石川浩司のフシギ蒐集旅行(ベトナム篇)




     皆さん、こんにちわ。と・と・と・・・ああっ、マニアの人達だっ!! 
右を向いても左を見てもマニアの読者さんじゃあ、あーりませんか。
ヤバイヤバイぞ。僕も確かに、知らない缶ジュースを求めて丑三つ時に自動販売機の前をうろうろしてニヤニヤしたり、プレミアすらつかないしょーもない駄おもちゃを店の老婆に怪しまれながら手にいっぱい溢れさせてニヤニヤしたり、あぶないおっさんが勢いだけで作っちまったキミョーな個人博物館をのぞきこんでニヤニヤしたりがやめられないとまらない悲しい性ではある。
でもどーにも「発見」することに喜びを覚えてしまうので、コレクションがある割りに、知識やウンチクがちっともノーミソすっからピー。
なので、無理してコレクターのふりしてなあんか気取った事言っちまってしくじっちまって、
「てめえ、そんなことも知らねーのか」
「全然違うじゃねーか」
「あんた、ここを泣く子も恐れる日曜研究家の集まりだと知っててやってんだろーな」
「この、ランニング!」
等々罵声の限りを尽くされたりする可能性があると思うと、涙ツツーとあふれますなので、あえて「浅く広くで責任なしよ」と、旅先で見つけたちょいと不思議な物、こりゃなんじゃいの場所などを紹介します。よろしくねーっ。

 さてさてこの夏、僕は友人数人とベトナムに行ってきました。まずはホーチミンという町に行ったんだけど、コレクションしている缶ジュースの発見は今イチ。
まあ、コカ・コーラでプルタブを集めると自転車プレゼント、というのがさすがにお国柄だったけど、他はおおむね缶は輸入物が多くて、オリジナルは少なかった。
ただし、日本から輸入してるけど、日本では発売されてない「リポビタンD」缶を発見してちょっとウッシッシだった。

 しかしこの国、手先が器用なことにかけちゃあ、つとに有名。ありましたありましたよー、そのコカ・コーラやスプライトで作ったリサイクル品が。僕の買ったのは帽子だけど、この他にもバッグやリュックなんかがあった。ちなみにお値段は100円ぐらい。ちゃんと裏地はゴムとかを使ってるので、頭がアルミの先でザクザクに切れて血がひたひたと落ちて、うぎゃーこれじゃホラーですわいーっ、というようなことはなかった。よかった、よかった。

 次に僕らはメコンデルタ、という所に日帰りツアーで行った。ここで出色だったのが、通称「ヤシの実教団の島」。
そう遠くはない昔、ヤシの実だけを食とする、という宗教がこの島にあった。しかし誰もがそう思うように、さすがにその企画(?)は無謀だったようで、今はもう信者はいない。だけど、その神社だけがぽつねんと残っている。そのカラフルな建造物の中、おやっと目を引くのが、その御神体の「アポロ」だ。
そう、アメリカ合衆国のロケット、アポロ・・・アポロチョコレートのアポロ、だ。
教祖が、月をこの世のパラダイスだと思ってしまい、そこに連れていってくれるアポロは、まさに神様の乗り物じゃないか!! こりゃありがたやーありがたやーと、御神体にしてしまったのだ。
変な塔の横に、子供の夏休みのでかく作り過ぎちまった工作のような「APOLLO」と書かれたロケットがくくり付けられている。気持ちがわからないでもないだけに・・・何故かもの悲しくなること請け合い。

 通称「クレイジーハウス」と呼ばれているホテルにも泊った。ここはまさに「なんじゃい、こりゃ!!」の建物。とにかくこれほどまでに無茶無勝手無軌道無理難題な建築というのは世界中まわってもそうそうないだろう。
巨木の中に部屋がある、というイメージで、巨大な「なんだかわからないもの」が建っているのだが、ちょっと離れたところから見たら、変な形の小さな山か、保存状態が悪くってドロドロに溶けてしまった遺跡かなにかだと思うに違いない。とにかく徹底して角ばったところを排除したようなグニャグニャな物体、B級ガウディ。
天井は鍾乳洞のように複雑に垂れ下がり、窓やベッドも5角形だの7角形だので、空間を合理的になんてだーれが使ってやるものか、別に家は四角と決まってるわけじゃないんだから、こんな家建てたっていーだろ、べらんめえーという気概がある。
しかも部屋それぞれに名前がついていて、「蟻の部屋」「熊の部屋」「ひょうたんの部屋」「カンガルーの部屋」とかで、カンガルーの部屋にはでかいカンガルーの巨大なオブジェが部屋を占拠していて、人はその隅で寝る。
しかも、夜中になるとそいつの目は不気味に赤く光りだす。ちなみに僕が泊ったのは「コンドルの部屋」。
もちろん巨大なコンドルのクチバシは、眠っている僕を完全に狙っている。
ちなみに暖炉はひびの入った巨大なコンドルの卵だ。このホテルはまだ日々増殖中なので、どんどん形が変わっていく可能性がある。木の横から出ているキリンの首の休憩所は、まだ完成していなかった。ああ、この悪夢の宮殿はどんな形で完成を見るのだろうか。

 ただし、このホテルのあるダラットという町は高原にあるので、肌寒かった。ベトナムは常夏の国だと思ってTシャツ半ズボン、素足にサンダル履きだった僕は、耐え切れずに上だけモコモコのセーターを買い込んだ。そんな上下滅茶苦茶な格好でウロウロしてた僕は、おめえの方がよっぽどクレイジーだと思われてたかもしれないが。

 とにかくこの国は日々新しくなっているので、実に愉快だ。きのうまで何もなくてヒーヒーバイクの波を越えて向こう側に渡っていた交差点に、今日はもう信号がついていたりする。だけど歩行者用信号が青になったので、さあ渡るべいと3歩進んだら、もう完全に赤になっている。おそらく青のうちに渡りきるには、100mを10秒で渡らなくてはならない。
行け行けゴーゴー意味不明 ! 
いいぞ、ベトナム!! どんどんやれ!!

(日曜研究家)


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