石川浩司のぶらりしりとり商店街 銚子篇(BUBKA)



 前回の金町の「ち」から、たまにはちょいと遠出してみようや、ということで、港町として有名な千葉の銚子に行くことにした。実は銚子は、1ヶ月ほど前、「たま」でテレビドラマのロケで来たばかりのところだったのだ。ただ、その時は撮影スケジュールが詰まっていたので、とても町をゆっくり見られなかったが、なんかよさそうな雰囲気だったので、今回はここにしてもらった。

 東京から2時間、ちょっぴり旅行気分だ。「ふふふ~ん」と鼻歌も出る雰囲気で到着。しかしその目の前に、いきなり現れたものは・・・

「ぬれてるマンボー」・・・

 おいおい、ここは町のど真ん中だって。しかも真っ昼間から堂々、店先に旗で大書して「ぬれてるマンボー」って!! むむう、ここは、国内最大級の風俗の町だったのかっ!!
 そ、そりゃマンボーは濡れるだろう。それは、医学上、そういう風に出来てるからな。なんにも、間違ってはおらん。いや、むしろ正しいと言って良い。が、直接過ぎなんじゃわいっ!! 日本人ならもう少し間接的表現や、比喩を使うべきじゃろっ!!
 ・・・と思ったのはもちろんただの中年男の俺の妄想で、ここはどうやら一時期ブームになった「ぬれ煎餅」が有名らしく、それをマンボウの形にかわいくオチャメに焼いた物が、この「ぬれてるマンボー」だったのだ。しかし、アイデアを考えた奴は、絶対狙ったな。


 さて、町を歩きだすとプンと匂ってくるのは醤油の匂い。そう、ここは「ヤマサ醤油」と「ヒゲタ醤油」が拮抗する、醤油の町でもあったのだ。香ばしい匂いの中、どこからともなく潮風もやってくる。港町ならではの、町の規模にしてはやけに多いスナック街、古い図書館などを見ながらそぞろ歩いていくと、「飯沼観音」というところが。歩いているおばさんに、
「ご利益があるから、拝んでいきなさい」
 と言われ、
「何のご利益があるんですか?」
 と聞いたら、
「・・・とにかくご利益があるんですっ!」
 と言われたので、あわてて中に入って拝む。すると境内の一角に「銚子再生の為に日本一の五重塔を建立しよう」との立て看が。果たして、税金を大量に使って日本一の五重塔を建てて、町がそんなに栄えるか?
 俺は仕事柄、地方にツアーに行く事も多いのだが、どーも「税金の使い方、間違っとるでー」と思うことが多いんだよなー。例えば人口が5千人しかいない村に、3千人収容のホールを造るとか。この五重塔もそうならないことを願うなー。

 しかし、地方都市というのは、町の面積が広い。商店街がだらだら続いているのだが、その半分はシャッターを降ろしている。2時間以上歩いて、港に出たので「昼飯にすんべ~」ということで、「小松屋」という食堂へ。俺達はせっかくだからと刺身定食を食ったが、メニューの中に「めし味噌汁新香定食 300円」という究極なシンプル定食があった。確かに俺も「味噌汁かけご飯」は結構好きだけど・・・安いし、意外に評判メニューだったりしてな。

 後、港沿いを歩いていると「ミロツ鼻跡」という石碑が。ミロツ? 鼻? 海から大量に鼻が泳いできて、「見ろっ! 鼻!」ということか? ずいぶんとシュールな光景だな。
 さらに歩くと、「ばぁばのわりわり」という旗が至る所にはためいている。「ばぁば」は婆さんのことだろう。では、「わりわり」とは? さらに「藤村ベーカリー」という店で買ったパンは「ぶどうロシア」「ジャムロシア」「ココアロシア」だった。何故ロシア!? うーん、銚子には、まだまだ俺たちの知らぬ謎がうずまいているのだ。
エッセイ酒場に戻る
石川浩司のひとりでアッハッハーに戻る