悪の指令その6結果報告

悪の指令その6結果報告

 

職場学業放棄引きこもりゲーム作戦結果報告

 むー。残念。今回は「該当者なし」じゃ。そこそこ応募はあったものの、わしを越える「遊び狂い」はいなかったようじゃの。ちなみにわしの最高得点は、「snood」47691点、「slimeinvaders」14913点じゃ。ワッハッハ~。むむ~、でもこれでは「わしはゲームがうまい。お前らへたじゃのー。あっはっはー」と自慢しておるみたいじゃないか。

 しかし、指令にも書いたが、わしのゲームべたは、生半可じゃないぞ。あれは高校生の時じゃった。とある日、なんとなく、女の子とふたりで喫茶店に行くことになった。その子には特に恋愛感情はなかったが、決して嫌いではなかった。だから流れによっては、その後、彼女になる可能性がないともいえない、ビミョーな感じだった。女の子とふたりだけで喫茶店に入るのも、初めてだったかもしれん。さすがのわしもちょっとキンチョーした。その時座ったテーブルが、当時全盛を誇っていた「インベーダーゲーム機」だったのだ。わしは興味はあったが、100円という金額が高い気がして、やったことはなかった。でも友達がやっているのを見てたことはあるので、やり方はわかっていた。その女の子とふたり向かい合い、どちらからともなく照れ隠しに、
「これでもやってみようか」
ということになった。まずは彼女の方がチャレンジした。彼女の方もほとんどやったことはないらしく、5分と持たずにゲームオーバー。わしも思わず、
「下手だなぁ~」
と微笑して、
「よしっ、俺が腕前を見せてやる」
と100円玉を投入した。
「ほりゃっ! うがっ・・・ とりゃ! うっ、うへっ!?」
そして・・・全3機がやられるまで、30秒といったところじゃったかのう・・・。
 喫茶店に流れる小さな音楽だけが、無言のふたりの間をしばし包みこんだ。
 彼女もあまりのわしの不甲斐なさに、引きつった笑いを向けながらも、声もかけられないようじゃった。
 そしてもちろん、そこから彼女と恋が始まることはなかった・・・。

 あの時、もしも俺が彼女を遙かに越える高得点を出していたら、いや高得点とまでいかなくても、せめて彼女と対等な点数を弾き出していたら・・・そこから話も盛り上がり、ふたりの間もいい感じになり、人生が変わっていたかもしれんなぁ。・・・ふぅ。(遠い目)

 それから時が経ち、わしも結婚して家にテレビゲーム機も買った。しかしやるのはもっぱらRPGやすごろくゲームのように、敏捷性があまり問われないようなゲームばかりじゃった。
 たまのメンバーとも、ツアー先などで時間が空いた時、ゲームセンターに入ることはあったが、対戦ものとかをやると、いつもGさんや知久君に言われたものだ。
「石川さん、ふざけてないで、まじめにやってよ!」
 ・・・ちなみにもちろんわしはふざけていたのではなく、真剣にやっていた・・・。でも他人から見たら、ふざけているのとしか見えないほど、それはそれは惨憺たるものだったんじゃ。

 時はさらに経ち、パソコンをやるようになってから、この「snood」「slimeinvaders」というゲームと出会った。やり易さから、暇な時にひょこひょこやっていた。もちろん最初の頃は点数ともいえない点数だったが、元来のしつこい性格から、毎日1回はやるようになっていた。その結果、徐々にではあるが得点も出せるようになっていった。

 ここからは、ジジイ特有の戯言と思って聞いてくだされ。今はわしも、音楽家として生計を立てているが、決して音楽が得意だったわけではない。だいたい、太鼓を初めて拾った(!)のも、二十歳を過ぎてからじゃったものなぁ。それをなんとなく、だらだら叩いているうちに、いつのまにか商売になっていた。
 インスタントラーメンのパッケージや缶ジュースも、何の気負いもなく「なんとなく取っておいたら面白そうだな」で、だらだらと集め続けていたら、いつのまにか本が出たり、日本一のコレクターになっとった。自慢そうに聞こえたら嫌じゃが、どれも「よしっ、これで俺はいくっ!」なんて気合いは全然なかった。ただ、元来の性格から、しつこく続けていただけなのじゃ。
 途中で人に馬鹿にされたり、自分でも「こんなことやってて、何の意味があるんだろう」とか思いながらも、続けていったのじゃ。それがいつのまにか、いろんな形で結果として出るようになったのじゃ。
 つまりこのゲームもそうじゃ。ゲームべたでも、続けてさえいれば、いつのまにか頂上に登っていたわけじゃ。もちろん、みんなに与えた期間は短かったし、もっと長く続けていればこんなわしの得点を抜くのは、わけもないことじゃろう。しかし、現時点では、わしの方が上なのじゃ。それは事実なのじゃ。

 青年よ。何事も続けなされ。確かエジソンじゃったか、「天才は1%の才能と99%の努力から出来ている」と言ったのは。わしもこう思うぞ。「結果は1%の才能と99%のしつこさから出来ている」と。ほほほ、何も気負うことはないんじゃ。嫌になったらやめればいいことなんじゃ。ただどんなことでも、「もう少しだけ続けてみよっかな~」が思わぬ成果を生む、ということがある、ということが言いたかったんじゃ。
 ま、人生楽しんで送ってくれたまへ。


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