ダンダンブエノ稽古場日誌



3月3日(月)
こんにちは。たまの石川で~す。
さて、先日までは某廃校になった小学校を借りて稽古してきたダンダンブエノですが、今日から(役者さん達はきのうから)場所をホールに近い広さを持ったスタジオに移しての稽古です。
役者さん達は昼過ぎから振り付け等があるので稽古していますが、「たま」は夕方から来て下さい、ということで、6時頃トントントン、と階段を軽やかに降りて、そのスタジオのドアを開けました。
「おはよーござ・・・」
 挨拶をしようとした、その時です。振付・演出の井手茂太の怒声が聞こえました。
「バッキャロー! こんな簡単なダンスも出来ねえのかっ!」
 そして次に僕の目の前にうつった光景は、井手茂太が酒井敏也に往復ビンタをくらわし、額に思いっきりパンチを与えている姿でした。
 酒井敏也は、3mもふっ飛んだでしょうか。額からは噴水のように血をピューピューと吹き上げながら、ぶっ倒れました。それを見た瞬間、山西惇と近藤芳正はあわてて井手茂太に駆け寄り、
「井手さん、井手さんだけに、イデーことはやめて下さい!」
「お願いします。近藤だけに、コンドーだけは勘弁してやって下さい!」
 そう言ったふたりの方を井手茂太は静かに振り返ると、一瞬ニヤッと笑い、
「・・・俺はな、そういう駄洒落が一番キ・ラ・イなんだよっ!!」
 そう言うや、ふたりの鼻の穴にそれぞれ右手と左手の人差し指と中指をボーリングの玉のように突っ込み、
「ムオォォォォォ!!」
 と全身に力を入れるや、ふたりの体を持ち上げ、鼻を中心にグルグルと頭の上で回転させ始めました。
 まるでそれは、江戸川乱歩の書く地獄遊園地の「人間風車」のようなありさまでした。
 鼻血がまるで花火のようにスタジオを赤く染めていきます。
 果たして、これは人間の仕業と言えるでしょうか。・・・否。井手茂太に鬼が乗り移ったとしか思えません。
 さんざん回転させられたあげく、スタジオの隅まで遠心力で飛んでいって失神している山西惇と近藤芳正。
 あまりの事に唖然として声もなかった女性陣も、ようやく事の重大さに気づき、
「井手先生、お願いします。どうかみんなを許してやって下さい!」
 そういうや、井手茂太の前に土下座し、あやまり続けました。
「お願いです。どうか、どうか!」
 そういって、床に頭をゴンゴンぶつけながら、土下座を続けます。
 ゴン ゴン ゴン!
 ゴン ゴン ゴン!
 だだっ広いスタジオに、ただゴンゴンの音だけが響きます。
 そして、井手茂太は静かにつぶやきました。
「やっぱり、ダンスにはゴンだな・・・」

 あ~、もちろんウソうそ嘘ですがな~。本当は和気あいあいの現場ですがな~。なんてったって、俺達「たま」はみんな小心者。怖い人が仕切る現場だったら、とっくにスタコラサッサと逃げだしとります~。
 但し、やっぱり場所がきちんとしたスタジオになったのと、本番が近くなってきた為、全員に若干の緊張感は高まってきております。
 でも、そもそも「稽古場日誌」って、何書けばい~の?
 だって、内容書いたらネタバレになっちゃうしねー。う~む。
 でもとにかく、基本的には「たま」の演奏に合わせてダンスをするのだけど、まぁ、そのダンスというのが「これもダンスと言えばダンスか・・・」と言うほどのケッタイなものも多く、爆笑が絶えません。
 ただ、僕らは見慣れたので変なダンスで笑ってしまうけれど、初めて観るお客さんなどは、
「う・う~む。あの奇妙な動き、おかしいけれど、わ、笑っちゃってもいいものなのだろーか・・・?」
 と、とまどう人もいると思われますね。いいんです。笑っちゃって下さい。

 あっ、そうだ! あれ書こう! 何故なら日本は資本主義国家だから!
 実は今回の公演にあたって、たまの曲及びいろんな人のカバー曲をアレンジして演奏しているのだけれど、グータラな俺達にしては久しぶりに死に物狂いで練習した曲などもあり、
「なんかこれ、この公演だけで終わりにするのもったいないんじゃなーい?」
 ということになり、急遽、この公演での演奏曲を全部収録したアルバムを作りました。
 音の方はもう昨日最終作業まで終わって、あとはジャケットとプレスなのですが、ちょっと公演本番日には本体が間に合いそうもないので、公演の際に予約受付をしま~す。よろしゅう~。
 タイトルは当初、この公演の曲を集めたものなので、公演タイトルでもある「いなくていい人」にしようと思ったのですが、なんという神のいたずらでしょう。既にたまには「いなくていい人」というCDがあるのです。で、今回も「いなくていい人」にしたら、何が何だかわからなくなって、気ぃ狂うて、ホールにワハハハハッと火を放つ人とか出ても困るので「しょぼたま2」というタイトルにしました。
 ちなみに「しょぼたま2」ということは、頭の良い貴方の事、もうお分かりですよね。その前に「しょぼたま」というCDも出ているわけです。買って下さい。

 とにかく、平均年齢が、どー控え目に見ても、人生を山に例えるならもう頂上でおみやげのペナントを買って、下山をはじめているオッサン・オバハン・・・いや、オネーサン達による、めずらし~舞台です。
 めずらし~舞台好きな貴方、このコラボレーションは、ちょっと見物でっせ~。

 あと、今日はお雛様。ミドリさんが持ってきてくれた柏餅、大変おいしゅうございました。

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