽しくなって来て
「♪村長さん村長さん
空豆になっちゃった
村長さん村長さん
そこらじゅうで食べられた〜」と一緒に歌いながら
ソンブレロを被って踊りだした

たった数十分ですっかり打ち解けた二人でやしたが
ただの一度も汗を掻かないスルメ山のことが
絶えず気がかりでござんした
鷹の真似で旋回するように踊る巨漢に
タコのように腕を伸ばしてみやすと・・・
(た、体温がねえ)
大気と同じ温度だと言やぁ聞こえはいいが
他界した爺ちゃんの時のように
単にヒンヤリとしていたのでやんす
滝のように流れるあっしの冷や汗を見て
「頼むから、嫌いにならないでくれでがす」と
助けを求めるような目で、彼は懇願してきやした
「多分、嫌いにはならないでやんす」
たっての願いに、チ○ポの友としてそう答えてやりやした
「確かにわしは、この世の相撲取りではないでがす」
「退屈だった昨日までのあっしも、この世とは無縁でござんした」
「竹(の子)の先端に引っ掛かってしまい
太陽にあたって干乾びたのが四股名の由来でがす」
「たとえゾンビだろうと、友達には変わりねえでやんすよ」
「タヒチの秘術とアイソトニック飲料で生き返った
ターミネーターもビックリな生きた屍でごわす」
「魂が無くったって、希望があれば生きていけるでやんす」
卓球のように続く会話に、いつしか追われている事も忘れていやした。すると
「立ち入り禁止って看板が見えなかったのー?
タクシーで好きな場所まで送ってあげるから、二人とも一緒に来な」と
棚から落ちてきた巨大なボタ餅を2個、その柔らかい胸の中に隠したような
谷間を存分に魅せ付けたグラマーな美女が話し掛けてきたのでやんした
(た、たまりまへん)
たちまち起き上がる・・・湧き上がる希望に、ついて行くことにしやした
たわわな胸の彼女の名前が、オズボーンだとは知る由もなく・・・ (デクノボー)


超巨乳とはこのことを言うんでやしょう
ちょっと気を紛らわそうとしたけど
ちんちんがむくむくっと大きくなってくのがお互いわかりやした
ちょうどダボダボのズボンをはいていたのであっしはバレることもなかったがスルメ山は内股で誤摩化してやした
ちんちくりんなあっしらふたりは彼女の車に乗ったでやす
チラリチラリとどうしても胸の谷間を見てしまうでやす
(チュウチュウ吸いたい)
知恵おくれの子供の様にハッと気づくと凝視してやした
血の気の多いあっしたちの赤い目を見て流石に気づいたのか
「調子に乗らないで」とたしなめられてしまったでやす
チッ、バレてしまった!

「つかぬ事を伺いやすが、なぜあっしらをかくまってくれるんでやしょう?」
呟くようにグラマラスな彼女に聴くと
「捕まっちゃいそうだったんでしょ? あんたの人生を
つまんない物にした奴等に、ね」
追跡の手はもはや遠くに消えた
次々と変わる景色を彼女の飛ばすタクシーで見ていたら
疲れがピークに達したか
ついついウトウトしてしまいやした

「・・・造られた世界の
終(つい)の景色は道遥か
土よ、どこまでも続く大地よ
罪深き旅人達に
束の間の安息を与え給え・・・」

紡いだ夢の狭間、確かにまた頭の中で
通奏低音のような深い深い声が響いていた
ツンとこめかみを刺すような心地がして
月夜の荒野を走り続けるタクシーの中で目を覚ますと
ツルのようなもので2人全身を縛られていたでやんす!
「ツイてるわー今夜は、カモが2匹も舞い込んで来てさ」
冷たい口調で、彼女はあっしらに一瞥をくれると
「次の街でお迎えが待ってるわ。そこであんたらとは金と引き換えにオサラバよ」と言い放った (オポムチャン)


「てっ、てめえ!」そう叫んでも彼女は
テキーラを飲み干しながら余裕の笑みでやした
抵抗しても無駄のようでやした
天を仰いで(このままあっしらは終わるんでがしょうか)そう思った時でやした。
手下としてそっとポケットに飼っていた手長猿が這いずり出て来て「キキキッ!」っとこっそりツルを解いてくれたでやす
(手間をかけたでやす!)あっという間の
テクニックであっしらは自由の身になったでやす
手長猿万歳!
偵察すると彼女はあっしとスルメ山の様子には気づいておらず
テンガロンハットを被って呑気に
「てなもんや三度笠」を歌っておりやした

「とにかく、このままじゃらちが明かねえでやんす」
隣で縛られたままの演技を続けているスルメ山に耳打ちしやした
「トンズラするでごわすか?」
「当然でやんす」
「ところで、どうやって?」
「飛び降りるでやんすよ」
「とてもじゃないが、無理でがすっ!」
突然大声を出すスルメ山に焦りやしたが……
「父さんにうまくいったって伝えといて」
途中から電話に夢中のグラマーには気付かれずにすみやした
「友達を置いて逃げる訳にはいかねえでやす。一緒に来てくれでやす」
「と、止まってからじゃダメでがすか……?」
「鳥になろうぜ」
トム・クルーズばりの笑顔でスルメ山を説得しやした
「トライするチャンスは一回きり。それを逃すと二度目は無いでやんすよ」
「とっくに承知でがす。友達のためだったら、何だって出来る……」
トゲでも取れたかのような、スッキリとした顔のスルメ山でやした
「トウ・バン・ジャンのタイミングで行くでやんすよ。トウ・バン……うわっ」
とばりの下りた暗闇の中に放り出され、あっしは道路脇の草むらを転がっていやした
「永久(とわ)に友達でごわーす。忘れないでくれでがすーーー」
とっさの事でやしたが、スルメ山はあっし一人だけを逃がしたのでやんした
「共に来るでやんすっ! 早く飛べでやーーーんすっ!」
トンネルの中に入っていったタクシーは、直後に事故を起こしやした
トラックとの正面衝突という事故を……
とまあ、こんな出来事を経験した……つもりでござんした
トントンと肩を叩かれ振り向くと、そこにはオズボーンの姿が
「とんだ災難だったが、まさか俺が創った夢の世界から逃げ出せるとはな
とびきり美人の俺の娘まで登場させてやったのに、手も出さねえとはイイ根性してるじゃねえか」
「遠い記憶も、全てが嘘だったのでやんすか? スルメ山も……」
問い掛けにオズボーンはニヤリと笑って、こう言いやした
「時計を見てみな。10分と経っちゃいねえだろう。そしてここは……」
とたんに力が抜けやした。ここは、あっしがカナダまでの切符を買おうとした駅。するとそこへ
「♪東京ポピーと呼んでくれ ポピーポピー東京ポピー……」と
特に懐かしい弟の歌声が聴こえてきたのでやした (とるすとい)


鳴っていたのはラジオでやした。そう、あっしの弟は
「なま」というバンドをやっていたのでやす。その唯一のヒット曲でやした
「仲直り・・・しやすか」あっしはオズボーンに言いやした
「納豆をくれたらな・・・」そういうあっしのポケットからは納豆が溢れてやした
「なんだ、こんなものでいいならあげるでやす」と渡すとオズボーンはそれをペロペロと
舐め始めたでやす
「何よりうめえ!」そう言ってむしゃぶりついてるのを見たら
なんかおかしくなって笑ってしまったでやす
ナヨナヨと立ち上がったオズボーンは
「ナウマン象を用意してある」
「NASAが開発した最新式のナウマン象だ。それに乗って行けばいい」
なんだかその優しさに今度は突然感情が高ぶって涙がポロリと落ちやした
「泣き虫さんは、嫌いだぞ」
撫で撫でされながらそう言われたでやす
「為せば成るんだなぁ・・・」あっしは
夏に向かってまた旅立つことにしやした

2メートルはあるであろう
ニコリともしないナウマン象にまたがってあっしは
握った手綱を手に考えやした
ニジェール・・・
ニカラグア・・・
西ドイツ・・・ えっ!? あっしの知らぬ間に東とくっついたんでやんすか!?
ニシンのサンドウィッチを頬張りながら
20分ほど世界の地図を
睨みつけてこれから行くべき先を熟慮しておったのでやすが
にわかに脳裏に浮かんだ国の名は
「日本・・・・・・」
肉親の朽ちた墓の残る、故郷
苦い苦い記憶からずっと避けてきたふるさとでやすが
逃げてばかりではこの旅も
にっちもさっちも行きやせん
握りしめた手綱を東北東へ向けると
ニトロのエンジンを搭載したナウマン象は
2000km/hを超える超高速であっしを運んで行きやした (オポムチャン)


(ヌウッ)その時何かが空からバサバサやってきやした
「ぬ、鵺!?」鵺がいつの間にかあっしの肩に止まりやした
ヌオッ!ヌオオオオッ!
糠臭い!
濡れた足の爪があっしの肩に柔らかく食い込むでやす。痛くはないでやすが
ヌメヌメしててちょいと気持ち悪いっす
抜くのも何だし
抜け殻にいったんなりかけたあっしのせめてもの旅の友と
主のあっしは思いやした。その時でやす
「盗人!」という声があっしに投げかけられたでやす
ヌヌヌッ!?

寝耳に水でやんしたが
根っからの小心者のせいで思わずナウマン象から落ちそうになりやした
ネチョっとあっしの肩に食い込んだ鵺の足が
狙った獲物は逃さねえとばかりに引き上げてくれたおかげで助かったのでやすが
「猫に小判でごわすな。貴様、間違いなく盗みやがったでがすな。この盗人め!」
眠ってもいねえのに夢でも見ているような気分でやした
「熱帯雨林の九官鳥のように喋ったのは、もしかして・・・?」
「ネジでも外れてんでがすか? 俺様以外に誰がいるでごわす。ナウマン象が喋るってがすか?」
ネタ話でも何でもありやせん。鵺が喋ったのでやんす!
「値段も付けられねえ程の、あらゆる夢を自由に見ることができる『たま』の首飾りを持っているとは、貴様ただ者じゃねえでがすな?」
「ネックレス・・・? な、なんじゃこりゃ! これはオズボーンの金○○! い、いつの間に・・・?」
ネットも繋がる最新式ナウマン象で調べてみると
ネッシーよりも確かに現在・過去・未来とあらゆる夢を自由に見ることができる
ネバーランドと同じくらい不思議な「たま」がこの世には存在するそうでやす
「ネパールの両親が俺様に付けてくれた名前が『スルメヤマ』ってんでごわす。よろしくでがす!」
「ねぇーっすよ! そんなのありえねえっす! はっ、まさかオズボーンが未来の夢を見て・・・? あ、あっしの名前は・・・」
ネームプレートをスルメヤマ(鵺)に見せようとした時でやした
ネオターボエンジンのナウマン象から警告が発せられたのでやんす
「燃料切れまで、あと3分です・・・」 (ネズビット)


「No〜!」思わず叫んだでやす
野っ原のこんなところで放り出されたら
野垂れ死ぬのは目に見えてるでやす
のらりくらりと歩いて来た罰が当たったでやすか
ノッシノッシと巨体を揺らしていればそりゃまぁ燃料も使うでやす
覗き眼鏡で辺りを見渡しやしたが燃料補給所は見当たりやせん
「のるかそるかやってみるでやすか!」
残された僅かな燃料で
ノシイカの様に海にと飛び込んだでやす
脳味噌を絞り出したこの作戦は成功
呑気な海面に浮かんだナウマン象は
伸び伸びと波の上を漂っていったでやす
「のんびり行くのも時にはいいでやすな〜」とあっしはオズボーンの金○○をいじりながらひとりごちたでやす

「♪晴ぁ〜〜〜れたっ空ぁ〜〜〜、そぉ〜〜〜よぐっ風ぇ〜〜〜」
ハワイ航路をゆくよな気分で
果てなき海原をあっしはナウマン象にまたがり進みやす
ハッッと気が付いた時には
離すまじと肩を掴んでいた鵺は
遥か彼方へ飛び去っておりやした
8月の海に陽が落ちて
灰色の空に不意に煌めく色とりどりの光
花火が遠くで上がっているようでやんす
母なる祖国へはどうやらあと少し
・・・ははっ、なんだかガラにもなくおセンチな気分になってきたでござんすね
波照間島あたりで今夜は宿をとるか、と思った矢先に
激しく光り出す眼前の光景
放たれた光の源は・・・何あろう
花火ではなく、首周りの金○○ではござんせんか!!
はたして一体、何が起きたのでやしょう!!? (オポムチャン)


怯んだその時でやした
「ヒヒヒヒヒ・・・」
光を放つその玉が笑いだしやした
「ヒィーーーーーッ!」
ひとりで大声をあげてしまいやした
「ひっひっひっ、私は玉の王。つまりたまキング!」
酷いシワガレ声がその中から聞こえてきやした
「ヒーローになろうとしてるね?あんた」
ひねくれた考えでやす。何もそんなことは考えてないでやす
「羊は好きかね?」
非常に好きでやすが、何故そんなことを聞くのでやしょう
「秘密の箱が今に空から落ちて来る。それを開け給え」
疲労してるので、好きだけど羊の入っている箱が落ちて来るのならそんなことで右往左往したくないでやす
「棺に入れてやろうか!」
肘鉄を食らわせるようなその声にビクッとしたでやす
日も暮れて来たのでここでたまキングと喧嘩してもしょうがないでやす
「拾うでやすよ。拾えばいいんでやしょう」
久しぶりに何だか分からないプレゼント。果たして中は羊なんでやしょうか?

不可解なたまキングの要求に応えんがため
ふるさとの国の土に、久方に脚を
踏み入れたその刹那、
降って来やした大きな箱が。『ドスウウウン!!』
震える大地、それはそれは大きな箱でやした
不審な事態にいぶかりつつも
フタをそぉっと開けてみたらば
太った羊がメェェメェェとつぶらな瞳で
ふさがらない口をポカンと開けたあっしを見つめておりやす
「ふざけちゃいないってことが分かったろ? 私はたまキング、あんたの望みを叶える存在さ」
不意にさっきまで肩にとまっていた鵺の「スルメヤマ」の言葉を思い出しやした
不思議な「たま」は、あらゆる夢を自在に見ることが出来る・・・
「ふん、そろそろ自分に正直になればどうだい? なりたいんだろ、ヒーローに」
・・・ふっ。
ふっふっふっ。
ふつふつと自分の中に、ある欲求が湧きあがるのを覚えたのでごぜぇやす (オポムチャン)


「ヘタな芝居だな」
「へっ!?」たまキングが逆に驚いたでやす
「へこへこすると思ったかい、羊が落ちて来たくらいで」
へ〜んな感じにお互いなったでやす
「へし折るぞっ、その背骨を!」たまキングがまた脅してきたでやんす
「・・・へへへっ あんたが見せられるのは幻覚だけだろ」
「ヘソの中をかきまわしてやろうか!」
「へいへい、やれるものならやってみな。羊なんて本当はどこにもいない」
「へえ・・・何でわかるんだい?」
「ヘマをしたな。あっしは本当は羊アレルギー。本当の羊が横に居れば・・・
屁が止まらなくなるはず!なのにさっきから一発の屁も俺の肛門様からは出てこない。即ちこれ幻覚!」
「・・・へへへへへ、そうかいバレちまったかい」たまキングがびびっている。
「へらず口もそこまでだ」
「へば、俺はどうしたらいい・・・」
変幻自在のたまキングも遂に観念したようでやす

「吠え面をかきたくなかったら、あっしの言うことを聞くでやんす」
ほくそ笑みながら主導権を握ったのでやんした
「ほんと、あんたみたいな強いヤツには初めて会ったぜ」
微笑みを浮かべながら・・・とは言っても表情は見えやせんが、たまキングは妙に清々しい態度でやした
「保身のつもりでやすか? あっしは弱い人間でやんすよ」
「本心から言っている。あんたには強さがある」
「他の人間ならまだしも、あっしにはそんなもん・・・」
「骨があると言った方が分かりやすいか。あんたは屈しなかった」
「褒めても何にも出ないでやすよ」
頬を緩ませて聞いていると、再び強い口調の酷いシワガレ声で言ってきやした
「ホッチキスで口を閉じてろ! 好きに喋らせてくれ!」
「ホットキスでやすか? 有紀にしゃぶらせて? はい・・・ぶちゅっ〜」
ほぞを噛みやした。まさか聞き違いの幻覚で、目の前のたまキングを有紀ちゃんの唇だと・・・オエッ
「ほ・も・で・な・し。ホモでなし。違うよ! 誰がそんな幻覚見せるか! ぶへっ、ぺっぺっ」
「ほざくのもいい加減にしろでやす。そっちが変な術を使ったせいでやん・・・す」
ホームベースのようにペタンコに熨してやりたい気分になったことは言うまでもありやせん
「ほうき星が願いを叶えるように、持ち主の見たい夢を見せるのが俺の仕事だ。幻覚はその副産物。まさかあんた、俺に・・・」
「惚れるかでやす! さっきのはハプニングでやす!」
「ほっ、安心したぜ。この前は悪かった。あれは前の持ち主だったオズボーンの願いだったんでな」
放屁したかのように急にしおらしくなる(しぼむ)たまキングでやした
「ほどほどに、でやんすよ。まったく。なんであっしにあんなサナトリウムの夢を?」
「ほんの少しだけ、あんたに寄り道してもらう必要があったのさ。オズボーンが見た未来を変えるために・・・。それ以上は」
「ほお。だったら言う必要はないでやす。同じ夢を見せろでやす」
「誇り高きたまキング様も落ちぶれたもんだな。あんたごときに命令されるとは」
法外な力を持つ割には、金玉の小せえ・・・小せえ金玉でやした
「宝玉様〜、たまキング様〜。願いを叶え、たまたまへ〜。これでいいでやすか?」
歩行モード(超低速)で闇に包まれた波照間島を進むナウマン象の背中で
ほのかに互いを認め合うあっしとたまキングでやした (デクノボー)


まったりとした時間がしばし訪れやした
まあたまにはこんなのんびりした時間もいいでやす
♪まさかりかついだキンタローが〜とか歌ってたでやす。と、それもほんのつかの間でやした
まさかまさかの展開が待ってたでやす
マジでその事件に巻き込まれた時は
マングースに襲われた羽生名人の様でやした
まっこと恥ずかしい話ではありやすが
まぁ話を聞いてくれでやす

「見せて欲しいでやす、オズボーンの見た
未来の夢を! たまキング様〜」
見かけのうえではへりくだってみて
南の星座が煌めきだした夜道を往きながら様子を窺いやした
「見え透いたおべっかを使うんじゃない。
自らに正直にならんと、願う夢は見せられんのだよ」
身のうちに偽りの心があったことはいとも容易くバレてしまった
自らの気持ちに正直になる、だと・・・?
右手に残るは、夢で見たスルメヤマと二人でこいたせんずりの感触。
・・・みだらな夢も、実をいうとちょっと叶えてみたいのでやした。
三日月の下、不意に輝きを増したたまキングは
緑色の光であっしを包み込みだすと
視るも卑猥なあっしの理想の猥褻世界を顕現させたのでやんす
乱れる呼吸。思考。
ミっ、ミサイルが。お股のミサイルが発射するよう!!
見境をなくしてあたりの物に腰を打ち付けると
「ミヂャッ」という不吉な音がして我に返りやした
・・・見当たりやせん。たまキングが・・・ (オポムチャン)


むむっ?むむむむむっ!
無意識のうちに自分の意識から外してしまったのか?
無論、何も自分ではしてないつもりでやした
ムリムリムリ・・・変な音が自分の股間から聞こえたでやす
息子が!自分の息子がどんどん膨れてるでやす。勃起とかそんなものじゃなく
「無理だ!このままだと破裂する!」
無慈悲にも息子は膨れ続けたと思ったら
ムファッという音とともに気球の様に体が持ち上がったでやす
むせかえる中、ついには空中にプカプカ浮き始めたでやす
無鉄砲なことをしたのでたまキングが怒ってどこからか遠隔操作してるのでやしょうか
「ムッソリ〜〜〜〜〜ニ!」あっしは意味の無い言葉を思わず叫んでおりやした

目を見張らせ辺りをうかがうと、そこにはーー。
目を疑うような光景があったでやんす。
目を射るようなその光景。
目にしたことが信じられず。
目を凝らして確認。
目を皿のようにして、さらに確認。
目を白黒させずにはいられない。
目を丸くするとはこのことでやんしょ。
目の覚めるような事実。
目も文に、というやつでやんす。
目と鼻の先でそれは起きている。
目が開かれるというやつでやんしょか。
目から鱗がおちるというやつかもしれないでやんす。
目のやり場にこまるようなことでもあったでやんす。
目をそばだてて興味のないふりをするでやんす。
目をつけていることは隠せないというか、自制心のなさから、それをしっかり確認してしまう出歯亀根性。
目の毒とはわかっているでやんすが、ついつい好奇心が押さえられない。
目も眩むような光景がそこにあるでやんすから、しょ、しょうがないでやんす。
目にはいってしまうでやんす。
目もくれず空を飛んでいくわけにはいかないでやんす。 (多摩川)


「モモンガーッ!」思わずまた意味の無い言葉を叫んでしまったでやす。 もっといつまでもそれを見ていたい
モザイクがかかっても当然のようなその物を。
(もう少し近づいてみよう・・・)とその瞬間、
モーレツな光景に思わず
モヤモヤしていたものが
モコモコと
モリモリになったでやんす。
萌え、まさに今流行の萌えというやつでやんした。
モナリザもビックリのそれとは・・・

ややこしい話でやすが、あっしの玉が「3つ」になってやした
ヤングにとって「萌え〜」なのかは知りやせんが、「モナリザの苦笑」は目に浮かぶようでやす・・・
闇夜にボゥっと光る股間を不思議な気持ちで見つめてやすと
やっと、たまキングの本領が発揮されたのでやした

「野菜を食べないと、ママのお婿さんにはなれないわよ」
「や〜だ〜。ママとけっこんする〜」
「やっぱりパパと結婚しちゃおっかな〜。ウフフフ・・・」

優しい母さんの声・・・

「病に勝てなくて、ごめんね。パパ、この子のことをお願い・・・」
「槍が降ろうが、誓ってこの子は俺が守る」
「約束してちょうだい、ママと。パパみたいな、立派な、たまキ、ン・・・」

安らかな母さんの顔・・・

「やすまないで、めをあけて・・・。ママーっ、おきてよーーーっ!」
「やめるんだ。ママは楽しい夢を見てる・・・」

「やめるんだ。いまは悲しい夢を見てる場合じゃねえ」
矢の如く過ぎ去った遠い遠い記憶、母さんにもう一度会いたいという思いが
やり切れない幻覚として現れたのでやしょうか
「ヤなもんを見ちまったでやす、へへ。・・・いや待てよ。これは、あっしが望んだ夢じゃないでやす。これは」
やおら股間のたまキングを宙に浮いたまま見下ろしやした
「や、やるべきことをさっさとやっちまおうぜ。これがオズボーンの見た夢だ!」
やや焦った口調で、再び夢へと誘う(いざなう)たまキングでやした
「ヤツは見ちまったのさ。そして、お前こそが唯一の救世主だと知り策を練った」
(焼き尽くされた世界・・・。何故こんな事に? あっしにどうしろと?)
ヤバイ夢・・・いや現実に起こる未来を見せられたあっしは
役不足を認識せざるを得やせんでした
「厄介な問題に巻き込まれたみたいでやんすな・・・」
「やかましい! 夢でお前がやるべきことも見えたはずだ。残り文字数・・・時間も少ねえんだ。とっととやろうぜ!」
やせ我慢の発言からか、たまキングもブルブルと震えてやした
「やたらと震えるなでやす。そんな所でバイブを・・・あっ、うぐっ、もう我慢でき・・・な、どぴゅるるるーっ!」
やけに大量のモノが天高く発射されたかと思うと
やがてその液体は人間の姿へと形を成したのでやした
「籔から蛇とは聞きやすが、玉から・・・誰でやんす?」
「野暮な質問だな。そいつは世界が救われた時に教えてやるよ」
山場のカッコいいシーンでやすが、辺りはイカ臭いだけでやした
椰子の実から抽出したナパーム燃料を補充したナウマン象は
やらしいほどにアソコ(鼻)をビンビンに勃たせてスタンバイしてやす
破れかぶれの気持ちも半分のあっしでやしたが
易くない目的を果たすべく、正体不明の人物と共に東京へと向かったのでやした (デクノボー)


ゆや〜んゆよ〜んゆやゆよ〜ん
ゆっくりとした足取りで歩く彼にちょっといらいらして
ユッケを食わせて元気をつけさせると、彼は突然何か思いついたようで
郵便ポストの中へと入っていくでやんす
「ゆるゆるしてるよりこれが一番早いんだ!」
ユリ・ゲラーでも思いつかなかった秘技でやんす!
「Youは天才だなっ!」
指をパチンと鳴らすと自分に切手を貼って東京の
有楽町の適当な住所をお互いの体に書いたでやんす
有言実行とはこのこと。
郵便屋さんはロボットのような目をしていて、あっという間に俺たちを
ユーロスター並の早さで東京まで配達してくれたでやんす

夜が明ける少し前、有楽町に到着したあっしらは
よからぬ気配を感じずにいられやせんでした
澱んだ空気。
世のすべてを呪うようなただならぬ気配。
「用意はいいな?」と囁く謎の彼
「よ、用意? 一体何のことでやす? 今から何が起ころうと・・・」
「余計なおしゃべりはやめろ。感付かれたらどうする」
世迷言にしか聞こえない、玉から生まれた彼の言葉に
容量の少ないあっしの脳味噌はついてゆけやせん
「要領を得ないことを言うなでやす! あっしに何を期待してるんでやんすか!?」
「よく聞け。私はたまキングマン。お前を導くために具現化したんだ。
よって、この東京でこれから起ころうとしてることがすべて見えてるのさ」
「用無しでやす! そんなことならあっしもさっき見・・・ あれ?」
予見したはずの恐ろしい未来のビジョンが、なぜか思い出せなくなっていやす
「余計なイメージに囚われて、怖気づかれても困るからな。
要するに一旦あんたと離れて、予知したビジョンをも切り離したのさ」
よく理屈は判りやせんが、なるほど今から起こるであろう一大事に向かうには好都合かもしれやせん
「幼少の頃からいつも一緒だった、弟のコウジを忘れたことはあるまい」
「・・・よもやコウジが、この不穏な気配の大元・・・なのでやすか!?」
「代々木公園の秘密基地に、奴は発射装置を造り上げた。
ヨーロッパ・アジア・アメリカ・アフリカ・オセアニアにまで届くほどの化学兵器の、な」
予想だにしない話に、あっしは
よろよろと崩れ、地に片膝を付きやした
「世の中の仕組みに嫌気がさしたコウジは、全世界の人間をオカマに変えてしまうガスを開発した。
夜明けとともに、今日発射するつもりのようだ」
「横槍を入れるようでやすが、コウジは今オカマをやってるんでやすか?」
「余計なおしゃべりをするなと言ったろう。だがそのガスに問題があった。
余分な成分が混入していたため、発射の点火と同時に・・・・・・」
「・・・・・・予測が付いたでやす。でも、あっしにそれを止める方法なんてあるんでやすか!?」
「よぉく聞くんだ、あんたにしか出来ない、最終手段さ・・・」 (オポムチャン)


♪ラッタラッタラッタッタ〜 ラッタラッタラッタッタ〜
ラジオ片手に変なおっさんが突如あっしらの目の前に現れたでやす。しかも
裸体。素っ裸で有楽町の大通りを渡って来たでやす。夜明け前なので人通りこそなかったでやすが、
ラストシーンが近づいている大事な場面だというのに何という展開でやしょう
「ランボ〜、怒りのウンチ!」
「ランジェリーをフリフリウンチ!」
「ラッセーララッセーラウンチ!」
「ラズベリーの香りの応接間でウンチ!」
「ランドセル老人ウンチ!」
「ライターで鼻毛燃やして熱い熱いぞ出るウンチ!」
「ラスタカラーの入学式後すぐにウンチ!」
「ラー油を頭からドバーッで思わずウンチ!」
「楽な姿勢で石の上にも3秒ウンチ!」
「ラッフルズホテルで礼服脱がずにウンチ!」
「ラッコに頭を割ってもらってビックリ仰天飛び出るウンチ!」
「ラメで飾り立てるよ綺麗なウンチ!」
乱心したような意味不明な言葉を叫び続けるおっさんの顔をよく見たら、何と弟のコウジ!
乱痴気騒ぎをひとりでしているコウジ。このままじゃ警察に
拉致されるのも時間の問題でやす
乱暴気味にコウジを押さえつけると羽交い締めにしたでやす
ラリってるのかと思ったら奴の目は正気でやした。その時でやす
「ラブよ、大切なのは」コウジはニッコリ笑って言ったでやんす

「理性の欠片でも残っていたら、あっしが誰だか分かりやすね?」
両手を静かに外すと、弟のコウジはニッコリ笑ったまま頷きやした
「旅行に行ったきり帰ってこなかったウンチ!」
「李さん一家にあたしを預けたまま迎えに来なかったウンチ!」
リバーシブルのように、顔は笑ったままでも心では恨んでいる様子が手に取るように分かりやした
「立派に成長出来たようで安心したでやす。オカマのコウジも、捨てたもんじゃないでやすよ」
リトマス試験紙のように青から赤に変わるコウジの顔からは、どうやら悲しみは消えたようでやした
「リアルラブよ、大切なのは。会いたかったわ…兄さん」
リクエストとばかりに唇を突き出すコウジでやしたが、数十年ぶりのハグで許してもらいやした
「リモコンを渡すでやすよ、コウジ。みんなをオカマに変えなくたって、みんながコウジを愛してくれるはずでやす」
「隣人が見てる前でお尻の穴から出すなんて、恥ずかしくて出来ないわ。そいつを遠ざけて」
リスのように鼻をヒクヒクさせながらの可愛いお願いでやした。すると、たまキングマンが…
「力作のシナリオだが、芝居はそこまでだ。貴様がコウジじゃないのは、金部お見通しなんだよ」
利口じゃなくても弟の顔くらいは覚えているでやす。たまキングマンはいったい何を言いたいのでやしょう?
「リ、リブート(再起動)したら?あんたの頭。あたしは本物のコウジよ」
「離別した母親を忘れさせるために俺が造った、アンドロイドなんだよ。コウジ(R-0703型)に、オカマ機能はない!」
「リア王も真っ青の誤算ね。そうよ、あたしはコウジじゃないわ!本物は今頃…」
林檎のようなお尻を持ち上げオムツを替えてやった思い出も、全てが単なるお人形遊びだったでやすと?
「リストアを繰り返しながら徐々に大きくしていったからな。気づかないのも無理はない」
「両方とも黙ってろでやんすっ!どこまであっしを馬鹿にすれば気が済むでやすかーーーっ!」
龍の如く立ち昇る怒りに、あっしは自ら偽コウジの尻の穴に手を突っ込みリモコンを奪い取ったのでやした
「隆々とした腕も気持ちがいいものね。さあ、そのまま発射ボタンを押してしまいなさい!この地球を我々タマキンク星人のものにするのよ!」
「了解でやすーっ!スイッチ・オン…なんて簡単に押すとでも思ったでやすか?」
「留学しに来てる訳じゃないのよ、こっちだって。こうなったら手淫…手動で発射させてやるわ!」
料理が出来上がるのを待っているかのように構えていたたまキングマンが、再び口を開きやした
「リターンしな、タマキンク星へ。地球は我々が思ったのとは違い、愛に満ち溢れた星だった」
「立候補までして地球を侵略しに行ったあんたが、何で地球人の女と恋に落ちたりしちゃうのよ。この裏切り者!」
「良縁を信じてみようぜ。共存の道もあるはずだ」
「緑茶みたいな渋い説教なんて十分よ。先ずはあんたの息子から消してやるわ。死ねーっ!」
リーサルウェポン的な偽コウジの攻撃は、てっきりたまキングマンの股間(息子)を狙ったものとばかり思ってやした
「リラックスしてる場合じゃねえ!逃げろーっ!ぐはっ」
流液(流血)しながら、たまキングマンは倒れてやした。あっしと偽コウジの間で、あっしを庇って…?
「臨機応変とはいえ、何故あっしを助けたんでやんすか?おい、起きるでやんす…」
「リ、リアクションを取る暇もねえ見事なツッコミだったぜ。危うく愛する人との約束を破るとこだったじゃねえか…」
輪廻転生が本当だったら、こんな漢(おとこ)に生まれ変わってみたいと思ったでやんす
「リベンジマッチはこれからよ!全人類をオカマに変えてやるわ!」
リセットしに代々木公園の秘密基地へと走る偽コウジを、あっしは必死に追い掛けやした
「リミットまでに時間がねえでやんす。こうなったら、あの手でやんす!」
リスクを覚悟で、今まで封印していた必殺技を使うことにしやした (リヤカーマン)


「♪ルイルイ!」親指と人差し指をLの字の格好にし、大声で懐かしの太川陽介のルイルイをやったでやす。
♪ルイルイ! ♪ルイルイ! ♪ルイルイ! ♪ルイルイ! ♪ルイルイ!
類人猿でも分かる何の効果も無い技でやした・・・。

冷静になって、アホな技を解くと
黎明の空へ向けてあっしは両腕を羽ばたかせ飛び立ちやした
levitator(レビテイター)・・・ 空中を自在に飛べる者。それがあっしの特殊能力でやんす
レモンの木をかすめてイスタンブールの空を飛んでいたのを思い出しやす
連絡橋をくぐり抜けて公園が見え始めた時
例の鵺と、鼻をビンビンに勃たせながらもほっとかれたナウマン象が彼方から飛来して
列を作ってあっしに追随してくれやす
霊感なんてものはとんと無いあっしでやすが、何故か今しがた斃れたたまキングマンが
霊、そう守護霊のごとく、あっしの周りでまるで父親のように守ってくれている心地がしやす
「礼を言うでやんす、お前ら。
レッツデストロイ・発射装置でやすよ!!」
烈風のごとく代々木公園に飛び付けたあっしらは、巨大な発射台の上で
「レボリューションよ! この星を第2のタマキンク星に変えてやるわ!!」と叫びつつ
レバーを今まさに引かんとしている偽コウジ目掛けて
連続攻撃をしかけやした
靂(れき)を呼ぶ鵺! 明け方の空に稲光が一閃すると、目がくらんだか
レバーから偽コウジの手が離れやす。そこへすかさずナウマン象がビンビンの鼻を
レバーに巻き付け、へし折りやす「バキィッ!!!」
「れ、劣等生物どもめぇぇぇ!! あたしの計画を・・・」
烈火のごとく激昂する偽コウジの後頭部へ、あっしは高速で飛来した勢いで
レッグラリアットをかましやした!! 「ドグワッシャァァァァンン!!!!!」(オポムチャン)


「ロッケンロール!!!」そう言いながら偽コウジはそれでも立ち上がろうとしてきやした。
「ロコモーション!それなら最後はこれだ!」そう叫んであっしは懐からある物を出したでやす。

ろろろろろ! ろろろろろ! ろろろろろ!



ローターが激しい音をたてて偽コウジに襲いかかった!
ロビンフッド気取りだった偽コウジもこれには悶絶しやした。さらに「これで終いだっ!」
ローションを思いっきりふりかけてやったでやんす。「こっ、これは・・・うっ!」
ロマンスに落ちたトロンとした目になって偽コウジは果ててしまったでやす。
「ろくでなしは消えたでやす・・・」
ロイター通信はすぐにその様子を全世界に配信したでやす。

わー、凄いニュースになってるわ。
わたしったら、たまキングマンに作られた存在だったのね。
わたし、そんな機能はないといっても、現にオカマになっちゃったのよね。
分からないものねー。
分かっているのは、神様は男と女を作ったはずなのにオカマもいるってこと。
わたしはわたし。
わけがわからなくなったこの世界は、うんのつきまでもうもどらないでしょうけど、ウフッ!
わたしの偽物騒動はひとまずこれで終わりそうね。

わたしの偽物なんて、誰がつくると思う?

わたしに世界で一番こだわる人間にきまってるじゃない、もちろんーー。

ーーわたし自身よ。

わたしたちは、あきらめないんだからねっ!ウフッ。 (多摩川)


をわりか?
をわってしまうのかこの話は
をい、誰か答えろ!
をーーーーーーい をーーーーーーい

んな冗談はさておき、可能性はゼロではないって話でやんす
んで、「ありとあらゆるあんたのこと知ってやす」の意味もお分かりになりやしたね?
「ん?」という顔をされたところを見ると、あっしの説明が足りなかったのでやんしょうか・・・?
ん〜、つまりでやんす。あんたのコカンに付いてるのが、あっしでやすよ(笑)
「んわっ!」とはヒドイでやんすな〜。これでも地球を救ったヒーローなんでやんすよ
んだば、そろそろ本題に入るでやんす。偽コウジが戻って来たと言やぁ、話が早いでやんすね
ん〜と鼻を伸ばして、ナウマン象も外でスタンバイしてるでやす。それとも、自分で飛んでみやすかい(ニヤリッ)?
「んにゃんにゃ」とは金玉の・・・肝っ玉の小せえ
ンガウンデレ(カメルーン中北部の都市)が目的地・・・というところで、あっしの出番は終わりでやす
んがしかし、物語はまだまだ始まったばかりでやんすよ!
んじゃ、股な・・・っておい。・・・あ! (デクノボー)






               ーーーーーーーー了ーーーーーーーー





今回のリレー物語はひとつ縛りがあります。次回は文頭を全部「ん」にして下さい。行数は問いません。
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