五月十九日 ゴイクの日
ゴイクと言われても一瞬何のことだかはほとんどの人にはわからないであろう。
実はこれは明治末期から大正初期にかけて白樺派の人が詠んだ(ちなみに作者は不詳である)句の頭文字を取ったものだからだ。
即ちゴイクとは、
「ゴシゴシと/インモウ痒い/クリスチャン」
という句なのだ。一見下品な句にも読めるが、これは個人を重視した白樺派の根源に近い理念として「例え敬虔な教えを忠実に守るクリスチャンにおいても、痒い陰毛を掻くのは止められないことだ。つまりこれが『人間』というものなのだ」ということを端的に表している句なのだ。現代においてはクリスチャンが自分の陰毛が痒くてゴシゴシどころか、
「ムッキャキャキャッ!」
とか、
「ウホホーイ、カユカユイ~」
と掻きむしったところで、別に人前でやるわけでもなければシスターからも「個人の自由」という事で干渉されることもないだろうが、白樺派の人達が活躍していた当時は、まだそんな自由すらまっとうには認められていなかったのだ。
かつてまだ人々に個人の自由がなかった時代に生まれた「ゴイクの日」。
今日ばかりはそれをちょっとでも思いだして、自分の陰毛を他人の了承なく豪快に「ウハー、ウホホホー」と掻きむしれる「自由」を獲得した現代に生まれた事を感謝しようではないか。
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