ちびまる子ちゃんについて(ムック本)



 俺は高校生ぐらいの頃、やたら「欠席」が多かった。と言うと、
「ははあん、結構不良だったんだね~。学生服のまま町のゲームセンターで煙草とか吸って悪い奴等とたむろしてたり・・・」
 と思われるかもしれないが、ぜ~んぜん違う~。
 実は家でひとりグースカピースカ寝てたのだ。雨の日と風の日は特に。だって、外に出るよりも、布団の中のヌクヌクとあったかい世界の方がずーっと幸せだったんだもん。「青い鳥」は家の中にいたんだもん。もちろん最初は親に怒鳴られたが、それでも俺の「グータラ度」の方が強大な力だったんだよね~。

 まる子も、学校こそは休んでなかったけど、コミックス読むとゴロゴロしているコマ、多いよね~。おそらくモデルであるさくらももこ本人も、ゴロゴロが好きだったに違いない。で、最近ハタと気づいたのだ。もしかして「ちびまる子ちゃん」の大成功は、この「グータラ」に秘密があるのではないか、と。
 つまり、グータラしている人って、そこで普通の人よりも力を蓄積しておいて、自分の好きな事をやる時、大爆発したり出来るんだよね。あと、グータラしているうちに自然に、しょーもないアイデア考えてたり、誰も見ていないような物について仔細に眺めたり考えたりしていて、「他の人とは違う視点」をいつのまにか育ててたりするんだよね。

 もしもさくらさんがグータラ度が足りなくて、普通に人と同じ様に何事もほどほどにきちんとしていたら、「ちびまる子ちゃん」はこんな「国民的漫画」にならなかったと思う。人間本来の持つ些細な心理描写(顔に斜線が入るとこね)や、「しょーがね~な~」という笑いや共感も薄かったと思う。
 但し、前述したようにグータラの反逆で、好きな漫画を描く事だけには爆発していた。さくらさんのお宅にお邪魔した時にわかったがそれは今でも続き、本業以外でも、家の箱やら瓶やらあらゆるところに自作の絵が描かれており「もう仕事で死ぬ程書いてるんだから、何もそれ以外の時間まで描かなくても・・・」と思うほど「描く」ことが好きなのだ。

 ちなみにこの時は、
「きのう瀬戸内海を自転車で走ってきたんだよ。で、明日から中国に取材に行くんだよ」
 とさらりと言ってのけた。いくら「富士山」の企画とはいえ、そして旅行が好きだとはいえ、普通休むよな・・・。
 そしてその日は友人数人と遊びに行ったのだが、いやーさくらさん、喋る喋る。夜も更け、ひとりずつバタバタと倒れて部屋の隅で寝に入っていくのを横目で見ながら、遂に朝までハイテンションで喋り続けた。グータラどころか、そこそこの年になって、このパワー。グータラの反動、恐るべし!

 若人よ、グータラでもいいではないか。そして大器晩成するのだ! ただ、ひとつ失敗すると、
「あの人は一生、ただのなまけものだったよね~」
「何だったのかしらね、あの人の人生・・・」
 と葬式の時に言われる可能性も大だが・・・。
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