はこにわポエム集会その8




*********茶碗********

茶碗、という言葉は口楽しい。口に出して言ってみるとすぐわかる。まずは小さな声でちょっとつぶやいてみよう。「・・・チャワン。」ほら、楽しくなってきた。なあんか理由はよくわかんないんだけど、愉快な気持ちになってきた。それでは、今度はもう少し大きな声で、口をはっきり開いて言ってみよう。「チャワン。」なんとなく間抜けな言葉が室内に響いたはずだ。どうだ。そんな言葉を発している自分自身がおかしいだろう。周りに人が居たら、声を合わせてセーノで言ってみよう。「チャワン!」調子に乗ってきたら、そのまま連呼!「チャワンチャワンチャワン!!!」 大賞、よおくそのへんの事がわかってる。世の中、チャワンですべて解決だ! 馬鹿賞、満たされない物悲しさがよく出ている。しかも丼にハッと気づくサマは、とても馬鹿だ。すばらしい。



******忘れ物******

  忘れ物はさほど多くはないが、忘れ顔はひどい。「こんにちはー」とか声をかけられ、顔はなんとなく見覚えがあるのだけど誰だっけ誰だっけということが少なくない。まずは仕事関係の人か、ファンの人かその区別すら難しいことも多い。でも「あんた誰やねん!」というのは失礼なので、中途半端な笑顔を「へへへー」としながら、「誰だ誰だこいつは誰だ」と思いあぐねるのだ。その口調・態度・言葉の端々から推察するが、半分くらいは「それじゃ、またー。ははははー」ってな感じで別れるものの最後まで頭の上に大きなクエスチョンだったりする。なので、今度俺に話かける奴は、まずは氏名・性別・関係・昔の髪型・好きな食べ物・携帯の電話番号を言ってくれ! それといきなり駅のホームで無言で俺の腹を指で数回つついて「・・・本物だ」というのは、やめろ。



**********鼻********

昔、病院で夜間の救急患者受付のバイトをしてた事がある。ある日ひとりの男が鼻を押えながら受付にやってきた。「ファイイヌニ、ファナヲカマレテヒタイヨウ!!」「はっ?」「飼い犬に、鼻を噛まれて痛いよう!!」診察後、カルテを整理しているとはらりと一葉の写真が落ちた。そこには齧られた鼻とその肉片。そしてそれは悲しいほどにぴったりとはまるジグソー・パズルだった。飼い主と犬は、その後仲直りしただろうか。それとも復讐して、犬の鼻に逆にガンブリと齧りついただろうか・・・。大賞、しょうがないな。ピーマンを食べる為にはな。馬鹿賞、俺は真っ赤なおまんちょの方がだいぶましだと思うが・・・。あと、ひとつだけ重要な事を教えておこう。信じているところ悪いが、紅白鼻は別にめでたくないんだ。ラララと楽しげに歌い出す前にまず、医者に行け。

(フロムA)


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