石川浩司のしりとり商店街 神楽坂篇(BUBKA)



さて、今回から始まったこの企画。世の中にあまたある商店街をへらへら歩いてレポートするといったものであーる。でも、世の中には商店街はゴマンとあるので、駅名をしりとりでたどって行くことにした。もしも「ん」で終わってしまったら、日本にはおそらく「ん」で始まる駅がないので、アフリカのチャド共和国の首都の「ンジャメナ」に行くことになるわけだが、ブブカ編集部は経費を出してくれるのだろうか・・・。
 
 ともかく、一回目の今回は「ブブカ」の「カ」から。ということで、神楽坂。料亭で芸者あげて政治家達がひっそり遊ぶ街、というイメージだが、実際は如何に? 地下鉄東西線の神楽坂駅に降り立つ、俺とイラストレーターの山中さんと、編集の林さん。と、商店街の入り口あたりに、「アユミ画廊」という画廊が。ふむふむと入ってみる。と、画廊の人が「今は、フランスの風景画をやってまして・・・」と寄ってくる。はぁはぁ、などと言いながら作品を見ようとすると、なんと山中さんは全く作品と関係のない外のガス燈を模写し始め、林さんは全く作品と関係のない古いガスストーブを愛で始めた。「こっ、この作家はパリで賞なんかも取ってましてね!!」の、画廊の人の声は、おいおい全く無視かい、おふたりさーん!

 そこを出て、古本屋、駄菓子屋、100円ショップなどをひやかしながら歩く。と、謎の物件発見。「喫茶室シャルル」「すなっく里恵加」「サンドール」という3軒の店がひとつのビルに入っているのだが、半畳ほどのドアがポンポンと3つ並んでいるだけ。つまりは、とても狭く、まだ開店時間じゃなかったので中がどうなっているのか不明だったが、少なくとも、デブは、そのドアの時点で入れないという究極の「デブ差別」の店々だった。くそぉ。ひょろひょろと細長い人たちだけで、楽しくやろうという魂胆か。ひょろひょろ天国か。
 
 普国寺というお寺の狛犬は、魔界の生き物のようにグロテスクで怖い。もしかして、悪魔にのっとられてないか? 本多横町は、石畳の飲食街で、説明板によると、江戸中期から栄えたそうな。小道の隠れ料亭みたいなところを横に見つつ降りていくと、「熱海湯」が。と、ちょうど今日は「りんご風呂まつり」をやっているではないか。おっ、いいねえ。湯をいっぺえ、ひっかけていくか。まだ陽が高いというのに、結構繁盛しているのは、夜の街の場所柄、仕事前のひとっ風呂というところか。湯にりんごがプカプカ浮いてやがる。浮いてやがるぜ。
 黄色いプラスチックの洗い桶は「ケロリン」かと思ったら「旅行・物件・双六 モモテツ」と文字が入っている。一瞬何のことかわからなかったが、テレビゲームの「桃太郎電鉄」の事ね。でも、老人とかは、これを見ても何のことだか、さっぱり頭がクエスチョーンだろーな。

 湯上がりに、よく見ると黒目がなくて怖い「日本でここだけ、ペコちゃん焼き」を食べて、飯田橋に出た。最後は川っ端でちょいとおしゃれな「キャナル・カフェ」でお茶。むーん、悪くない散歩コースでした。
エッセイ酒場に戻る
石川浩司のひとりでアッハッハーに戻る