石川浩司のぶらりしりとり商店街 新三河島篇(BUBKA)



 実は、東京というのは、案外に狭い。例えば、地方に行けば「隣の町」なんてえのは10kmぐらい離れてても充分「隣り」だが、総武線で新宿から西に10km行ったら、大久保・東中野・中野・高円寺・阿佐ヶ谷・荻窪を越えて、西荻窪でやっと10kmである。次の駅は武蔵野市の吉祥寺だから、ぎりぎり23区。町としては7つもあるのである。ってなことを身を持って知った、今回の商店街めぐりでありやんしたー。

 新三河島。初めて降りる駅だ。駅前にはかわいらしい「こばと商店会」が。
「こういうかわいい商店街が、いいんだよな」
 とニコニコしながら歩いていくと、すぐに商店街は終わり。
「あれっ!? えーと、まだ何も見つけてないんすけど・・・」
 と思ってふと上を見上げると、なんと「三河島駅」が。
 がびびび~ん。新三河島、もうおしまいっすか? 
 どーしよーかー、と思案にくれながらも、編集H、イラスト山中の3人で歩きながら、
「でも、なんか、面白そうな店見つけなくちゃ」
 と言いながら、ふと上を見上げると、なんと「日暮里駅」が。がびびび~ん。びよよよ~ん。ふにゃにゃにゃ~ん。もう、全然新三河島でもなんでもありましぇーん。だって、まだ正味15分ぐらいしか歩いてないぞーい。でも、戻るのも癪なので、
「えーい、『新三河島』ということで、日暮里を探索じゃーい!」
 とわけわかんないことを叫ぶ。

 さて、日暮里といえば、知る人ぞ知る「駄菓子問屋街」がある。現在は20軒ほどになってしまったが、最盛期は200軒もがひしめいていたという。
 で、唐突だが、我が家にも駄菓子屋がある。いや、正確に言えば営業はしていないから、「駄菓子屋コーナー」があるのだ。
 どーいうことかというと、まだ「たま」がアマチュアだった頃、地方にツアーに行き、その頃はもちろんホテルなんて泊まる金ないから、友達の友達、みたいなところを点々と泊まり歩いてツアーをしていたのだが、確か山口県あたりでお世話になった家で、
「うちは昔、駄菓子屋をやっていて、今は廃業しちゃったんだけど、倉庫に古い駄菓子玩具が残っている」
 というのを聞き、でかい箱ごと買い占めて、東京に戻りフリーマーケットでプレミアをつけて売り、ちょっとだけ儲けたのだ。ウッシッシ。そして、その残りを俺が貰い受け、それからまた旅に出た時に買い足したりして、家の中に駄菓子屋を再現したのだ。
 なんせ、俺の子供の頃の夢は「駄菓子屋になる」だったからな。少ない小遣いで、いつも、
「あれも買いたい、これも買いたい、全部買いたい」
 と思った経験は誰にでもあるだろーが、俺は本当にそれを果たしてしまったのだ。
 だから今でも、時々、物置の中の裸電球ひとつの「駄菓子屋」にこもって、子供の頃果たせなかった夢に、浸るのだ。・・・俺って、馬鹿!? 

 次回の打ち合わせの為、駅前の喫茶店へ。編集Hが、
「この『アメリカンチョコセーキ』って、冷たいんですか?」
 と聞くと、ウエイトレスのおばちゃんは、
「さぁねー」
 と、全く自分のところのメニューを把握していない。で、持ってきたと思ったら、
「おいしそうねー」
「あたしもそのクリームのとこ、食べたいわー」
 って、客のを欲しがっちゃ、いかーん! そして、
「トイレどこですか?」
 と山中さんが聞くと、
「ちょっと待ってて!」
 とトイレに駆け込み、
「よしっ! チェックしてきたから大丈夫。どこ触っても、綺麗だから!」
 って自慢されても・・・。別に便器の中とかに、わざわざ手つっこんで触って「綺麗ですねー」なんて趣味はないんじゃ~い! ・・・って、いや、待てよっ!?、でも俺は山中さんのことを昔から知っていたわけじゃないから、もしかしてそんな知られざる性癖が彼女に!? 
 そしてそれをおばちゃんは長年の勘で一瞬にして見抜いて、(この子は、トイレのいろんな場所を触るのが、何よりもの趣味だわ)と思って「どこを触ってもいい」と言ったのだろーか!? うーん。まだまだ俺は女性の奥深さを知らない若輩者だな・・・。
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