石川浩司のぶらりしりとり商店街 新高円寺篇(BUBKA)
前回の「銚子」の「し」で今回は新高円寺。実は俺は20代の8年間、たまがデビューする一年程前まで、高円寺の四畳半風呂なしトイレなし鍵なし猫ありのアパートで毎日悶々とした日々を送っていたのだ。新高円寺は家から少し離れていたので、時折しか行ってなかったが、久しぶりに訪れた青春の故郷は、果たしてどう変貌していたのか?
まず驚いたのは、新高円寺から高円寺に向かう「ルック商店街」の大変貌ぶり。ここは元々高円寺駅前の「パル商店街」から続いている商店街なのだが、「パル」の方はアーケードもあり、そこそこ人もいつも出ていたが、「ルック」に入った途端、寂れてきて、なんとなく哀しい場末の商店街、といった風情だったのだ。
ところが、久しぶりに歩いてみると、若者が経営しているらしい、エスニック雑貨店、センスのいい古本屋、リサイクルショップ、自然食品屋、レトロおもちゃ屋など、ニューエイジショップが次々と現れ、活気に満ちていた。おそらく「パル」に比べて家賃等が安く、それに目をつけた若者が続々オープンさせたと思われる。その手の店が好きな人は、是非チェックすべき商店街だ。
ところで、俺達は一軒の古着屋に入った。一着400円程度と、お値段も安い。ところが、どの服を見ても「ちっちゃ」と値札の横に書いてある。俺はハッキリいってLLサイズなので、とても「ちっちゃ」じゃ入らない。むーん、ここは小さい人専門の店なのだなーと思って、イラストレーターの山中さんに
「駄目だよ。ここ、全部ちっちゃいのしか置いてないよ」
と言うと
「・・・石川さん、それ『ちっちゃ』じゃなくて『ちゃちゃ』ですよ。この店の名前ですよ」
と言われた・・・。
それから懐かしい店、新しい店などキョロキョロしているうちに、高円寺に着いてしまった。いつのまにか「取材は空腹で来て、お昼は経費で」が暗黙の了解になっているので、昔時々来ていた懐かしい「丸義食堂」へ。外装はちょっと変わっていたが、中は同じ様だ。ここで当時好物だった「肉の香味焼き定食」をたのむ。編集の林さんともども3人同じメニューで食べていると、林さんが俺の方を見て、
「石川さんって、食べ方うまいですね」
と言う。
そんなこと言われたの初めてで、別に普通にバランスを取りながら食べていたつもりで、ふと林さんの皿を見てみると・・・なんと、彼女はメインの肉だけ全部たいらげてしまっていて、付け合わせのサラダ、味噌汁、漬け物、ご飯までほとんど手つかず。なんじゃそりゃ。
「それは、俺が食い方がうまいんじゃなくて、おのれがヘタ過ぎるんじゃー」
と叫んでしまった。ちなみに味は思ってたよりもイマイチだった。でもそれは味が落ちたというより、いつももっと安い定食屋で食べていて、その店より100円ほど高いこの店には、ちょっとだけ懐があったかい時に来ていたので、当時はもの凄くうまく感じたのかもなー。
そしてペットショップの前でオウムと遊んだりして、さらに散策していると「ストッキング自販機」が。「こんな物、夜中に突然必要になることあるのかねー。あ・・・でもそーいえば、俺の友達に、わざわざ女房に夜になるとストッキング履かせて、それをひきちぎって行為に及ぶと興奮する、っていう奴がいたな」
と言うと、編集のH嬢(突如仮名)が、
「そういう人って結構多いんじゃないかしら・・・」
とポツリ。こっ、こいつ経験有りだなー!!
う~む。人は見かけによらんわい・・・。
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