石川浩司のぶらりしりとり商店街 北千住篇(BUBKA)



 さて、今回の北千住は、20年ほど前、「甚六屋」というライブハウスがあり、月に2~3度は通って、弾き語りなどをしていたところ。(俺も太鼓じゃなくてギターだったのだ!)
 元たまのメンバーとも、ここで知り合ったりしたが、残念ながら大分前に閉店。久しぶりにその西口を駅から覗いて見ると、再開発され、全く昔の面影が残っていなかった。ということで我ら一行は、まだ再開発の手が伸びていない東口へと降り立った。
 まず、俺達(俺、編集H、イラスト山中)は駅前の「サンローゼ」という喫茶店でゆったりとお茶を飲んだりした。ここは都内では数少なくなった「マンモス喫茶」で、店内には優雅に噴水などもあり、いい感じ。昔はこういう「マンモス喫茶」が結構あり、新宿にあった「六本木」(まぎらわしい!)という喫茶店にはよく通った。巨大だから、何時間いてもいいし、そして何より「トースト食べ放題」だったのだ。店内を、トーストを片手に持った「トーストガール」がぐるぐる歩き回っており、いくら食べても良かったので、コーヒーだけ頼んで半日ぐらいいて、3食トーストですませたこともあった。
 ってな思い出話をしながら、いよいよ商店街に突入。「ビックリヤ」という食堂があるので、何をビックリさせてくれるのかと思ったら、何の変哲もない食堂でビックリしたり、「和食ときわ」はアルバイトを募集しているのだが、「男性18才 女性45才」というヒジョーに狭い募集だったり、弁当屋「北千住フーズ」では「当店のベストセラー」が貼りだしてあるも、1位から5位まで全部「のり弁当」の具違いだったりと、いつものようにほのぼのと歩いていた。
 さて、ここからは書くのが少々辛い。
 しかし書かねばならぬ! これぞ因果な仕事を持った宿命だぁ。
 実は、何故か編集Hの顔が今ひとつ冴えない。聞くと、つい数日前にひったくりにあい、10万円以上の現金や領収書、免許、カードなど全て取られたと言う。しかもその数日前にも別に落ち込むこともあり、今、ボロボロだという。と、そこにちょうど現れたのは「占い」の看板。
 「ここはひとつ、運が向いてくることを教えてもらおうや」
 と入ってみた。中は古い美容室と兼用しているらしく、といっても美容室の方は開店休業状態の感じで、バーサンが出てきて、
 「占い出来ますか?」
 と聞くと、
 「いいよいいよ」
 の声。81才とのことだ。でもその割にはお肌がつやつやしている。
 「えっ、でもお若いですね」
 とお世辞を言うと、
 「皺、ないでしょ。若い頃、男に顔に硫酸ぶっかけられたから、皺、出来ないんだよね」
 ・・・なかなかハードな人生を送ってきた人のようだ。
 で、早速、見てもらうことに。編集Hが、
 「最近、ちょっと悪いことが続きまして・・・」
 と言うと、生年月日や名前を聞いて、しばらく、何か本を見たり、計算したりした後、
 「アチャー、これは駄目だわ。天誅殺だわ」
 の声。
 「今年は最悪。来年も最悪」
 と続ける。
 「えっ!? じゃあ、さ来年まで待って、がんばればいいんですか!?」
 と聞くと、
 「がんばったって・・・」
 と冷たく言い放つ。
 「えっ、じゃ結婚とかは・・・」
 「結婚!? 駄目駄目駄目!」
 「じゃあ、結婚しない方がいいんですか」
 「そう!」
 「じゃ、せめて子供だけでも」
 「子供!? いい子生まれないよ。麻薬とかやる子生んじゃうよ」
 「・・・・。」
 「あんたほど可哀相な星の元に生まれた人もいないね」
 ちょ、ちょっと待った~。いくらなんでも言い過ぎじゃ~。さすがに編集Hの顔も強ばってきているぞ。
 俺もフォローのつもりで、
 「何か、これをやったらいい、ってことないですかねー」
 と聞くと、
 「ないない。せいぜい仕事を一所懸命やることだね」
 って、これ自体が実は仕事なんすが・・・。あまりに散々な結果だったが、料金が格安だったので、
 「石川さんや、山中さんも見てもらえば~」
 という編集Hの言葉の裏には、
 「あたしだけ地獄をみさせられてたまるものかエコエコアザラク」
 光線が充満していた。
 「じゃ、俺は・・・」
 と言うと、
 「結婚は駄目だね!」
 って、
 「あの~もう結婚14年目でそこそこうまくいってるんですけど」
 と言うとバーサンそれには答えず、
 「あんたは、本来女だね」
 と言い切る。確かに噂話好きでまわりから「おばさん体質」と言われることもあるが・・・じゃ、このチンチンは無駄チンチンだったのか・・・。そして山中さん。
 「あらっ!?・・・湖にきれいな花が一本咲いてる」
 と言われる。
 「あんた、人に好かれるね」
 と初めてのお褒めの言葉。と思ったら、
 「あぁ、あんたも結婚出来ないね。というか、ダンナ候補はふたりいるけど、どちらも、ろっくでもない男だから、絶対結婚しちゃ駄目!」
 ということで、結局3人ともいいことなし。とにかくバーサンの最後の言葉は、
 「あんたらは、仕事がんばるしかないんだよ!」
 それは応援なのか、でも、3人とも「家庭持てない」って何かおかしくないか?
 もしやバーサン、硫酸かけられて家庭を持てなかった自分の恨みをさり気なくバラまいてるんじゃ!?
 い、いや、なんでもないです・・・。
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