第十二話 高校生日記




俺、只今高校二年生。
体、悶々。
頭、エッチなことばかり。
だけど全然モテない。
俺はフツーだと思うのだが、どこかしらイケテないらしい。
まぁファッションとかにもあまり興味ないしなぁ。
なのでもちろんまだ童貞。何の経験も無し。
そんなある日のこと、俺の悪友しげるがそっと近づいて来て耳打ちした。

「義春、いいもんめっけたんだけど見るぅ〜?」

しげるのニヤニヤ顔に俺は「な、なんだよ〜。もちろん見るよ〜」と答えていた。

しげるは俺を学校の部室棟の裏のほうに連れて行った。ここなら人目につかないと思ったのだろう。そして、スポーツバッグからある「もの」を取り出した。それは直径が5センチくらい、長さが10センチくらいのゴム製の円柱のようなものであった。
「これ、なんだと思う?」 しげるはちょっともったいぶった口調で俺に聞いた。
ぱっと見たところ、チクワのように見える。でも、円の片方側には穴が開いていて、貝の具みたいな形状になっている。
「え、知らないの?ほんと、義春は奥手なんだからなぁ。」としげるは言うと、おもむろに立ち上がり、ズボンとパンツを下ろすと、俺の目の前でその「もの」をおちんちんにとりつけ、そのままマスターベーションを始めてしまったのだ。
「これは、貫通式って言って、亀頭の先っぽを出せるようになっているんだよ。」と言うと、しげるは、亀頭にローションをかけて潤滑性を高めた。
俺は他人の自慰行為を見るのも初めてなら、ズル剥けのおちんちんを見るのも初めてだった。しげるが何故かズボンを下ろす前から勃起していたのか、謎だった。
「これ、気持ちいいんだよぉ。義春もやってみろよー」脳天気に言うしげる。その鼻息は徐々に激しくなっていった。何考えてるんだ、こいつは、と俺は内心あきれながら思った。(波照間エロマンガ島)


と、いきなりしげるは「ウウッ!」というとおたまじゃくしを宙に飛ばした。
「おっ、おいおいっ!」と俺はマジで驚いた。
今までもふたりで下品な話とかマスターベーションの話もしょっちゅうしてたが、まさか俺の目の前でやるなんて。
と、後ろを向いてごそごそと後処理をした後、しげるは俺に言った。
「もうひとつあるんだ。義春もやってみろよ。・・・今ここで」
そう言ってるしげるは何だかいつもと違う上気した桃色の頬と、何よりもギラギラした目で俺の方を見つめていた。
「早くしろよ」
俺はしげるにうながされた。
そして確かに聞こえた。
しげるが唾をゴクンと飲む音が。

「マジ…でか?」
「当たり前じゃん。俺のを見といてさぁ、不公平だろ。な、は、早く」
もちろん見ると言った手前、そんなもの見せられると思ってなかったなんて泣き言は言いたくない。
が、この状況だ。
いよいよ息が荒くなりだしたしげるの視線は、まっすぐに俺の股間を狙っている。
しかもここは人通りの滅多にない部室棟裏、とはいえ野外なのだ。
脳内つねにスケベ満載の俺だが、こういったアブノーマルな経験はない。
いちどきに様々なことを考えてパニック状態の俺にしげるはゆっくりと近寄り、立ち尽くす俺の前にしゃがみ込んで制服のズボンのチャックをおろそうとしている。
「お、おい! しげる、今日は一体どうしたんだよっ!?」
「へへ、度胸ねえなあ… 手伝ってやるよぉ、ハァ、ハァ…」
次に何をされるかは、だいたい予想が付く。
俺の純潔は、いまここでしげるに奪われてしまうのか!?
  さっきまで萎びていた筈のしげるのモノは再び脈打ち、対照的に俺のはビビッて縮こまってしまっている。
(お、お母ちゃん…)
されるがままに外気に触れた、俺のかわいらしい逸物。
その時、だれも寄りつかないはずの部室棟裏に、人の気配がした。(オポムチャン)


「おいっ、そこで何をしてるんだっ!」
振り向くと体育教師の本宮先生が立っていた。
「水木と・・・柘植か。お前らここでタバコとか吸ってるんじゃないだろうな!」
本宮先生はガチムチだが、顔はなかなか爽やかなイケメン先生だ。
「ち、違いますよう。そんなものやってませんよ」
しげるが慌てて弁解した。
「ん、本当か?・・・むぅ、確かに煙の後はないな。じゃあ一体何を・・・あっ!」
先生は俺たちの異変に気がついたようだ。
「なんでふたりでチンポコ出してるんだ!」
俺たちは狼狽した。
「い、いや、あの、別に・・・」
と、先生は一瞬考えてから言った。
「とにかく、ちょっと体育教官室に来い。話しはそこで聞く!」
その時ふと思い出した。本宮先生にはある噂があったことに・・・。

「あの先生さぁ、前の学校で男子生徒に一線を越えたイタズラして、うちに飛ばされてきたらしいぜ」
「あ~言われてみれば確かに、爽やかだけどそれっぽく見えないこともないなぁ…」
なんて話を教室で聞いたのは、本宮先生が赴任してきた、今からひと月前の頃だった。

「さて、あんな人気のないところで2人で何をやってたんだ?」
教官室で問い詰められるしげると俺。
だが、しげるはこの状況にありながらどこか余裕があるように見える。
「おい、柘植! ちゃんと答えろって言ってるんだ!…それとも何か? 学校で、白昼堂々人に言えないコトをしてた、っていうんじゃないだろうなぁ…」
先生の口調に、徐々に粘りっ気が混じる。
怯えて何も声が出ない俺をよそに、しげるが平然と言ってのける。
「はい! 先生にもらった勉強道具で、柘植と野外学習してました!!」

………えっ?

「水木ぃ、あれは室内用だと言っただろう。これは柘植と一緒に、お仕置きが必要だな」
…状況が読めてきた。
しげるはすでに、本宮先生の毒牙にかかっていたのだ。
気の弱そうなしげるを調教して、友人の俺をもイタズラの対象にしようという魂胆だ。
今日もわざとしげるをけしかけて、絶好のタイミングで部室棟裏に現れたのだろう。
ここひと月、放課後しげるが姿を見せない日があったのは、先生とそういうことになっていたからだったのか…。
エロ事への興味は尽きないが、男2人に弄ばれるなんて、いくら俺でも嫌だ。嫌じゃぁあああっ!
俺はすぐ隣の女子体育教官室にも人がいることを願って、ありったけの声で叫んだ。
「ダ! レ! カァァァァァァ!!!」
その時、教官室の扉が勢いよく開いた。

「本宮先~生、どうお仕置きなさるつもりでしたの?」

「う、内田君!! さっき帰ったんじゃなかったのか!?」
「書類を忘れて戻ってきましたの。一部始終、聴いておりましたわ」

そこへ登場したのは、保健体育の教育実習で先週から学校に来た、年の割には色っぽい大学生の内田先生だった。(オポムチャン)


「本宮先生、最近は昔と違って体罰は文科省の方が厳しいですわよ」
「う、うん、そうだな。だから違う方法で・・・」
「違う方法? それはどういうものでしょうか?」
内田先生はニヤリとしながら色っぽい目で本宮先生の方を見た。
「それは、あれだ。うーんと、それより内田先生、実習の方はなかなか評判がいいようだね」
「ふふふ、はぐらかさないで下さい。・・・あたしは何もかも知ってるんですのよ」
「な、何もかも!?・・・どういうことだ」
「ふふふ、私もちょっと仲間に入れてもらえたらなーって」
内田先生の表情は妖しく揺らめいた。
「いや、仲間って・・・」
その時だ。内田先生が自分の頬を優しく触りながら言った。
「もしかして本宮先生御存知ないのかしら?教育実習配属表の私の資料ちゃんと見ました?」
「えっ、いやあ、一通り見たはずだが。確か内田先生は和港大学の学生で・・・」
「そんなところじゃないわ。性別のところよ」
「性別?」
本宮先生は慌てて机の引き出しをひっくり返し、どうやらその資料を見つけたようだ。
「まっ、まさか? ・・・あっ!」
  内田先生は婉然と微笑んだ。
「そう。私は男よ」
あまりの展開に三人とも何と言っていいかわからず、あたりを静寂が支配した。

「うわあああああー、これから3Pならぬ4Pが始まるのかよー。助けてくで〜」
俺は大声で助けを呼んだ。しかし、助けは来なかった。
「柘植ちゃ〜ん、うっふ〜ん!」
いつの間にか3人は、チン◯丸出しになっていた。
本宮先生が、色っぽい声で
「柘植ちゃ〜ん、しゃぶって〜。お願い〜。」
と、まくしたてる。俺はあまりのおぞましさに叫びまくった。
「うぎゃあああああ!俺を弄ばないでくれ〜!」

ここは、保健室。1人の生徒が暴れている。
「杉浦先生、柘植の具合はどうですか?」
保健室の杉浦先生は、落ち着いた口調でこう言った。
「本宮先生、柘植君が『弄ばれる』とか『4P』とか、訳の分からないことを口走っているんですけど、何か心当たりはありませんか?」
「いや、何も。彼は私が授業を担当しているクラスの生徒ですが、殆ど話をしたことがありません。授業中に突然倒れたので心配になったのですが…。」 (ちちぼう)


という経過を俺は先生に教えられ呆然とした。
実は倒れたのはここのところラジオの深夜放送にはまってしまい、寝不足が続いてただけという診断だったので心配するようなことではないとの事だが、その夢からの叫びが何とも・・・。

教室に戻ると最初はクラスメイトも「大丈夫か!」と心配顔だったが病気ではないということが分かると休み時間にみんなに冷やかされた。
「お前、なんて言っていたか覚えてる?」
「ん・・・あまり覚えてないけどなんか変なこと言ってたらしいなぁ」
「そうそう。『弄ばれる』とか『4P』とかさ。ってか、それよりもっと凄いことも言ってたんだぜ」
「な、何を言ってた?」
「『しげる、愛してる!』って。お前、水木のことが好きなのか?そういう趣味だったのか?」
「えっ!?」
ふと見るとしげるが顔を真っ赤にしてこっちを見ていた。

そんな馬鹿な…。
俺はひとりごちた。
俺が同性愛?
今までそんなこと考えたこともなかった。
普通に女の子のアイドルも好きだし…。
ただ、しげると遊んでいる時、妙に楽しいのも確かだ。
でもそれは親友だからだと思ってた。
まさか…俺、しげるのことを…?
途端に変な動悸がトックントックンした。(こん棒と皮の服)


その時、友人のひとりが大声をあげた。
「おいっ、見ろよ。水木のノートの落書き。これ柘植の顔じゃないか?」
「いっ、いや、それは・・・!」
しげるがひったくるようにそれを隠した。
すっかり教室の中でふたりが好気の的になっているのが分かった。
「モーホーモーホーホモモモモッ」と歌い騒いでる者もいる。
「♪愛しあってるかーい!」
キヨシローの真似をしてふざけてる奴もいる。
と、「何騒いでるんだっ!」と後ろから怒鳴り声が聞こえた。
そこにはあの本宮先生が立っていた。

「先生~、不純同性交遊してる奴らがいます!」
「ギャハハハハハっ!」
誰だ、話を大きくするやつは!?
「おーい水木、柘植! 正直に名乗り出ろよ」ば、馬鹿っ!
「…柘植ぇ、寝不足で授業中に倒れるわ、男同士でいちゃつくわと、どれだけ騒ぎを起こせば気が済むんだ?」
俺は本宮先生に完全に目を付けられたようだ。
しげるの落書きノートは奪い取られ、晒されたページに描かれているのは確かに、俺だ。
幾分か美化されているようだが…。
「水木、皆の言ってることは事実なのか?」
しげるは真っ赤な顔でうつむいたまま、否定もしない。
「2人とも、あとで体育教官室に来い。話はそこで聞く」
……ん?
なんかこのくだり、さっきの夢でも出てきたような……。(オポムチャン)


なんだかんだ囃し立てられ続けてたのを必至で耳を塞ぎ、ようやく放課後になった。
憂鬱だけど、本宮先生のいる体育教官室にいかなければならない。
なんとなくしげるとふたりで行くのは恥ずかしいので、俺はしげるに「先、行ってっからあ!」と言って教室を後にした。
体育教官室は学校内でもちょっと特殊な場所にあった。
体育館の横に離れのように小さな掘建て小屋があり、そこが体育教官室なのだ。
普段は滅多に他人が訪れることも無い、いわば本宮先生の第二の自宅みたいなもんだ。
俺も場所は知っていたが、初めて中に入る。
意を決してそこに向かっていると、突如その体育教官室から「先生、僕、無理です!」という声とともにひとりの男子学生が飛び出て来た。
それはジャニーズ系の女子に人気のいわゆるイケメンの、一学年下の嵐君だった。

彼は美形で有名なので俺も顔と名前は知っているが、話をしたことはない。
しかしさっきの彼の声からして教官室で何事かを強いられた様子だから、俺自身のためにも何があったか聞いておかなければ。
あまり良い想像はできないが……。
「え、っと、嵐君かな? 俺も教官室に行くとこなんだけど、何かあったの?」
「…! な、何ですか!? 関係ない人になんて、話せないよ!!」
ダダダダッ…。
行ってしまった。
これで、人に言えないことがあの部屋の中でおこなわれかけていた、ということは間違いなさそうだ……。
でもここで帰れば、あとがもっと怖い。
俺は意を決して、教官室をノックした。
「…本宮先生、柘植です!」
「おう、ちょうど良かった。さっきまでひとり相手してたからな。まぁ入れ」
なななななななな!?
あ、相手って、何の!?
倒れた時に見た夢が甦ってくる。
怯えて立ちすくんでいると、本宮先生が自ら扉を開けた。
すると教官室の中には、またも夢と同じメンツの実習生、内田先生が。
もう駄目だ……。なんて正夢、見ちまったんだろう。膝がガクガク震える。
「柘植くん…だったかしら? どうしたの、随分顔色が悪いわね」
「よ…よよ4P……」
「? 本宮先生、彼も同性愛好のカウンセリングに来たんですね?」
「ああ、内田君。君も一緒に相談に乗ってやってくれ」
「勿論ですわ。…柘植くん、大丈夫よ。私たちは性の悩みのカウンセリングが専門なの」

???
……なんだか思った展開と違うな。
「昼休みに本宮先生から症状を聞いたの。同級生の、水木くんが気になってるんでしょう?」
た、確かに。
寝言とはいえ、俺はしげるに「愛してる!」と叫んだ…らしい。
もしかすると、意識の底ではしげるのことが好きなのかもしれない。
「さっきの嵐だってそうさ。詳しくは言えないが、密かに想ってる男子に告白したい、って相談だよ」
「そしたら彼、まだ早いから待てって本宮先生から言われて、飛び出して行っちゃったの」
なるほど、それで「僕、無理です!」か。
「柘植くん、正直なところ、あなたは水木くんと付き合いたいの?」
「…ぼ、僕は……」
「義春ぅ、俺はずっと、好きだった…」
!!!
開いたままの扉の外に、しげるが立っていた。(オポムチャン)


俺はグルングルンまわる頭をなんとか整理しようと必死だった。
そもそも俺はホモなのか?
だってオナニーする時だって普通にエロなこと考える時だって、対象は女だ。
たおやかなオッパイ、濡れた唇、艶っぽいうなじ、そして・・・。
「ちょ、ちょっと待って!」
俺は咄嗟に叫んでた。
「まぁ落ち着け、柘植。・・・同性愛は今やそんなに異常なことではないんだ」
本宮先生が笑みを浮かべている。
いや・・・え?
待てよ。
もちろんしげるのことは嫌いではないが、俺には好きな女の子だっている。
そもそもしげると変なことをしたいなんて・・・。
と、その時だった。
頭の中にどこからか変な声が聴こえて来た。
(しげるのちんちんおいしいよー)
えっ!?
(しげるのちんちんおいしいよー)
その言葉が何度も頭の中に押し寄せて来た。
俺は一体何を考えているのだ!?
(しげるのちんちんおいしいよー)
(しげるのちんちんおいしいよー)
(しげるのちんちんおいしいよー)
駄目だ!打ち消そうとすればするほどその言葉が俺の頭の中に次々とこだまする。
そして俺は思ってもないのに、こんな言葉が口をついて出てしまった。
「しげる、ありがと。俺も好きだよ!」

「柘植、ようやく自分の気持ちに正直になれたな。おめでとう!」
先生2人が拍手して、俺達を祝福する。
俯きがちに微笑む、しげる。瞳にはかすかに、うれし涙が滲んでいるようだ。
な…なんでこんな展開に?
そして頭の中をものすごい勢いで駆け巡る、このフレーズは何なんだっ!!
おいしいのか!? そんなにおいしいものなのかっ!?
連日ラジオで寝不足の俺ののーみそは、とうとう故障しちまったのだろーか…。

待てよ…… ラ…ジ……オ?
そうだ、最近俺がはまっている、深夜放送の内容とは……。
リスナー投稿のちょっとエッチな相談に、経験豊富な某芸能人がお答えするコーナーだ。
ここしばらくは、男同士の性的体験についての投稿が続いていて、俺も興味本位で聞き耳を立てていたのだ。
確かにあった、「こんなにおいしいものだったなんて…」という投稿が。
こんな内容を聴き続けるうちに、本当に興味が湧いてしまったのか…。

「だが二人とも、焦ってはいかんぞ! なにぶん未成年の不純同性交遊は黙認できんからな!! ハッハッハ!!!」
「もぅ、本宮先生ったら、茶化さないであげて下さい! そうそう2人とも、クラスの皆にはどのみちばれるんだから、時間をかけて理解してもらった方がいいわ。2人でよく話し合ってから、カミングアウトするタイミングを計るのよ」
寸止めを食らった気分で、脳内のリフレインは急速に止んでいった。
「うわ、こんな時間だ。よ、義春! あとで、電話するよ! …大好きだ!!」
今日はしげるの塾の日だ。恥ずかしいセリフを受けて真っ赤な俺を残して、しげるは教官室から駆け出ていった。

帰り道。頭の声はまだかすかに繰り返されている。
でも、やっぱり俺は女の裸が好きだ。
こんな半端な気持ちで、無意識にとはいえしげるに好きと告げてしまって良かったのだろうか…?
と、後ろから、コツコツとヒールの音が近づいてくる。
「まだ悩んでるみたいね、柘植くん」
「内田…先生」
「保健室の杉浦先生も心配してたわよ。もちろん、秘密にしてあげたけど」
「先生……俺、どうすれば…」
「簡単よ。いきなり男の子じゃ抵抗があるでしょう?」
「!? ど、どういうことですか?」
「男の子と女の子の架け橋。そう、私が練習台になってあ・げ・る」
正夢また来た!!!
やはり内田先生は男だったのか!
「今日は色々モヤモヤしたでしょう? 私の部屋に寄って。ぜぇんぶスッキリさせてあげるわ…」
い…色っぽい。
こんなに美人の先生のおちんちんなら、お、お、おいしいかも……。
俺の心は、いよいよ本格的に男の子同士に傾きはじめた。(オポムチャン)


「なーんて言うと思ってるの、バーカ!」
「えっ!?」
「あたしは同性愛は認めるけど、自分にはそういう趣味ないから」
「は、はぁ・・・」
「だいたい私は女性よ、興味ないんでしょ!?」
「あ、あ? (そうか・・・内田先生は男だったというのは俺の夢か)」
「君が同性愛じゃないなら、ちょっと可愛いと思ってたけどね、柘植君!」
「・・・えっ?」
「だから君がそういう趣味だって分かって、ちょっと寂しかったんだぞっ」
内田先生はふざけた口調で言っているが、目はマジだった。
(ちょ、ちょっと待てよ。そしたら俺、内田先生とも付き合える可能性があったってこと!?
内田先生の胸、お尻、そして・・・うっ、わーっ!)
「ああああ、あの僕、あのー、本当にホモ・・・同性愛かどうか自分でも分からないんです」
「?・・・何言ってるの。さっき水木君にOKしてたじゃないの」
「あれは・・・物のはずみで・・・」
「物のはずみ!?あんな大事なことを? 柘植君あなた何を考えてるの?」
「いや、それが僕にも分からないんです。だって内田先生・・・いや、僕、女性も好きだし」
「え、何、それじゃバイセクシュアルということ?つまり男も女も好きだという」
「ええと、そう・・・なのかな?」
「ちょっと男だったらハッキリなさいっ!」
「本当に分からないんです。自分の気持ちが」
「そう・・・もしかしたら思春期にはあることかも知れないわね。分かった。もうちょっと詳しい人に相談してみよっか。私、知ってる人いるから」
「え、は、はい。」
「ただその人ちょっとだけ問題があるんだけどね。どうする?自分の心理状態を知ってみたい?」
「それはもう。自分でもちょっと答えを出したいんで是非お願いします!」
「分かったわ。でもその人にあっても驚かないでね。あと、これ、学校には内緒だから」
「・・・? は、はい」
「良し。じゃあ近日中に連絡するから。くれぐれもそれまでは水木君とも軽卒な行動は慎むように」
「分かりました」
「じゃ、ま、あまり考え過ぎないように!」
そう言うと内田先生は颯爽と帰っていった。

それから数日後。内田先生から声をかけられた。
「その人と連絡が取れたので、今日放課後都合どう?」
俺はともかく自分の状態を一刻も早く知りたかったのでもちろんOKした。
先生が連れて行ってくれたのは学区域から少し離れた河川敷だった。
その河川敷の端っこにトタンで出来た掘建て小屋があった。
家のまわりには得体の知れないタイヤとか自転車や何故かキティちゃんのヌイグルミとかがベタベタ貼り付けてあった。
何か変な臭いもしてた。
どう考えてもキチガイ屋敷だった。
と、そこからボロボロの作業着を着て頭はザンギリ、数本しかない歯をニタニタ見せながら出て来たおじさんがいた。
風貌は正直、どう見ても浮浪者。
それがどうやらそこの主で先生の知り合いらしかった。(コマンタレブー)


「あ、あの、こんにちは。僕・・・」
「詳しいことは中でな。へへへっ。さ、入った入った」
正直こんな浮浪者のキチガイ屋敷に入りたくなかったが断るわけにもいかない。
内田先生がスタスタ中に入っていくので、俺も後に続いた。
すると中も異空間だった。
もう40年くらい前の歌手のポスターがそこかしこに貼ってあった。
麻丘めぐみ、浅田美代子、桜田淳子。
女性アイドルだけではない。男性アイドルもこっちを見て微笑んでいた。
城みちる、太川陽介、西城秀樹。
正直俺はよく知らない昔のアイドルだったが、ポスターにいちいち奇妙な筆遣いで名前が書かれており、その名前は聞いたことがある程度だったが。
と、内田先生が口を開いた。
「実は・・・この人、私の叔父なの」
えっ、と思わず声が出そうになった。内田先生の可憐な雰囲気とはあまりに違ったので。
「でもいろいろあって、ここのことは学校には内緒ね。いい?」
もちろん叔父さんとはいえ先生がこんなとこに出入りしてるのが分かったら、問題になるかもしれない。
「は、はい、分かりました。・・・で、ここと僕はなんの関係があるんでしょう・・・か」
疑問を素直にぶつけてみた。
「実はこの叔父さんもバイセクシュアルなの」
成る程。男も女も好きなのはポスターを見ても分かる。
つまりバイセクシュアルの先輩ということか・・・。
でも若いアイドルばかりなのが、俺はちょっと気になった。

ある日、例の叔父さんに呼ばれてある店に行くことになった。
「あ、そうそう、名前言ってなかったね。わし、草太郎。よろしくな。お、もう着いたよ。」
「あの〜、これが例のお店なの?」
店とは名ばかりで、どこから見ても掘建て小屋だ。
「さあ、入った入った。」
俺は疑念を抱いたまま、店に入っていった。

「あら〜、先生。お久しぶりね。」
「この人、やす子ちゃん。」
「やす子よん。ここで働いている女装家よ。よろしくね。」
髪型は三つ編みのおさげで、ひげ剃り跡がやたら濃い人だ。
「この子誰?可愛いじゃないの。」
う、うわ、気持ち悪い!
「いや〜ん、私のこと怖い?そこが可愛いわ〜。」

奥へ入っていくと、得体の知れない人々があちこちの席に陣取っていた。
どう見ても整形サイボーグとしか思えない美女
Tバックを穿いたイケメン
メイドさんの格好をしたおじいさん
等々・・・
俺はたまらず逃げ出したくなった。

「先生!先生じゃないっすか。ささ、ここへ座って。」
「あら?お連れさん?可愛いじゃないの?」
あっという間に俺たちは囲まれてしまった。
草太郎さんは、彼らの前で話を切り出した。
「実はね、この子のことなんだけどさ、自分がバイセクシュアルじゃないかって悩んでいるんだよ。」
メイドじいさんが驚いた様子で言った。
「あら?そうなの?でも、いいじゃない、バイセクシュアル。わしらの仲間が増えてむしろ嬉しいよ。」
「ところで先生、今日お披露目の若い子がいるんだけど・・・」
Tバックイケメンが連れてきたのは・・・。 (ちちぼう)


「あ、嵐君?」
「あ、先輩・・・何でここに・・・」
「いや、ちょっと・・・君こそ何で・・・」
「僕、ここでバイトすることになったんです」
「バイト?」
と、メイドじいさんが口を挟んだ。
「わしらも年寄りが多くてな。この世界に興味のある若い子を探していたんじゃよ」
「・・・。あのう、基本的な質問ですが」
「なんじゃ?」
「ここはどういう店なんですか?」
「うむ。まあ見ての通り女装している者やホモセクシュアル、レズビアンなど、要するに性のマイノリティが集まるサロンの様なものじゃよ」
サロン、と呼ぶにはおこがましいほど古い掘建て小屋のスナックのような場所だが。
「そして性に悩む者の相談所でもある」
ははあ、叔父さんがここに俺を連れて来た意味がようやく分かった。
俺もまだバイセクシュアルと決まったわけではないが、何かしら異常な性癖があるのは自覚していた。
そうか、確かにここでいろんな人に話を聞いてもらえば自分の状態が少しは分かるかもしれない。
と、その時だ。
「大変よ〜!」
やす子ちゃんが大声を出した。
「今、知り合いからの電話で、二輪様がここにいらっしゃるって」
「まぁ、二輪様が!」
皆、一様に興奮し初めている様子が分かった。
「ええと、二輪様って誰ですか?」
すると嵐君をはじめみんな一斉にこちらを振り返り、シラケた顔をした。
「二輪様を知らないの?本当に初心者なのねえ。二輪宏明。この世界では神様みたいな人よ。・・・あっ、そうだ。あんた相談に乗ってもらいなさいよ。こんなチャンス滅多にないわよ」
「二輪様・・・」
と、その時だ。車が店の前に急停車する音がした。
外に出てみると、なんとも場所に不釣り合いなリムジンがそこに停まっていた。

「皆さん、御機嫌よう」
低くて少ししゃがれた声が響く。
「二輪様!」「二輪様だわ!」「こんな小汚いところに!」「二輪様、ご機嫌麗しゅう!!」「…二…輪……さま…」
リムジンから真っ黄色の長い髪をなびかせてその人が登場すると、辺りの連中は大騒ぎだ。感動して失神している者までいる。
それほどまでに、この性別不明の神秘的な人はこの世界のカリスマ的存在なのだろう。
「私の友人からこの場所の噂を聞いて参じたの。…まぁ、素敵な方々ばかり」
「に、二輪様、もったいないお言葉です!」
草太郎さんまで恐縮している。いつもの濁ったような瞳が、いまやキラキラだ。
「私が今日ここへ来たのは他でもないわ、若くして私たちと同じ悩みを抱えてる方がいるって聞いて」
嵐君のことだろうか。
思った通り、彼はトレイを置くと二輪様に駆け寄り、ひざまずいた。
「二輪様、僕は好きな同級生の男の子に告白して振られてしまったんです…。もう、どうしていいのかわからなくなって」
「あなたの本気の愛を受け止めるだけの成熟した魂を持った若い方はそうそういないわ。今はもっと自分を磨く時期、きっと磨かれたあなたに寄り添う人が現れるわ。その日を待ちなさい」
嵐君は目を潤ませて頷いている。なんの変哲もない慰めだが、この人が言うと妙に説得力がある。不思議な人だ。
二輪様の視線がこちらに向く。
「…あなたも悩んでるようね。私に話してごらんなさい」
えっ? なんで初対面なのにわかるんだ?
唖然としていると、やす子ちゃんに脇腹をヒジでツンツンされた。
「ばっか! 二輪様にはそんなことお見通しなのよ! さっきも言ったでしょ、このチャンスを逃がしちゃ次は無いわよっ!!」
「遠慮なくお話しなさい。私の若い頃にはこんな悩みなんて誰にも相談できなくって、随分辛い思いをしたものよ。私はそんな若い子たちを一人でも助けてあげたいの」
この人は本気で俺の迷いを解こうとしてくれているようだ。
周りがみんな初対面の性的マイノリティー集団、という異常なシチュエーションでの告白は恥ずかしい、というよりむしろ勇気が湧いてきた。俺は思い切って今の自分の状態を打ち明けた。

「ぼ、僕は今まで、フツーに女の子のことが好きだと思ってたんです。でもある日、気の合う男友達からエッチなことをされる夢を見たあとに、そいつから好きだと告白されたんです。その瞬間から頭の中に、そいつのチンチンがおいしいっていう声が繰り返し響くようになって、わけのわからないうちにそいつの告白にOKしちゃって、でもそのあと冷静になって考えたらやっぱり女の人の裸も大好きで、その、ど、童貞なのでエッチなこともしたくて、だけどどっちにしたらいいのかって、いや、女の人とはそんなチャンスはまったく無いんですけど」

我ながらまったくわけのわからない説明だ。しかし、現状はほぼ伝えきれたのではないだろうか。
気が付くと、あれだけ二輪様登場で騒がしかった店内は水を打ったように静まり返っている。
……この集団をしても、俺の精神はアブノーマルだということなのか……?
沈黙の後、二輪様はしずかに口を開いた。
「あなた、今すぐ私と一緒においでなさい。早くしないと、取り返しのつかないことになるわ」(オポムチャン)


何がなんだか分からないうちに俺は車に乗せられていた。
と、二輪様がつぶやく様に俺に言った。
「あなた・・・『チンチンがおいしい』って言ったわよね」
「ええ・・・あっ、下品な言葉でご免なさい!」
と二輪様はシガーケースから煙草を一本取り出し「ちょっと悪いけど一本吸わせてもらうわ」と紫煙をフーッとくゆらせながら言った。
「そうじゃないのよ。あなた、その言葉が繰り返し頭の中で響いた、って言ったわよね」
「?・・・は、はい」
すると二輪様はクッとこっちを向いて、
「それ、あなたの意思じゃないかもしれないわ」
と低い声で言った。
「ど、どういうことですか・・・」
「実は最近その例が多いのよ」
「え、チンチンがこだますることがですか?」
「・・・そう。あなた、サブリミナル効果って御存知?」
「は、はあ名前だけはなんとなく聞き覚えが・・・」
「まぁ潜在意識に訴えかける手法ね。テレビや映画では禁じられてるんだけどどうやらそれが行われてる畏れがあるのよ」
「は、はあ・・・」
「あなた、もしかして最近『からちゃん』ってテレビドラマ見てない?」
「あ、あ、見てます。朝出かける前にちょうどやってるので。面白いです!」
「その中に盛り込まれてる可能性があるの。『チンチンがおいしい』と言っている人のほとんどがその番組を見てるのよ」
「えっ」
「つまりもしかしたらその効果で『チンチンがおいしい』・・・イコール自分がホモだと感じてしまってる人が多いみたいなのよ」
「そうなんですか、じゃ僕は変態じゃないかもしれないんですか!」
「・・・変態」
「あ、あ、あ、いや。そういう意味じゃなくて。何と言ったらいいか・・・」
「ふふふ、変態でいいわよ。でもその可能性もあるの」
その時、車はどこかに到着したようだった。

「さ、着いたわよ。降りてらっしゃい。」
俺の目の前に見えるのは、王侯貴族のお城のような煌びやかな建物だった。
「ここが私の家よ。遠慮なさらずにお入りなさい。」
「は、はい。お邪魔します。」
「しげるちゃん、この子を例の部屋に連れてってやって。」
「はい、ただいま・・・わっ!義春じゃないか!」
「しげる、何でお前がここにいるんだ?」
「あら?あなた、しげるちゃんのお知り合い?まあ、それなら好都合ね。」

俺が案内された部屋は、異様としか思えない空間だった。
筋骨隆々の男性の剥製としか思えない置物  
女性のおっぱいらしき物が陳列されている壁
豪華なシャンデリアに女体の形をしたソファー
まるで変態のための部屋としか言いようが無い。
女体のソファーに二輪様がゆったりと座り、その横にしげるが二輪様に寄り添うように座った。
「向かいのいすに腰掛けなさいな。」
尻の形をしたオブジェが椅子か・・・。
とにかく俺は尻の椅子に座った。

「もうそろそろお客様がもう1人くるわ。しげるちゃん、迎えに行ってちょうだい。」
しげるが部屋を出ると、俺は二輪様に訪ねてみた。
「あ、あの・・・しげるはここで何をしているのでしょうか?」
「あら、あの子、私のボーイフレンドよ。おほほほほ。」
俺は唖然とするだけだった。
「二輪様、先生がお見えになりました。」
しげるが連れてきたのは・・・草太郎さんだった。(ちちぼう)


草太郎さんは相変わらず恐縮していた。
「すみません、私ごときが二輪様のお宅にお邪魔出来るなんて」
「何言ってんの。あなたハーバードで心理療法勉強してたんでしょ」
「へへへっ、まぁ昔の話しで・・・」
ゲゲッ。草太郎さんをただの浮浪者の様な者だと思ってたがそんな経歴があっただなんて。人は見かけによらぬ。
と、あまり詳細を知らない草太郎に二輪様がしばし事情を説明した。
「そうでしたか。そりゃその番組に何かありますね」
「そうなのよ、そういえばその番組の昼の回がそろそろ始まるわ。ちょっと皆で見てみましょうよ」
「あ、はいっ。そういたしましょう」
二輪様のリビングにある巨大なスクリーンに映し出される『からちゃん』を全員で鑑賞することとなった。

からちゃんは朝のドラマにお決まりの地方を舞台に女性主人公が活躍するもので、群馬県のからっ風をテーマに女の子がかかあ殿下を目指すというストーリーだった。
「何の変哲もないドラマねぇ」
(ちんちんおいしいよー)
いや、これは、かなりの珍ドラマだろう。
このドラマを観始めると頭の中に「ちんちんおいしいよー」と(ちんちんおいしいよー)流れ出したのだ。

不思議な(ちんちんがおいしいよー)ことに周りはこのことに気づいてないようだ。
「皆さん!僕の頭の中にちんちんおいしいよーという言葉が流れ出しました!」
「おかしいわねぇ。なんとも(ちんちん)ない(おいしい)わ(よ)」
なんということだ二輪さんの言葉も(ちんちんおいしいよー)によって上手く聞き取れない。
「彼にだけ(ちんちん)反応があるってことは、他の番組にも仕掛けが(おいしいよー)あるのだな」
と草太郎さんが言う。
「どういう(ちんちんおいしいよー)ことですか?」
としげる。
「例えば、(ちんちん)ヒーローものとこのからちゃん(おいしいよー)に仕掛けがしてあって、その両方を観たものにしかちんちんおいしいよーは(ちんちんおいしいよー)発症しないのだろう」
「どうすればっ。うわっ」 (ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
「ううっ!ちんちんおいしいよーがペースアップを」
「可哀相に、このままでは帰りに(ちんちん)電車にも乗れまい」

案の定意識を失いそうになる。草太郎さんが、むしろこのままいるよりも、一度意識を失ったほうがよいといったのが(ちんちんおいしいよー)の中で聞こえた。
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)

おそらく、原因の一つはあの深夜放送だ。

(ちんちんおいしいよー)(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)

そしてからちゃん。

(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)

この二つを調べれば。

(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)

何かが分かるかもしれない。

(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)

こうして意識はちんちんおいしいよーの海へ沈んでいった。

(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)

ふと(ちんちんおいしいよー)で目覚めると、二輪様の車の中だ。

(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)


まだ頭の中がうるさい。

(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)

再び寝る。

(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)

また眼を覚ますとしげるが「大丈夫(ちんちんおいしいよー)、まだしばらく着かないから寝たほうがいい」
と言ってくれた。

(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)

(ちんちんおいしいよー)
のリズムになれるととてもよく眠れる。

(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)


ぐっすり。

(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー)
(ちんちんおいしいよー) (多摩川)


次に気がついた時、俺はどこかのベッドに寝かせられていた。
もう変な言葉は聞こえてなかった。
ん・・・ここは病院なのか?
何の装飾も無い無機質な白い壁と、手には何やらチューブが付いているようだが、首がうまく回せずに全体を把握することが出来ない。
と、ドアをノックする音も無く複数の人が部屋に入って来たようだ。
「なんとか生体反応が戻ったみたいだ」
「柘植君、聞こえるかい」
その声はどうやら草太郎さんのようだった。
「僕は・・・」
「まぁ心配することない。もう大丈夫だから」
「ここは・・・」
「そんなことより君のコントロールは解けたよ」
「コントロール?僕はコントロールされてたんですか?」
「もう少しで危ないところだったんだ」
すると別の男も話しかけて来た。
「実はこれは『日本人総ホモ化計画』の一環だったんだ」
「えっ!?」
「日本人の男という男をホモにする計画の序章だったんだ」
「そ、それは何の為に出すか?」
「人口抑制だ。ホモが増えれば当然さらなる少子化になるからね」
「そんなこと、誰が・・・」
すると皆、一瞬黙ってしまった。
そしてようやく草太郎さんが重い口を開いた。
「それ以上は突っ込まない方がいい。思っている以上に大きな組織だから」
「大きな組織・・・」
その時、誰かの携帯が鳴った。

「柘植くん、君の電話みたいだな」
ほんとだ、俺のカバンの中から着信音が。草太郎さんがベッドの俺に携帯を手渡してくれた。
着信はしげるからだった。
「もしもし、しげるか?」
「義春ぅぅぅ!! 意識が戻ったんだな! よかったぁ!!」
しげるは何度も電話してくれていたようだ。友達想いのいい奴だ。
・・・友達・・・?
何だか、もっと濃密な関係になりかけたような気がするが、まだ頭がぼんやりして思い出せない。
「コントロールが解けた、ってことは・・・ ふふ、せっかく勇気出したのになぁ・・・」
「・・・どうしたしげる、なんか涙声だぞ?」
「へへ・・・何でもねえよ! 友達・・・友達がずっと目を覚まさなかったんだぜ。うれし涙だよぉ」
「ありがと。って、よく考えたら、学校は!? か、母ちゃんも捜索願いとか出してんじゃ・・・」
「その辺は、草太郎さんから内田先生にうまいこと説明してもらうように根回ししてもらってる。心配するなよ」
「そ、そうか。よかったぁ」
男の一人が割って入った。「柘植くん、長くここにいては危ない。意識も戻ったことだからそろそろ家の近くまで送ろう」
日本を狙った『総ホモ計画』を企てた、大きな組織・・・
確かに、被害者とはいえ平凡ないち高校生である俺がこれ以上深く関わらない方がいい、ってことは明らかだ。
「しげる、また連絡するよ」
「わかった。気を付けてな!」
俺と草太郎さんは、河川敷のキチガイ屋敷まで送ってもらった。
そこで待っていたのは、内田先生だった。(オポムチャン)


「おめでとう、柘植君」
「なんだかよくわからないけど、ありがとうございます」
「これでこれからは普通の男の子ね。・・・女の子は好き?」
「はい、大好きです。・・・もちろん内田先生も!」
「・・・馬鹿!」

その頃、イシカラコウジというゲスな奴が遥か離れた土地で小さく呟いていた。
「クソがっ。オカマアイランド計画ひとつ失敗でゲス。でもこんなことじゃあっしは負けないでゴンスよー!」
その声はとてもウイスパーだったはずなのに、物語を超えてどこまでもどこまでもこだましていた。




     ー了ー


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