五月四日 郷よの日



 みなみこうせつの「妹よ」内藤やす子の「弟よ」または五輪真弓の「恋人よ」など、とある人の事を思い出してそれを歌にまで昇華してしまうことはよくある。
 しかして日本人にとって家族や恋人達だけが「よ」の対象なのであろうか? それだけが突如心の中に沸き上がる「よ」的人物なのであろうか?
 否。断じて否である。
 日本人なら誰しも郷ひろみが頭の中に出現し、濃い眉毛・独特な口調で歌い踊り出すのを止められない日が年に一度や二度はあるであろう。間違って我修院達也(旧・若人あきら)を思いだしてしまうお間抜けも者もいるであろうが、それはそれでその人の中での「郷よ」なのでそれをも含めて、この日は「郷よの日」なのである。

 中性的な魅力で「男の子女の子」でデビューした郷ひろみ。当初は「軟弱な顔だけが売り物の歌のへたなアイドル」と言うのが本人には悪いが偽らざる一般的な意見であった。それがいつの頃から「ダンディな大人の歌が歌えるエンタティナー」という正反対の評価を与えられるようになった。ある程度以下の年齢の若者など、ダンディ郷しか知らない者もいるのではなかろうか。
 この華麗な転身こそ郷ひろみの魅力である。「人は変われる」ということを身をもって教えてくれた偉大なる人物である。
 例えばオリンピック等の国際試合で「JAPAN」という言葉が出た途端、誰しもの脳裏に「♪ジャパーーーンッ!」と現れ踊り出す郷ひろみを讃えずして、何が日本人であろうか。
 よって本日を「郷よの日」とする。

 異議のある者は、場合によっては国賊として処罰されることがある。


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