石川浩司のフシギ蒐集旅行(台湾篇)




 この冬は、ちょいと時間が出来たので台湾に出かけてみた。
羽田発の往復で3万6千円、という格安チケットだ。しかし海外、こんなに安くていーのか?韓国なんて、往復1万円代のチケットまであったぞ。へたすりゃパチンコ30分持たないぞ。
それはともかく皆さん、国際空港の羽田飛行場は知ってますか?
いやいや、そいつは違う。
今、貴方が思い浮かべた「ビッグバード」と呼ばれてる数年前完成したコギレイな建物は、国内飛行場の方だ。国際の方は・・・
そう。浜松町からモノレールに乗って終点のふたつ前の「羽田」で下車する。そして駅の出口に出た貴方は軽いショックを覚えるだろう。
何故ならその駅前には、野っ原が広がっているだけなのだから。そんなシュールな世界に軽いめまいを覚えながらも気を取り直し重い鞄を抱えバス停を見つけ200円払ってバスに乗ると、ようやく遠くに古ぼけた建物を発見するだろう。とてもローカルなアクセスでたどり着いたそこはしかし、キャッシュカードで金を降ろそうにも銀行すらない国際空港だ、ということは覚えておいた方がよい。

そんな羽田から中華航空でわずか3時間で台北。そういえばちょっと前にテレビの取材で「台湾では・・・」という話しをしようとしたところ「すいません、台湾という言葉は使えないんです。台北と言って下さい。」と言われたことがあった。
んなこといったって、台湾には高雄だって台南だってあるだにー!?と思ったが、なんせ「国」として中途半端な現状ゆえ、番組によってはそういう規制があるんだそうだ。
まぁそれはともかく台湾はなんと、寒かった。まぁ1月だったのでスイミングスイミングヤッホーヤッホーとはさすがに思っていなかったけど、セーター着てブルブル震えあがるほど寒いとは。おいおい、話しが違うぜ。南国台湾でないの?リゾッチャでないの?

 実は台湾は2度目で、前回は約2年半ほど前、「すごろく旅行」をやりにきた。
「すごろく旅行」とは自分がすごろくの駒になって、サイコロの出た目の数だけ進んでそこで下車し、あらかじめ作っておいた「クジ」を引いてその町でいろんなハプニングを起こす、という予定なき旅行だ。詳しくは筑摩書房刊「すごろく旅行のすすめ」を読むように、って強引な自著宣伝はともかく、その時は夏だったので暑さで鼻から蒸気をフガーッと噴き出してたので、この寒さにゃともかく驚いた。

 しかし本当に驚いたのは台湾の日本化が益々進んでいた、ということだ。
町をちょいと歩けばコンビニエンスがぐっと増えている。セブン・イレブン(まぁこれはそもそも日本ではないけど)、ニコマート、ファミリーマート。腹が減ったら吉野屋、白木屋、そして名古屋人喜べ ! 寿がき屋でラーメンだ。もっとも吉野屋は牛丼だけじゃなくてカツ丼とかおでんとか、はてはサンドイッチセットとかだいぶ日和ってたけど。そして三越、そごう、高島屋。スーパーいなげ屋に紀伊国屋書店、パソコンショップはT-ZONE。

 でも何より凄いのはアイドルと漫画。安室奈美恵にSMAP、チャゲ&飛鳥のポスターがいたる所で笑いかけ、若者は背中に「東京 小室哲哉」と大書されたTシャツを着て町を小粋に濶歩してる。
 さらにちびまる子ちゃんが席巻。そこら中バッタ物の嵐。中にはよおく見ないとまる子ちゃんだか何だかわからない不思議な物体も多かったが、とにかく日本以上に溢れかえっていた。ちなみにレコード屋さんにはちゃんと僕らたまの『あっけにとられた時のうた』(エンディングテーマ)も並べられていて、良かった良かった。漫画喫茶も多いが、90%は日本の漫画だということだ。

 さて、肝心の缶ジュース蒐集の方は、というとさすがに前回のベトナムと違ってここは豊富。「塩入斑馬先生」という炭酸飲料や、お馴染み缶アスパラガスの汁に砂糖をぶちこんだだけのアスパラガスジュース、アンニン豆腐が好きな僕でもあまりのアンニン濃度の高さに鼻がツンときて胃が拒絶したアンニンティー、インターネット・カフェというコーヒー、それに各地の地ビールなど盛り沢山。前回来た時は2回も国際郵便で送っただけのことはある。
いいぞいいぞ。

 そして台湾は何といってもB級グルメの宝庫。パン屋でみつけて思わずまわりのストップ! を振り切ってチャレンジしたのは、「まぐろ寿司パン」。
これはどういうものかというと、まず、たっぷりのマーガリンと砂糖を塗ったパンに、大量のまぐろのツナ及びチーズ、ハムを挟んで揚げる。そしてさらにそのパンをぐるりと海苔で巻き、武蔵丸のこぶし大の「のり巻き」に仕立てあげているのだ。もちろん見た目は「勘弁してくれよーおやっさーん!」である。ところがこれが旨いんだから世の中わからんものである。

 あと、台湾で何より不思議なのはビンロウ屋だ。
ビンロウの実に石灰を混ぜて、ガムのようにくちゃくちゃやる南国の嗜好品で、噛んだ後口が真っ赤になることで有名だ。で、まあそれはいいんだけど、その店の数が尋常じゃなく多い。
だいたいが掘っ立て小屋みたいな感じで、例えば中正空港から最寄りの鉄道駅「桃園」とかだと、それが街道沿いに30m間隔で延々10キロも続く。何故そんなに必要なんだ?しかもだいたいその小屋はガラス張りで、やっているのはビンロウの実を葉っぱでくるくる巻く、という異常に地味な農業作業なのに、お姉さんがミニ・スカートかなんかで色っぽく巻いているぞ。
うーむ。絶対何か裏がある。なんかとてつもないパラダイス的な事があるに違いない。
いいなーいいなー。誰か、おいらに真実を教えてくれい!  

(日曜研究家)


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