石川浩司のぶらりしりとり商店街 湯島篇(BUBKA)



 前回の北千住(ちなみに、「きたせんじゅう」ではなく「きたせんじゅ」と読む)から、今回、本来ならば、小さい『ゅ』で始めなければならないが、そんな駅があるわきゃない。ってことで「ここは、男らしく、でかい「ゆ」で行こうじゃないか、ワッハッハー」ということで、湯島。
 ところが、駅を一歩出て見てガガーン! ガガーリーン! マーガリーン! ということで、なんと商店街がないっ!! 小さい「ゅ」の事は許してもらったとしても、商店街自体がないのでは、この連載のタイトルにもかかわる。ということで、急遽スタッフで緊急会議が持たれた。10秒後、結論が出た。
「ど~せ、タイトルなんて、ろくに誰も読んじゃいねーだろー」
「商店街はないけど、店はそこそこあるし、行くっぺ、行くっぺ!」
 ・・・無事解決!? 

 この湯島という町は、文京区に属するのだが、ちょっと北を向くと「台東区」南を向くと「千代田区」というビミョーな位置にある。さてそのビミョーな湯島だが、歩き始めてすぐ『小さい「ゅ」』『商店街なし』に続く、三大困惑にぶち当たった。それは、この日の曜日が商店会の一斉定休日だったらしく「商店は90%、やっておりまへ~ん」だ。うう~、神様はどこまで俺達に試練を与えれば気が済むのじゃ~。気になる店はあるというのに。
 まず、駅近くの「コーヒーとカレーの店アサクラ」コーヒーとカレーの店、と大書してあるのに、店の前に行くと「100円居酒屋」の貼り紙が。100円居酒屋? そ、それは安い。「手料理全品100円」「飲み物全品100円」は凄い。まさか、つまみは「枝豆3粒」とか「うまい棒」とか「イカのイボのところだけ」とかじゃないだろーな。いや、でもつまみは工夫で何とかなるとしても「飲み物」は、ビール、いや発泡酒でも100円では買えない。ということは・・・「ビール(徳利)」とかで、お猪口でチョコチョコ飲ませるのか? うーむ、気になる。今度、夜に来てみよう~っと。
 それから湯島天神へ。ここは受験の神様。沢山の絵馬が吊り下げられていたが、中でひとつ「じゆうけんうかりますよおに」と幼稚園児のようにたどたどしく書かれた絵馬があり、「こいつだけは、絶対受からないな!」と思ったら、本当に幼稚園児が、小学校を受験する願いの絵馬だった。子供達も大変なのね~。
 さて、湯島天神を抜けたら、なんと町名はすでに「本郷」だ。もう今日は脱線続きだ、「湯島」の名を語って、本郷へと突入、トテチテター!「歯磨き教室 レッスン料3回3000円」は安いのか高いのか?
 「宇宙金魚のふる里 金魚坂」
 そういえば、この前日、俺はロックフェスの為北海道に行っていて、そこで「宇宙温泉」という銭湯に入った。よくよく宇宙に縁のある日々だ。ちなみに「宇宙温泉」は、中に入ると無重力の部屋があって、ピョンピョン跳ねながら温泉に浸かれる・・・わけではもちろんなく、単に宇宙飛行士の毛利さんの出身地にある温泉、というだけの意味だった・・・。
 でも「宇宙金魚」とは!? 好奇心満々でお店の人に聞く。
「宇宙金魚って、どれですか!?」
 と、お店の人は目配せして、言いづらそうに、
「いや・・・ただ、昔、金魚を宇宙に連れていったことがある、というだけで・・・」
「そういう金魚がいるわけではないのよ・・・」
 とのお答え。特にここの金魚を使った、ということでもないらしい。それならば、宇宙船に乗せていれば「宇宙パンツ」でも「宇宙便器」でも「宇宙鼻紙」でも、何でも言えるでないけー!! と思ったが、ここで事を荒立ててもしょーがないので、さらに歩く。と、天下の東大赤門がっ!! ああっ、俺に何の関係もないっ!!
 そしてその前にはなんと「落第横町」がっ!!
 きっと受験に失敗した学生が傷心でうつろに歩くのだろう。
 まず、落第生は入り口付近の中華料理屋、レストラン、そば屋でやけ食いをするのだろう。次に古本屋が現れるので、ここで参考書をクヌヤロと叩き売り、次に現れる飲み屋で大虎になり、もうわけわかんなくなって、肉屋で生肉にジャブを繰り出し、床屋で頭をモヒカンにし、遂には米屋で生米の中にザブンと全身を踊らせ、おいおいと泣くのだろう。しかし・・・うまいこと出来てる。その横町の終点には、ちゃあんと、予備校の入り口が。
「へいっ、御一名様、御入学!」
 やはり日本人の商魂は、たくましかった・・・。

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